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小菅 奈穂子 2022.01.12

連載「コミュニティ運営の “中の人”が語る〜人財マネジメント術〜」
#2 施設の未来を作ると言っても過言ではない採用

「SHIBUYA QWS」でコミュニティマネージャーを務める小菅による、共創施設の運営を言語化する連載シリーズ。第二回目は「採用」についてです。

こんにちは。ロフトワークLayout Unit ディレクターの小菅です。

2019年6月に入社し、SHIBUYA QWSという共創施設のコミュニティマネージャーとして、入社してから今に至るまで施設で働くスタッフの採用と教育を担当しています。しかし、人事系の仕事は全くの初心者。前職は、ぬいぐるみデザイナー見習いや社会人向けWebデザイナーの学校スタッフと畑違い。「共創施設とはなにか?」「コミュニティとは何か?」「人を育てるとは何か?」右も左も分からないなかで試行錯誤しながら、運営や人材マネジメントに対するナレッジを溜めてきました。このたび、共創施設の運営を言語化をしてみたいと考え、連載記事を書くことにしました。タイトルは、ズバリ「コミュニティ運営の“中の人”が語る〜人財マネジメント術〜」です。

第2回目は「採用」についてです。「どんな人を採用したら良いの?」「共創施設で働くスタッフに向いてるタイプって?」2年の採用担当経験から見出した人物像と採用ポイントをまとめました。採用計画や面接の際にお役立てください。

小菅 奈穂子

Author小菅 奈穂子(Layout Unit ディレクター / SHIBUYA QWS コミュニティマネージャー)

埼玉県生まれ。女子美術大学院デザイン専攻ヒーリングアート領域修了。アートやデザインを通して、人と関わりたいと考え、モノづくりに関わる仕事を目指す。ぬいぐるみメーカーのデザイナー兼営業事務を2年、Webデザイナーや動画クリエイターを育成する社会人向けのスクールにて4年働き、2019年6月にロフトワークへジョイン。スクール運営や営業経験を生かし、SHIBUYA QWSのコミュニティマネージャーとして場づくりをする仕事に従事。ヒト、モノ、コトをつなげる仕事にワクワクする毎日。

SHIUBYA QWSについて

2019年11月、渋谷駅直結・直上の大規模複合施設「渋谷スクランブルスクエア」の15階に開業した、多様な人たちが交差交流し、社会価値につながる種を生み出す会員制の共創施設「SHIUBYA QWS(以下、QWS)」。

コミュニティコンセプトを「スクランブルソサエティ」とし、多種多様な人が集うコミュニティでの交流や領域横断の取り組みから化学反応が生まれ、未来に向けた価値創造を生み出す新拠点として注目を集め続けています。

渋谷スクランブルスクエア株式会社とロフトワークは、QWSから持続的に新たな社会価値を生み出し続けるために共同の運営プロジェクトチームを発足し、開業準備フェーズから活動を開始。QWSの共創コミュニティを活性化させるべく、会員向けプログラムの設計、施設スタッフ採用・育成のほか、アカデミア(大学)やベンチャーキャピタル、NPOといった多彩なパートナーとのプログラム連携を進めています。

ズバリ、共創施設のスタッフに適した人財とは?押さえておきたい3つのポイント

1. 人の役立つことに喜びを感じ、サポート役としてのプロ意識をもてるか

誰かのために仕事をした方が、自分のために何かをするよりも喜びを感じる人がコミュニケーターに向いています。

共創施設には「こんなビジネスをやってみたい!」「こんなコミュニティをつくってみたい!」「社会課題を自分で解決したい!」などの想いを持った人が集まり、日々、自分のプロジェクトの課題に向き合って活動をしています。コミュニケーターを含め私たち施設運営者は、会員さんが実現したい未来に向かって最大限の力が発揮できるように、プロジェクトの進捗を把握して人やプログラムをつなげたり、SNSやPR援助をしてサポートするのがお仕事です。

