有限会社 丸市 桜本商店 PROJECT

創業114年。老舗酒屋が目指した、若年層との新たな接点作り
桜本商店ブランディング支援

Outline

少子高齢化や若年層のアルコール離れ、インターネット販売の普及などに伴い、日本国内の酒類の小売業は厳しい状況に。国税庁の報告書(※1)によると、酒類の販売・卸に従事する事業者の数は年々減少しています。

こうした状況下でも、人と人との丁寧なコミュニケーションを起点にお客様の人生に寄り添いながら、着実に成果を生み出している酒店があります。

1910年に創業し、110年以上の歴史をもつ札幌にある桜本商店は、2010年より4代目として櫻本武士さんが社長に就任。全国の酒蔵を周り、風土と人柄、そして蔵元のこだわりとを直接肌で感じながら様々な日本酒を販売・提供しています。

そんな桜本商店では、酒屋としてのイメージを一新するため、単にお酒を売るだけのお店としてではなく、個店を際立たせるブランディングに注視しました。特にアルコール離れが著しい若年層のファン化と来店促進を目指し、キャッチコピー、ブランドムービー、フォトが際立つようなWebサイトの制作を行いました。

※1国税庁、酒レポートより

プロジェクト概要

  • クライアント:有限会社 丸市 桜本商店
  • プロジェクト期間:2023年6月〜2024年1月
  • 体制
    • プロジェクトマネジメント:松永 篤
    • プロデュース:二本栁 友彦
    • クリエイティブディレクション:橋本 明音 ・根本 緑
    • パートナー

Approach

桜本商店の魅力をターゲットに「届ける」ためのプロジェクトデザイン

今回のプロジェクトでは、一般に想起される酒屋のイメージを一新し、若年層がブティック感覚で気軽に来店できるというコンセプトを起点にプロジェクトをデザイン。全体の企画に先立ち、リサーチを実施しコピーライトを策定しています。

クリエイターを伴った2泊3日の現地リサーチ

桜本商店の取引先である札幌市内のバルや料理店に足を運び、桜本商店の印象についてヒアリングを行いました。「取材」としてではなく、お客としてそれぞれのお店に訪れることで、桜本商店と情熱を持って働く人に対する確かな信頼と印象を聞くことができました。

クリエイター同席で複数日程でのリサーチ活動を実施したことで、それぞれのメンバーが感じたことをその日中にディスカッションすることが可能に。作り手と生の情報を元に議論し、制作に活かしています。

取材は桜本商店のある札幌だけでなく、奈良県の酒造メーカーでも実施しています。

言葉から世界観を作り、映像とWebサイトでブランドを表現

リサーチした内容を元に、映像やWebサイトに先んじてコピーを作成。新たにターゲットにしたい若年層の感性に訴求するため、言葉を起点に構成した世界感を映像やWebサイトに落とし込み、桜本商店を表現していきました。

言葉を起点にしたのは、「誰が見ても良いと感じる」表現から、「(桜本商店の魅力を)伝えたい人に伝わる」表現へと、一歩踏みこむため。桜本商店ならではの魅力に迫っています。

Outputs

歌人によるコピー

商業的なコピーで印象を作るのではなく、読み手にそっと染み込んでいく言葉を紡ぐことが得意な歌人の伊藤紺さんをアサイン。桜本商店の世界観を紡いでいます。

言葉を映像で表現する

桜本商店への来店を促すための映像は、「お酒」についてのストーリーを酒米作りからシンプルに伝えるのではなく、桜本商店で働く人々に焦点を当てる必要がありました。そのため、ストーリーの一部、「お店の人との会話」から映像はスタートします。

ただしお店で働く人だけでは、お酒は消費者に届きません。作り手や飲食店へのリスペクト、誇りをもって働くひとたちの営みも含めて伝えるために、お酒にまつわるストーリーは全編にわたって紹介しています。

