成安造形大学 PROJECT

脱・課題解決!?
学生向け学びのプログラムの開発

Outline

未来志向型のアイデア発想力を養う横断的な授業の企画・実施

課題解決型の授業を通してデザイン思考や企画提案力を養う、成安造形大学の総合領域。多くのプロジェクト型を授業を実施するなかで、多様なステークホルダーと課題や目標を共有し、プロジェクトを主導していく力を養う必要性を感じていました。

そこでロフトワークは、同専攻の3,4年生の学生の特別講義として、学部に囚われず、あらゆるプロジェクトを主導していく上で活用できる授業プログラムを3年に渡って企画・実施。2019年はリサーチ、2020年はプロジェクトマネジメント、そして2021年はアイデア発想です。いずれも、どんな仕事や事業(特に新規事業や新しい企画)に関わる際にも重要となる力が身に付けるための企画力やディレクションの力を伝えるものです。

2021年の授業では、目の前の課題解決だけではない、未来志向型のアイデア発想をするため、自分自身の価値観を起点に未来から逆算して現在の課題を考える授業を実施。住んでいる場所から半径250mで、 自分と誰かが共生するための「新しい歩き方のムーブメント」を起こすためのアイデアを考えました。講師となったのは、プロデューサーで新規事業支援を多く手がける小島。自らが得意とするバックキャスティングやSFプロトタイピングの手法を用いた体験型の授業設計を行いました。

2019年度

授業名:デザイン DEATH
テーマ:デザインリサーチ

デザインリサーチの手法を用いて、死の周辺にあるさまざまな「当たり前」をあぶり出し、得られたインサイトをもとに、短い物語を制作・展示しました。生き物すべてに関わるテーマであるにも関わらず、時にタブー視されてしまう「死」に向き合うことで、生を考えなおし、世の中へポジティブに伝えることを目指しました。
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2020年度

授業名:ENJOY NOISE
テーマ:プロジェクトマネジメント

ロフトワークが2002年から導入したプロジェクトマネジメントの知識体系であるPMBOKをベースに、社内外からゲストを招き、実際のプロジェクトで発生する失敗談を織り交ぜながら、異なる背景や価値観を持つ人々と共に創造的な活動をするためのマインドセットを得ることを目指し、全6回にわたって授業を行いました。
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2021年度

授業名:WALK A LOOK
テーマ:アイデア発想

目の前の課題解決だけではない、未来志向型のアイデア発想をするため、自分自身の価値観を起点に未来から逆算して現在の課題を考えるための授業を実施。住んでいる場所から半径250mで、 自分と誰かが共生するための「新しい歩き方のムーブメント」を起こすためのアイデアを考えました。

プロジェクト概要

  • 支援内容
    授業案の企画・立案・実施
  • プロジェクト期間
    2021年6月〜2021年7月
  • プロジェクトメンバー
    クライアント:学校法人 成安造形大学
    プロデューサー/講師:小島 和人
    ディレクター:圓城 史也
    ゲスト講師:井口 尊仁
    ツール導入支援 : 岸本 俊輝

Points

豊かな発想を促す4つの仕掛け

2021年6月〜7月にかけて開催した成安造形大学 × ロフトワークの特別講義「Walk a look」 。ロフトワークのプロデューサー、小島和人が講師となって、6回にわたってアイデア発想を学ぶ授業として開催されました。半径250m圏内を観察し、自由に発想することで、少し先の未来の活動アイデアを考えるというものです。

大学で行われている課題解決をテーマにしたプロジェクト型の授業で学生たちが陥りやすいこととして、正解を求めてしまったり、企画が小さくまとまってしまうことがあるといいます。そこで、豊かな発想を促すために、以下の「しかけ」をデザインしました。

しかけ1:当事者不在を避ける「半径250m」

なぜ「半径250m」なのか。それは、自ら外に出て一次情報に触れることで、机上ですべてを完結させず、本人の価値観と企画が離れないようにするため。企画を考える際に陥りやすいこととして、多くの人のニーズを満たそうとして、誰にとっても中途半端な企画になってしまうことがあります。デスクトップリサーチ(インターネットや書籍からの情報収集と分析)だけでは、たとえ理論上成立していたとしても、血の通ったプロジェクトは作れません。

