次世代を担う子どもたちと共に、都市の未来を考える
参加型の探求プログラムを支援
Outline
「都市を創り、都市を育む」の理念のもと、変わり続ける時代の中で、「未来の都市はどうあるべきか」を絶えず考え、都市再開発事業を推進している森ビル株式会社。創業以来、地域の人々とともに街づくりを進めてきました。
同社は、2007年から「ヒルズ街育プロジェクト」を開始。次世代を担う子どもたちに街づくりの魅力やノウハウを伝えながら、子どもたちと共に未来の街について考える親子向け体験活動プログラムを実施してきました。
2024年度の「みらまちキャンプ」プログラムにおいて、ロフトワークは4日間の学びの集大成となる5日目のワークショップ設計・運営を支援。街づくりに対する子どもたちの主体性と当事者意識を醸成しました。さらに、プログラムの集大成として制作した「みらいのまち」の模型を六本木ヒルズに展示。地域に開くことで街を訪れた人にも街づくりへの関心を喚起し、未来に向けた継続的な対話を生み出す仕掛けを共に創り上げました。
Story
今回のプログラムへとつながる「ヒルズ街育プロジェクト」を、継続的に実施してきた森ビル。街づくりにおいて大切にしている「安全」「環境」「文化」をテーマとしたプログラムが企画され、15年間で約630回開催。延べ約20,000人を超える親子が参加してきました。実際の街、ヒルズを学習の場として展開したこの取り組みは、文部科学省主催令和5年度「青少年の体験活動推進企業表彰」にて、最優秀賞である文部科学大臣賞を受賞しています。
プロジェクトの背景には、森ビル社員を含む地域住民と子どもたちが共に都市の未来を共創し、そうして生まれた未来のまちのアイデアを、コミュニティとして更新・成熟させ続けたいという思いがありました。
2022年、森ビルは取り組みをさらに発展させるために新しいプロジェクトビジョンを策定。子どもたちを未来の都市づくりにおける重要なステークホルダーとして定義し、組織横断型の探求学習プログラム「みらまちキャンプ」を新たに開催しました。ロフトワークは、この一連の取り組みにプロジェクトパートナーとして伴走し、その活動価値を高めるための支援を行っていました。
Output
2年ぶりに実施された「みらまちキャンプ」においても、ロフトワークはその体験と学びの価値を更新するべく支援を行いました。
今回実施された5日間のプログラムのうち、ロフトワークはDAY5におけるプログラム体験(UX)を再設計。コミュニケーションツールや展示物の制作支援を通して、子どもたちが楽しみながら「未来のまち」についてチームでアイディアを出し、形にするまでをサポートしました。
街づくりと出会い、考えたアイデアを表現する
Day5のワークショップ設計・実施
Day5のワークショップでは、参加した子どもたちが、プログラム終了後も自分が考えたアイデアを深めたくなるような仕掛けとワーク内容を検討。街づくりのアイデアを模型に落とし込むことで、「街づくりに主体的に関わる」プロセスを体験する機会としました。
最初は各々のアイデアを形にすることに集中していた子どもたちも、工作をする過程で素材が足りなかったり、思い通りの形を工作することが難しかったりといった壁に当たると、サポートスタッフや同じチームの子どもたちと積極的に関わり合いながらワークを進行。
「大きなソファを置いて、疲れた人が座れるようにしよう」「ビルとビルの間をロープで繋いで、移動できるようにしよう!」など、大人の目線では一見驚くアイデアが飛び出していましたが、その背景には子どもたちが常識にとらわれずに考えた「より良いまち」への思いがありました。
一人で考えるだけでなく、チームのメンバーと意見を共有・話し合いをするプロセスを設計することで、お互いの意見がまとまらないことも含めた「街づくり」のリアルを体験してもらうことが出来ました。
思い描いた「未来のまち」を展示する
「みらまちキャンプ」の集大成として、子どもたちが5日間のワークショップで得た学びやインスピレーションから生まれた未来の理想の街「みらまち」のアイデアを、六本木ヒルズの施設内で展示。ロフトワークと連携するクリエイター、REPIPEの和久正義氏と共に、地域住民が展示に能動的に関われる工夫を凝らしました。
