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大森 誠 2021.06.17

論理的思考の学び方-パンケーキから学ぶプログラミング的思考のトレーニング

本記事は2013年5月に公開した記事を一部加筆修正し、再公開しています。

料理もビジネスパーソンも、「論理的思考」が大事!

「語りえぬものについては、沈黙しなければならない」 ――ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン(1889-1951)

ぼくたちには以下の課題がありました。

  • お客さんとの打ち合わせがうまくいかない
  • 何が分からないのかが分からない経験の浅いディレクターのスキルアップ

これらの課題に対して「論理的思考」をどのようにインプットしていくか。ただ学ぶだけでなく楽しく実務に即した形で学びを行う班活動を発足しました。その名も「プログラミング脳班」。プログラミングの考え方で論理的思考を学ぶ班です。

ここで言う「プログラミング」はコードを書いていくことではありません。プログラム設計に用いられる「フローチャート」を学び、論理的思考力を鍛えてきました。 そして先月、3ヶ月間にわたる班活動の締めくくりとして、社内ワークショップ「論理パンケーキ論考」を開催しました。料理とプログラムには、実は共通点があります。状況判断をしながら次のアクションを決めること、工程の順序が前後したり抜け漏れがあったりすると良いものができあがらないこと。

料理もプログラムも、論理的思考が求められるのです。 「レシピをフローチャートに書き起こし、それを忠実に実践する」…論理的思考の手法や鍛え方を学びつつ、パンケーキを作って食べられる!という二重においしいワークを実施しました。

かんたん講義「フローチャートとは?」

フローチャート

フローチャートとは、連続する「実行」の遷移、つまり一連の「手続き」を表現するための図のこと。ビジネスプロセスやソフトウェアプロセスの一連のアクションを記述する方法として用いられます。

ある事象の開始から終了までの機能を実行される順序にしたがって、スタートは黒丸●、終了状態は◉、分岐は菱形◇など、表記ルールを用い上記図のように記述します。

パンケーキ作りのフローチャートを書いてみよう!

ポイント

  • インタビュアーとインタビュイーに分けたこと
    経験が浅かったり初めて行うことは不安だったりうまくいかない事の方が多いですが、実は経験豊富な方が身近にいたりします。そんな時に自分が何が分からないのかが分かりきちんと質問できるスキルを持ってほしい。そんな狙いからインタビュアーとインタビュイーに分けました

パンケーキ作りの一連の「手続き」をフローチャートで表現することからワークは始まります。参加者は3つのグループに分かれ、それぞれ「材料準備」「混ぜる」「焼く」というフェーズを分担することになりました。

グループ内ではインタビュアー(質問者)とインタビュイー(回答者)を決め、「パンケーキの粉を袋から出して、ボールに移す」「ボールに卵を割って入れる」などといったパンケーキ作りの工程を細かく聞き出して付箋で並べます。ポイントは、想像力を働かせながら、シーケンシャルに、始まりから終わりまでの作業を細かく洗い出していくこと。

ここですべての工程を洗い出せていないと、後で大変な結果を招くことになってしまいます!並べた付箋に、次の工程へ移るタイミング(分岐と条件)を書き足して、フローチャートを完成させていきます。

インタビュアー(質問者)とインタビュイー(回答者)でパンケーキづくりのフローチャートをつくる

フェーズ別のフローチャートができあがったところで、他のグループと見せ合ってディスカッションをしてみました。完璧だ、と思っていた図にも「混ぜる、っていつまで混ぜればいいの?」「焼く前の“フライパンを温める”段階ではどれくらい温めればいいの?」など、第三者からの鋭いツッコミがたくさん!日頃無意識のうちにいろいろな判断をしているんだなと気付きました。

出来上がったフローチャート

I AM A MACHINE. ~フローチャートに沿ってパンケーキを作ってみよう!~

ポイント

  • フローチャートに書かれていることだけを実行
    書かれていることだけを実行することでパンケーキの工程を可視化できているか。きちんと聞き出させているかを体感する狙いがありました

フローチャートが完成したら、待ちに待ったパンケーキ作りの実践です!各グループは、それぞれが作成したフローチャートを別のグループに渡し、他者の作った図に従ってパンケーキを作ります。「フローチャートに書かれていない動作を行なってはいけない」のが絶対のルール。アクションを実行する人は、まるでロボットになったかのように、フローチャートに書かれてあることだけを、指示通りに実行していきました。

フローチャートの通りに料理をするのがルール。
混ぜるときも、機械のようにフローチャートに従う。

ところが……「“牛乳を具に入れる”って一体どれくらい入れればいいの?」「いつになったら火を止めればいいんだ~??」などなど、フローチャートに数量などの重要な情報を書き忘れていたことにより、数々の壁にブチ当たることに…。焼く時間が長すぎて、結構焦げてしましました(笑)。

焦げた……!! 焼く時間や火加減の設定が抜けていました。惜しい!

そんなこんなのトラブルにあいながらも、何とか出来上がりました。 完成したパンケーキはこちらです!(裏側の焼き加減はばっちり(笑))

おいしくいただきました。

パンケーキを食しながら、論理的思考トレーニングを振り返る

焼きあがったパンケーキを味わいながら今回のワークを振り返ってみると…
「普段無意識でやっていることを、有意識のエリアに持ち出して、分岐やジョインなどの概念を当てはめるのが難しかった」。
「言語化やロジックを考える訓練になりそう」。
「見える化重要ですね。もっと色々なことに当てはめて試してみたい。」
といった感想が参加者から挙がりました。

真面目に振り返りをしているところ。発見がたくさんありました。

”パンケーキ作り”という単純な作業でも、作業工程にひとつでも抜け漏れやダブりがあると、後々の作業や結果に影響が出てしまいます。進行をスムーズに進め、良い結果を出すには、必要な情報をきちんと洗い出して可視化し、順序立てて説明することの重要さを改めて感じました。

日常の会話だと曖昧でもなんとなくコミュニケーションがとれることも多いですが、仕事の多くの場面では順序立てて論理的に考え説明することが求められます。人間と違って融通が利かないコンピュータ相手のプログラミングを学べば、論理的思考力を磨くことができる。今回のワークは人間相手でしたが、まるでコンピュータのようにフローチャートに書かれてある通りに動作を行なうことで、論理的思考力を鍛えるトレーニングになったのではないでしょうか。

みなさんもパンケーキワークショップ、是非試してみてください。フローチャートを活用した分かりやすいドキュメントを作れるようになったり、論理的思考力を鍛えることで、日々の業務がほんの少しスムーズになりそうですよ!

大森 誠

Author大森 誠(テクニカルグループ テクニカルディレクター)

大手SierでのSEを経て、2007年ロフトワークに入社。基幹システムや情報系システムの経験をもとに大規模なBtoC向けWebサイトや基幹システムとCMSの連携、官公庁のWebサイト構築まで様々な規模のリニューアルプロジェクトを支援している。バックエンドの知識を生かした、インフラ設計やCDNの設計もサポート。難解な言葉が並びがちなテクニカルディレクションにおいても。顧客に伝わる言葉を常にを心がけている。2016年5月より農家とダブルワーク中。ふるさとの味伝承士の義母から教わった手打ちうどんが得意。

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