日建設計コンストラクション・マネジメント PROJECT

巨大建設プロジェクトを担う「人」こそブランド
2020年の先を見据えたWebサイトリニューアル

Outline

組織の「らしさ」に正面から向き合う

日建設計コンストラクション・マネジメント(以下、NCM)は、世界中の大規模な建設プロジェクトを手がける日建グループにおける唯一のコンサルティングファーム。設立から14年間、国内外で建設プロジェクトのマネジメントとあらゆる課題解決を請け負う「コンストラクション・マネジメント(CM)*」の実績を重ねてきました。

同社は、2020年以後を見据え新たに策定したビジョンとコーポレート・アイデンティティを打ち出すべく、2018年9月よりWebサイトのリニューアルプロジェクトをスタートしました。ゴールは、NCMのブランドを再定義し社内外に浸透させることでした。

ロフトワークは、NCMのWebリニューアルプロジェクトにおいて、Webサイト方針策定と構築のほか、コーポレートスローガン制作や写真撮影を支援。プロジェクトの中心メンバーである、NCM広報グループの榎本様・中田様、ロフトワーク・木島が、1年間にわたるプロジェクトのポイントと成果を振り返ります。

テキスト:吉澤瑠美
編集:loftwork.com 編集部
写真:吉田周平

左から、ロフトワーク 木島、NCM榎本様、中田様。 (写真:吉田周平)
リニューアルしたNCMのWebサイト

コンストラクション・マネジメント(CM):

建設プロジェクトにおいて、事業主の支援・代行者として、プロジェクトの運営、品質管理、コスト管理、スケジュール管理などの幅広いマネジメントサービスを提供する業務。

Story

「分かるような、分からないようなサイト」が抱えていた、5つの課題

――なぜロフトワークにお声掛けいただくことになったのでしょう?

NCM榎本様(以下、社名・敬称略):はじめは、どういう会社に依頼すれば良いかすら見当がついていませんでした。Webサイトの制作会社にお願いすれば良いのかなという程度で。グループ会社である日建設計のWeb担当者に相談したところ、「表層のデザインのことだけでなく、考え方から整理していかないと絶対良いものはできない」というアドバイスと共にロフトワークの存在を教えていただきました。

loftwork 木島(以下、木島):ロフトワークはこれまでにも日建設計日建ハウジングシステムNIKKEN ACTIVITY DESIGN lab のサイトリニューアルをお手伝いさせていただいたんですよね。

榎本:今にして思えば、私たちの課題は「自分たちのことを分かっていない」ことでした。「これができます」は言えるのですが、ユーザーが何を求めているのかを客観的に捉えられる人が少なかったんです。

NCM中田様(以下、社名・敬称略):以前は「我々はこれができます、あれができます」がたくさん書いてあるWebサイトでした。プロジェクトのはじめに、木島さんから「お客さんが何を求めているか」というところから考え直さないと確かなメッセージを伝えられないのでは、と指摘されましたよね。

木島:以前のサイトを調査していたときに「分かるような分からないような、この感覚は何だろう」と感じました。そこで、新しくつくるサイトでNCMの強みや魅力をよりわかりやすく訴求するために、まず、プロジェクトで取り組む5つの課題を定義しました。

木島:特に「1. NCMらしさが体現されていない」は、ブランディングに関わる本質的な課題でした。要件定義フェーズでは「NCMらしさとは何か」「どうあるべきか」を言語化し施策に落とし込むために、社内向けのワークショップを設計・実施しました。

現場から社長まで巻き込み、自社の価値を言語化

――社内ワークショップは、どのような内容でしたか。

木島:社員のみなさんと一緒にサイトを利用する3つの具体的なユーザー像を定義し、自社とユーザー双方の視点から「NCMはどういう価値を提供できるのか」を整理しました。

中田:私と榎本は別の社内プロジェクトでもチームを組んでいたので、向いている方向性はほとんど同じ。新しい視点を取り入れたくて、さまざまな立ち位置の社員…活躍が目覚ましい若手メンバーからベテラン層、違う業界から転職してきたばかりのメンバーなどにも参加してもらいました。

