京都・東本願寺の庭園「渉成園」の茶室にて「生物多様性」をテーマにしたグループ作品展と茶会を開催。
FabCafe Kyotoは、生物多様性をテーマにしたグループ作品展示および茶席イベント「Multispecies’ Tea Ceremony 一服と十人による庭園の解釈」を、2023年4月15日(土)と22日(土)の2日間、京都市下京区にある東本願寺の飛地境内地の庭園である渉成園の茶室「代笠席(たいりつせき)」で開催します。本企画は、「宗祖親鸞聖人御誕生八百五十年・立教開宗八百年慶讃法要」期間中の参画企画として実施いたします。
イベントは慶讃法要中に開催されるため、夜のライトアップなど、さまざまな企画が実施されます。渉成園の代笠席は、通常は非公開の茶室のため、この貴重な機会にぜひご参加ください
茶会で提供されるのは、キノコのお茶や蛾の糞のお茶をはじめ3種類の多様なお茶。また、茶室の内外には、生物多様性という軸で庭園を鑑賞する仕掛けとして、10点の作品が展示される予定です。総合芸術でありコミュニケーションの場である茶席において、生物多様性の美しさを五感で体験しようという稀有な茶会。ぜひお誘い合わせのうえお越しください。
会場となる渉成園は、人間と人間以外の生物の居心地の良さのバランスを取りながら、常に新しい「美しさ」を提案している庭園です。仏教の教えでもある多様性を庭で実直に実践する植彌加藤造園(うえやかとうぞうえん)の庭師によって、生物多様性に配慮した庭園管理が実践されています。
生物多様性の問題に「創造的活動」で向き合う重要性
環境のバランスを保っている生物多様性。しかし、生物の絶滅スピードは1970年代から加速し、たった30年間で全生物の68%が絶滅。今も1日100種類以上の生物が絶滅しつづけているといいます。
地球環境の問題の中で、温暖化と並んで生物多様性の問題は年々深刻になっており、人間以外の生物との共生という観点から、経済活動を再構築していく必要が急速に高まっています。
一方で、自然保護が目的では人間の行動は変わりません。人間のニーズを充足させながら、いかに生物多様性を再構築するか? そのためには、それまでの経済活動では不具合やエラーとして捉えられていたことを肯定的に受け入れ、人間活動にとっても気持ちの良い状態をデザインする必要があり、領域横断で創造的に試行錯誤できる場が必要です。
FabCafe Kyotoは、イノベーションと未来のエコシステムをプロトタイプする場です。生物多様性の課題に取り組むべく、2022年9月にSPCS(スピーシーズ)という領域横断型コミュニティを立ち上げ、「自然のアンコントローラビリティ(操作不可能性)」を探るアプローチをはじめました。
SPCS|自然のアンコントローラビリティを探究するコミュニティ
マイクロバイオーム、放射線、ウィルス、細菌。コントロールできない自然の力は、厄介者やエラーと扱われることも多く、多くの排除や操作がおこなわれてきました。しかし、人間が操作できない生物のパワーをいかにポジティブに捉え直し、遊び、クリエイティブに生かす器をデザインできるかが、これからの活動のポイントとなってくるでしょう。
SPCS(スピーシーズ)は、プロトタイピングしながら自然のアンコントローラビリティを探究する活動体です。自身の好奇心や課題感と自然のメカニズムをリンク・身体化させ、価値観や手法をアップデートさせるべく、領域横断の実験を行っています。
アプローチ1 : 庭師の追体験から生まれた10名の「生物多様性の美しさ」の提案
2022年12月〜2023年1月にかけて、渉成園の庭師の活動を追体験するSPCSのプログラムが行われました。デザイナー、研究者、エンジニア、アーティストなど多様な人々が参加し、その活動の結晶として、彼らが発見した「多様性の美しさ」を伝える作品を、渉成園にて展示いたします。作品は、いずれも渉成園を別の角度から鑑賞するための仕掛けやヒントが詰まっています。また茶室でお茶を楽しみながら、五感で作品や庭園を鑑賞し、交流するための場として本企画を実施いたします。
総合芸術である茶会は、お茶だけでなく、掛け軸や生花、お香など、空間全体を五感で楽しみながら、ホストとのコミュニケーションを楽しむ場です。今回、庭師の追体験から生まれた10種類の作品が茶室の内外に散りばめられます。いずれも、きらびやかな庭園の表面には現れてこない、ささやかな美しさの提案です。その形は、プロトタイプ作品として展示されているものから、言葉で提案されるものまでさまざま。当日、それらの作品をきっかけに、制作者や庭師の方々と語り、庭園を鑑賞いただくことで、庭園で行われている人間と人間以外の生命の駆け引きの面白さに触れていただければと思っています。
アプローチ2 : 鑑賞のための「身体を開く装置」としての茶室
茶席にはたくさんのルールがあります。これは、制約を設けることで空間への没入を促し、茶室に入るまでの活動を一度リセットすることで、インプットする身体を準備するためだと、茶人の中山福太郎さんは話します。
時に鑑賞はとても難しい行為です。鑑賞者の日常と一見文脈が繋がらない作品に反射的に体が閉じてしまったり、作家への敬意と自らの中に生まれる自由な思考がぶつかりあったり、あるいは、空間に飲まれて思考停止してしまうこともあるかもしれません。
