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岩倉 慧 2023.04.06

Culture Design Lab 02
ダイバーシティ&インクルージョンの視点でクリエイティブを考えました

ロフトワークのカルチャー実験室「Culture Design Lab」では、個人の好奇心から始まる勉強会や活動を支援しています。

今回は、クリエイティブディレクターの岩倉の企画で、ダイバーシティ&インクルージョンの視点でクリエイティブを考える「賛否両論のクリエイティブを見てみよう」が開催されました。株式会社TIEWA(タイワ)の合田文さんを講師にお招きし、今まで持っていなかった多様な視点を持つことを目的に、過去に賛同と批判両方を集めたクリエイティブ(おもに広告やCM)を題材に考えました。勉強会の様子と学びをレポートします。

関連リンク:企業文化の土壌を耕しつづけるロフトワークのカルチャー実験室

Culture Design Lab

執筆:鈴木真理子

(登壇者・企画者の肩書きは、取材当時のものです)

「炎上しないために」ではなく、自分たちの軸を持つために

ロフトワークがプロジェクトの中で日々作っている(アウトプットや表現としての意味の)クリエイティブ。今回の勉強会の企画者の岩倉は、「クリエイティブは、その受け手に喜びを感じさせることも、落胆させることもできるパワーを持っている」と言います。

社会に対してポジティブなメッセージを投げかけたいと願って作られたクリエイティブが、ときに思いもよらないリアクションを引き起こすことがあります。誰もがSNSで繋がった現代、誰かの喜びに“いいね”がついて拡散するのと同様、誰かの悲しみや怒りも同じように早いスピードで伝播し、いわゆる「炎上」が起きます。それでは、誰かの落胆を招かないように、リスクを回避するためだけの”ルール”を作って従えばよいのでしょうか。岩倉は、作り手の立場にある自分達自身がしっかりとした自身の「軸」を持ち、クリエイティブを作ることが大切なのではないか、と勉強会を企画しました。

炎上を野次馬的にみるのではなく、「あれ、この視点は自分になかったかも」「この人の立場で見てみるとこれまでとは違う感じ方をするかも」などの「発見」を目的に、当日は30名のロフトワーカーが勉強会に参加しました。

立ち止まって想像し、ひたすら言葉にしてみるトレーニングをやってみた

当日は、ゲストとして「ジェンダー平等の実現」などの社会課題をテーマとした事業を行う株式会社TIEWAの合田文さんを迎え、ソーシャルイシューに関わる広告やCMを見て、「自分はどう感じるのか?」また「なぜそう感じるだろうか?」をひたすら言葉にするトレーニングを行いました。

ゲスト講師:合田 文

合田 文

合田 文株式会社TIEWA 代表取締役

社会課題と企業課題の架け橋になるようなセミナーやクリエイティブ制作を行うプロデューサーであり、ダイバーシティ&インクルージョン、ソーシャルグッドプロジェクト、発信の炎上対策、SDGs、Z世代向けPRなどを手掛けるコンサルタント。 大手IT企業にて新規事業立ち上げを経験後26歳で起業、ジェンダーやセクシュアリティに関する発信をはじめ、その学びをもとにマンガを使った「マンガで学ぶ!ジェンダー平等」などのマンガで学ぶ研修シリーズを開発し、セミナー講師として活動をはじめる。 全国各地からセミナーやイベント登壇、企業研修の依頼を受け、受講者は3年間で1,000人を超える。 FORBES 30 UNDER 30 JAPAN 2020受賞。 FORBES 30 UNDER 30 ASIA 2022受賞。

合田さんは、まず今の風潮として、製品やサービスが成熟し差別化が難しくなってきたことで、消費者にとって広告やPRは見たくないもの、スキップしたいものになっていること。人々がブランドやプロダクトについて話したいというような、話題にしやすさをいかにつくるかという観点からも、ソーシャルグッドを取り入れたクリエイティブがブランディングを成功させる鍵になっていると話します。ターゲットのポジティブな感情移入が伴うほど、独自の役割を持つプロダクト/ブランドになる反面、ターゲットが持つ背景に対して深い理解がないと、感情移入を勝ち取ることはできない、といいます。そのために作り手にとって大切なのは、話題になっているクリエイティブについて何がよいのか、どこに違和感を感じるのかを説明できること。そしてそれを製作に生かせること。

(合田さんのプレゼンテーションより)

そこで、ワークでは、Day1とDay2の2回にわけて、合計4つのクリエイティブを見て、自分たちが感じたことの言語化を行なっていきました。

ワークを行ったチームのメンバーは、部署も年代も違う人たちで構成。最近新卒でロフトワークに入社した人、ロフトワーク歴10年を超える人、複業をしている人、クリエイター活動をしている人、現在子育て中の人など、バックグラウンドもライフステージもさまざま。同じCMを見ても、一人一人の経験や、立場、置かれている状況によって感じる感想も異なり、その違いが発見にもなりました。

ポジティブ、ネガティブな印象を感じた人でも、その度合いはさまざま。そのCMが誰に向けられていると感じるか、どこが気になったのかなどを細かく言及し、そこに必ず自分が何を考えたかを言語化することで、ただ「何かちがう気がする」、というだけではない視点を獲得していきました。

また、2日目には、ロールプレイも取り入れて、実際に自分たちがクライアントやパートナーのみなさんとクリエイティブを作る時に近い設定で、自分の言葉で何がよくてどこに違和感を感じたのかを伝える練習を行いました。

ワークショップの詳しい様子や背景は下記のインタビューをご覧ください。

参加メンバーの感想は?  

勉強会への参加後のアンケートを一部ご紹介します。

  • 正直身構えて参加したところがあるのですが笑、身構えてた気持ちが一瞬にして無くなるくらい、とても楽しかったです!一つの広告に対してさまざまな考え方を知ることができたのは、本当に貴重な学びでした。
  • 「賛否両論のクリエイティブ」に対して、異性はもちろん同性でも世代によって見えるもの・見え方は全然違うし、個人のバックグラウンドや趣味趣向によっても受け止め方が変わるなということは、これまでも頭ではわかっていたのかもしれないけれど、実際に対話してみたことで格段に解像度が上がったと思う。
  • 置かれた立場による違和感を言葉にするという機会が、実は少なかったんだということに気付かされたし、これまで感じてきた違和感をこの先も放っておかないことが大切だと感じました。
  • ロールプレイを通じて、クリエイターが本気でいいと思って提案してきたものに、ジェンダー役割などの決めつけがある場合、修正するときの伝え方をいろんな人の例をみて知ることができました。

【まとめ】立ち止まって違和感を言葉にする大切さ  

世の中が複雑化していくにつれて、作り手はさまざまな視点を獲得し自らをアップデートしていく必要があります。ダイバーシティ&インクルージョンを推進するプロジェクトを行ったりしている私たちですが、今回のようにちょっと立ち止まって、自分の内にある感情や違和感を言葉にする機会というのが、実は少なかったことに参加者の多くがびっくりしていました。今回のワークを通じて、思考や経験が異なるチームで一緒に仕事をするときに、みんなわかってるよね、と進めるのではなく、おかしいと思うことをきちんと伝えられること、そしてその伝え方を体験しました。難しそうな問題もなんとなくではすませず、妥協しないことが突破口になると感じました。

企画メンバー   

岩倉 慧

株式会社ロフトワーク
バイスFabCafe Tokyoマネージャー

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