キャセイパシフィック航空 PROJECT

キャセイパシフィック 上海浦東国際空港VIPラウンジ
ラグジュアリーで快適な空間

Outline

中国第2位の利用者数を誇る上海浦東国際空港の、キャセイパシフィック航空 VIPラウンジ。ロフトワーク香港がUX/UIの視点からリニューアルを担当し、ラグジュアリーさと心地よさを兼ね備えたあたらしい空間が誕生しました。

完成から10年が経っていたVIPラウンジが抱えていた課題は、慢性的な混雑。同社のVIP顧客にリラクシングな体験を提供するために、プロジェクトチームが取り組んだのは、ユーザー中心設計による「空間の再構成」でした。

写真: Albert Chun, Spaze Design
企画・編集:loftwork Global Team

* 英語版の記事はこちら

Story

課題とアプローチ

上海浦東国際空港は、世界で最も混雑している空港のひとつです。

2018年の上海浦東国際空港の利用者は、7400万人。世界でもトップ10に入る利用者数で、中国国内では北京に次いで2位です。2019年には世界最大のサテライトターミナルビルがオープンし、本空港の収容可能人数は8000万人にも登りました。一方で、定刻出発は全体のたった52%、遅延時間の平均は48分にものぼることが統計データにより明らかになっています。

世界で最も混雑している空港のひとつである、上海浦東国際空港

プロジェクトマネージャーを務めたロフトワーク香港のハーベイ・チュン(Harvey Chung)は、これまで何度もこの空港を利用したことがありましたが、実際に調査データの結果をみたとき、驚きを隠すことができませんでした。

調査で分かったのは、ラウンジ利用者のほとんどが、飛行機遅延のために仕方なくそこで待機しているということ。基本的にいつも満員なので、VIPラウンジであるにもかかわらず、まったくリラックスできる環境ではありませんでした。本来のVIPラウンジの役割を果たしていなかったのです。 ―ハーベイ

たとえ混雑した環境であっても、ラグジュアリーさと心地よさを担保することが、今回のプロジェクトの大きなテーマとなりました。効果的な空間プランニングとゾーニングが問題解決の鍵だったと、ハーベイは振り返ります。

プロジェクトチームは、まず、VIPラウンジがどのように利用されているかを調査したうえで、ラウンジエリア全体の空間を明確にゾーニングすることを提案。ソファでくつろげるエリア、バルコニーテラス、そしてフードホールとバーからなるラウンジの中心的な空間「パビリオン」をつくりました。

フードホールとヌードルバーからなる「パビリオン」は、ユーザーにとって全ての活動の中心となる場所。

パビリオンを中心に、その周りを囲うように異なる機能をもつ空間を複数配置することで、ラウンジ内の「行き止まり感」を軽減。パビリオンを出ればバルコニーに繋がるなど、中心から連続的に他の空間にアクセスできる仕組みで人の流れが自然に循環する動線を確保しました。

連続的な空間によって、人々の自然な循環を生み出すデザイン

UX/UIから考える空間デザイン

UXのフレームワークを用い、利用者がどのようにその空間を使用しているか、また、どうすれば課題が改善されるかをリサーチし、新しい空間を提案したロフトワーク香港。中国では、空間デザインの分野でUXを意識するケースは未だに少ないと、ハーベイは説明します。

建築家やインテリアデザイナーはコンテキストや環境を重要視しますが、実際のユーザーをないがしろにすることが多いんです。イノベーションのためには、コンテクストとユーザー、どちらも大切にする必要があります。 ―ハーベイ

プロジェクトマネージャーであり、建築のバックグラウンドを持つハーベイは、空間設計のプロジェクトにおいて「UXは空間のプランニングであり、UIは素材やディテールである」と考えます。

しかし、キャセイパシフィック航空のようにすでにクライアントに確立したブランドアイデンティティがある場合、空間のディテールでチャレンジングな冒険をすることは、容易ではありません。今回のプロジェクトでも、キャセイパシフィック航空から指定された素材やカラーパレットがありました。

既に与えられた素材を使いながら、組み合わせたり入れ替えたりして、最大限おもしろいことができる方法を探りました。 ―ハーベイ

クライアントと目線を合わせる

クリエイティブなプロセスは、クライアントとのコミュニケーションにも及びます。従来の考え方と異なるアイデアを理解してもらうためには、クライアントと目線を合わせることが欠かせません。

空港の一部でありながら、親密な心地よさを感じることができるパビリオン。

プロジェクトチームは、安全上の規則や建設条件、予算などの技術的な課題に加え、キャセイパシフィック航空側とビジョンを共有する必要がありました。

クライアントに目線を合わせ、アイデアを理解してもらうために、全体像の提案にVRを採用。結果として、2日間という短期間でクライアントの合意を取ることができました。

Outputs

ユーザー中心設計で、混雑時も快適かつラグジュアリーな空間を実現

750平方メートルに及ぶキャセイパシフィック航空のVIPラウンジ。UXから空間デザインを考えなおすことで、心地よくラグジュアリーでありつつも、機能的な空間プランニングを実現しました。

ロフトワーク香港のプロジェクトチームがこだわった空間を、ぜひご覧ください。

Keywords

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