渋谷スクランブルスクエア株式会社 PROJECT

多彩な「問い」から社会価値を生み出す共創拠点
SHIBUYA QWS 立ち上げプロジェクト

Outline

2019年11月に開業した、渋谷駅直結・直上の大規模複合施設「渋谷スクランブルスクエア」。ここに、「問い」を起点とした共創施設としてオープンしたのが『SHIBUYA QWS(渋谷キューズ、以下、QWS)』です。施設を運営する渋谷スクランブルスクエア株式会社が目指したのは、社会に向けて多様な価値を発信する、渋谷らしさを体現するインキュベーション施設をつくることでした。同社はその協業パートナーとして、共創空間とコミュニティ運営の豊富な実績を持つロフトワークを選定しました。

2016年8月より、東急・JR東日本・東京メトロとの共同事業として始まったQWSプロジェクトにおいて、ロフトワークはその他のパートナーとともに実施設計(空間設計)を行いました。その後、渋谷スクランブルスクエア株式会社に業務が移管されたことから、渋谷スクランブルスクエアとロフトワークは合同プロジェクトチームを発足。QWSの事業計画からコンセプト策定、ブランドデザイン、空間・内装設計、サービス・運営設計、コミュニケーションデザインといった開業準備全般を実施しました。

1年10ヶ月間のプロジェクトを通じて、ビジネス、サイエンス、芸術、デザイン、社会活動といった幅広い領域のプロジェクトが集い、互いに学び合い・化学反応しながら、社会価値につながるアイデアや新規事業などを生み出す未来共創拠点が誕生しました。 

プロジェクトの全体像

プロジェクト概要

プロジェクト名:SHIBUYA QWS 立ち上げプロジェクト

  • プロジェクト期間:2018年12月〜2019年10月
  • 体制
    • 全体統括:野村 幸雄(SCSQ
    • プロジェクトマネジメントオフィサー(PMO):林 千晶
    • プロジェクトマネジメント:高井 勇輝、平田 絵美(SCSQ)
    • クリエイティブディレクション:山田 麗音、永谷 聡基、金指 了、安元佳奈子
    • プロデュース:松井 創、石田 真里
    • 空間ディレクション:松井 創、宮本 明里、森川敏(SCSQ)
    • 空間設計:大野 友資(DOMINO ARTCHITECTS)
    • コミュニティ設計、空間運用設計:宮本 明里
    • プログラム設計:平田絵美(SCSQ)
    • コミュニケーション戦略:渡邉博之(SCSQ)、廣部敦子(SCSQ)
    • コンセプトメイキング、コピーライティング:宗像 誠也(ホワイトノート株式会社)
    • グラフィックデザイン:岡本 健(株式会社岡本健デザイン事務所)
    • ツールデザイン:松井 正憲(METER inc.)
    • Webデザイン:株式会社パノラマ
    • Webコーディング、実装:株式会社タクマデザイン
    • 映像制作:株式会社ナナメ
    • 衣装デザイン・制作:シタテル株式会社

*肩書きはプロジェクト実施当時。

*SCSQ・・・渋谷スクランブルスクエア株式会社

Challenge

渋谷駅直上に、新たな社会価値を生み出し、世界に向けて発信するインキュベーション施設を立ち上げる

「問い」をキーワードに置きながら、ビジネスからサイエンス、芸術、カルチャー、社会課題などの分 野で「0→1」の価値を生み出す会員制の共創施設として生まれたQWS。その事業の本質は、オフィススペースのレンタルではなく、「インキュベーション施設のアップデート版」でした。 

QWS事業立ち上げにおけるチャレンジは、渋谷という人や情報、モノが大量かつスピーディに行き交う エリアならではの「地の利」を生かしながら、いかに価値創造し続けられるエコシステムを構築できるかでした。プロジェクトチームは、QWSという場に創造的かつ多様なスモールプロジェクトが数多く集まり、互いに化学反応し、切磋琢磨しながら活動する状態(「スクランブル・ソサエティ」と定義)を持続するためのコミュニティをつくることを目指し、コンセプトと空間、ブランド、コミュニケーション、サービスを一気通貫で設計しました。

