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小島 和人(ハモ), 新澤 梨緒, 井上 龍貴 2022.01.06

あなたと一緒に企みたい。
プロデューサーが語る、それぞれの仕事との向き合い方

プロデューサーという役職名を聞いて、どんな仕事を思い浮かべますか?

ロフトワークでは、クライアントからご相談があったときに、最初に接するのがプロデューサーです。クライアントからお話を聞いて企画提案に入り、プロジェクトの実施が決まった後は、ディレクターに引き継ぎます。

「つまりプロデューサーはフロント営業なのか?」と言われると、そんな側面はありつつも、アウトバウンドの営業はしないから、ちょっと違う。「じゃあプロデューサーは企画する人?」と聞かれると、たしかに企画はしているけれど、それもなんだかしっくりきません。

実際、クライアントへのアプローチの仕方やプロジェクトとの関わり方など、仕事のやり方は人それぞれ。「ロフトワークのプロデューサーとは、こんな役割です」と言語化しようとすると、三者三様の答えが返ってきます。

とはいえ、プロデューサーとして目指す姿には、きっと何かしらの共通項があるはず。そこで今回は、プロデューサー間でよく使われる「企む」というキーワードをテーマに、自分たちの仕事や役割について考えてもらいました。参加したのは、入社4年目の小島和人、入社3年目の新澤梨緒、入社2年目の井上龍貴です。

執筆:野本 纏花
撮影:村上 大輔
企画・編集:基 真理子(loftwork.com 編集部)

右から小島、新澤、井上。社歴や経験も異なる3人のプロデューサーが集った。

話した人

小島 和人(ハモ)

株式会社ロフトワーク
プロデューサー / FabCafe Osaka 準備室

Profile

新澤 梨緒

新澤 梨緒

株式会社ロフトワーク
プロデューサー

井上 龍貴

井上 龍貴

株式会社ロフトワーク
プロデューサー

プロデューサーの仕事は楽しい?

小島 僕はもともとデザイナーやプランナーをやっていて、自分の思考能力を高めたいという想いでロフトワークに入ってきたんだけど、そもそも2人はどうしてロフトワークのプロデューサーになったの?

井上 僕はずっとものづくりがしたかったのですが、紆余曲折あって、ものづくりをする側には回れなかった。だから、そういった領域に携わっている人たちには羨望や畏敬の念さえ抱いていて。でも、もしかしたら、ものづくりをする人たちをつないだり、企んだりする側なら、自分にも何か関わることができるんじゃないかなと思ったのが、この仕事に就いたきっかけです。それに、仲間と一緒に進める仕事への憧れもあり、縁あってロフトワークに入りました。

新澤 私は前職が大手の営業会社で、大きな組織の仕組みの中の限られた範囲でしか動けないことにジレンマを感じていました。それに、もっと社会を良くしていく物事に関わりたいという想いがあったんですよね。そこに自分が主体的に関われるところを探した結果、ロフトワークに辿り着きました。

小島 「個人」「チーム」「社会」と、それぞれベクトルが違うのが、なんかいいね。ところで、最近、仕事は楽しい?

新澤 超楽しい!新ユニットの立ち上げメンバーとして加わったことで、自分がぼんやりと描いていたものが形になってきた感じがしていて。社会に対してどんな価値をつくれるかを考えるために、チームで一丸となって全力で向き合える環境が整ってきたんです。1人ではなかなか答えが見えないことでも、仲間とともに向き合うことで実現の確度がすごく上がってきていると感じられて、今、すごく楽しいです。

ぼんやりと描いていた未来に、仲間と全力で向き合えるようになったと語るのは入社3年目の新澤。

井上 僕は正直、まだモヤモヤしているかな。プロデューサーの仕事って、企画の原型と、ある意味その企画を実行していくディレクターを売る仕事でもあるわけで。「そこに自分の個性は必要なのか?」という問いに対して、まだ自分なりの答えを見出せていません。どちらかというと、僕は属人的な仕事が好き。田舎で生まれ育ったこともあって、「あなただから」とか「あいつの頼みだったら」って言ってもらえる関係性が心地いいんです。それを仕事の中でも築けたら最高だけど、まだそこには至っていない。ロフトワークの仕事って半端なく規模がでかいし、社内のディレクターも把握しきれないくらいたくさんいるじゃないですか。

小島 わかる。僕は京都オフィス所属だから、渋谷オフィスに来たときには、いろいろなディレクターに自分から話しかけまくっていたよ。「次のプロジェクトでは、何をしたいですか?」と聞いて、その答えを頭に残しておく。そうやってストックしておくと、次の提案を考えるときに「あの人がハマりそうだな」と名指しで妄想できるようになるんだよね。

