はじめてのBtoCプロダクトづくり
八尾市の技術力を世界へ届けるYAOYA PROJECT2020
Outline
フラッグシップとなる商品開発を通じて、地域のリードカンパニーを育む
八尾市の中小企業たちは、⾼い技術⼒で多くの⼤⼿メーカーを⽀えてきました。しかしグローバル化にともなう価格競争の激化により、下請けやOEMを主とした取り組みでは、事業を維持するのが難しくなってきています。これまで生き残ってきた中小企業は、技術力はあるものの、自社の社会的ポジションを明確にし、自社商品を開発するためのノウハウや経験が不足しています。
ロフトワークと八尾市は、そんな中小企業が下請けから脱却し、多様な人材が入り混じりながら次々と新たな挑戦が生まれるイノベーションフレンドリーな社内体制をつくるべく、2019年に続きYAOYA PROJECT2020を実施しました。
プロジェクトの軸にしたのは、デザイン経営の視点です。ビジョンの更新や社外とのオープンな共創関係の構築は、価格競争に陥らずに成長を目指す際の大きなポイントとなります。そこで、二年目となる同プロジェクトでは、ロフトワークが運営するプラットフォームAWRDにてコンペティションを開催し、全国のクリエイターと企業をマッチング。クリエイターと中小企業がタッグを組み、フィールドリサーチや勉強会、メンタリングを通じて、企業の魅力を言語化しながら、BtoCの商品開発に挑みました。
特に重点をおいたのはフィールドリサーチや勉強会です。他者や他社に触れ社会との接地面を知ることで、自社の社会的なポジションや強みを明らかにし、魅力を言語化する力を醸成する狙いです。このステップは中小企業が自社ブランドの確立し、デザイン経営に近づくための重要なプロセスとなります。
参加した企業8社は、自社の技術や想いがこもったフラッグシップ商品を開発するためのマインドセットや観察手法、開発プロセスを習得しながら、プロトタイプを完成させました。各社はプロジェクト終了後も商品開発を継続し、クラウドファンディングなどを通じて市場開拓を進めています。
二年間の活動を通じて商品化されたプロダクトは4種(2021年4月現在)。プロジェクトから生まれた商品は、錦城護謨株式会社のシリコーンロックグラスを筆頭に、八尾市を代表するプロダクトに育ち始めています。
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体制
- プロジェクト期間:2020年6月〜2020年11月
- プロジェクトメンバー
クライアント:八尾市
プロデューサー:小島 和人
プロジェクトマネージャー:堤 大樹
アートディレクター:小川 敦子
ディレクター:䂖井 誠、飯田 隼矢
AWRD審査員:新山 直広(TSUGI)、松原 亨(マガジンハウス社)、矢島 里佳(株式会社和える)
メンター:堀内 康広(トランクデザイン株式会社)、⼩林 新也(合同会社シーラカンス⾷堂)
イラスト:川原 瑞丸
ライティング:池尾 優、ヒラヤマヤスコ
参加企業:アベル株式会社、株式会社網専、株式会社コダマガラス、谷元フスマ工飾株式会社、株式会社友安製作所、藤田金属株式会社、株式会社柳田製作所、シルバー株式会社
採択クリエイター:大杉 和美(妄想工場)、ヤマダ クミ(燈芯舎)、シーラカンス食堂、三島 大世、TRUNK DESIGN、清水 覚、YAMAMOTO Yusuke
Outputs
YAOYA PROJECTから生まれたプロダクト
Process
YAOYA PROJECT2020 プロセス
STEP0) 参加企業を公募。ヒアリングから、各社の魅力や特徴を言語化する
STEP1) 参加企業の技術や素材を開示し、AWRDにてアイデア・パートナーを集める
STEP2) 目指したい市場やプロダクト、競合他社をリサーチする
STEP3) ものをつくる、人に見てもらう、フィードバックを得る
Points
1) 「Build to Think」考えるために手を動かす、最初から完璧を求めない
