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宮崎 真衣, 葉山 いつは 2025.12.29

もはや、パーティーではない!?
Year End Partyという名のオープンな実験場

イエップキービジュアル

12月のある1日だけ、毎年ロフトワークのオフィスは、いつもと少し違う顔を見せます。

執務室は展示スペースになり、通路には体験ブースやプロトタイプが並び、どこからかフードやドリンクのいい匂いが漂ってくる。クリエイターやクライアント、ロフトワークのメンバーの家族や子どもたちまでが同じ空間を行き交う。

Year End Party(通称YEP – イエップ)は、ロフトワークが毎年、東京と京都で行っている年末イベントです。成果発表とも、展示会とも言い切れないこの場には、その年にロフトワークが何を考え、どこへ向かおうとしていたのかが、そのままの形で立ち上がります。2025年のYEPもまた、それぞれのチームやプロジェクトが、それぞれのやり方で参加しました。

YEP2025のテーマは「Openness」

ロフトワークが創業以来、一貫して大切にしてきたのが「ひらくこと」です。「ひらくこと」は、未来の選択肢を増やし、想像を超える出会いを生みます。一方で、それは決して楽なことばかりではありません。初めてのアイデアや方法に戸惑い、時には衝突や対立が表に出ることもあります。

それでも、ひらきつづける。その先にこそ、一人では辿り着けない未来が、少しずつ形になっていくと私たちは信じています。YEP2025では、この「Openness」というコンセプトを、パーティという形でどのような体験として立ち上げられるかを考えました。その結果として見えてきたのが、今回のYEPを特徴づける「4つのひらき方」です。今年のYEPにおいて、Opennessをどう試し、どう実装してみたか。そのチャレンジを振り返るための、4つの切り口に仕立てました。

1|プロジェクトがひらく

YEPでは、多くのプロジェクトが完成した状態ではなく、途中段階で展示しました。ロフトワークの仕事を、成果物として見せるのではなく、プロジェクトそのものをひらいてみる。何を考え、どんな試行錯誤をしているのか。そのプロセスを共有することで、展示は説明の場ではなく、対話のきっかけとして来場者と様々な話が飛び交いました。

マテリアルチームで取り組んだプロジェクト

2|パートナーとひらく

YEPは、ロフトワークだけのイベントではありません。今回は、他の企業やクリエイターによる展示や参加もあり、さまざまな立場の人たちが同じ空間に集いました。クライアント、企業、自治体、アーティスト、研究者、そして家族や子どもたち。「いつものメンバー」に閉じないこと。それぞれが自分の立場のまま混ざり合うことで、この場は成立していました。

ムーブメントチームの展示写真

3|食の体験をひらく

パーティに欠かせないもののひとつが、食です。ただ「おいしい」だけの体験にとどめず、次の関わりや会話を生み出すための装置として捉え直しました。蒸留による感覚のデザイン、分解をテーマにしたカフェバー、問いを囲むダイニング。味わうことをきっかけに、感覚がひらき、会話が生まれていく。食を通じて、場そのものをひらこうとする試みが、会場のあちこちで行われていました。

ドリンク写真

4|あそびでひらく

3階に広がっていたASOBI Parkは、「あそび」を通してOpennessを体感するエリアでした。大人か子どもかを区別せず、夢中になることそのものを肯定する。考える前に感じること、正解を探す前に試してみること。あそびを起点に、身体や感覚がひらかれていく時間が流れていました。

スライムのワークショップ写真

FabCafe Tokyo

The Power of Openness

FabCafe Tokyoで展示されたのは、「完成されたプロダクト」よりも、ひらかれた状態そのものを体現する作品やプロジェクトでした。たとえば、職人の手技や身体感覚をデジタルデータとしてアーカイブし、次の世代や異なる文脈へと手渡そうとする試み。あるいは、人の呼吸のリズムを可視化し、無意識の身体の動きに目を向けさせる装置。また、素材やプロダクトを一度分解し、再構成することで、見慣れたものの中に違和感や新しい意味を忍び込ませる作品も展示されていました。