社内ワークショップを通じて、「ユーザーに対するNCMの価値は何か」「ユーザーに対してNCMはどうありたいのか」を言語化。

社内ワークショップを通じて、「ユーザーに対するNCMの価値は何か」「ユーザーに対してNCMはどうありたいのか」を言語化。

社内ワークショップを通じて、「ユーザーに対するNCMの価値は何か」「ユーザーに対してNCMはどうありたいのか」を言語化。

社内ワークショップを通じて、「ユーザーに対するNCMの価値は何か」お互いの関係はどういうものなのか」「ユーザーに対してNCMはどうありたいのか」を言語化。

NCM・水野社長は、「夢を共有できる相手でありたい」という言葉でワークショップを総括。

NCM・水野社長は、「夢を共有できる相手でありたい」という言葉でワークショップを総括。

中田:ワークショップの結果は狙い通り、とてもフレッシュかつ多様な意見が出てきました。「迷ったときに聞けば導いてくれる、お客様にとってのGoogleみたいな存在でありたい」という名言も出ましたね。

木島:出てきたキーワード以上に、背景にある社員ひとりひとりの思いを伺えたのが良かったです。ワークショップを通じて、「CM会社」や「日建グループ」としてよりも、「この人たちにお願いしたい」と思われる存在でありたい。そう感じてもらえるようなコミュニケーションを目指すという大方針がまとまりました。

榎本:ワークショップは、社長にも参加してもらいました。ひとつには、経営層の考えていることを聞きたかった。また、プロジェクトの最初の段階から参加してもらうことであらかじめ認識をすり合わせて、最後に大きくひっくり返るのを避けたいという思いもありました。役員、上層部巻き込み型というのは、今回のプロジェクトの大きな命題のひとつでした。

――トップから現場の社員まで、多様なメンバーと自社の強みや魅力を言語化・すり合わせできたのは、自社のブランドを再定義する上で大きな一歩でしたね。

リアルな人・空気を活かしたブランドイメージづくり

木島:今回のリニューアルでは、ブランドメッセージから既存コンテンツの見せ方まで、Webのコミュニケーション全体を見直す必要がありました。NCMの社内でそれを実現しやすい環境・体制を整えてくださったのは大きいですね。

中田:こういったサイトリニューアルは、きっと大企業ならひとつの部署で完結するでしょうね。でも弊社はまだそういう規模ではありませんから、私たちだけで作ってしまうのはもったいない。できるところから、どんどん社員を巻き込みたいと思っていました。

榎本:たとえば、人物の写真や映像ではモデルを起用せず、社員が普段どおり働いている姿を写真家の方に撮影していただきました。意外とみんな、二つ返事で協力してくれました。

――社内の空気感や働いている方々の表情が伝わってきます。リアルに働いている人物の姿を積極的に見せるのは、自社の「人」や仕事環境に自信があるからこそできる表現です。ユーザーにとっての「この人たちにお願いしたい」を体現しているのですね。

働いている人の顔と空気感が見えるWebサイト

働いている人の顔と空気感が見えるWebサイト

働いている人の顔と空気感が見えるWebサイト

働いている人の顔と空気感が見えるWebサイト

対談記事や社員インタビューなど既存のコンテンツを「STORY」として集約し、見せ方を刷新。

対談記事や社員インタビューなど既存のコンテンツを「STORY」として集約し、見せ方を刷新。

「こうありたい」を見事に体現したビジュアルとキャッチコピー

――榎本さん、中田さんはWebサイトリニューアルと同時並行して、ワークプレイス改革と経営ビジョン策定のプロジェクトも担当していたと伺っています。複数の社内プロジェクトを通じて自社の価値と向き合いつづけた1年間、苦しくはなかったですか?

中田:いえ、楽しかったです! 経営計画に携わっているという自負もありましたし、良いものは良い、そうでないものはそうでないということを、私たちが主体になって検討していけるのだと実感できました。
リニューアルの重要なフェーズで社長を巻き込めたのも、他の社内プロジェクトで意思疎通を図っていたおかげだと思います。また、ロフトワークのみなさんと心理的に距離が近かったのも良かったです。役員から疑問や意見が出てきたときに、すぐに「では、ロフトワークに聞いてみましょう」と相談できたのは助かりました。

木島:決して余裕のあるスケジュールではなかったのですが、NCMのプロジェクトチームのみなさんからの迅速な対応と熱意のこもったコミュニケーションをしていただいたので、わたしたちもそれに精一杯応えました。

――デザインや写真や映像などのビジュアル表現、コーポレートスローガンなどの言葉による表現を決めていく中で、印象的だったことはありますか?