井上 コロナ禍も相まって、ディレクターを知るためのコミュニケーションがめちゃくちゃ難しいんですよ。みんな忙しそうなのに話しかけたら悪いなと思っちゃうし。

新澤 私も半年前は同じ沼に落ちていたから、わかるなぁ。本質的な対話ができるようになるまでの関係性をつくるのって、本当に難しいですよね。社内だけじゃなくクライアントも含めたチームづくりの話で言うと、あるプロジェクトが終わった後で、クライアントから「1つ、私の夢が叶いました!」とコメントをいただいたことがあって。私たちの仕事って、誰かの夢を叶えられるんだと思うと、すごくうれしかったのと同時に、そんな言葉をいただけたのは、チームメンバー全員が同じ方向を向いて走れていたからこそだなと思って、余計にうれしくなっちゃいました。

小島 そのレベルになると、もはやクライアントだけの夢じゃなくて、きっとチームメンバー自身の夢にもなっていたんだろうね。「絶対にこれを実現させるぞ」という個人的な想いがのっていなければ、そこまでいけないはずだから。そういう意味では、今、進めているロジックモデルテンプレートができると、プロデューサーがコミュニケーションの起点となって、ディレクターとの対話も生まれやすくなるだろうし、チーム内でクライアントの夢を自分ごと化しやすくなるんじゃないかな。

「企む」の裏に潜むそれぞれの想い

小島 じゃあ次は、今回のテーマである「企む」について。僕らの仕事に近しい「企画」にも「企業」にも、「企む」という言葉が入っているけれど、この言葉を聞いて、どんなことが思い浮かぶ?

井上 僕は“仕組みやルールをハッキングする”イメージが強いですね。いい意味で逸脱するというか、ずる賢い感じ。前職でまちづくりの仕事をしていたんですけど、条例やルールの隙間を縫って、やりたいことを実現していくのが「企む」かなと思っています。

入社2年目の井上は、「企む」を「ハッキング」という言葉で表した。

小島 これまでのプロジェクトで、企みがうまくいったケースはあった?

井上 高山活版社のプロジェクトがそうでしたね。本来なら費用の折り合いがつかなくてロフトワークでは受けられない案件だったんですけど、それでもどうにかして受けたかったので、補助金の申請に向けて集中的に取り組みました。

小島 「これは絶対にやるべきだ」という自分の強い想いがあってのことだもんね。会社としての目標はあれど、自分の想いで仕事を受けられるというのは、プロデューサーの特権かもしれないね。

新澤 私が「企む」という言葉を聞いて思い浮かべたのは、“未来のことを考えてワクワクしている瞬間”ですね。たとえば、チームが完全に同じ方向を向いて動いているときって、120の成果を生み出せるじゃないですか。そんな環境づくりをしているときが、私にとっての一番の企みポイントなんです。

小島 たしかに、最近はディレクターも含め、クライアントと一緒に考えながらストーリーをつくっていくことが増えているよね。以前のように、一方的な企画提案ではなくて。仕事の作り方が変わってきた感じがする。

ちなみに僕にとっての「企む」は、“モチベートすること”。もう最近の僕はそれしかやってないんじゃないかというくらい。「これ絶対にやった方が良くないですか?」とクライアントをモチベートして、「この企画、めっちゃ面白くない?」とディレクターをモチベートして。みんなをモチベートして、みんながおもしろがってくれさえすれば、すべてがうまくいくんじゃないかと思っています。

井上 それで言うと、自分をモチベートする必要もありますよね。最初からテンション爆上がりの案件だけが取れるわけじゃないし。「何それ?!」と思ってしまうような、自分には理解不能な案件が来たときって、どうしているんですか?

新澤 私は自分が得意なところに特化していきたい。苦手なことをすべて受けないわけではないけど、私1人で抱える必要はないと思っていますね。変わった視点を持った人が混ざっていたほうがプロジェクトも面白くなると思うし。

とはいえ、クライアントから案件のテーマを聞くだけでは、自分がハマるかどうかわからないんですよ。私にとって、「クライアントが思い描く未来を、どれだけ高い解像度で見せてもらえるか」が重要なので、クライアントの本当の想いを深掘る必要があるんですよね。法人格として対面するのではなく、1人の人間同士の想いが重なったときに、私はがんばれる。それに気づいてからは、比較的どんな案件でもモチベートされるようになってきました。

小島 わかる。クライアントのことを深く知って好きになるのは、自分をモチベートすることにつながるよね。

井上 なるほど。ハモさん(小島)がやっていると、なんでもおもしろそうに見えるんだよなぁ。実績があって、周囲からの期待値も高いからなんでしょうけど。

小島 自分自身がおもしろがることには、こだわっているからね。プロデューサーと名乗るからには、自分も含め、関わるすべての人が楽しくなるようプロデュースしていきたい。でも僕もここに来るまでは苦労したよ。1年くらいは苦しんだ。