Approach
ワークショップの設計と展示を通して、みらまちキャンプの活動価値を高めたロフトワーク。そこには、他者と考えを共有しようとする子どもたちを支える、幾つもの配慮と工夫がありました。
子どもたちのワクワクを引き出す、会場装飾のアップデート
「子ども達が自発的に学びや経験を得てほしい」という想いを込めて、今回は秘密基地をテーマに会場を設計。さらに、子どもたちがワクワクしながらワークに取り組めるような仕掛けも。会場に設置されたガチャガチャには“ミッションカード”が入っており、ワークショップの最中にチームメンバーとの距離を縮めるミッションを達成することで、オリジナルのシールをもらうことができます。
まちを観察するきっかけを生む、ノベルティの制作
子どもたちの学びと思考をより楽しく形にするためのコミュニケーションツールとして、まちを表現する“オノマトペ”を可愛らしくデザインした「まちまとペステッカー」を制作。
「うっとり」「ぞくぞく」などのオノマトペをステッカーにし、プログラム終了後も活用できるノベルティとして配布。イラストレーター・やまゆうさんによるグラフィックで、子どもも大人もワクワクしながら使えるデザインに仕上げました。
プログラム期間中、子どもたちは自分の暮らす街の中で、身のまわりにある「まちまとペ」を見つけてWEB上の掲示板「街育ひろば」に投稿。このミッションを通して、子どもたちが街に目を向け、観察するきっかけとなりました。


このステッカーは、展示企画にも活用されています。来場者は、子どもたちの作品へのコメントをステッカーと「感想カード」に記入し、ボードに掲示することで、まるで街の一部のように展示に参加できる仕掛けに。多くの人の関心を集めました。
子どもたちの主体性を引き出す、ワークショップ内容の内容のアップデート
ワークショップでは、街づくりに関心を持ちはじめた子どもたちに対して、より深く主体的に考える姿勢を育成するべく、「街を観察する中で見つけた『まちマトぺ』を使って、チームで“未来の街”のアイデアを考えよう!」というテーマを設定。ワークを通してアイデアを自由に表現する体験をつくりました。Day1〜Day4を通して、さまざまな都市づくりのあり方と出会い、関わる人と話す機会を得た子どもたちの学びが、形になる時間となりました。
また、本格的なワークがはじまるまでのアイスブレイクとして、新たに「似顔絵リレー」のワークを導入。コミュニケーションツールを使いながら手を動かしていく時間を通して、子ども達のこれからのアイデア出しが円滑になるよう促しました。
Outcome
ワークショップ終了後、六本木ヒルズに設置された展示には大人から子どもまで多くの来場者が訪れました。ワクワクした様子で展示作品にコメントを残す子どもたちもおり、一緒に訪れた保護者からは「次は自分の子どもたちを参加させたい」との声もありました。
また、訪れた方のコメントのなかには、「森ビルが子ども向けのプログラムや、街づくりプログラムを実施しているということを知らなかった」と驚く声も。森ビルが子どもたちと共に街づくりに取り組む姿勢を広く知ってもらう貴重な機会となり、その社会貢献活動への認知を深める効果も生み出しました。
このプロジェクトを通して願ったのは、子どもたちや地域住民のなかに「自分が暮らす街をより良くしたい」という熱や、「街づくりの一員である」という当事者意識が生まれること。子どもたちの自由な発想から生まれるアイデアの実現を検討することで、街づくりへの新しい意識が育まれたワークとなりました。
Credit
プロジェクト基本情報
- クライアント:森ビル株式会社
- プロジェクト期間:Phase1(プログラム企画・設計):2024年6月~9月、Phase2(プログラム運営):2025年2月~3月
体制
- ロフトワーク
- プロジェクトマネジメント:奥田 蓉子
- ディレクション:渡邊 美友
- プロデュース:福田 悠起
- 制作パートナー
- KVデザイン:obak
- ステッカーデザイン:やまゆう
- 展示パネルデザイナー:株式会社スロウ
- 展示什器クリエイター:REPIPE 和久正義
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