創造的思考で課題解決するには?
ディレクター基真理子「続・enocoの学校 2019」に講師登壇
クリエイティブな発想とネットワークで都市や社会が抱える様々な課題の解決に取り組む、大阪府立江之子島文化芸術創造センター/ enoco。芸術文化を通して異なる者や分野同士をつなぐコーディネーター的な人材を育成する目的で開催されている「続・enocoの学校 2019」。2019年8月10日、ロフトワークのディレクター基真理子が講師として登壇しました。
講義のテーマは「〈創造的思考〉問題を発見・解決するためのちから」。基は、今取り組んでいるリサーチのプロジェクトを例に挙げながら、創造的思考とは答えのない課題に向かう姿勢だということを強調しました。
創造的思考は「答えのない課題」に取り組む姿勢
以前は「創造的」ということにコンプレックスを持ち、「間違ったことを言いたくない」と思っていた、という基。しかし、明確な答えのないプロジェクトに取り組む中では、プロジェクトに取り組む主体としての自分の人格や想いを抜きにして答えは探せないということに気づいたと言います。なぜなら、クライアントや調査対象の人や事象自体には答えがないから。
人々の潜在的な価値観や新規事業の機会領域を探るためには、ひとりの人間として、働きかけて行く必要があり、主体性を持って働きかけるために創造性が必要、と基は伝えました。
答えは自分が働きかけることで見えてくる
主体性を持って人や事象に働きかけていくとは、創造性を持ってプロジェクトに取り組むとは、具体的にどういうことなのか。彼女がプロジェクトを通して発見したポイントを、以前の自分の考えと比較して紹介しました。
要望整理(判断基準を作る)
≠ 何となくはじめたら、答えみえてくるかもしれない…
見えないことがあるのは当たり前。それでも、段階的にでも、目的を共有しておかないと、何かを見ても何も見えません。
事前調査(問いを醸成させる)
≠ とりあえず色々探しつづけてみる
時間は有限なので、ポイントを絞らなければいけません。大事なのは、自分が「わくわくするか」「ピン」とくるか。そのために、普段からピンとくるものを収集し続けることが大事。ピンとくるものが何なのか、探し続けることが大事です。
仮説形成(探るべき問いを決定する)
≠ 納得いくまでインプットしないと…
インプットが目的ではありません。 探るべきポイント=力点を決めて動き、 小さな問いと発見を繰り返すことが大事です。
デプスインタビュー(仮説を元に新しい価値を探る)
≠ 面白い話きけた~
他人の価値観の琴線に触れるインタビューでは衝撃的な話も飛び出します。新しい価値へとつながるヒントに、しっかり食いつき、ちょっとしたヒントを見逃さないように。
イベント後半は「enocoの学校」の校長でenoco館長の甲賀雅章さんとの対談。「創造的」とか「新しいもの」といっても、実際はほとんどが新しい組み合わせだという甲賀さん。新しい組み合わせを生み出すには、そのための素材をたくさん集めたり、気づける目が必要だと語った。
創造性とは斬新なアイデアではない
基が挙げたプロセスでは、いずれも、たくさんの情報の中から「面白い」「ピンとくる」ものを自分自身が選び出している、というのがポイント。そのためには、日頃から自分が気になることに敏感になっておくことと、気になることを収集していくことが大切だといいました。また、その時に分類しないこともポイントのよう。驚異の部屋のように、「好き」というフォルダにあえて雑多に入れておくことで、文脈が繋がったり、思いがけない組み合わせが生まれる可能性もあるようです。
「創造性とは斬新なアイデアではありません」という基。常に当たり前を疑う意識を持ち、面白がるアンテナを張り、妄想を広げること。そして、目の前の小さな現象に働きかけながら、関係を紡いでいくことが大切だと伝えました。
イベント概要
「続・enocoの学校 2019」
season01:〈創造的思考〉問題を発見・解決するためのちから
会期:2019年8月10日(土)13:00-18:00
会場:大阪府立江之子島文化芸術創造センター/enoco
主催:大阪府立江之子島文化芸術創造センター/enoco
詳細:http://www.enokojima-art.jp/zoku_school_2019
ロフトワークについて
ロフトワークは「すべての人のうちにある創造性を信じる」を合言葉に、クリエイターや企業、地域やアカデミアの人々との共創を通じて、未来の価値を作り出すクリエイティブ・カンパニーです。ものづくりを起点に、その土地ならではの資源やテクノロジーを更新する「FabCafe(ファブカフェ)」、素材と技術開発領域でのイノベーションを目指す「MTRL(マテリアル)」、クリエイターと企業の共創プラットフォーム「AWRD(アワード)」などを運営。目先の利益だけにとらわれず、長い視点で人と企業と社会に向きあい、社会的価値を生み出し続けるビジネスエコシステムを構築します。
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