三菱商事・ユービーエス・リアルティ 株式会社 PROJECT

ポートフォリオのUXベストプラクティス
日本最大級のJ-REIT資産運用会社が業界の「あたりまえ」から脱却

Introduction

日本最大級のJ-REITにふさわしいWebサイトへ

三菱商事・ユービーエス・リアルティ株式会社(以下、MCUBS)は、日本有数の総合商社である三菱商事と、世界最大級の金融グループであるUBSがスポンサーとなり設立した資産運用会社です。
ロフトワークは、MCUBSおよびその投資法人である日本リテールファンド投資法人産業ファンド投資法人、3つのWebサイトの同時リニューアルを行いました。

J-REITの草創期に設立され、新しいことにチャレンジする社風が根付くMCUBSは、日本最大級の運用資産残高を持ち、国内外の機関投資家・個人投資家から常に注目される存在です。業界のトップランナーとして期待を集める一方、Webサイトは業界内でどんぐりの背比べ。商材である物件情報が集積される「ポートフォリオ」をはじめ、投資方針・基本戦略などをより分かりやすく魅力あるものとして伝えたいという希望がありました。

Web運用にも課題を抱えていたMCUBSは、ステークホルダーとのコミュニケーション戦略の中でWebサイトが担うべき役割から見直すリニューアルプロジェクトの実施に踏み切りました。

Website URL

Challenges

ポートフォリオのUX

「ポートフォリオ」とは、保有物件情報の集積のこと。投資家やアナリストはポートフォリオを閲覧し、物件に関するさまざまな情報を得ています。投資対象物件の魅力について、実際に訪問してチェックをするともいいます。また、個別の物件に関してだけでなく、投資戦略全体についても保有する物件の傾向をみて分析が行われるそうです。
投資法人が扱う物件の種類や物件数はさまざまですが、一覧でみる/地図で見る/詳細データを見る/ポートフォリオ全体のサマリーを見る、というメニュー構成は業界共通のものとしてつくられているようですが、その中で、MCUBSはどのように、ポートフォリオの閲覧・選定のUXを高めているのでしょうか。

いろいろ眺める/さっと絞り込む

まず目につくのは、他ではあまり見られない検索軸です。
「写真から探す」「タグから探す」は、物件をビジュアルやイメージから見ていくという新たな体験を生み出しいてます。従来、立地やスペックから絞り込むのが当たり前でしたが、投資家のニーズも踏まえたこの検索軸は、物件の環境・雰囲気がわかりやすいだけでなく、物件へ期待感を高めることにも寄与することをめざし実装されました。

画面は2019年7月2日現在。

画面は2019年7月2日現在。

画面は2019年7月2日現在。

画面は2019年7月2日現在。

  1. UX / UIデザインのポイント [1]

    ユーザニーズを考慮し、検索軸は4つ設けている。2つの投資法人共通化し、実装・運用の負担軽減も図っている。
    「写真から探す」のタグは後述するワークショップで発散されたキーワードを元に作成した。

物件への関心を高め、現地へ誘導する

物件や立地の特性に言及するのは一般的ですが、MCUBSでは一部の物件で、「インプレッション」と題して、物件の運用担当者によるコメントが掲載されています。物件の現在の状況や入居テナントに関するコメントなど、物件への期待値を高めることを目的としています。
また、物件情報全体のUIも工夫されており、PCサイトでは、物件仕様を固定表示させながら、物件の大きい写真やコメントを確認することができます。

  1. UX / UIデザインのポイント [2]

    物件情報の画面例(PC)。右サイドの物件仕様はスクロールしても固定表示され参照しやすい。
    「インプレッション」は他のサイトにはあまり見られないコンテンツだ。
  2. なお、物件関連情報の更新しやすさも考慮してCMSは設計されている。

戦略と成果をグラフィカルで見やすく

過去の収益実績や運用成績を示すポートフォリオデータやトラックレコードも、投資判断において重要な情報です。大震災やリーマンショックのような厳しいマーケット環境の中でも、安定した運用を行ってきたことはMCUBSの強みです。また、これまでに取組んだ施策を伝えていくことは他社との差別化につながります。
今回のリニューアルでは、業界他社では見られないグラフィカルな見せ方に挑戦しました。
過去に周年事業として制作した冊子からエピソードを選定するとともに、各投資法人にもヒアリング。これまでの企業エピソードをグラフとともに見せる手法は担当ディレクター・デザイナー・エンジニアとMCUBSの担当者が協力し、作りあげました。他社にはあまり見られず、MCUBSらしさも感じられるコンテンツとなっています。