映像にあわせたBGMの作成も行っています。

ナラティブを伝えるためのSTUDIOを活用したWebサイト構築

Webサイトのトップページでは、桜本商店で働く人や桜本商店に納入する人、お酒を仕入れる人など、お酒が人に届くまでの一連の物語を映像で伝えています。

スクロールすると、桜本商店のロゴを背景に、フィロソフィーを紹介。桜本商店の想いページとともに、創業以来大切にしてきた桜本商店としての商いを表現しています。

来店の促進のために、接客の要となる店舗で働くスタッフの情報も掲載しています。酒屋への心理的ハードルを下げ、ブティックでの体験を想起させるような、洗練された温かみのあるページデザインや情報設計を心がけました。

Webサイトの基盤としては、ノーコードツールであるSTUDIOを起用。サイト開発に関するプロセスを短縮することで、企画やコンセプトワーク、取材といったコンテンツ制作に、より一層の時間や工数を充てました。

STUDIO DESIGN AWARD 2023にノミネート

2023年12月に公開された、本サイトは、Webデザインの祭典「STUDIO DESIGN AWARD 2023」にノミネートされました。

ノミネートページはこちら

STUDIO DESIGN AWARDとは?
STUDIO DESIGN AWARDはSTUDIOで制作されたWebサイトの祭典。
魅力的なwebサイトとの新たな出会いや、STUDIOを利用するすべてのクリエイターの目標となることを目的として開催されています。

STUDIO DESIGN AWARDより

Member

松永 篤

株式会社ロフトワーク
シニアディレクター

Profile

根本 緑

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

橋本 明音

橋本 明音

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

二本栁 友彦

株式会社ロフトワーク
ゆえんユニットリーダー

Profile

メンバーズボイス

“はじめに、このWEBサイト制作にあたり多くの方々にご尽力頂き、素晴らしい作品を作って頂いた事に深く感謝いたします。ありがとうございました。制作当初は、酒屋って何だろう、桜本商店とはどのような会社なのか不安も沢山あったかと思います。多くの対話を重ねる事で少しずつ完成に向かう道のりはまさに人生そのものでもありました。全てが人であり、そして企業も人によって作られている生き物だと思います。それを表現する事ができた素晴らしいブランディングサイトになりました。多くの方から驚きと感動を頂き、企業価値を上げる結果となりました。本当にありがとうございました。”

有限会社 丸市 桜本商店 櫻本 武士

“クライアントやクリエイターのみなさんと奈良の酒蔵へ出張に行ったり、桜本商店での接客を間近に感じながらの対話が出来ました。上部だけの印象ではない「本音」の部分が深く見え、チームのメンバーひとりひとりが真摯に大切にするものを具現化するプロジェクトだったと振り返ります。
桜本商店が大切にしている真摯に向き合うその姿勢がチーム全体に伝播し、各々が同じ方向を見ながらもそれぞれのクリエイティブに向き合えるとても有意義で素敵な時間を過ごせたプロジェクトでした。”

株式会社ロフトワーク クリエイティブディレクター 松永 篤

“わたしたちが桜本商店で感じた感覚を、WEBサイトを見た方にまっすぐ感じとっていただけるように、桜本商店の皆さんと触れあって感じた喜びや、働いている姿を見て感じた美しさを、新鮮なうちにクリエイターさんと一緒に言葉にしながらすり合わせていきました。撮影当時を思い出していたら皆さんに会いたくなりました。”

株式会社ロフトワーク クリエイティブディレクター 根本 緑

“「桜本商店らしさ」を活かすことを、たくさん考えたWebサイト制作でした。社長の武士さんを始め、関わるスタッフの方やお取引先の皆様が、本当に誠実で気持ちよい方々だったので、コピーや映像は過度な編集や表現は使用せず、とにかくありのままの桜本商店を出すことを心がけて制作をしました。
派手な仕掛け、派手なデザインを使用せずとも、訪れたユーザーの心を惹きつけるようなサイトになったのではないかと感じています。きっと それが、桜本商店らしさなのだと思います。”

株式会社ロフトワーク クリエイティブディレクター 橋本 明音

Keywords

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テクノロジー企業とアーティストが“混ざる”場所に。
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