YAOYA PROJECTで大切にしていることのひとつは「Build to Think(=考えるために手を動かす)」。頭の中や机上で悶々と考え込むのではなく、とにかく手を動かして思考を深めていきます。
また最初から完璧なものなんて、できなくて当たり前。こうしたプロセスを経ることで「失敗策を見られるなんて、恥ずかしい」という思い込みを払拭し、「とにかく形にし、人に見せてフィードバックを受け入れる」というマインドへと変わっていきます。
2年目では鯖江市に足を運び、プロダクト開発に成功している企業から失敗の話も聞いてまわりました。一見成功しているように見える企業の失敗談を聞くことで、未知の世界へ踏み出す勇気を持つことができます。
鯖江にて実施したフィールドリサーチの様子
TSUGIの新山氏と共同し、福井県・鯖江にて2泊3日のフィールドリサーチを実施。参加企業が「クリエイターとディスカッションを行うことで新規プロダクト開発がブランディングの中で果たす役割」を見つけることを目指しました。
2) 違いを見つけ、企業の“らしさ”を言語化する力を磨く
中小企業が営業力やブランド力を高めるには、自社の魅力を知り「自分たち“らしさ”を言語化する」ことが不可欠です。ところが、これを自社だけでやるのは難しい。自分たち“らしさ”を言語化するには、なにかと比較したり、外に出て「好きなもの(=価値観が合うもの)」に出会い、「なぜそれを好きだと思ったのか?」を言葉で残していく必要があります。
そこでYAOYA PROJECTでは自社の価値観と社会との接地面を見つける「視点」を養うため「ものの見方と面白がり方」というイベントを実施し、各事業者がレポートを作成。フィールドリサーチでは「好き」と思った物事をレポートしてもらい、互いに発表しあう機会を設け、言語化する体験を重ねました。
こうして自社とは違う価値観に触れる機会を用意することで、自社だけでは見えなかった自分たち“らしさ”を言語化する後押しをしています。
Member
メンバーズボイス
“私がYAOYA PJで大切に感じたことはチームの力で挑むことです。それだけその製品に想いが注ぎ込まれ、まるで魂が吹き込まれたようなものづくりとなり、結果、多くの方の共感や「使ってみたい」という欲求が生まれました。ひたむきにものづくり企業が挑戦するストーリーを多くの方が知ることで、そこにはモノではない価値が生まれ、人はそこに新たな価値を見出す。今後もこのまちから生まれるものづくり企業の挑戦を楽しみください。”
八尾市 経済環境部産業政策課 松尾 泰貴
“プロジェクトの担当者である松尾さんは、誰よりも手を動かし、そして変化を受け入れられる方でした。だからこそこのプロジェクトでは一定の成果が得られたのだと思います。
僕たちLWができることは「成果物をつくること」でも、「誰かを導く」ことでもなく、誰かと肩を並べて「学ぶ」ことだけなんじゃないかと最近思うのです。派手なプロダクトも、贅沢なコンテンツも、背伸びしたものができてもしょうがないんです。自分の言葉で語れることが大切で。
いまの自分たちを知るために学びがあって、そしてまた学ぶからこそ残された成長の余地に心躍らせることができる。その姿をプロジェクトの言い出しっぺである八尾市が率先して見せることは、参加企業の方にとっても勇気づけられたと思います。”
ロフトワーク クリエイティブディレクター 堤 大樹
Platform
多様な視点で共創するなら 、“AWRD (アワード)”
ロフトワークが運営するエントリー型のオープンなプラットフォーム、AWRD。
パンデミックやテクノロジーの進化、多様化する価値観、サステナブルな社会への移行など──常に変化する社会において、私たちは多くの課題に直面しています。AWRDはこれらの課題解決に向けて、アワードやハッカソンなどの手法を通じて世界中のクリエイターネットワークとのコラボレーション・協働を支援し、価値創出を促進します。
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