ニューヨーク州立大学バッファロー校建築学科 PROJECT

飛騨に滞在して伝統技術とテクノロジーを学ぶ、
NY州立大の教育プログラムデザイン

Outline

東京と飛騨を拠点に、Fabと伝統技術を体験する、学生向け「教育プログラム」

米ニューヨーク州にあるニューヨーク州立大学バッファロー校建築学科では、海外で異文化に身をおきながら学ぶ「スタディー・アブロード・プログラム」を毎年行なっています。学部、院双方から集まった学生達は、9週間をかけて日本で各地をまわりながら、日本建築や都市のリサーチを行い、終了すると単位が与えられます。

ロフトワークが運営するFabCafe TokyoとFabCafe Hidaは、このスタディー・アブロード・プログラムの東京での拠点を提供したほか、プログラムの要となった、5日間の「飛騨滞在プログラム」を企画運営しました。

プロジェクト概要

  • 支援内容

FabCafe MTRLでのオフィスシェア
日本滞在中(9週間)のリサーチ拠点としてFabCafe MTRLのコワーキングスペースを提供

プログラム設計・ディレクション
課題の企画、設計
課題「新しい組木作り」の制作サポート

飛騨古川を拠点にした、5日間の滞在プログラムの設計&実施
伝統的な木工技術と木工産業を学ぶ見学ツアーの設計&実施
飛騨の職人による木工制作体験設計&実施

3Dモデリング技術を用いたツール開発
仕口制作のツール開発

  • プロジェクト期間
    2018年6月-7月
  • 体制
    クライアント:ニューヨーク州立大学バッファロー校 建築学部 Nick Bruscia (ニック・ブルシア) 准教授
    プロジェクトマネージメント、プログラムディレクション: FabCafe  Tokyo 金岡大輝
    飛騨古川プログラムディレクション:FabCafe Hida 伊藤優子 
    コミュニケーションサポート:ロフトワーク鈴木真理子
    Fab制作サポート:FabCafe Hida 浅岡秀亮、甲斐貴大(studio archē
    テクニカルデベロップメント:堀川淳一郎(Orange Jellies

Background

ニューヨーク州立大学バッファロー校建築学科 ニック・ブルシナ准教授

「スタディー・アブロード・プログラム」を担当するのは、学生時代に日本で建築を学んだニック・ブルシア准教授。ブルシア准教授は、以前から、ロフトワークが運営するデジタルものづくりカフェFabCafe Tokyoと共同で建築に関するワークショップなどを行っていました。また、ブルシア准教授は、前年に、岐阜県飛騨市にあるFabCafe Hidaを訪問しており、豊かな広葉樹に囲まれた飛騨の環境や、伝統的な組木技術の職人さんの技術を見学していました。

今回のプログラムでは、ブルシナ教授より、昨年訪れた飛騨古川の地を再び訪れたい、そして、伝統的な組木を職人から学び、また生徒たち自身もデジタルファブリケーションと組木制作を通じた学びを行いたいと要望をいただきました。また、その学びのプロセスをFabCafe チームと一緒に0から組み立てたいと声がけいただきました。

Program Details

リサーチ拠点の提供 (FabCafe MTRL /東京・渋谷)

日本滞在中(9週間)のリサーチ拠点として、学部、院混合の12人の学生達は東京・渋谷にあるFabCafe MTRLコワーキングスペースを利用しました。生徒達は、途中他大学との合同ワークショップや、1週間のトラベルウィークで京都・広島などを旅しながら、日本建築のリサーチ及び東京のアーバンリサーチを行いました。

プログラム設計・ディレクション(FabCafe MTRL /東京・渋谷)

FabCafe Hidaでの合宿にあたり、学生たちに何を学んでほしいのか、何を学生に課すこと学びが大きくなるのかを、ブルシア准教授と一緒に考え、学生への課題を企画しました。

決まった課題は「新しい組木をデザインせよ」

日本の伝統的木工技術である「組木」と、3Dモデリングを用いた新しいデザインプロセスを融合することで、生徒達が、伝統的な工法の新たな可能性を探り、先端技術の新しい使い方を発見しすることを目指しました。

3Dモデリング技術を用いたツール開発(FabCafe MTRL / 渋谷とFabCafe Hida / 飛騨市)

ブルシア准教授は、今回のプログラムで3Dモデリング技術とセンサーを用いたジグ(治具)を作り、生徒たちの新しい組木デザインに生かしたいと考えていました。

テクニカルサポートメンバーとして、建築系プログラマーでデザイナーの堀川淳一郎さんが参加し、センサーを利用したジグを開発。3Dモデリングデータ上で作られた組木のデータを、センサーを使用して、3次元的な複雑角度でも実際に加工することができるツールを設計。

ロボットアームや複雑な工作機械、高度なオペレーション技術を必要とするのではなく、ジグを一般的なバンドソーでアタッチメントとして使用できる、安価で使いやすいフレキシブルなデザインを指向しました。

飛騨の職人の技術を学び、飛騨の木工産業を知る体験設計(FabCafe Hida / 飛騨市)

飛騨合宿のゴールの一つとして、飛騨の職人から伝統技術を学び、飛騨の木工産業の現場を肌で感じることを設定しました。FabCafe Hidaチームは、飛騨古川の職人さんたちにご協力いただき、組木づくりの実演や、木工道具の使い方を学ぶワークショップを企画しました。また、地元の木工産業の企業を訪問したほか、飛騨古川の建物や街を見学するツアーを行いました。

木工制作サポート(FabCafe Hida / 飛騨市) 

飛騨滞在の1週間前から、生徒達は3チームにわかれ、3Dモデリングを使い「新しい組木」のデザインを進めていました。FabCafe Hidaでは、デザインを実際にFabCafe Hidaにある木工工作機械で制作。FabCafe Hidaチームが木工機械の使用のサポートを行いました。

最終日には、プログラムに関わってくれた職人さんたちを招き、制作報告会も開催。報告会には、伝統を知る職人さんも参加し、3Dモデリング技術を用いて自由な発想で作られた組木に対してのディスカッションが行われました。

飛騨での宿泊(FabCafe Hida / 飛騨市)

生徒達は江戸時代から続く元酒蔵のある古民家をリノベーションしたFabCafe Hidaに宿泊しました。「建築を学ぶことは建物を見ることではない。その土地の人の文化を知りコンテキストを知ること、だから訪れるのではなく暮らすように過ごすことができてよかった」(ブルシア准教授)

Member

金岡 大輝

株式会社ロフトワーク/FabCafe LLP
FabCafe Tokyo COO 兼 CTO(事業責任者 兼 最高技術責任者)

Profile

浅岡 秀亮

浅岡 秀亮

株式会社飛騨の森でクマは踊る
ヒダクマ 木工デザイナー / Fabマスター(蔵長)

甲斐 貴大

甲斐 貴大

株式会社飛騨の森でクマは踊る
アーキテクト

鈴木 真理子

株式会社ロフトワーク
Public Relations/広報

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