ロフトワークのロゴ

あけましておめでとうございます。
ロフトワークは2026年、創業から26年を迎えます。これまでの歩みを振り返るなかで、私たちが一貫して大切にしてきた価値が、改めて見えてきました。それが「ひらくこと(Openness)」 です。

「ひらくこと」は、未来の選択肢をふやし、想像を超える出会いを生みます。同時に、少しだけめんどくさい行為でもあります。初めてのアイデアや方法にとまどったり、考え方の違いが衝突として現れたりすることもあるでしょう。それでも、ひらき続けることの先にこそ、一人では辿り着けない未来が立ち上がると、私たちは信じています。

ひらくことは、淡水と海水が混じり合う 「エコトーン(汽水域)」 をつくることに似ています。異なる生態が接続されるその境界には、思いもよらない創造のヒントが潜んでいます。ロフトワークのプロジェクトは、まさにそのエコトーンのように、企業・行政・研究者・クリエイター・生活者など、多様な背景をもつ人々がともに未来を考え、実装する場です。新たな一年の始まりに、あらためて「ひらくこと」を問い直し、未来に向けてどのように拡張していけるかに挑戦していきます。

これからの未来に向けて、ロフトワーク エグゼクティメンバーからのメッセージを新年のご挨拶としてお届けします。

Thinking Together

諏訪の写真

新しい年のはじまりに、少しだけ宇宙の話をさせてください。

2029年、小惑星アポフィスが地球のすぐそばを通過します。高度およそ3.2万キロメートル。地球赤道1周分より近い、天文学的には「すぐそこ」と言っていい距離。もし万が一衝突したら。都市ひとつ、あるいはそれ以上の規模で、世界は一瞬で変わってしまう。

この100年に一度の接近を、恐怖ではなく「知の機会」に変えようとする探査プロジェクトが進んでいます。ロフトワークとFabCafeも、このプロジェクトに参画しています。宇宙は、わからないことだらけ。私たちの世界も同じ。

世界には引き続き多くの課題があります。格差は広がり、毎年夏は確実に暑くなっています。AIは驚くほど賢くなり、私たち頭脳労働者が、これからどう生きていくのか、はっきりした答えはまだありません。それでも私は、世界は良くなっているし、もっと良くできると信じています。人には、創造する力があります。未知に立ち向かう勇気があり、仲間を見つけ、つながる力があります。マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏は、こう語っています。「人は往々にして、2年後に起きる変化を過大評価し、10年後に起きる変化を過小評価する。」

短期的には混乱や不安が目につくけれど、長い時間で見れば、人類は少しずつ、しかし確実に前に進んできた。私たちロフトワークは、クリエイティブの力を通して世界を変えていきます。すぐに答えが出なくても、外に開き、仲間を集い、試し、実践します。楽しく、ハッピーに、世界を少しでも良くするために。今年も、どうぞよろしくお願いいたします。

そして最後に。アポフィスは、ぶつからないはずです。どうか安心して、でも少しだけ空を見上げながら、今年も一緒に考えていきましょう。

(諏訪 光洋/代表取締役社長)

Before Knowing

寺井の写真

切実さこそが創造性の源泉である、と川喜田二郎は述べている。僕たちは結局、自分でたどり着いた答え、あるいは自分の身体を通じた経験がなければ、切実さをもって本気で行動することはできない。誰かが言った正解に合わせて動く時代ではなく、個人の偏愛や探究が大事な時代だと言う。それならば、僕たちは体験を通じて得た独自の情報をもとにした行動からしか、本当の変化は作れないのではないだろうか。

僕たちには手足がある。耳がある。肌がある。ディスプレイの前に座り、インターネットを通じて得た情報に目を凝らして、うんうん唸っていないだろうか。顔の見える相手との現場で、手足を動かして、辿々しい言葉に耳を澄まし、空気を肌で感じ取りながら、まだ誰もやったことのない、考えたことのない物事を生み出しているだろうか。