こうした作品群に共通していたのは、「答え」を提示するのではなく、問いをひらいたまま差し出している点です。技術は誰のものなのか? 感覚はどこまで共有できるのか? プロダクトや仕組みは、どの段階で閉じてしまうのか? 来場者は、装置に触れたり、動きを眺めたり、立ち止まって考えたりする仕掛けです。

FabCafeがこれまで大切にしてきたのは、テクノロジーや表現を完成品として提示することではなく、誰かが手を動かし、解釈を重ね、次へと引き継いでいける状態でひらいておくこと。この展示では、その姿勢を作品の集合としてではなく、ひとつの態度として感じさせるようでした。展示は、2026年1月15日まで、FabCafe Tokyoでご覧いただけます。

FabCafe展示写真
FabCafe展示写真
FabCafe展示写真
FabCafe展示写真

SPCS(スピーシーズ)

やっかいものを味方に[From Foe to Friend]

SPCSは、自然や社会にひそむ「思い通りにならなさ=アンコントローラビリティ」を起点に、実験とプロトタイピングを重ねていく活動体です。パーティーでは、2026年の年間テーマ「やっかい者を味方に(from For to Friend)」のキービジュアルを展示。一見やっかいものに見えるものとの関係性を固定したまま課題解決しようとするのではなく、「なぜそれが厄介に見えるのか」「別の捉え方はできないか」を問い直しながら、関係や体験をリフレーミングする活動を実施していきます。災害や鳥獣害など、一見すると制御や排除すべき対象として扱われがちな存在を、どうすれば敵ではなく、共に生きる相手として捉え直すことができるのか、そのきっかけを提供しました。

また、会場では、2025年に実施したプロジェクトの制作物も紹介。京都府立植物園とジャクエツさんとともに制作したカケスという鳥の視点を体験するための眼鏡や、大阪森之宮エリアで進行中のUR都市機構とのまちづくりプロジェクトなど、SPCSがこれまで取り組んできた実践の一部が展示されました。

そこに並んでいたのは、完成された解決策ではありません。むしろ、「まだ答えが出ていない状態」や、「試してみている途中の思考」が、そのままひらかれています。SPCSの活動は、問題をコントロールすることよりも、問題とどう付き合い続けるかを探る営みとも言えます。

スピーシーズ展示写真

MTRL(マテリアル) 

MTRL EXPO 2025 〜未来のマテリアリティ〜

MTRLは、素材・技術・デザインを横断しながら、まだ社会に実装されていないマテリアルの可能性を探る事業部です。企業・大学・行政など多様なパートナーと協働し、研究開発の初期段階からプロトタイピング、展示、社会実装までを一気通貫で伴走してきました。

今回は、そうした日々のリサーチと実験の集積を展示。未来の気象制御、サーキュラーエコノミー、万博での展示など、スケールの大きな構想が並びました。

展示スペースでは、一着の特攻服が強い存在感を放っていました。この特攻服は、岐阜大学発ベンチャー・FiberCraze株式会社が開発した革新的な繊維素材「Craze-tex®」を用い、ファッションブランドdoubletの2025年秋冬パリ・ファッションウィークのコレクションで実際に採用されたルックのひとつです。パリのランウェイに登場した一着を、目で見るだけでなく、身にまといながら、素材の生かし方や、どうやって技術をひらいたのか? そのプロセスを感じることができます。

マテリアル展示写真
マテリアル展示写真
マテリアル展示写真
マテリアル展示写真

飛騨の森でクマは踊る(ヒダクマ)

森をひらく 〜100年先のために今できること〜

飛騨の森でクマは踊る(通称:ヒダクマ)2015年5月、森林の活用と地域経済の創出を目標に掲げ、ロフトワーク・飛騨市・トビムシが出資して生まれました。ヒダクマは、広葉樹を中心とした木材活用、木造建築、プロダクト開発、空間づくり、制度設計まで、森を起点にした多様なプロジェクトを展開して、創業10年を迎えました。

