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浅見 和彦 2016.02.29

海外の名門大学に学ぶ、大学サイトのトレンド

ロフトワークは様々な業界のビジネスをご支援しています。ここ数年特に熱を帯びるのが、「大学」にまつわるプロジェクトで、背景にあるのは、2018年からはじまるという18歳人口の減少。そして2020年のセンター試験廃止に伴う制度改革です。

ターゲットである受験生の数が減る。

市場規模に関わる大きなインパクトを前に、これまでの全てのステークホルダーのための情報提供から、訴求方法が大きく変わろうとしています。せっかくWebサイトやソーシャルメディアで受験生と接点が持てても、伝え方を誤るとイメージの低下になりかねません。そんな時代。大学から受験生に対してどのようなアピール手法が有効なのか、プロデューサーとして、日々考えている事を少しまとめてみたいと思います。

大学Webサイトのご提案を作る際、国内に限らず、海外の大学のWebサイトをよくみています。そこで今回は、海外の大学サイトのトレンドから、受験生へのアピールするヒントを探ってみることにします。

海外の超有名大学から学ぶ

海外の大学Webサイトに注目したのは以下2つの仮説からです。

・世界中の有名大学を相手に、優秀な学生を獲得するためのハードな競争で、表現も内容で洗練されているはず
・現地に足を運べない世界中の学生の「行ってみたい」を醸成するために、いきたくなるしかけが用意されているはず

海外の超有名大学はとにかく多くの受験生を獲得したいというよりも、学生のレベルを上げたいという思惑から、世界中にいるごく一部の有望な志願者をより多く獲得したいと考えているはず。

つまり、常に過酷な受験生獲得競争の中にあるのではないかと考えました。これは18歳以下の受験生人口が減少する日本国内の大学が直面しつつある課題と遠からずなのでは?と考えました。

そこで今回はタイムズ・ハイアー・エデュケーションが発表した世界大学ランキングから上位20校を対象としました。

1  カリフォルニア工科大学 USA
2  オックスフォード大学 UK
3  スタンフォード大学 USA
4  ケンブリッジ大学 UK
5  マサチューセッツ工科大学(MIT) USA
6  ハーバード大学 USA
7  プリンストン大学 USA
8  インペリアル・カレッジ・ロンドン UK
9  スイス連邦工科大学チューリッヒ校 スイス
10 シカゴ大学 USA
11 ジョンズ・ホプキンス大学 USA
12 イェール大学 USA
13 カリフォルニア大学バークレー校 USA
14 ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL) UK
15 コロンビア大学 USA
16 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA) USA
17 ペンシルベニア大学 USA
18 コーネル大学 USA
19 トロント大学 カナダ
20 デューク大学 USA

トレンドの最前線。リッチな動画とリアルな写真

20校のサイトを見てわかるのは、グローバルナビゲーションやサイト構造、各大学がもつ強みなどしっかりと作られていることです。(当たり前ですが)そんな中で特に印象的だったのは、各校とも動画や写真を活用したアプローチ方法が非常に優れいている点で、ここにトレンドをみることができます。それぞれコンテンツカテゴリ毎に紹介します。

大学紹介

About UCL

Columbia University in the City of New York: "A Doubled Magic"

学部紹介

オックスフォード大学は各学部の紹介を動画で行っており、テキストで読むよりも分かりやすいアプローチを取っています。また、どの動画も1分程度という事もあり、サクッと見ることができるのもポイントです。

Humanities Division

Medical Sciences Division

入試広報

入試広報ページ内で動画を用いるケースも多く、人物を登場させる、アニメーションを使う、あまりナレーションも入れず、画で見せるなどがありますが、いずれもそれぞれの大学へ入学したくなるような内容になっており、一般的な大学紹介とは異なるアプローチであると見て取れます。また、ハーバード大学の動画の最後にはアメリカ以外にも幅広い国から学生が多いことも、多様な学生を受け入れている現状も感じることが出来ます。

Oxford University - How to choose a college - Undergraduate Admissions

Experience Princeton

背景動画

ジョンズ・ホプキンス大学のように、TOPページのファーストビューの背景に動画を用いるケースもあります。アクセスすると自動で再生が開始され、とにもかくにも動画を見て欲しい!という意気込みを感じます。大学名で検索した場合、TOPページを最初に閲覧することが考えられますが、その際にいきなり動画が目に入る事で、しっかりプロモーション出来る点はメリットだと考えられます。Webサイト全体のトレンドでもあり、先端的なイメージを出す効果もあります。コーネル大学やスタンフォード大学は背景だけでなくコンテンツとしてもに使用しています。

