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村田 菜生 2022.01.14

プロジェクトマネジメントって実は柔らかい?
ユニバーサルデザインを学んだ私の「5つの発見」

「プロジェクトマネジメントは堅苦しい」と思っているあなたへ

こんにちは。ロフトワーク京都のディレクター、村田です。入社は2021年8月、ついこの間です。

前職は、ユニバーサルデザインのコンサルティング会社で約4年間、デザイナーとして働いていました。障害のある方へ向けた公共施設のバリアフリーマップや触地図の制作、商業施設のトイレやエレベーターなどのサイン調査、その他社内サービスのロゴマークやチラシ、パンフレット、イラスト制作など、幅広く関わらせていただきました。

過去に制作してきたもの。障害のある方の声を大切に、何よりも自分自身が楽しみながら制作をしてきました。

私がロフトワークに入ったのは、デザインやものづくりが素直に好きという想いと障害のある方をはじめ、多様な方とのコミュニケーションの経験を傍らに、手を動かすだけでなく企画や設計といった土壌を耕すところまで視野を拡げたいと思ったから。入社後、まじまじと対峙することになったのは、「プロジェクトマネジメント」(以下、PM)という単語でした。第一印象は、なんだか堅苦しそう…。だって、本を手に取りページをめくると、時間とコスト、スコープ、ステークホルダー等をマネジメントするであったり、プロジェクトの変化をコントロールするであったり、体系的な言葉が並べられていて、そして横文字がいっぱい。

そんな印象を払拭するイベント、『みんなでつくる(ための)プロジェクトマネジメント#1柔らかいチームとリーダーシップ』が、開催されました。共創についてゲストの実践と研究の視点を交えて、知見を共有しながら、みんなでつくるための基盤づくりや、チームのいい空気感をつくるコツなどが詰まった90分間。イベントを通して、PMっておもしろいと感じた5つの発見をご紹介します。私のようにPMは難しそうと感じている方に向けて、その印象がやわらかく溶けていったら良いなという願いを込めて……。

村田 菜生

Author村田 菜生(クリエイティブディレクター)

大阪府出身。京都女子大学で造形意匠を専攻。在学中に、広瀬浩二郎氏の著書『さわる文化への招待 触覚で見る手学問のすすめ』(世界思想社、2009)を読んだことをきっかけに、触覚をテーマとして卒業制作に取り組む。卒業後、ユニバーサルデザインのコンサルティング会社で約4年間デザイナーとして勤務。障害のある当事者の視点を活かしたバリアフリーマップやガイドブックの他、ロゴマーク、イラストなどの制作に携わりながら、「わかりやすいデザイン」とは何なのかを考える。2021年、ロフトワークのクリエイティブにとことん向き合う姿勢に惹かれ入社。自分自身も一緒に楽しむ姿勢を忘れず、障害の有無にこだわらない多様な視点を持って課題解決に取り組む。趣味は、キリングッズ集め。

Profile

イベントをご覧いただけます

イベント概要

『みんなでつくる(ための)プロジェクトマネジメント#1柔らかいチームとリーダーシップ』

▼ゲスト/スピーカー

  • 吉備 友理恵さん|株式会社日建設計 イノベーションセンター プロジェクトデザイナー / 一般社団法人FCAJ リサーチャー
    詳しくは吉備 友理恵さん noteをご覧ください>>
  • 上ノ薗 正人|株式会社ロフトワーク クリエイティブディレクター Profile
  • 長島 絵未|株式会社ロフトワーク MTRL Unit/ディレクター Profile

プロジェクトマネジメントってやわらかい?5つの発見

1)メンバーが得意なことを活かしながら、今のチームの最高を考える

資料の隙間からプロジェクトメンバーの顔がひょっこりのぞいているような、何やら楽しそうな写真。これは、バンドー化学株式会社様との案件の中で実施されたワークショップ風景です。お客様と議論をしていると、真面目な雰囲気で表情が堅くなってしまったり、柔軟な思考を持てなくなってしまったりすることがあります。ここでは切り貼りされたメンバーの顔写真を資料に添えるといったささやかな遊び心が、結果的にイメージの解像度が高い議論になったことに加え、何よりも笑顔溢れる時間となったそうです。こんな作業よりも他にやることがあるんじゃないかと指摘がありそうと思いきや、「思うようにやりましょう!」と、メンバーに伝えたプロジェクトマネージャーの上ノ薗さん。各々が得意なことを活かしつつ、過去のやり方にとらわれないで今のチームの最高を考えることもPMなんだと発見でした。

ワークショップの様子。切り貼りされた顔と目が合うとふと笑顔に。

2)目的をみんなでつくり、目線をあわせる

価値観が多様化し、複雑になってきている昨今。イベントの中で吉備さんは、目的がすでに与えられていて、役割が上から割り当てられていくような従来のプロジェクト(下図左)から、目的から一緒に考え、いろんな関わり方がある中でフラットな関係性を築き膨らんでいくような共創するプロジェクト(下図右)が重要だと語ります。これからのPMで大切なことは、多様な方の想いを引き出しながら目的をまとめたり、その人々を巻き込みながら役割を整理したりすること。

これは、前職で何度も触れてきた「ダイバーシティ&インクルージョン」という言葉にも通ずるものがあります。いろんな人がいるからこそ、相違の違いを認めたうえで個々を尊重し合いながら目線をあわせる意識を大事にしたいです。

左:従来のプロジェクト、右:共創するプロジェクト

3)リーダーシップのあり方は1つじゃない!