会場では、株式会社博展とヒダクマによる最新作「森と、出会う」を初公開。動く木たちがかわいいこの作品は、広葉樹のそれぞれの個性に合わせた形・動きで見る人を楽しませてくれました。動く様子は、こちらからご覧いただけます。

ヒダクマ展示写真

「森と出会う」博展×ヒダクマ

ヒダクマ展示写真

法政大学山道拓人研究室×ヒダクマによる作品紹介も。飛騨合宿のアイデアから製作したベイブレード的な木の駒やジェンガを展示した。 写真提供:ヒダクマ

Aru Society(アルソサエティ)

Aru Bar

Aru Society は、百年先を見据えて、リサーチツアーやコモンズ会議を行いながら、様々な企業や研究者や実践者の方々と共に、持続的な都市の在り方、ビジョナリーな価値の創造について考えるプロジェクトです。最先端のテクノロジーやサイエンス、アート、デザインなど多様なクリエイティブな視点を交錯させながら、共に在る未来、社会とは何か?を問い続けていくことが、Aru Societyのミッションです。

YEPでは、花人・杉謙太郎さんによる花たてと、自然と人が共に共鳴しながら生み出されたナチュールワインとともに、これまでの活動と来年度に向けた構想 “Flow Design Accelerator”の発足について共有しました。森の水が地下を通って川になり、人の営みを潤すように、企業・行政・地域の取り組みを「流域」という一つの循環の中で再設計する「ネイチャーポジティブ×新しい資本主義社会」の実践モデルを描きます。賑やかなフロアの中にありながら、ゆっくりと対話が生まれる場所。未来の話を、静かに続けていくための余白がありました。

アル展示写真
アル展示写真
アル展示写真

ASOBI Park

3階に上がると、空気が一気にやわらぎます。ASOBI Parkと名付けられたこのフロアは、「あそび」を起点にしたエリアです。オフィスの間仕切りを取り払い、人工芝が敷かれた空間は、まるで公園のよう。今年のYEPのテーマである「Openness」に対する、ASOBI Parkなりの答えは、心がいちばん自然にひらく瞬間、「遊ぶ時間」をつくることでした。

会場には、ブロックを使った遊びや、プログラミングに触れられる体験が点在します。子どもが夢中になって手を動かす横で、大人も役割や時間を忘れてつい本気になる。 空間全体には、あそび環境で未来をつくる会社・ジャクエツから提供された知育玩具「B-Block」が散りばめられています。それは単なる装飾としてだけでなく、大人と子どもの境界線を溶かし、誰もが直感的に体験を楽しめる仕掛けとして、場そのものをやわらかく編み上げています。

ASOBI Park写真
ASOBI Park写真
ASOBI Park写真

「子どもだから」と手加減するのではなく、一人のクリエイターとして向き合う姿勢を大切に。たとえば、スライム料理研究家のALISAさんによる、クッキングをするようにスライムをつくるワークショップ。お菓子づくりとスライムづくりを掛け合わせたこの体験では、子どもたちの「好き」がそのまま創造性として生かされていました。

スライムワークショップ写真

ゆえんユニットは、地域に息づく文化や産業、人の営みを起点に、その土地ならではの価値を編集し直すチームです。YEPでは「ようこそ、五感でめぐる地域の世界へ。」と題し、地域の魅力を視・聴・嗅・味・触の五感で体験する展示を行いました。

会場には、香りのガチャポン、触感素材を使った体験、味覚を通じたコンテンツ、AIを使った作曲体験などが点在します。子どもには直感的な驚きを、大人には思考の入口となる気づきを届ける構成です。知識を一方的に伝えるのではなく、体験を通して「地域って、こういう捉え方もあるんだ」と感じてもらうことを大切にしていました。