短時間で大学の魅力を伝えるには、どれだけ濃い情報を受験生に提供できるかが鍵になっています。読んで理解するテキストを中心とした情報に比べ、圧倒的な情報量を提供することができます。そのため、動画には、学生、学校関係者、授業やキャンパスなどの様子、歴史など、様々な要素が入っています。そして、志願者に対して興味をそそり、この大学に行きたいと思わせるために、どの動画もしっかりと作りこまれており、思わず最後まで見てしまいますし、自分でも入りたくなります。

このクオリティによってユーザーの印象も左右されるためか、国内外にライバルが多い海外の有名大学は特にこだわりを感じます。これは国内の大学でも参考にしたいポイントではないでしょうか。

ソーシャルメディアの移り変わりとinstagramの台頭

動画に次いで目につくのは、ソーシャルメディアの積極的な活用です。国内でも多くの大学が取り組みをスタートさせていますが、ユーザーの行動特性にあわせたメディア選定と情報発信は海外でも有効であることがわかります。そしてこの分野はやはり海外の方が色々とスピードが早い印象です。

これまでは、Facebook、twitter、youtubeが主なメディアとして活用されていましたが、最近のトレンドはinstagram、linkedin、soundcloud、flickr、google+など。ユーザーの利用ツールの進化に伴い、大学側も柔軟に対応を求められています。

その中でも、instagramは今回の対象20校の内、16校が運用していました。日本でも月間利用者が800万人を超え更に利用者は増えています。また、利用者の半数以上は20代以下という調査結果が出ているように高校生にも利用者が多いSNSのため、まだ運用をしていない国内大学では活用される事をオススメします。

前述の動画制作はハードルが高い部分もありますが、気軽に始められる施策としてinstagramなどによる写真でリアルな大学の魅力をアピールする方法もありそうです。

キャンパスや施設、学生の様子、歴史など、切り口は様々ですが、動画でのアプローチと似ている点が多々あります。そして、一つ一つの画像のクオリティに注意して制作されています。

一眼レフカメラやフォトショップを利用して、時間をかけて制作したような画像もありますが、共通しているのは、自分たちのリアルを発信していることです。スマートフォンのカメラやアプリを利用して制作したような画像も多く見受けられますので、外部に委託することなく、学内で運用が出来る点もメリットの一つです。

きちんと自学の魅力を考えて伝える

冒頭、伝え方を誤るとイメージの低下になりかねませんと書きましたが、誰もが知っている海外の名門大学でも、大学のリアルを適切に伝える為にクオリティにこだわり、動画や写真でコンテンツを作っています。

歴史がない、画になるような建物がない、インタビューに協力してくれる教授がいないなどなど、悩まれるポイントもあるかと思いますが、そんな時こそ外部の視点を入れて自学の魅力を見つめなおすことが有効かもしれません。

今回は「受験生の獲得」というテーマで海外の名門大学の傾向とトレンドを調べ、動画やinstagramの実例を私なりの切り口でご紹介しましたが、日本の大学独自のやり方など他にも色々とできることはあると思います。

また、そもそも大学の知名度を上げたいなどの課題を持たれている場合も含め、色々と新しい挑戦を支援しておりますので、お気軽にご相談ください。

浅見 和彦

Author浅見 和彦(シニアプロデューサー)

音楽、家電、インテリア業界を経て2014年にプロデューサーとして入社。クライアントの顕在的課題だけに囚われず、潜在的課題を引き出すこと。ユーザーインサイトに基づいたビジネスデザインを描き、中長期的戦略に落としたプロジェクト支援を心がけている。代表事例は、グローバルにVR/ARコミュニティ創出やムーブメントづくりに挑戦している「NEWVIEW」Projectや、デザインリサーチからサービスデザインを行った中小企業向け少額融資サービス「ALTOA」など。その他にも、大規模Webサイトのリニューアルや、製品ブランディング、街づくりなど幅広いプロデュース経験を持つ。最近のブームは寄席通い。

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