特に、解決すべき課題が明確ではない、未来のニーズを探す際は、答えを外に求めず、自らの価値観や違和感を観察・言語化し、企画のコアに据えることで、最後まで当事者を見失わず、説得力のあるプロジェクトを設計することができます。今回の授業では、あくまで自分自身が当事者として徒歩圏内で街の違和感を感知できるよう、「半径250m」という範囲を設定し、実際に自ら歩き回って一次情報を収集し、気づきを言語化・価値化していくプロセスを目指しました。

そんな想いを伝えるため、授業に向かうにあたり、講師を務めた小島はこのようなメッセージをしたためました。

2020年に全世界を襲ったパンデミックにより価値観と行動が変容した世界。

これは、大きなインパクトによって起こった大きな変化というよりも、元々来るはずだった世界が前倒しで押し寄せたと考える声が少なく無い。これはネガティブと考えていることをポジティブに捉えることさえできれば“停滞“ではなく“進化“とも考えられると言うことではないか。

日々の暮らしであれば、飛行機や新幹線などを活用した広範囲での生活が当たり前だったが、現在では働く場所も、遊ぶことも、如何に移動を少なくコンパクトにしていくか?という観点が強く働いている。

家の前の電柱
隣のマンションの植林、オレンジ色の花が咲いている
駅前の珈琲屋の「今日の豆」
歩いたことがなかった路地の湿った匂い
三角形の公園に生えている白いキノコ

僕たちの目線は、パンデミックによって無意識に変わっていきている。
これまでは、意識して見ることが無かった“近所“を歩いてみる。
知らないつもりで歩いて見ると世界はおもしろい。

孤独じゃない
知らなかった誰かと「共生」していく住みやすさ
今回のプログラムでは、住んでいる場所から“半径250m”で、
自分と誰かが「共生」するための
“新しい歩き方のムーブメント”
を起こすためのアイデア(プロジェクト)を考える

誰の心を癒すのか
あなたが誰とやるのか
だれを巻き込めばいいのか
どの様に広がっていけばいいのか
僕たちロフトワークと一緒に考えましょう

(ロフトワーク プロデューサー / 美術作家 小島和人ハモニズム)

しかけ2:違和感を企画に変える「ツッコミ」

授業では、学生たちが何度か街を歩き、違和感や興味深いと思ったことをスタート地点に妄想を膨らめて企画にするというものでした。写真を撮る際に学生全員に渡したのが、ピコピコと音のするおもちゃのハンマー。これを「インサイトハンター」と名付け、対象物と一緒にカメラにおさえてくるというルールでした。その意図は「ツッコミ」。目に止まったものを、課題や問題として捉えるのではなく、ツッコミを入れることで、違和感をポジティブな発想に変換させるためです。

また、撮影した写真をチーム内で共有する際も、メンバーは、あくまで本人のツッコミに便乗して一緒に妄想を膨らめました。「現実的な分析→課題解決」に誘導するのではなく、違和感を起点として、ポジティブで自由な発想に繋げていくためです。この議論を通じて、実際に起きている事象から、観察者自身が見たい未来の解像度を高めていきました。

しかけ3:カイゼンを超えるための、インスタントフィクション

新規事業などの新しい施策を企画する際に陥りやすいことのひとつとして、発想が目先の「課題解決」や「改善」にとどまってしまうということがあります。まだ見ぬ未来の事業を生み出そうという時には、煮詰まる原因になることも。

そこで今回の授業では、「インスタントフィクション」(短文で作るフィクションの物語)という形でアイデアが実現した世界周辺のシーンを描いてもらい、学生たちの自由な発想を促しました。

30人の物語がカフェのコースターとトレーペーパーに

2021年9/2〜10/31の期間中、FabCafe Kyotoで、授業で制作されたインスタントフィクションが印刷されたトレーペーパーとコースターでフードやドリンクを提供するという展示を実施しました。断片的な400文字の物語がランダムに書かれているので、カフェを利用する方々が、ふとした瞬間に、彼らの物語からそれぞれ妄想を膨らめられるようにと意図して実施しました。