ゆえん展示写真
ゆえん展示写真
ゆえん展示写真
ゆえん展示写真

LAYOUT(レイアウト)

分解BAR

LAYOUTは、空間の設計と運営を通して、場の可能性をひらく事業部です。オフィス、共創施設、展示空間、都市の余白など、ハードとしての空間だけでなく、そこに集まる人や関係性、運営の仕組みまで含めてデザインしてきました。

「分解BAR」は、今のLAYOUTの考え方を象徴する実践です。完成された空間を見せるのではなく、あえて分解し、配合前の状態を可視化しています。飲み物や什器、コーヒーコンポストといった要素を通して、都市やプロジェクト、LAYOUTが運営してきた共創施設がどのように組み立てられているのかを、身体感覚で捉える場がつくられていました。

レイアウト展示写真
レイアウト展示写真
レイアウト展示写真
レイアウト展示写真

AWRD(アワード)

AWRDは、企業や自治体が抱える課題を「公募」という形でひらき、世界中のアントレプレナー、企業、プロジェクトそしてクリエイターとつなぐ共創プラットフォームです。アート、デザイン、テクノロジーなど多様な分野のプレイヤーが参加し、アイデア募集にとどまらず、メンタリング、展示、プロトタイピング、社会実装までを伴走してきました。ロフトワークの事業において、AWRDは「外部性」を戦略的に取り込むための重要なメソッドです。

社内や既存ネットワークだけでは生まれにくい視点や発想を混ぜることで、プロジェクトの質そのものを変えていく。2026年スタート予定の公募「RED SPACE MUTATIONS」もまた、その思想を体現する試みです。

「RED SPACE」とは、電話ボックスやガソリンスタンド、公衆浴場など、かつては社会を支えていたものの、役割を終えつつある空間のこと。「不要になったインフラ」ではなく、次の使い方を待っている未完の資産として捉えられています。「RED SPACE MUTATIONS」は、そうした空間を再評価し、変異(MUTATION)を促すためのプロジェクトです。

アワード展示写真
アワード展示写真

MVMNT(ムーブメント)

THE MVMNT STUDIO

MVMNTは、「20XX年の伝説を創造する」というコンセプトを掲げ、現代社会に新たな世界線を生み出すスペキュラティブデザイン・ユニットです。 課題を解決することよりも、問いを立て、仮説を可視化し、他者とともにまだ存在しない現実を試作すること。

会場では、これまでに取り組んできたプロジェクトのアーカイブが、映像や体験として展示されました。アイヌ文化と阿寒湖の自然を巡るアートの祭典「阿寒アイヌアートウィーク」、宮崎県延岡市でのタテ型ショート動画共創プログラム、東京に暮らす今の人びとの暮らしぶりを3Dデータでアーカイブしていくプロジェクトなど、地域やテーマも異なる実践が並び、まるでスタジオの内部を覗き込むような構成になっています。

SFプロトタイピングから生まれた未来プロダクトの展示や、プロジェクトの問い・アプローチ・その先に描かれる未来像を示すキャプションは、MVMNTがどのように思考し、どのように実験を重ねてきたのかを、そのまま可視化するものでした。

ムーブメント展示写真
ムーブメント展示写真
ムーブメント展示写真
ムーブメント展示写真

Creative Div. × FabCafe Osaka

Creative Dining

クリエイティブ ディビジョンとFabCafe Osakaによる「Creative Dining」は、食とドリンクを通じて対話をひらく試みです。ここで提供されていたのは、単なる飲み物ではありません。ドリンクは、会話を始めるためのきっかけであり、思考を混ぜるための媒体です。

「花間」と名付けられた場所では、オリジナルドリンクを片手に、来場者は自然とテーブルを囲み、「問い」を起点にした対話へと誘われます。飲む、話す、聞く。その繰り返しの中で、考えが少しずつひらいていく時間でした。話に花が咲いたら、天井から吊るされたオアシスに花をさしていきます。

