こんにちは、ロフトワークPRの尾方です。今日はイベントのご紹介です。2019年3月からつくば市と共に取り組んできたプロジェクト「つくばサイエンスハッカソン」。研究者たちが魅了される「研究」とその「研究結果」をアートで表現することに挑んできました。サイエンスとアートの境界線が溶け、ひとつになったとき、そこには、どんな“新しい世界”が見えてくるのか。ハッカソンによって生み出された作品の展示会「TSUKUBA SCIENCE ART EXHIBITION〜つくばの科学技術とアートが出会う作品展〜」が本日5/10(金)より開催しています。

作品制作のテーマ「ホロビオント = 共生」に込められた意味。

今回のつくばサイエンスハッカソンでは、「ホロビオント(holobiont)」というテーマが設定されており、それに沿って研究者とアーティストは作品作りを進めてきました。ホロビオントとは進化論学者リン・マーギュリスが提唱した複数の異なる生物が共生関係 (symbiosis) にあり、不可分の一つの全体を構成している状態のことを表す概念。

たとえば造礁サンゴは、褐虫藻やバクテリア、古細菌、菌類が非常に複雑に相互作用するひとつのホロビオント。また、最近の研究では、人間も腸内細菌が行動や感情、意思決定にまで影響を及ぼしていることが明らかになっており、これもホロビオントの一種。これからの地球環境や健康を考える上では、生物を「個体」としてのみ見るのではなく、複数の生物が「共生」するホロビオントとして見ることが大事なのではないかという視点が生まれ始めています。

また現代では、自然や生物との関わりだけでなく、人工知能やロボットが仕事や生活のシーンに入り込んでき始めています。VRやパワードスーツのように人間の身体・認知能力を向上する試みは、人間と機械の境界線の見直しを迫っています。未来では、生物同士のホロビオントだけではなく、人工物と人間の関係もホロビオントとして捉える視点が必要になるのでは、そんな視点を投げかけることも含め、今回「ホロビオント」というテーマを設定されたそうです。

海の研究と現代アートが溶け合った「内なる海は開かれる The inner sea is opened」

今回のハッカソンでは、4人の研究者と4組のアーティストがそれぞれチームとなり、作品制作に取り組んでいます。 そのなかで今回は、尾方のおすすめの作品を1つご紹介します。

「内なる海は開かれる The inner sea is opened」

大森 裕子|筑波大学生命環境系 助教(生物地球化学、海洋物質循環)
齋藤 帆奈|現代美術作家
角谷啓太|エンジニア
大西義人|サウンドエンジニア
齋藤葉弥|映像

海をシンボルとして、私たち人間の行動と環境の相互作用を感じられることを目指した作品。

私たち人間が行う様々な文化的活動は普段、目に見えなくとも地球環境やあらゆる生物と複雑に絡み合い相互に影響し合っています。これらは海でも同様で、例えば人間の活動により、大気中に放出された二酸化炭素が海に吸収されることで引き起される問題として「海洋酸性化」が指摘されているそうです。ただ、それらの因果関係はとても壮大で、私たちが普段の生活の中で実感するには難しい。

この作品の面白いところは、そのような、普段感じられない因果関係を来場者のインタラクションによって変化する音や光を使って表現している点です。

来場者が部屋に入り、中央に置かれた器に液体を入れると、海の環境悪化の指標である「PHの酸性化」「水温上昇」「酸素濃度の低下」に変化が起こり、それよって、部屋の中にあるアイテムや流れる音に何らかの変化が起こります。自分行為によって海の環境に変化が起こり、それらが何らかの形で私たちが体感できるものに戻ってくるという循環を一つの部屋の中で感じることができます。

みなさんも是非、作品を通じて「自分の行為が何らかの形で世界とつながっていること」を感じてみてください。

他にも、キリンの研究、ソフトロボット学、古代生物学をアートで表現。

キリンの首の構造と動きの仕組みについて研究を行なっている郡司 芽久氏とアーティストグループGADARAのチームが制作した「Mammalianism Light」。ソフトロボット研究者である望山 洋氏とメディアアーティストであるくろやなぎてっぺい氏のチームが制作した「Dying Robots」。古生物学者の芝原 暁彦氏とスペキュラティヴ・ファッションデザイナーの川崎 和也氏のチームが制作した「全滅する気がないなら、交雑せよ An Invitation to Assimilation, if not Annihilation」も展示。ぜひ様々な研究とアートが溶け合い生み出された世界観を会場で体験してみてください。

全滅する気がないなら、交雑せよ An Invitation to Assimilation, if not Annihilation
Mammalianism Light
Dying Robots

イベント開催概要

開催日時
2019年5月10日(金)~2019年5月19日(日)
10:00-18:00(最終日の5/19は16:00閉館)
会場
さくら民家園
〒305-0031 茨城県つくば市吾妻2丁目7番地5(中央公園内)
入場料
無料

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