中田:スローガン(「つなぐ。今あるものを まだない明日へ」)を提案いただいたときに、コピーライターの吉原徹さんがいくつかのスローガン候補とともに、言葉のイメージをすり合わせるためのマトリックス図を作ってくれました。弊社の思いに合った表現はどれか、ロジカルに解説してくれたので議論が明解になりました。

写真は、写真家の方がWebデザインのイメージに合わせて撮り下ろしてくださった写真を多く採用しました。これまでは、いわゆる建築写真を建物全体が切れないように載せていましたが、今回採用した写真の中には建物を一部トリミングしたイメージ写真もあれば、建設現場のシーン、素材集から持ってきた写真もあります。どれも、従来のサイトでは載せていなかったものです。

木島:当初から、5つの課題の中でも「デザインの陳腐化」は挙がっていました。社長が「夢を共有できる企業でありたい」とおっしゃっていたこともあり、リニューアル前のコミュニケーションと比べて少し背伸びするようなイメージで提案をさせていただきました。

榎本:最後は社長、取締役含めて納得いくものができました。ひとつひとつ、ロジカルな裏付けを説明してもらえたのでみんな腹落ちできました。

中田:提案に対して、相手を納得させられるのがプロの仕事であり、存在価値ですよね。

――NCMさん側から制作物に対する疑問をパスしてもらい、ロフトワーク側がロジカルに応える。プロジェクトチームの信頼関係が伺えます。

あらわれ始めた成果と「育てる」視点

5ヶ月ぶりに再会したプロジェクトチームは、終始笑顔が絶えませんでした。

――リニューアル後の反響はいかがでしょうか?

中田:お客様からの反応は良好です。リニューアル以降、Webのフォームからご相談を頂くことが増えています。

木島:結果がついてきているようで安心しています。

榎本:社内での反応も上々です。新しいことをすれば、賛否両論。様々ご意見をいただくものですが、今回のリニューアルに関しては、みんな「良くなった」と褒めてくれるんです。

中田:一方で、社員の中でも新しいサイトをまだ見ていない人がいるんじゃないかと思っています。この点は、これからも努力と改善が必要ですね。

木島:プロジェクトが終わったときに「これからが始まりですね」とお話しましたが、リニューアルは土台を作るところまで。これから、少しずつ運用体制を整えて発信していけるといいですね。

中田:せっかく良い土台を作ったので、次の課題はこのサイトを社内のインナーコミュニケーションにうまく活かしたいです。広報の目的は2つで、ひとつはいかに業績につなげるか、もうひとつは魅力的な社員を増やす採用活動に役立つことができるか。さらにもうひとつ気が付いたのは、社員の仕事に対する意欲を盛り上げ、誇りを高めてもらうことです。Webサイトを通じて、働く人たちにも自分の会社をいい会社だと思ってもらいたい。これからは、誰もが一度は「ホームページに載りました」と自慢できるように、サイトを育てていきたいです。

――企業としてのコミュニケーションの基礎が整ったから今だからこそ、やりたいことが膨らみますね。これからWebサイトで2019年以降のビジョンがいかに体現されていくのか、楽しみにしています。どうもありがとうございました。

Member

木島 千加子

木島 千加子

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

高井 勇輝

高井 勇輝

株式会社ロフトワーク
クリエイティブDiv. シニアディレクター

冨田 真依子

冨田 真依子


プロデューサー

柏木 鉄也

株式会社ロフトワーク
チーフプロデューサー

Profile

藤田 健介

藤田 健介

株式会社ロフトワーク
FabCafe ディレクター

Partners

  • デザイン・アートディレクション:田中隼人
  • コピーライティング: 吉原徹(サグレス)
  • 映像・スチール撮影:吉田周平
  • コーディング・実装:西山琢磨(タクマデザイン)

Keywords

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“うめきた再開発”の一手。グラングリーン大阪「JAM BASE」
地域と共に歩むためのブランド策定・コミュニティ醸成