QWSにおける価値創造のサイクル。 (プロジェクト実施当時のコンセプト資料)

Outputs

コンセプト

コミュニケーションデザイン

プロジェクトチームは、QWSから発信されるあらゆるコミュニケーションに「らしさ」を体現できるよう、QWS独自のグラフィックエレメントを定義しました。

グラフィックエレメントは「Q」「W」「S」「?」の文字が部分的にトリミングされた要素によって構成されており、QWSのコンセプトが内包する可変性や多様性、渋谷らしい雑多なイメージを反映。グラフィックエレメントからパターンを切り出したり、組み換えたりしながら、Webデザインからポスターやパンフレット、スタッフの名刺といった印刷物、プレゼンテーションスライドに至るコミュニケーションツール全般に展開しました。

SHIBUYA QWS Webサイト
SHIBUYA QWS Webサイト/フッターに、QWSで生まれた「問い」が動的に表示され、関連するコンテンツにジャンプする仕掛けを実装
ポスター

空間

多様なプロジェクトが混ざり合い、刺激し合う空間設計

横のつながりが生まれるオープンなワークスペースに、200名を収容できるイベントホール、会員がゲストとゆっくり対話できるサロンスペース、それぞれの空間をつなぐ結節点となるタウンホールなど、用途や表情が異なる8つの空間を実装しました。

ひとりの作業から複数人のグループワーク、大型カンファレンス、サロンまで。プロジェクトチームの多様なニーズを満たす柔軟な空間が、QWS会員同士の共創と支援を促進します。

ツールデザイン

細部から、特別な体験を演出する

QWSという、会員制施設ならではの「特別な体験」を演出するために、さまざまなツールをデザインしました。QWSのコンセプトから活用方法をフレンドリーに伝えるプレイブックから、グッズ、細かなツールに至るまで「問い」を探求する人々の気持ちを盛り上げる仕掛けとして作用しています。

プレイブック/会員がQWSをどのように利用すれば成長できるのか、そのプロセスやポイントがイラスト付きでわかりやすく紹介されている

プレイブック/会員がQWSをどのように利用すれば成長できるのか、そのプロセスやポイントがイラスト付きでわかりやすく紹介されている

問い立て/会員はQWSに訪れた際に必ず「問い立て」にその日生まれた「問い」を書き、可視化。これが、会員同士のコミュニケーションを生むきっかけとなる
スタッフコート/QWSの施設スタッフの存在が、ひと目でわかるスタッフコート。中の服が「透ける」独特な素材を使用し、近づくほどにひとりひとりの個性が浮き上がる

リーフレットや1Dayパス、スタッフ名刺など、多数のツールを制作

リーフレットや1Dayパス、スタッフ名刺など、多数のツールを制作

リーフレットや1Dayパス、スタッフ名刺など、多数のツールを制作

Story

「問い」を中心に据えたコミュニティコンセプト

施設名の由来ともなっている「問いの感性」は、QWSの活動を体現するキーワードです。

物事の本質を探究し、常に問い続けることが、新しい価値につながる原点になると考えており、「Question with sensibility(問いの感性)」の頭文字をとって、施設名称はSHIBUYA QWS(渋谷キューズ)としました。

—「SHIBUYA QWSとは」より

QWSの存在を言語化するにあたり、渋谷らしい多様なカルチャーに加え、起業家の冒険心とQWSが連携する5大学(アカデミア)の知性、さらに、社会活動、文化活動とが相互作用することで、世界に向けて幅広い「新しい価値」を創造・発信できる新しい拠点であることを伝える必要がありました。 プロジェクトチームは、会員像をそれぞれ独自の「問い」を持ってコミュニティに参加するメンバーとして設定。QWSのコンセプトを「渋谷から世界へ問いかける、可能性の交差点」に据え、ビジョンとして「社会的インパクト、世界を変えるムーブメントの創出」を掲げました。 さらに、ミッションを自らが形成する「スクランブル・ソサエティ」を通じて「長期的視座から本質的な問題を発見、解決すること」また、「未来を牽引するクリエイティブ人材を育成すること」としました。