クリエイティブ展示写真
クリエイティブ展示写真
クリエイティブ展示写真
クリエイティブ展示写真

会場で提供されたドリンクは、ジャージーミルクの特性を生かしてFabCafe Osakaのカフェマネージャー 福田が考案したスペシャルドリンクを提供。生乳は脂肪分が高く、バターやクリームへ加工されることが多い一方で、バターやクリームを生み出す過程で生まれる、脂肪分を取り除いたあとのローファットミルクは、利用先の制限や付加価値の低さなど、「頭を悩ませる副産物」として扱われることも少なくありません。

当日提供されたドリンクは、ローズとローファットミルクを合わせた、香りとコクの重なりを楽しむ薔薇ミルクティー。抹茶の苦味、ミルクのまろやかさ、ウイスキーの奥行きが層をなす抹茶ミルクウイスキーなど、ここでしか味わえない一杯を提供しました。

FabCafeドリンク写真
FabCafeドリンク写真
FabCafeドリンク写真

NINE(ナイン)

芸術祭とアート事業部のつくりかた

NINEは、多様化・複合化するアートプロジェクトにおいてキュレーターが描くアイデアとビジョンを現実世界に展開し、それを美しく開花させるための先進的なマネジメントの仕組みを提供をする事業体です。

現代美術を核としながら、展覧会企画、パブリックアートの設置、美術館運営など幅広く活動するエヌ・アンド・エー株式会社とロフトワークによる合同事業体です。アートが持つ「問いを立て、未来を描く力」「共感を紡ぎ、対話を生む力」を企業の戦略や社会課題解決に組み込み、ビジョン構想から実行・運営までを一貫してデザイン&マネジメントします。

今回の展示では「芸術祭とアート事業部のつくりかた」と題し、芸術祭の実施プロセスやアート事業部構想にまつわる2つの展示を再構成したほか、各展示でキーとなった生成AIによる芸術祭とアート事業部の構想ツールも展示。完成した成果物ではなく、思考のきっかけをひらくことで、アートがどのように地域や組織、そして企業をひらいていくことができるのかを共有しました。

ナイン展示写真

2025年は、ロフトワークだけじゃない!

「Openness」がテーマなら、パーティを手がけるのはロフトワークだけでなくてもいいのではないか?! そんな問いから、今回のYEPでは、協働している企業やパートナーにも出展者として参加してもらいました。

三谷バルブは、エアゾールバルブやディスペンサーポンプの技術をひらき、新たな用途や可能性を来場者とともに探る展示を実施。timespaceは、感性を起点に目的地を提案するアプリの体験展示を通して、テクノロジーと感覚の新しい関係性を提示しました。コクヨ株式会社のヨコク研究所とは、未来社会のオルタナティブを研究・実践する取り組みの一環として制作した冊子を紹介しました。

ロフトワークだけで完結しないこと。外部の視点や実践を混ぜることで、場そのものをひらいていく取り組みの一例を紹介しました。

展示写真

「OPENNESS」を、キャラクターとしてひらいてみる?

会場を歩いていると、あちこちで目に入ってくる、丸い目をした不思議な生きものたち。今回のパンフレットやサイン、展示のそば、会場のあちこちで、ひっそりと見つめるキャラクターたちは、アーティスト・SUKOTAさんとのコラボレーションによって生まれました。

いろとりどりの小さな生きものたちと共に、会場や誌面で生き生きと遊び回る2人のキャラクター「OPE(オープ)」と「NESS(ネス)」、そして周りの「minis(ミニズ)」が生まれました。彼らがいることで、パーティーの楽しさはもちろん、ロフトワークのメンバーたちの遊び心も、よりひらかれたような気がします。

キャラクターのエントランスサイン
キャラクターのエントランスサイン
キャラクターのシール写真
キャラクターが彩る空間
キャラクターが彩る空間
キャラクターのネイル
キャラクターのスカーフ
キャラクターが彩る空間

