東映株式会社 PROJECT

仮面ライダーの危機に、一同が集結!
東映がオープンイノベーションへの取り組みを始動

Background

他社との連携を目指した、東映初となるハッカソン

仮面ライダーやスーパー戦隊シリーズ、アニメなど、映像制作を中心とし、数々のヒット作品を世に送り出してきた総合コンテンツ企業の東映。

比較的クローズドな制作チームのなかで進められることがほとんどだった制作プロセスに新風を吹き込むため、このたび広く外部の知見を取り込めるようなオープンイノベーションの試みに踏み出しました。

テーマとなったのは、撮影現場における”夏場の暑さ対策”。
温暖化による気温の上昇から、夏場の撮影現場では、熱中症のリスクや体力の消耗がここ数年の課題となっていました。

そこで、コンテンツ制作に関わる関係者のほか、具体的な暑さ対策のソリューションをもつ企業、有識者を結集して行うハッカソンを企画。渋谷の街がハロウィン一色となっていた10月31日、道玄坂を登りきったところにあるロフトワーク・オフィスでハッカソンは実施されました。

東映にとって新たな挑戦となった本取り組みを、ポイントを追って振り返ります。

プロジェクト概要

  • 支援内容
    ハッカソンプログラムの設計
    ハッカソンの実施・運営
    レポートのための動画制作
  • プロジェクト期間
    2019年8月〜2019年11月
  • プロジェクト体制
    クライアント:東映株式会社
    PM / クリエイティブディレクター :武田真梨子
    プロデューサー:新澤梨緒
    サポート:棚橋弘季
    写真・動画撮影:吉田周平
    動画編集・イラスト制作:野中聡紀

    参加者企業一覧(順不同)
    ・有限会社大沼プランニング
    ・CDシステム株式会社
    ・株式会社リベルタ
    ・株式会社空調服
    ・シャープ株式会社 TEKION LAB

Point

Point1:はじめての取り組みだからこそ、明確に描いたゴール

最初に、ハッカソンを経て最終的にどのようなアウトプットが生まれれば良いかを明確にしていきました。東映ハイテク大使館の飯田さん協力のもと、企画前に真夏である8月に撮影現場に行き、観察とヒアリングを実施。

現場の状況を把握した上でソリューションとして効果を発揮しそうな製品をリサーチしながらハッカソンに参加していただく企業の検討を進めました。

「体表面を冷やす」「輻射熱を遮断する」「真体温を下げる」など、暑さに対してアプローチの違う製品をもつ企業にお声がけをしていきます。

ハッカソン当日。集まった5社の企業から、各社製品を提供していただき、その場で身につけながらソリューションを検討しました。体験を通すことで実現性の高い具体策が創出でき、なかにはスーツアクターさんが現場ですぐにでも活かせそうなものもありました。

暑さ対策へのアプローチとして、企業のほかにも暑さ対策に知見をもつ有識者も参加いただき、有効な情報の共有を行っていきます。衣服の快適性の研究者、熱中症リスク対策に関するコンサルティングも行っている産業医、機能面からファッションを捉えてデザインしているデザイナーの3名にご協力いただきました。

有識者からは、熱による人体への影響、服の機能と暑さの関係性など、事例とともに情報が提供され、すぐにでも活かせる対策から長期的な研究領域の可能性まで幅広い知見を得ることができました。

Point2:インプットの積み上げが、アウトプットの精度を左右する

今回実施したハッカソンは、以下の2つをゴールとしています。

  • 暑さ対策を外部の企業といっしょに考える場をもつこと
  • 暑さ対策への具体的なソリューションにつながる外部企業との関係性づくり

ゴールにたどり着くまで必要な目標として、さらに以下の点に配慮し、プログラムを設計。

  • 異なる企業からの参加者による混合チームでアイディエーションや製品の実装〜検証を行うこと
  • はじめに、次の3つの視点(①仮面ライダーの撮影現場やスーツの企画の現場の紹介、②衣服の快適性、熱中症リスク対策、衣服の機能とデザインの関係についての知見、③参加してくれた5社の暑さ対策製品の紹介)でのインプットを行い、複数の視点からアイデアを考えられる下地をつくること
  • 参加者が実際に製品を手にとったり、使ってみたりしながら、どれが実際の暑さ対策にどう使えそうかを検証できる場をつくること

インプットトークでは、東映のプロデューサーをはじめ、スーツアクター、プロダクト企画、造形の担当者に協力してもらい現状を共有し、撮影現場の現状から企画、プロダクトデザイン、造形へと、視点をフォーカスしていきながら制作の全体像を把握していきます。

その後の製品の実装〜検証ワークでは、得られたインプットから課題を抽出。参加者は、それぞれの課題を解決するアイデアをしながら、プロトタイピングを経てアイデアの具体性を高めていきました。

Point3:ワークを加速させる「場のデザイン」

1日をかけて実施するハッカソンでは、プログラム以外にも、リフレッシュメント、進行のリズムもワークを推進する大切な要素となります。

特に空間を彩るカラーやキービジュアルは全体の意識を上げるために必要です。
今回、東映の多大な調整と理解によって、仮面ライダーをテーマとした会場に貼るポスターや動画に使用するキービジュアルを作成。完成したキービジュアルは、当日参加者の意識をまとめる指標としての効果を会場で発揮していました。

またハッカソン全体の雰囲気はモチベーションにも影響するため、リフレッシュメント、BGM、進行のタイミングなど、間接的なコミュニケーションも大切にしながらハッカソンを進行していきます。

Point4:原始的な人間のパワーを導く、ハッカソンの魅力

今回のハッカソンの中心人物である、東映株式会社 取締役 テレビ第二営業部長 兼 経営戦略部 ハイテク大使館担当の白倉 伸一郎氏は、ハッカソン後のインタビューでこのように語っています。

我々関係者が一堂に会し、ひとつの問題意識に対して共通の認識をもつ機会はなく、今回改めて意識を共有していくことの大切さ、そして、そこに外からの視点を取り入れていくことの重要性に気づくことができた。
次なる方向性が具体として見えたというのは本当にありがたいこと。第一歩を確実に踏み出せたという気がしている。
デジタル時代において、ハッカソンというやり方は極めてアナログだと思う。だけども、人を集めて強制的に話し合わせることで、原始的な人間のパワーを導き出せる、すごく良いシステムだなと、今回やってみて実感しました。
集まることの大切さ、面と面を向かわせることの大切さ、そしてそれを仕切る人や設計の仕方というのが非常に重要だと思いました。

たった1日のプログラムではありましたが、ひとつの空間にいるからこそ味わうことのできるお互いの熱量や、瞬間的な視点の交差から生まれるコミュニケーションが、アイデアを実装させるときに必要な原動力となるということを改めて実感しました。

この日、この場所で実施したハッカソンが、この先多くのイノベーションを生む、はじまりとなることを願っています。

「仮面ライダービルド」© 2017 石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映
「仮面ライダーゼロワン」© 2019 石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映

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武田 真梨子

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執行役員 兼 イノベーションメーカー

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新澤 梨緒

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“弊社の悩み・課題に対して真摯に向き合っていただけたと思っております。デザイン思考をはじめ、新しい取組みを行えたという事は弊社にとっても私自身にとってもプラスになると感じました。また、思っていたよりもプロジェクトを細かく丁寧に運営していただけたので安心して進めることが出来たと思っております。

御社とのお仕事は非常に楽しく刺激的なものでした。
今回の取組みで出来た種をきちんと育てて、御社が事例として世界に発信したくなるようなプロジェクトになればと思っております。”

飯田 友都 東映株式会社 経営戦略部 ハイテク大使館

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