人間の感情や判断や行動は、理性の前にすでに身体によって方向づけられている。精神を変えるためには、まず身体に働きかけなければならない。安易に「知る」ということができた今、「知らない」ことが価値を持ち始めているかもしれない。

知らないからこそ感じるドキドキ。知らないからこそ起きる間違い。知らないからこそ生まれる直感。まだ何も知らなかったからこそ起きていた熱中。僕たちが、今、そしてこれから失いつつあるのは「知らない」という特別さかもしれない。世界は広いし、人も社会も多様で複雑だ。知らないところへ行こう。知らない人と出会おう。食べたことのない味を知り、初めてみる素材に触れる。

体験が僕たちの身体を通じて、新しい価値観となり、創造の源泉となる。主観と客観が分かれる以前の、直接的で純粋な経験。西田幾多郎は、これを「絶対経験」と呼んだ。インテリジェンスが飽和するこれからの時代に必要なのは、「未知」にその身体ごと飛び込む勇気と行動力、そして「分からなさ」に焦らず味わい活かす忍耐力なのだと思う。

新しい1年、僕たちはどんな「知らない」ことに飛び込み、心と身体を揺さぶられるだろうか。

(寺井 翔茉/取締役 COO)

「見えないもの」に目を向けることから、未来はひらきはじめる

岩沢の写真

「世界の半分は見えないものでできている。」そう捉えてみると、いま見えてない、気づいてないものに、大きな可能性を感じませんか?つまり、私たちが想像する以上に、多くの“見えないもの”が、これまで経済では十分に価値として扱われてこなかったとも言えます。

たとえば、育児や家事、地域活動やケア労働、自然や微生物のはたらき。こうした存在は長い間、経済の表舞台を裏から支えてきました。そして人口減少が進む今、その見えない力が知らず知らずのうちに限界を迎え、はじめて「目に見える影響」として問題がたちあがり、私たちはその重要性に向き合う局面に立たされています。

こうした背景を踏まえ、私たちが改めて大切にしたいのが、「ひらくこと」です。見えている範囲、理解できている前提の中だけで判断するのではなく、これまで光が当たりにくかった価値や視点に目を向けていく。その姿勢こそが、次の時代の可能性につながると考えています。

ひらくことは、いまの想像を超える未来を一緒につくるためのはじまりです。既存の枠組みや前提の中だけで未来を描くのではなく、その外側にいるさまざまな当事者と一緒に未来を考えてみる。すぐに理解できることだで意思決定せず、まだ言葉になっていない可能性にも、試行錯誤しながら向き合っていく。そうしたプロセスを通じて、これまで見えていなかったこと、見過ごされがちだった価値に気づくきっかけを生み出していきたい。

いまはまだ見えなくても、気づけていなくても、どこかに確かに「ある」のかもしれない。その“未来への小さな余白”を持ち続けること。それが、ひらくことの出発点であり、私たちの想像を超える未来を実現する鍵になる。そう信じています。

(岩沢 エリ/Culture Executive/マーケティング リーダー)

遠い未来ではなく、共につくる未来へ

ケルシーの写真

渋谷という常に変化し続ける都市の中で、FabCafe Tokyoはこの14年間、人々が主体的に一歩を踏み出し、創造的な仲間とともに「つくる」ことができる、信頼され親しまれる場へと成長してきました。その精神は今、2025年4月にオープンした大阪を含め、日本6拠点、世界7拠点のFabCafeへと広がっています。

私自身、フロリダのスペースコーストで育ち、ケープカナベラル(宇宙ロケットセンター)から打ち上がるロケットを見てきました。そんな背景もあり、2026年に特に楽しみにしているのが「Project Apophis」です。2029年、小惑星アポフィスは多くの人工衛星よりも地球に近い距離を通過し、地上から数十億人がその姿を目にすることができます。それは、科学や探究への想像力を世界中で共有する特別な瞬間になるでしょう。

