立命館大学 PROJECT

非接触時代の研修プログラムをデザイン
オンライン研修開発ガイド「PATHWAYS」を制作・無償公開

Outline

効果的な「オンライン研修」を設計するための基礎リサーチを実施

新型コロナウィルスの影響で、多くの「集合型オフライン研修」が中止や方針転換を余儀なくされました。立命館大学歴史都市防災研究所(以下、歴防)が2006年から実施してきた『立命館大学ユネスコ・チェア「文化遺産と危機管理」国際研修』(以下、ITC)(※)も大きな影響を受けた1つ。従来は、世界中の文化遺産保全や防災を担う人材を対象に、歴史的文化財や木造建築が多い京都や、過去に大きな震災に見舞われた神戸・東北地域を中心に、学術的な学びとでフィールドワークを組み合わせた21日間連続の研修プログラムを行っていましたが、2020年度は中止に。世界中の文化遺産を守っていくためには、今まで来日してしか学べなかったプログラムをオンラインで実施する方法を模索する必要がありました。

しかし、研修のオンライン化を模索するなか、座学ではないフィールドワークの部分や、参加者同士のコミュニケーション、講師とのディスカッションをどうデザインするかは難しいテーマでした。 ロフトワークは、利用できるツールと、オンラインプログラムの設計方法についてのリサーチを実施。コロナ禍以前から大規模なオンラインイベントやバーチャルワークショップの展開を進めてきたロフトワークの知見と、採用人事/マーケティング/教育/テクノロジーなどの多様な背景を持つエキスパート知見をインタビューを通じて集約し、リサーチレポートとしてまとめました。

同時に、WordPressを用いたITCのWebサイトを短期間で立ち上げ、情報発信の基盤を整えました。

※ 『立命館大学ユネスコ・チェア「文化遺産と危機管理」国際研修』(ITC):高い防災知識・知見を習得するとともに、地域での取組を学び、自分の担当する文化財などの防災プランを作成、自国に帰って実践する目的で2006年から開催されている研修プログラム。

プロジェクト概要

  • 支援内容
    オンライン版ITCプログラム開発に向けたリサーチ(エキスパートインタビュー、レポート作成)WordPressプレミアムテーマカスタマイズによるWebサイト制作(情報設計、デザイン、WordPressカスタマイズ、ページ登録)
  • プロジェクト期間
    2020年12月〜2021年3月
  • プロジェクトメンバー
    クライアント:立命館大学・歴史都市防災研究所(ITC運営チーム)
    プロデュース:藤原 里美
    プロジェクトマネジメント:入谷 聡
    クリエイティブディレクション:松下恵里花
    テクニカルディレクション:安藤 大海
    Webデザイン:前田 悠樹

Outputs

オンライン研修プログラムの開発ガイド「PATHWAYS」

オンラインプログラムを設計するにあたり、多方面にリサーチしてまとめた知見を、オンライン研修プログラムを開発するためのガイド「PATHWAYS」として制作。この文書は、リサーチ活動の報告書であると同時に、ITCのオンライン版プログラムを開発するための具体的な提案書でもあります。今回のリサーチで得られた知見と示唆を、ITCチーム内に留まらせるだけでなく、さまざまな立場で同様のオンラインプログラムを企画・運営される方々に共有することを意図して、文章ほぼ全体をクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC BY-NC-SA 4.0*)で公開しています。

オンラインプログラムの設計ガイド「PATHWAYS」を無償公開

立命館大学歴史都市防災研究所ユネスコ・チェア「文化遺産と危機管理」国際研修コーディネートチームからの委託により、株式会社ロフトワークが実施したリサーチ活動の報告書を、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC BY-NC-SA 4.0*)で、レポートをほぼ全編(PDFファイル)無償公開します。さまざまな分野の「オンラインコミュニケーションの場づくり」にお役立てください。

※このライセンスは、非営利な目的のもと、適切なクレジットの表示、ライセンスへのリンク貼付、変更がある際はその旨を表示し、再配布の際は同じライセンスを付与すれば、利用・再配布することが可能です。営利目的の利用の際は、ロフトワーク広報(pr@loftwork.com)にお問い合わせください。

▼こんな方におすすめ

  • 支社間のコミュニケーションに課題を感じている部署リーダーの方
  • 在宅ワークが進む中、社員研修の進め方に課題を抱えている人事担当の方
  • オンラインの授業プログラムを設計する大学教授/講師の方

▼主なコンテンツ

  1. 「同期セッション」と「非同期セッション」を組み合わせた、オンライン研修プログラムの基本設計
  2. 動画コンテンツの制作方法
  3. 研修プログラムの尺、コマの構成、教材作りに関する考え方
  4. 運営体制と規模のコントロール
  5. コミュニケーションツールの設計と運用
  6. 介入とファシリテーションの技術

ITCのオフィシャルWebサイトの立ち上げ

リサーチプロジェクトと同時に、ITCの活動を世界に発信することで、文化遺産保全や防災についての知識共有を促進するため、ITCの公式Webサイトを構築。各種ニュースやイベント情報、研修プログラムの詳細情報や申し込みができるほか、同窓生向けの情報発信も行える基盤を整備しました。WordPressを用い、日英で制作しています。

https://rdmuch-itc.com/

Points

12名の社内外エキスパートに対するオンラインインタビュー

リサーチにあたっては、研修プログラムの「オンライン化」にあたって考慮すべき論点を、プロジェクトメンバー内のワークショップで洗い出し、「フィールドワーク(Site Visit)」と「コミュニケーション機会の創出」の2点に特化したリサーチ計画を策定。ロフトワークはこの計画に沿って、2週間で12名のエキスパートに対するオンラインインタビューを実施し、知見を集約しました。