イベントの中で、「オーケストラーシップ」という言葉を初めて知りました。いろんな人がいて、それぞれやりたいことが違うので、ぐいぐい前で引っ張っていくやり方ではなく、調和をとるようなやり方、つまりオーケストラの指揮者のようなふるまいが大事という話です。一方で少しニュアンスは異なりますが、「サーバントリーダーシップ」という言葉もあります。後ろから支えていくような支援型のリーダーです。こういったリーダーシップを実行するコツは、いかにその人の好きポイントや共通ポイントを見つけるか。私自身は前にでることが苦手な方なので、ぐいぐい引っ張ることは難しいし、リーダーシップという言葉にも気が引けていました。でもやり方は1つじゃない!人と人とのつながりを大切にした自分らしいリーダーシップのあり方を模索していきたいです。

ディレクターの長島さんは一つのプロジェクトの中で 「応援団」「広報家」「編集者」様々な役回りを演じているそうです。

4)視覚的情報からイメージしてもらうことで伝わる安心感

吉備さんが事例の一つとして紹介したBONUS TRACK。開発段階では、周辺住人から反対意見もあったそうです。反対派の住民の方のご意見を受け入れた上で、それをポジティブに変換し巻き込んでいったというエピソードがありました。
信頼関係がうまれるようなコミュニケーションがあってこそです。良い関係をつくっていくために大切なことの1つは、情報を可視化し、見える安心感を与えること。プロセスや現在地を見せてあげることで状況が把握できます。同時に、ログを残すことも大切です。今までの議論の跡を消さずに残しておくことで、過程を追いかけられるし、それを起点に発想が広がったりすることもあります。
前職でも聴覚障害のある方に向けて資料をつくるときは、できるだけ情報を可視化するように意識していました。その人の不安を解消したり理解をしてもらうためには、まず視覚的にイメージをしてもらうことが改めて大事だと感じました。オセロを1つずつめくっていくように、根気強さも兼ね備えて。

下北沢駅と世田谷代田駅の中ほどにある「下北線路街」のエリアにできた、みんなで使い、みんなで育てていく新しい “まち” 、BONUS TRACK。

5)目先の利益ではなく、人と人のつながりを意識する

前述でも相手を巻き込むための話を書きましたが、下ごしらえも欠かせません。それは、相手にどのようなインセンティブをつくるかを考えることも含みます。話の中で、「有形報酬」と「無形報酬」という言葉がありました。有形報酬は言うまでもなく金銭のこと。一方で無形報酬は、情報や関係、権利といったものを指します。良い関係が築けたら今後もこの人と関わっていきたいと思う気持ちです。

現在、私は担当プロジェクトで地域の事業者さんを訪問し、その地域のこれからのあり方を一緒に考えています。まさに、目先の利益ではなく、コミュニケーションをとりながら本質を知る大切さを実感しているところです。人との距離が近く感じる瞬間は、同じ目線で会話ができたときではないでしょうか。有形報酬だけではつながりがいずれ薄くなってしまう。人と人をつなげるものは何なのか、気持ちよく相手と仕事をするとはどういうことなのかを考えさせられる話題でした。

相手を巻き込むにはインセンティブをどうつくるかがが重要

ユニバーサルデザインから教わった、人と向き合う姿勢

前職で経験したことは私にとって、とても貴重な経験になっています。ユニバーサルデザイン(以下、UD)というと、PMと同じくなんだか堅苦しい印象があるかもしれません。転職をして、PMに出会い学んでいく中で、結局「人」が一番大切なんだなと感じる日々です。UDもそうです。社会や環境に課題があって、当事者を通してヒアリングし、誰かが困らないように、楽しめるようにと、人のことを想いながらアウトプットをする。ただそこで大きく学んだことは、UDの視点だからといって、障害のある方に向けたものということではなくて、障害の有無を問わず、あらゆる人にとって通ずる大切な視点がUDには込められているということでした。色覚に配慮することや文字のサイズを調整すること、難しい漢字には読み仮名をつけること。コミュニケーションにおいては、伝えたいことを噛み砕いてできるだけ言語化すること、大きな声でゆっくりと話すこと。これらは誰を相手にしても共通する大切な配慮です。相手を想いながらも、何も身構えず、普段と変わらないコミュニケーションができたら良いと前職では教えていただきました。

PMも、コミュニケーションをとろう!とか、よい空気をつくろう!とか意図してつくりだすものではないんだと、イベントを通して感じたことです。

どんなことも先が見えず不安なことはあたりまえ。だからこそ、自分らしさを模索つつあらゆる手段を試して人と向き合っていく、というか向き合っていくしかないんですよね。長い旅路なんだから悩まずやったら良いじゃないかと、今もこの先も、自分に言い聞かせながら進みたいと思います。

笑いのツボが浅すぎる私。これからも自然体に、笑顔でいきたいと思います。

ちなみに、「かたくてやわらかい」を表現するためメタファとして選んだのはアイスクリーム。私がイラストを担当しました。堅苦しい印象が少しでも緩和されていたら嬉しいです。イベントシリーズは不定期で開催予定です。また次回もお楽しみに!

イラスト:村田 菜生

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