千葉工業大学、Safecast、ロフトワーク、FabCafeが主導するProject Apophisは、宇宙を私たちの「共有された環境コモンズ」として捉え直す試みです。産学国際連携による小惑星ミッションを通じて、誰が宇宙にアクセスし、どのような責任を持つのかという問いを、世界規模で投げかけていきます。新しい年の始まりにあたり、未来を遠いものとしてではなく、私たち自身が共につくっていくものとして捉えていただけたら嬉しく思います。素晴らしい一年を、一緒につくっていきましょう。

ケルシー・スチュワート(Sustainability Executive/FabCafe チーフコミュニティオフィサー)

予定調和を超えて、関係性をつくり続ける

棚橋の写真

AIが社会インフラとして定着した現在、複雑化する世界を読み解く力がかつてないほど求められています。複雑な事象を「変数」と「因果」のループで捉えるシステム思考は、依然として強力なツールです。しかし、私たちは、精緻な地図を描くだけでは現実と問題を共有できないと自戒もします。現実の社会は固定された変数の組み合わせではなく、人間や自然、技術など多様なアクターが互いに影響し合い、関係性を書き換える動的な「生成」のプロセスそのものだからです。

システムの地図を頼りに進みながらも、現場のざわめきや小さな違和感に「注意」を凝らすこと。全体を俯瞰する「鳥の目」と、他者と共に泥臭く変化し続ける「虫の目」を行き来すること。私たちがいま大事にしたいのは、この「構造」と「生成」の往還です。システム思考がもたらす「安心」を土台にしながらも、未知なるものへ開かれる「不安」をも創造のエネルギーに変えていく。その両輪があってこそ、AI時代における真の「創造的飛躍」が生まれるのだと思います。

予定調和な未来図を超えて。あえてその構造の隙間に飛び込んで、皆さまと共に新しい関係性を紡ぎ出していきたい。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

棚橋 弘季(執行役員 / Chief Produce Officer)

未来をひらくための「場」をつくり続ける

ロフトワークには、いつでも、誰にでも、ひらかれた場があります。FabCafeやクリエイティブコミュニティなどをはじめとするオープンな場は、私たちが「クリエイティブカンパニー」として活動する上で大切にしてきた基盤のひとつです。

世界13拠点に広がるFabCafeは、それぞれが異なる文化や環境に根ざしながら、共通して「シェア」と「オープンネス」の精神を持っています。地域のクリエイターやアーティスト、職人、研究者、企業、市民が交わり、アイデアや技術を交換し価値をつくる。そこで生まれる創造性は、グローバルネットワークとつながることでさらに広がり、各地の「今」を世界の知恵として循環させています。

さらに、2025年に名古屋大学に誕生した ComoNe(コモネ)SHIBUYA QWSなどの共創空間をはじめ、複数のひらかれた場を多層的に育ててきました。そして、AWRD(アワード|挑戦を共有するためのプラットフォーム)、SPCS(スピーシーズ|自然のアンコントローラビリティを探究するチーム)、BioClub(バイオクラブ|科学・バイオと創造性が交差するコミュニティ)など、分野もスケールも異なる実践を束ねながら、領域横断のコラボレーションを生み出しています。

こうした場に共通するのは、「ひらいていること」そのものが文化であり、社会に対して機能する役割だということ。誰かがふらりと訪れ、新しい試みが肯定され、協力し合えること。ロフトワークは、これらの場を通じて、世界と地域、専門性と生活、技術と文化をつなぎ、創造的なエコトーンをつくり続けていきます。

2026年、Opennessの現在地をともに見つめる

The Power of Openness –境界をひらき、ともにつくる関係へ キービジュアル

FabCafe Tokyoでは「Openness」をテーマに、兆し(signs)から未来を語る展示プロジェクトをスタートします。ロフトワークが大切にしてきた「ひらくこと」の現在地と、これからの可能性をともに考える場として、ぜひお越しください。

>>The Power of Openness 展示概要