ロフトワーク社内からも2名の「エキスパート」が本プロジェクトに知見を提供。マーケティングイベントやオンラインワークショップにおける「テックサポート」の要として、機材周りや進行の段取りに通暁したクリエイティブディレクター・松永篤と、コミュニティイベントにおいて統括ファシリテーションを経験したプロデューサーの野村善文が議論に参加しました。分厚い実践知を織り込むことにより、リサーチ結果は単なるトレンド調査にとどまらず、スモールサイクルで実践できる実用的な内容になりました。

オンラインワークショップでリサーチ結果を検証

リサーチプロセスの後半では、得られた知見を検証するためのオンラインワークショップを実施。プロジェクトメンバー8名が参加し、半日程度のワークをすることで、オンラインコミュニケーションの柔軟さと難しさを実体験しました。DiscordボイスチャットやMiroを用いた小グループでのディスカッション、ジンバル(スマートフォン用スタビライザー)を使用した映像の「収録と生配信の品質比較」など、核となる手順の検証を行いました。

このワークショップでも、一部のメンバーが作業スペースに接続できない/音声トラブル/ワーク内容伝達の不備など、多くの困難に直面。オンラインプログラムの実施は一筋縄ではいかないことを実体験するとともに、実現に向けての段取りを再整理しました。

チャットツール「Discord」を基盤として半日のオンラインワークを実施
「ジンバルあり・なし」で実際に映像を撮影し、手ブレ補正による品質の違いを検証

WordPressでのサイト構築期間を大幅に短縮

リサーチと並行して、歴史都市防災研究所 本体Webサイトから独立した、ITCプログラム独自のWebサイトを制作。これまで掲載できなかった過去参加者の情報やパートナー情報、フォローアップ事業の模様など、50ページ以上の内容を2ヶ月程度でWordPressに実装しました。

ごく短い期間で構築を行うため、テンプレートのスクラッチ開発ではなく、有償配布されている「プレミアムテーマ」をカスタマイズする方式で制作を行いました。しかし、デザイン面では妥協をせず、世界観構築のためにグラフィックデザイナーを採用。「プレミアムテーマ」で作られたとは思えない独自の世界観と品質を、短納期で実現しました。

Member

金 度源

金 度源

学校法人立命館
理工学部 環境都市工学科 准教授

入谷 聡

入谷 聡

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

藤原 里美

株式会社ロフトワーク
シニアプロデューサー

Profile

松下 恵里花

松下 恵里花

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

安藤 大海

安藤 大海

株式会社ロフトワーク
テクニカルディレクター

メンバーズボイス

“2006年から毎年、立命館大学ユネスコ・チェア「文化遺産と危機管理」として実施してきた世界最高水準の文化遺産防災を学ぶ短期的国際研修をオンラインでの実施に向けて大事な一歩を踏み出すことができました。京都のような歴史都市を現地視察ではない方法で紹介する方法や、一方的な講義ではなく講師陣と研修者間の相互インタラクティブな学びの方法と知識共有を行うための根本となるものをオンライン研修でどのように活かせられるのかが分かりやすくPATHWAYSとしてまとめられ、このように公開できたことを嬉しく思います。”

学校法人立命館 理工学部 環境都市工学科 准教授  金 度源

“世界中のプロフェッショナルを相手にした、オンラインコミュニケーションの方法・技法。このテーマは、まさに私自身がずっと関心をもっている内容で、毎回インタビューのたびに、視界がさっと晴れるような学びがありました。今回、歴防ITCチームのご厚意により、得られた知見をプロジェクト内にとどめず、広く公開できたことを本当に嬉しく思います。リサーチの次は、「スモールスタート」での検証フェーズが待っています。現行プログラムの単なる代替にとどまらない「進化」を生み出す次のステップを楽しみにしています。”

株式会社ロフトワーク クリエイティブディレクター 入谷 聡

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オンラインワークショップの設計支援

ロフトワークは、組織改革のためのワークショップやクリエイターとの共創プログラムを多数支援しています。オンラインワークショップの設計/実施支援のサービス資料をご用意しておりますので、以下よりダウンロードしてご覧ください。具体的なご相談がある方は、オンライン相談も承っております。お気軽にお問い合わせください。

サービス資料のご請求はこちら(service-sheet_onlineWS.pdf, 23MB)

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Movie

プロジェクト解説動画

2021年7月28日、本プロジェクトを紹介するイベント、『SHOWCASE vol.4 オンラインコミュニケーションどう設計する? 事例 オンライン研修開発ガイド「PATHWAYS」』を開催。プロジェクトを担当したディレクターの入谷と、立命館大学の金先生が登壇し、どのようにこのプロジェクトを設計・実施し、知識として導き出したのか、またこの開発ガイドがどのように活用されているのか解説しました。ぜひご覧ください。

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地場産業の活性化を目指すビジネスモデル開発
プレイヤーを育むオンラインワーク