1765年のイギリスで始まった科学者たちの交流団体「ルナー・ソサエティ」をヒントに、QWSコミュニティの構成要素を検討。

価値を作る人、支援する人−−会員の関わり方に応じたサービス設計

多様な価値が生まれる会員施設を作るためのサービス設計のポイントは、「創造的かつ多様なスモールプロジェクト」と、彼らの活動に価値を感じ、支援したいと感じる企業・団体を集めることでした。

そこで、一般会員向けサービス(QWSメンバーQWSプロジェクトメンバー)は、サイエンス、アート、デザイン、社会活動、ビジ ネスといった領域で活動する個人や小規模グループを対象に、その活動拠点となる「プロジェクトベース」をはじめとする活動スペースを提供しながら、会員による活動を促進させるためのコミュニティを運営。さらに、グループ間に良質な知的交流を生み出す仕掛けとして、都内の5大学(東京大学、東京工業大学、慶應義塾大学、早稲田大学、東京都市大学)や文化・芸術活動を行うNPO、ベンチャーキャピタルをはじめとした外部機関と連携し、プレゼンテーションイベントやセミナー、勉強会、ワークショップ、プロジェクト公募などのプログラムを開発しました。

法人に向けた会員サービスとして、QWSの会員施設を利用しながら、価値創造に挑戦する会員たちとの共創や支援などを通じて新規事業の種を発見したり、QWSプログラムを活用して自社人材の育成ができる「QWSコーポレートメンバー」を設定しました。

さらに、各分野で活躍するリーディングプレーヤーで構成される、 QWSのビジョンや活動に共感し、メンタリングやネットワークの紹介・資金的な支援を行う会員として「QWSコモンズ」を設けました。

これらの会員サービスと空間を掛け合わせることで、それぞれの会員がこれまで出会うことがなかった層の人材と出会い、相互に刺激しあい、コラボレーションしながらプロジェクトに取り組むための素地が出来上がりました。

さらに詳しい情報

SHIBUYA QWS 運営プロジェクト

Member

野村 幸雄

野村 幸雄

渋谷スクランブルスクエア株式会社
渋谷キューズ エグゼクティブディレクター

林 千晶

株式会社ロフトワーク
ロフトワーク共同創業者・相談役/株式会社Q0 代表取締役社長/株式会社 飛騨の森でクマは踊る 取締役会長

Profile

平田 絵美

平田 絵美

渋谷スクランブルスクエア株式会社
渋谷キューズ ディレクター

森川 敏

森川 敏

渋谷スクランブルスクエア株式会社
渋谷キューズ コミュニティマネージャー

野崎 麻衣

野崎 麻衣

渋谷スクランブルスクエア株式会社
渋谷キューズ コミュニティマネージャー

星川 和也

星川 和也

渋谷スクランブルスクエア株式会社
渋谷キューズ コミュニティマネージャー

渡邉 博之

渡邉 博之

渋谷スクランブルスクエア株式会社
渋谷キューズ プログラムマネージャー

廣部 敦子

廣部 敦子

渋谷スクランブルスクエア株式会社
渋谷キューズ プログラムマネージャー

高井 勇輝

高井 勇輝

株式会社ロフトワーク
クリエイティブDiv. シニアディレクター

松井 創

株式会社ロフトワーク
Layout CLO(Chief Layout Officer)

Profile

山田 麗音

株式会社ロフトワーク
Creative Executive/シニアディレクター

Profile

安元 佳奈子

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

宮本 明里

株式会社ロフトワーク
Layout シニアディレクター

Profile

小菅 奈穂子

小菅 奈穂子

株式会社ロフトワーク
Layout Unit ディレクター / SHIBUYA QWS コミュニティマネージャー

越本 春香

株式会社ロフトワーク
Layout シニアディレクター

Profile

加藤 翼

株式会社ロフトワーク
Layout シニアディレクター

Profile

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