京都でも、1年の終わりに「こんばんは」

京都会場では、普段お世話になっているクライアントやクリエイター、さらにはご近所のみなさんも招き、YEP京都を開催しました。当日は170名を超える来場者が集い、あちこちで久しぶりの再会や新しい出会いが生まれ、自然と次の年に向けた企みが立ち上がっていく時間となりました。

ロフトワーク KYOTO BRANCHは、関西拠点として少人数ならではのフットワークを生かしながら、実験的な取り組みから大規模な変革まで、振れ幅のある挑戦を続けています。京都と大阪にFabCafeを構え、企業や大学との共創プロジェクトに加え、SPCSAru Society、そしてロフトワーク京都から南へ徒歩2分の場所にあるプロジェクトスタジオ「なはれ」など、活動の射程は年々広がっています。

今回のYEP京都では、そうした2025年の活動をまるごと「ひらく」展示とコンテンツをお届けしました。

京都の展示写真
京都の展示写真
京都の展示写真
京都の展示写真

FabCafe Kyoto は、2025年で10周年を迎えました。会場では、この1年に行われたワークショップや展示を振り返るアーカイブ展示を実施。好評を博したワークショップ「カレーうどんをすすって飛び散ったシミを刺繍にしよう」で制作されたTシャツは、どうしたって可愛くならないカレーうどんの染みを、デジタル刺繍ミシンを使ってあえて装飾として生かすこの試みです。

日本初のコミュニティ型こどもホスピスTSURUMIこどもホスピスとの取り組みも展示。レーザーカッターを使った制作ワークショップで「つくる」ことを一部の人の専門行為に閉じず、誰もが関われる体験としてひらくことを実践。ケアの現場においても、創造性がそっと息づく余地をつくる取り組みとして紹介されました。

京都の展示写真
京都の展示写真

フードは、カラフルな手毬寿司や、100%コーンの自家製トルティーヤ、京野菜をたっぷり使った自家製サルサが評判の「ドス・タコス」によるタコスを提供。京都・八坂を拠点に神出鬼没で活動するドス・タコスですが、この日はYEP京都のためのスペシャル出店です。会場で焼き上がるタコスから立ち上る香ばしい匂いに誘われ、食べる・飲む体験が場をひらく装置となります。

タコスを作っている写真
タコスを作っている写真

YEP京都の締めくくりを飾ったのは、FabCafe Kyotoの人気イベント「こんばんは寄席」。企画を手がける落語家の桂枝ノ進 さんが登場しました。この日、普段はくつろぎの場である畳の間が、あっという間に舞台へと変わります。歓談していた来場者も、枝ノ進さんの力のある語り口に引き寄せられ、自然と畳に集まり、「こんばんは」と声を交わしながら席に着きました。

こんばんは寄席」は、FabCafe Kyotoのレジデンス企画「COUNTER POINT」から生まれた取り組み。枝ノ進さんの「落語の間口を広げたい」という思いから始まった小さな落語会は、今では多くのファンを持つ人気イベントへと成長しています。枝ノ進さんは、次世代の表現者が集う実験的拠点100BANCHにも入居しロフトワークと縁が深いクリエイターで、30歳未満の若い才能に光を当てるアワードとして『Forbes JAPAN』が選ぶ「2025年注目の若手」にも選出されました。

年の瀬にふさわしい演目が披露され、会場は笑いに包まれながら、穏やかに夜が更けていきました。

寄せをしている写真

淡水と海水が混じり合うエコトーン(汽水域)には、生息地の異なる存在が出会い、思いがけない関係が生まれます。そこには、豊かさも、にごりも、ゆらぎもある。だからこそ、新しい芽が立ち上がる余地があります。

「ひらくこと」は、未来の選択肢をふやし、想像を超える出会いを生むことへとつながります。この一日で生まれた対話や問い、笑い声や、手触りが、来年のプロジェクトのどこかで、別の形に育っていくはずです。

執筆:宮崎真衣、葉山いつは(ロフトワーク)
撮影:川島彩水

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