今回は、新しい茶席の形を提案し続けている、茶人の中山福太郎さんに監修いただくことで、庭園や作品を鑑賞するための「身体を開く装置」として茶席を実施します。
アプローチ3 : 常識に囚われない3種類の「お茶」の体験
会期中、渉成園の茶室にて催す茶席は、生物多様性の美しさを五感で体験し鑑賞することが目的です。そこで、提供するお茶は抹茶ではなく、それぞれ異なるホストから提供します。コーヒー、きのこから作られた「菌茶(Fungicha)」、そして蛾の糞から作られた「虫秘茶(ちゅうひちゃ)」です。いずれも異なるストーリーを持つ飲みものを楽しみながら、身の回りの風景をいつもと違った角度から鑑賞してみてください。
菌茶(Fungicha)
Fungichaは、ゲルゲイ・バルナと、トマ・オルティスの2人によるプロジェクトで、野生のキノコを採集・培養し、お茶として飲むことで自然との新たな繋がり方を実験しようというプロジェクト。日本に自生する野生のきのこは4000種以上とも言われていますが、私たちが一般に食用としているのはたった10種類程度。生態系において分解者として不可欠な役割を果たすキノコを通して、生態系を身体化しようとしています。
虫秘茶(ちゅうひちゃ)
虫秘茶とは、植物の葉を食べた蛾の幼虫(いわゆるイモムシ・毛虫)の“糞”をお茶にしたもので、京都大学の丸岡毅さんによって開発されました。虫秘茶の香りや味は、掛け合わせる植物と虫の種類により劇的に変化します。植物の持つ香りが強く引き出されるもの、もととなる植物からは想像もつかない香味をもつもの、どこかで覚えのあるような味がするもの、これまでのお茶にはないまったく新しい味をもつものなど様々。2023年に実施したクラウドファンディングでは300%で成功し、商品化に向けた準備も大詰めを迎えています。
Mikafi
Mikafi焙煎プラットフォームは、農家、地元企業、自然をテクノロジーでつなぐことで、コーヒー焙煎のサイクルを民主化しようとする活動。このデジタルサービスのエコシステムには、完全自動のIoT焙煎機、コーヒー管理プラットフォームだけでなく、消費者のための物理的およびデジタルコーヒー体験が含まれています。今回は、コーヒー文化の新たな可能性を模索するためスイスから初来日します。Mikafiは循環型経済をデザインするプロジェクトやアイデアを世界から募集するアワード「crQlr Awards (サーキュラー・アワード)2022」で受賞作品に選出されています。
開催概要とプログラム
- イベント名
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「Multispecies’ Tea Ceremony 一服と十人による庭園の解釈」
- 開催日
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4月15日(土)
13:00-14:00 珈琲茶会Ⅰ
14:30-15:30 珈琲茶会Ⅱ4月22日(土)
11:30-12:30 虫秘茶会Ⅰ
13:00-14:00 虫秘茶会Ⅱ
15:00-16:00 菌茶会Ⅰ
16:30-17:30 菌茶会Ⅱ - 定員
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各回5名
- 参加費
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1,500円(※別途、庭園受付にて庭園維持寄付金500円をお願いしております。)
- 会場
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渉成園 代笠席(京都府京都市下京区東玉水町)
- 主催
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FabCafe Kyoto / ロフトワーク
- 協力
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真宗大谷派(東本願寺)、植彌加藤造園株式会社、株式会社ノムラメディアス
SPCSで注目している“マルチスピーシーズ(複数種)”とは?
本イベント名に含まれている「Multispecies(マルチスピーシーズ)」とは、近年、人間中心的な経済活動による地球環境の悪化と再構築の必要性が、デザイン・文化人類学・生物学・経済学など、あらゆる分野から指摘されており、そのひとつとして「マルチスピーシーズ」という考え方で主張され始めています。
たとえば、総合地球環境学研究所のChristoph Rupprecht 元・総合地球環境学研究所上級研究員(現・愛媛大学社会共創学部環境デザイン学科准教授)らによる19人の研究者からなる地球研を中心とした学際的チームが「グローバル・サステナビリティ」誌に掲載した論文”Multispecies Sustainability”では、人類のためのウェル・ビーイング(well-being、幸福・良き生)の課題を指摘したうえで、マルチスピーシーズに基づく持続可能性の新しい概念を提言しています。
今回の企画では、人間以外のさまざまな生物の視点から環境を捉え直すという点で、マルチスピーシーズな視点を得る機会としたいという想いをこめてタイトルに据えました。
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