デザイン学部の公開講座「デザインレクチャーズ」に講師登壇

京都精華大学デザイン学部の公開講座「デザインレクチャーズ」に、2018年10月19日、ロフトワーク京都の木下と上ノ薗が講師として登壇しました。

さまざまな角度からの視点を捉えることで新たな発想が生まれ、思考の可能性が広がることを期待し、通期にわたり毎週開催されている本講座。建築家や写真家、イラストレーターなど、さまざまなものづくりに直接関わるプロフェッショナルが講師として登壇しています。

講義テーマはコミュニティと場づくり

木下と上ノ薗は、MTRL KYOTOで企画した多くのイベントや展示会などの経験と、それぞれのバックグラウンドを踏まえ、「場づくり」をテーマに、コミュニティ運営の実践者という立場から授業を行いました。

冒頭で「コミュニティという言葉を日本語で説明できますか?」という問いかけから始まった授業。続けて「場づくりを英語で説明できますか?」という質問が投げかけられましたが、いずれも手が挙がりません。「コミュニティ」という言葉も「場」という言葉も複合的な意味を持っていて、環境や文脈、話す主体によって意味が変わります。それらの言葉を使う時に、もう1段階整理して言語化することが大切だというメッセージを投げかけました。

MTRL KYOTO マネージャーの木下。カフェ、アートギャラリーのマネージャーを経て、廃校活用施設「世田谷ものづくり学校」では学校や自治体を巻き込んだ企画を多数手がける。MTRL KYOTOのマネージャーになった今も一貫して地域や専門領域を超えて交流や創発を促す「媒介」となるべく活動している。

「誰のための?」という視点

今回の講義のタイトルは、「“場づくり” は誰のもの? – MTRL KYOTOの活動事例を通して」。一口に「コミュニティ運営」といっても、目的や背景、関わる人などによりその形態は様々。「誰のためのコミュニティなのか」という視点は常に不可欠です。コミュニティに関わる人たち全員がいつもポジティブかつ自由な気持ちでいられる状態はどう作り出すことができるか。コミュニティ運営者ならではの経験と実感に基づく仕組みとコミュニケーションのデザインを、過去に携わってきた事例とともに紹介しました。

建築設計からイベント運営、アートプロジェクト等幅広い業務に携わってきた上ノ薗。ロフトワークでもディレクターとしてクライアントワークを行いながら、多岐に渡るイベントやコミュニティを企画・運営している。

「選択肢へのアクセシビリティ」のデザイン

講義では、コミュニティが自立・自走するための条件として、以下を挙げました。

・風通しがよい
・ルールで縛りすぎない
・個人が尊重される
・想定外の出会いへの予感がある

一見当たり前で簡単なことのようですが、実際にこれらが機能するためには、ハード・ソフト両面において、円滑なコミュニケーションを妨げない仕組みのデザインが行き渡っている必要があります。コミュニティに関わる人たちが主体的で積極的でいられるための「仕組み」とは、「選択肢の可視化」と「選択肢へのアクセシビリティ」。オンライン/オフラインいずれのコミュニティ運営にとっても応用可能なアプローチとして、その考え方と実践についてお伝えしてきました。

講座を終えて

1時間半の講義を終え、参加者からは「普段とは違う視点から考えるきっかけになった」、「今取り組んでいるプロジェクトで悩んでいることへのヒントがあった」などの感想をいただきました。

今回の講義で木下と上ノ薗が伝えたことは、これまでの様々な経験から実感していることや日々実践していることです。「コミュニティ」という一見耳障りの良い言葉には、多くの意味を含む余地があり、扱いが難しい一方で、イノベーションにはコミュニティが大きな役割を担っているのも事実です。

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誰のためのコミュニティなのか、そしてそれを機能させるためにどんな仕掛けを作るのか。「コミュニティ」という言葉の解像度を高め、設計する大切さを伝える講座となりました。

公開講座「デザインレクチャーズ」(2018年後期プログラム)概要

会期:2018年10月12日〜2019年1月18日(毎週金曜日18:00-19:30)
会場:京都精華大学対峰館T-109
参加費:無料 ※一般参加可能
主催:京都精華大学
詳細:http://www.kyoto-seika.ac.jp/info/event/event/#2018

木下 浩佑

Author木下 浩佑(FabCafe Kyoto ブランドマネージャー)

京都府立大学福祉社会学部福祉社会学科卒業後、カフェ「neutron」およびアートギャラリー「neutron tokyo」のマネージャー職、廃校活用施設「IID 世田谷ものづくり学校」の企画職を経て、2015年ロフトワーク入社。素材を起点にものづくり企業の共創とイノベーションを支援する「MTRL(マテリアル)」と、テクノロジーとクリエイションをキーワードにクリエイター・研究者・企業など多様な人々が集うコミュニティハブ「FabCafe Kyoto」に立ち上げから参画。ワークショップ運営やトークのモデレーション、展示企画のプロデュースなどを通じて「化学反応が起きる場づくり」「異分野の物事を接続させるコンテクスト設計」を実践中。社会福祉士。2023年、京都精華大学メディア表現学部 非常勤講師に就任。

Profile
上ノ薗 正人

Author上ノ薗 正人(京都ブランチ共同事業責任者)

大阪生まれ。九州大学芸術工学部環境設計学科卒業。大阪のデザイン事務所graf、福岡の古ビル再生プロジェクト「紺屋2023」の設計、運営を行うno.d+a / TRAVEL FRONTでの仕事を通してデザイン、建築設計からイベント運営、アートプロジェクト等幅広い業務に携わる。2014年に関西に戻り、グランフロント大阪ナレッジキャピタルの総合プロデュース室を経て、2017年にロフトワークに入社。2021年米国PMI®認定PMP®取得、2022年10月に京都ブランチ共同事業責任者に就任。自社事業のみならず、大規模プロジェクトのプランニングや、事業コンサルティングも手掛けている。社外活動として、知人が創業した会社にジョインしワークショップ事業を担当。また、2022年度に九州大学大学院芸術工学府非常勤講師の経験から、プロジェクトマネジャーのナレッジを様々な場所・形で活かし伝える取り組みを行っている。

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昨年度滞在制作作品が多数の映画祭で入賞。
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