2020年には社長賞も受賞した小島。受注後も積極的にプロジェクトに関わり、新しい視点を生み出している。

新澤 私もつらい時期はありましたよ。ハモさん、前に「滑ることを恐れるな」って話をされていたじゃないですか。社内外問わず、新しいことをするときって「失敗したらどうしよう(滑ったらどうしよう)」と踏み出せないことが多いけど、「滑ってもいい」と勇気出してやってみることで新しい道が拓けるんだって。でもロフトワークにはすごい人がたくさんいて、みんな目が肥えているから、「こんな案を出して、滑ったらどうしよう」と、つい考えてしまうんですよね。

小島 そうね。ロフトワークはクリエイティブの会社だから、「率先して新しいことを仕掛ける勇気がないと、創造的なことはできない」と思っていて。それなのに社内に対して提案することを怖がっていたら、「どの口が言うとんねん!」ってなるでしょ?(笑)

井上 耳が痛くて…。むしろロフトワークのプロデューサーは、その滑ることを恐れない勇気さえあれば、大丈夫だと思います。

“ええ感じ”をつくれたら、すべてがうまくいくはず

小島 今日話してみて、やっぱり我々は全然違う性質を持っていることがわかったけど、逆にプロデューサーの仕事観として、何か共通点は見えてきたかな?

新澤 “ええ感じ”をつくるのがプロデューサーの仕事ってことじゃないですか?井上さんがクライアントも含めたプロジェクトメンバーと心地いい関係性を築きたいのもそうだし、ハモさんが周囲をモチベートし続けているのもそう。私が、チームで完全に同じ方向を向いた状態を目指しているのも、“ええ感じ”をつくるためだと思うんです。アプローチの仕方はそれぞれ違うけど、やろうとしていることはすごく近い気がするんですよね。

 井上 たしかにそうかも。ロフトワークには幅広い領域のプロフェッショナルがたくさんいて、困っている人がいたらなんとかしようとしてくれる人たちばかりじゃないですか。そんな人たちをモチベートして、“ええ感じ”をつくれるようになったら、めちゃくちゃ気持ちよくドライブする感覚が味わえるんだろうなぁ…。

新澤 この仕事って、波乗り感がありますよね。サーフィンと同じで、乗れるようになるまではしんどいけど、乗れるようになったらめちゃくちゃ楽しい。私がロフトワークで好きなのは、こうやって今の仕事に対するモヤモヤをぶつけあって、自分たちで組織を変えていけるところなんです。先日、ハモさんがプロデューサー合宿を企画してくれたじゃないですか。そうやって今の時代に合わせた自分たちの役割や仕事の進め方を自らでチューニングしていける。普通の会社では、そう簡単にできることではないので、すごくうれしかったです。

小島 あの合宿も、「プロデューサーとはどうあるべきかを追究することで、僕らの仕事をもっと“ええ感じ”にしたい」という想いが起点だったからね。じゃあ最後に、それぞれロフトワークのプロデューサーとして、どんなことをやっていきたいかを語ってもらおうかな。

井上 まずは社内外で、もうちょっと仲間を増やしていきたいですね。それに、FabCafeとかAkeruEといったロフトワークがこれまでにつくってきた施設やコミュニティを活かした提案をしていきたい。課題解決ばかりがロフトワークの生み出せる価値ではないと思うんですよね。よりオープンなプラットフォームとして、いろいろなものをつなぎながら、ロフトワークならではの価値提供ができるようになりたいです。

新澤 私は、物事を見る解像度を極限にまで引き上げていきたいです。虫の目で見れば、我々の想像力が及んでいないことや、救いきれていないことが、たくさんあると思うから。わかりやすい上澄みの情報だけでプロジェクトを企むのではなく、クライアント一人ひとりの想いや価値観を深く理解できた状態で、プロジェクトをご一緒できる関係性を築いていけたらと考えています。ハモさんはどうですか?

小島 僕はさっきも話した通り、最近はモチベートすることしか考えてない。「この人たちに相談したら、何かおもしろい答えが返ってくるかも」とか「この人たちと一緒なら、おもしろいことができそう」と思ってもらえたら、僕らも楽しいし、クライアントも、さらにその周りの人たちも、きっとみんな楽しくなると信じているから。そうしたら、それが仕事になって、お金は後からついてくる。とにかく、みんなが僕たちと話をしたくなる状況を、もっともっとつくっていきたいね。

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