しかけ4:共有と集中、チームと個人のメリハリ

今回の授業は、個々が感じた街への違和感や気付きを起点に企画を作るというもの。社会と自分を行き来して企画を作り切ることを学ぶため、最終的な企画案とプレゼンテーションは学生たちがそれぞれ単独で作成しました。当事者意識や起点となった気付きを手放さないためです。しかし、視点を狭めないよう、気づきの共有を行うプロセスにはチームワークを入れました。

たとえば、全段で紹介した「ツッコミ」では、誰かののツッコミに、他の誰かが更にツッコミを重ねていくことで、楽しい妄想を重ね、本人が作りたい世界の解像度を高めています。

また、音声コミュニケーションアプリ「Dabel」を導入したこともチャレンジのひとつです。Dabelは、アプリ上でチャンネルを立ち上げ、そこに参加する人々同士で会話を楽しむサービス。街を歩き回る際、チームメンバーで時間だけ合わせておいて、同時にDabelにアクセスし、チームメンバーと自由に会話しながら、それぞれの半径250mで見つけたものを共有しました。見ているものは違いますが、見つけたものやその時思ったことをリアルタイムでメンバーと共有しあうことで、気づきを自分の中だけに留めておかず、連想したり発想を広げることを狙いました。これは、コロナ禍におけるフィールドワークへのチャレンジでもありました。

Dabelを開発した井口尊仁さん。Dabelを通して授業でコラボレーションした。審査員としても、企業家視点から鋭く熱いコメントとを学生たちに送っていた。

個人で見つけたツッコミにチームでツッコミを重ね、妄想の世界の解像度を上げていった
プレゼンでは、30人すべてのプレゼンのテーマソングを事前に学生それぞれ指定してもらい、BGMとして流した。こうした雰囲気づくりもこだわったポイントのひとつ。
講評には企業家でDabel開発者の井口さん(右)とチロルチョコへの偏愛を原動力に精力的に活動を続けているチロリスト・チロ吉さん(左)が参加。個人の想いと社会を繋げるふたりが、学生たちのアイデアに熱いフィードバックを送った。
初回の授業と最終プレゼンはFabCafe Kyotoにて行った

Voice

一連の授業を終えての感想を先生方からいただきました。

宮永 真実(成安造形大学 助教)

聞く・話す・読む・書く、言葉を沢山使用した授業でした。
ビジュアルで表現することは得意な学生たち。言葉で表現することは苦手意識を持っている人が多いようですが、スマホという日々のツールを使用すると、苦手なものですら日常に置き換わっていき… SNSを投稿するかのようにサラサラと文章をタイピングしていた様子が印象的でした。

スマホとDabel の導入によって時間的にも空間的にも授業と日常が交錯し、また頭の中では未来と現在が行き来しながら言語化していく過程に翻弄されながらも、点と点が繋がりストーリーが紡がれる様子は、とても新鮮で気持ちの良い時間でした。

Member

宮永 真実

宮永 真実

成安造形大学
助教

田中 真一郎

田中 真一郎

成安造形大学
教授

小島 和人

株式会社ロフトワーク
プロデューサー

Profile

圓城 史也

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

浦野 奈美

株式会社ロフトワーク
マーケティング

Profile

メンバーズボイス

“社会の変化のスピードの影響で次々に新しいことが求められますが、考えていく中でついつい忘れがちになってしまう”自身がどう感じているのか?”という感覚。
その感覚がなければ、どこか表面的で嘘くさいものになってしまう。
アイデアを考える上でも、生活を送る上でも今回の授業での"自分の視点と選択"をたまに、思い返してくれれば嬉しいです。”

小島 和人 株式会社ロフトワーク プロデューサー

“授業の中で、学生の皆さんが楽しそうにインスタントフィクションを書いたり、そこに妄想をどんどん重ね合わせたりしていた光景が、とても印象に残っています。個人的な価値観や妄想を、表現として人に共有することは、簡単ではないですが、それを軽やかに超えていく皆さんを見ていて、僕自身もとても元気の出る授業でした。この授業で感じたことや、経験したことを、皆さんの今後につなげていって頂けたらうれしいです。”

圓城 史也 株式会社ロフトワーク クリエイティブディレクター

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