動きはぜひ、本サイトでみてほしい。MCUBS:HISTORY & TRACK RECORD

動きはぜひ、本サイトでみてほしい。MCUBS:HISTORY & TRACK RECORD

動きはぜひ、本サイトでみてほしい。MCUBS:HISTORY & TRACK RECORD

動きはぜひ、本サイトでみてほしい。MCUBS:HISTORY & TRACK RECORD

ESG投資、SDGsへの対応のコンテンツ化

ESG(環境・社会・ガバナンス)への取組みは投資法人の評価の一つであり、ESGの取り組みは競争力の源泉ともなります。MCUBSはJ-REIT初のグリーンボンド発行など、従来から先進的な取り組みを進めていましたが、Webサイト上ではこれを伝えきれていませんでした。
2019年2月に「ESG Report」第1号が発行されましたが、Webサイトでも「サステナビリティ」のコンテンツを新設、企業姿勢と取り組みの掲載を開始しています。レポート同様、MC-UBSグループがサステナビリティに対して、「なぜ(Why)」、「何に対して(What)」取り組んでいるか伝えるとともに、E(Environment)・S (Social)・G (Governance)のそれぞれについて、「どのように(How)」取り組んでいるかを、具体的な事例を挙げながら示されています。

適時開示システムとの連携とCMS導入による安定運用

Webサイト全体にCMS(コンテンツマネジメントシステム)が導入されておらず、制作会社に更新を依存しているために、コンテンツ更新スピードの短縮化が課題となっていた3サイト。リニューアルを機に、全体にCMS導入を行うことで、スピーディなコンテンツ更新を実現しました。

これまで外注してきた更新を社内で実施できるように

これまですべての更新を外部の制作会社に委託してきた運用体制。リニューアルを機に、社内で更新できる体制に切り替えました。以前は、更新のたびに大量のExcelやドキュメントを指示書として準備・依頼をしていましたが、リニューアル後はこの工程を自社内で更新するためのコンテンツ準備に充てるとともに、更新にかかる作業時間の削減にもつながりました。
社内システムからのデータ出力形式を考慮した設計を行うなど、Web更新経験が浅い担当者にも使いやすいシステムづくりを行いました。

グラフィカルなUIも簡易なCMS更新により実現

先ほど言及したトラックレコードやポートフォリオデータも、実はCMSで入力した数値データをもとに出力・描画を行なっています。グラフのデザインパターンも用意し、システム的に描画をすることから毎年大量のグラフ画像を作成したり、そのために全体のデザインが劣化していくと課題も回避することが可能です。

適時開示をサポートする外部システムとの連携

投資法人にとって重要な適時開示についても、従来から利用していた宝印刷株式会社が提供する「XJ-Storage」との連携を構築し、プレスリリース等の適時開示情報を即時にWeb掲載するような仕組みをつくりました。

Process

機関投資家・アナリストへのインタビューと、社内ワークショップによる設計

J-REIT業界の「あたりまえ」から脱却するWebサイトを構築するため、本プロジェクトでは社内外のステークホルダーへのインタビューを実施し、これをインプットとして社内プロジェクトメンバーが参加するワークショップを行ないました。
「あたりまえ」となっているものを発散した上で、「何があたりまえでなくなったら面白いのか」を探るワークショップを経たアイデアは、ポートフォリオのUX設計やグラフィカルな実績の見せ方に反映されています。

Member

菊地 充

株式会社ロフトワーク

Profile

村田 真純

株式会社ロフトワーク
テクニカルグループ テクニカルディレクター

Profile

木島 千加子

木島 千加子

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

長野 彩乃

株式会社ロフトワーク
マーケティング

Profile

浦田 文恭

浦田 文恭

株式会社ロフトワーク
プロデューサー

メンバーズボイス

“私たちが運用するファンドと投資家との重要な接点であるWebサイト。必要な情報は掲載できていたものの、ファンドの魅力や力を入れているサステナビリティ活動が適切に伝えられているかどうかが不安でした。特徴を持たせながらもグループとしての一体感を表現したいという「3つのWebサイトの思い」をロフトワークの皆さんと共有できたことが成功のカギだったと思っています。ワークショップで行ったファンドと運用会社の”らしさ”を追求する作業では、原点に立ち返ったような新鮮な気持ちになりました。
今後は、初めて訪れた方にも分かりやすくビジュアライズされたWebサイトに負けない実績を積み上げていきたいと思います。”

三菱商事・ユービーエス・リアルティ株式会社
企画調査・ESG推進部 ESG担当部長 庄司 愛

“今回リニューアルプロジェクトに携わる中で、改めて弊社が運用するファンドや運用会社であるMCUBSの強みや魅力を考え、メンバーと議論する機会が持てたことは非常に有意義でした。社内メンバーとは、リニューアル後のWebサイト運営でも連携を取りながら進めています。
また、J-REITは開示情報が多岐に渡り、Webサイトの関連ページの更新、修正も頻繁に発生することから、今回のリニューアルにより社内でWeb更新が可能なCMSを導入したことは、運営面の効率化にもつながっています。ロフトワーク様には保守サポートで今後もお世話になりますが、どうぞよろしくお願い致します。”

三菱商事・ユービーエス・リアルティ株式会社
企画調査・ESG推進部 津倉 仁奈

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