会員さんがノリに乗っているときは一緒に喜んだり、会員さんが悩みを抱えているときは雑談したり、壁打ちして一緒に悩みを分かち合ったり、会員さんが1人で前に進められるように優しく後押しをします。

後押しの方法は、多数あるため私たちがやれることは無限にあります。仕事の中には、会員さんに見えないところで支えている地味な仕事もあって、ゴミ捨てや細かなデータ入力、清掃、皆が快適に過ごすための注意喚起など。これらも巡り巡って会員さんのプロジェクトを前に進めるサポートにつながることを意識できるかが重要です。

逆に常に自分が中心で物事を動かしたかったり、MYプロジェクトをやってみたい方にはサポート役は正直あまり向いていません。自身がサポート役であることにプライドを持って、サポート道を極めたいと思っているか、施設が目指すコンセプト実現のためのプロジェクトの一員であることを意識できるかは大事なポイントとなります。

2.「好奇心のアンテナ」を日々磨き、コミュニケーションの引き出しを増やせるか

普段からアンテナを張りめぐらし、日常生活で目に入った光景や人との会話などから、「これ、面白いな」「これ、何でだろう?」と好奇心の羽を自由に広げている人も良いですね。共創施設は多種多様な人々が集うコミュニティが集まる場で、今まで出会ったことがない人や価値観にあふれています。そんな方々と対話をするときに、自分の引き出しをフル活用し、コミュニケーションの中でフックをかけながら、お話を広げていきます。時には、自分の持っている引き出しでは対応できないときも出てきますが、そんな時はまた、新しい引き出しをつくるチャンスだと思って学べる人にとって、とてもやりがいのある場所です。

3. コミュニケーションをためらわずに、心の距離を軽やかに飛び越えられるか

人は、ある程度距離が詰まるまではお互いに距離を取りたがりますよね。かくいう私も初めての人とお話しする際は警戒心が強く、距離を縮めるのに時間がかかる人間です。

同じように、初めてQWSに訪れた会員さんの立場になると、まったく知らない人たちが集まるコミュニティに入り込むのは緊張しますよね。初めて施設を利用する会員さんが、気持ちよくコミュニティに入る一歩を後押しするために、コミュニケーターが行うべきは「先手のコミュニケーション」です。利用者がまだ挨拶しづらい時に挨拶をする、先にgiveをする。どういうコミュニケーションをとるのが、コミュニティ内の振る舞い方なのかを相手に先んじて行うことが大事です。

初対面のときのある距離感を軽やかに飛び越えて、まずは話してみるフットワークの軽さを持ち合わせているか人との距離の詰め方やコミュニケーションの距離を客観的に見ることができる人は向いているお仕事だと思います。

3つのポイントの中で一番重要なのは「人の役立つことに喜びを感じ、サポート役としてのプロ意識をもてるか」になります。残り2つは入社後に磨いていくこともできるので、興味関心があるか確認するのが良いと思います。

採用と不採用の分岐点

次に、採用面接のときに、何に注意して面接をしているのかを紹介したいと思います。

1. 施設のコンセプトに共感し、施設と共に成長できる人財か

施設のコンセプトにきちんと共感しているかに関しては、スキルや経験よりも重視しています。共創施設のスタッフに適した人だとしても、コンセプトへの共感がないと判断した場合、採用を見送ります。なぜ、この施設なのか?なぜ、コンセプトに共感したのか?初めて施設を知ったときに、どう感じて応募に至ったのか、自分なりのエピソードを交えて面接で語ってもらうようしつこく質問をしていきます。「相手がどんな意図でその言葉を発しているのか」言葉の背景を読み取っていきましょう。

さらに「変化することを前提に施設と共に成長できる人」であるかどうかも見ています。施設が成長する中で、1年前の当たり前が、2年目でも良しとするのは稀です。1mmでもより良い運営を目指せる人財か見極めるために、過去の接客やアルバイト経験のエピソードから行動に至った「とっかかり」部分を確認するのがおすすめです。施設で働く際もオリジナルの視点で業務に取り組み、よりよい場作りに貢献してくれるでしょう。

2.チーム一丸で施設を共につくれる仲間になれるか

一緒に働く仲間の気持ちも理解して一緒に仕事ができる人かどうかも見極める必要があると思います。例えば、QWSでは問いには優劣がなく、問いの前では皆平等という考えがあります。それは、会員さんの問いに対してだけではなく、一緒に働く仲間の問いに対しても同じことが言えます。

コミュニケーターとして一緒に働く仲間がどんなことに関心があって、今どんなことに疑問や違和感を感じてるのか、感じ取ってみる。その人が持つ価値観を尊重しながら、より良い場作りができるように対話を重ねられる人かをみていきましょう。

例えばサークルや部活動のときのチームで動く時に、自分はどんなキャラクターや役割で、どう振舞ってきたのか、どうしてそのような行動をとったのかまでお話しを引き出せると、チームに馴染める人かどうか判断することができます。

3.会員さんと話してる風景が自然にイメージできるか

施設の運営者で様々なステークホルダーを繋げる人だとを聞くと、すぐに想起できるのかコミュニケーションが上手な人=お話しするのが上手い人と思う方も多いのではないでしょうか。もちろん、そこも大事なのですが、私が重視しているのは「非言語コミュニケーション」です。

表情や態度、声のトーンなども見極めポイント。目を見て話せているか、相づちは入れられているか、その場にあった感情を出せているかなど、ポイントはたくさんあります。表にまとめるとこんな感じです。

 

検討事項

見極めどころ

ポイント

姿勢

歩き方、姿勢、席をたつとき

椅子から立つときなどに音を出すと不快な雰囲気を相手に与えがち。周囲に配慮した立ち居振る舞いができるかをチェック。

話す時や聞く時にこちらの目を見ているか、時に目線を外す技術があるか(適度にあごラインに目線をずらす)

きょろきろしすぎている場合は注意散漫、集中力が欠けている印象を相手に与えるので要注意。

声のトーンは明るくハキハキ話しているか、声がくぐもらずに相手に伝えようとしているか

話すスピードが早すぎる人は要注意。

動作

質問する反応スピード、よそよそしくなく自然体な態度、回答のテンポリズムが適切か

質問や回答する際に自分の考えを整理するために間をおいて反応しているか。あまりにも早すぎると考えていない印象を受け、あまりにも遅すぎると不安になってしまいます。

頷き

頷きをいれるのが上手か

頷きが少ない人は分かっているか分からないのでコミュニケーションをするときに不安を感じます。「あなたの話を聞いていますよ」と共感の意味をこめた頷きができるかがポイント。

感情

場に適した感情が自然に出るか、共感の際に微笑むことができるか

接客業でもあるので、自身の嫌な気分の時に嫌な顔、怪訝な顔は極力避けれるよう感情のコントロールができるかどうか。

 

面接の中でこれらの項目をおさえながら観察していると、だんだんと会員さんと面接者が楽しくお話をしている情景が見えてきます。会員の●●さんとこんな風に会話してくれそうだな、会員の●●さんのプロジェクトの悩みに寄り添ってくれそうだな。具体的な会員さんの名前が思い浮かんだら、採用以外思いつきません。

非言語コミュニケーションを見るためにも、コロナ禍でもオフライン面談は欠かせないと感じいています。非言語コミュニケーションは会員さんに与える第一印象と関係づくりに大切なコミュニケーションです。

最後に、面接官は「採用の責任」にも自覚をもって挑んで欲しいと思います。短い時間でも一緒に働く仲間の人生にもつながるので、ミスマッチがお互いにおきないよう責任をもって採用のジャッジをしていきたいですね。

次回は「共育」について。お楽しみに!

以上、 「コミュニティ運営の“中の人”が語る〜人財マネジメント術〜」の第2回目を終えたいと思います。次回は、人財育成にまつわる「共育」をテーマにお話をしていきたいと思います。

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