エディターズノート、はじめます。
[Editor’s note]
日頃から、たくさんのコンテンツを更新している、ロフトワークのコーポレートサイト「Loftwork.com(ロフトワークドットコム)」。こちらのエディターズノートでは、本サイトの編集部が、最新記事の見どころを解説したり、コーポレートサイト編集の実践や学びをオープンにシェア。編集の舞台裏と、企業のコミュニケーションの「これから」をゆるくお伝えします。
第一回は、編集部の岩崎と後閑から、「新しい試み」に関するコラムを2つお届けします。
カバーアート:添田 奈那
Index
- エディターズノート、はじめます。(岩崎 諒子/Loftwork.com編集部)
- VUCA時代に「視野」を広げる特集「創造のレンズ」(後閑 裕太朗/Loftwork.com編集部)
エディターズノート、はじめます。
岩崎 諒子/Loftwork.com編集部
私たちのコーポレートサイト、Loftwork.comでは、月に20〜30本のコンテンツが公開されています。内容は、ニュースリリースはもちろん、ロフトワークが支援したプロジェクトを紹介するレポート、イベント、スタッフによるコラム、有識者への重厚なインタビューなど、けっこう幅広いのです。
おそらくですが、いわゆるコーポレートサイトとしては、なかなかの頻度で更新されているんじゃないかと思います。それでも「まだまだ発信が足りない」「あのプロジェクトも、このイベントも紹介しなければ」と、編集を担当するメンバーが毎日おおわらわで稼働しているのです。
一体、どうして私たちは、こんなにもいろいろなコンテンツをつくっているのでしょうか?
オープンであり続けたい、という信念
理由はさまざまありますが、その中のひとつに、ロフトワークで脈々と続く「オープン」と「シェア」のカルチャーがあります。これは元々2005年頃から、創業者の林千晶さんが日本国内でクリエイティブ・コモンズの普及活動に関わっていた流れを汲んでおり、ロフトワークの伝統とも言える価値観です。
以来、ロフトワークは自分たちのプロジェクトで実践している手法やアプローチを包み隠さずシェアすることを続けています。これまでも、プロジェクトマネジメントのフレームワークやデザインリサーチ、UXデザインなど、自分たちの手法やアプローチを、記事やトークイベント、勉強会・ワークショップなどの形で公開・シェアしてきました。
自分たちが実践から得たナレッジは、同じ課題を持つ他の人たちにもきっと役立つはず。ナレッジが広がり、さらに他の人が実践したより良いやり方に上書きされ、また共有される。私たちは、こうしたオープンな「知の循環」が社会をより良くしていくという信念を持ち続けながら、さまざまなコンテンツを編集、発信しています。
変化する社会の中で、コーポレートサイトの「編集」はどうする?
さらに、ここ数年のこととして、私たちのようなBtoB企業のコミュニケーションは、もっと変わっていかなければならないのではないか、という考えもあります。
コーポレートサイトは、ターゲットを策定したうえで、そのサイトが何を目指すのかという方針を明確に決めてつくられます。コンテンツの編集方針も、これに準じるのが一般的です。一方で、コンテンツ編集という立場で活動する私たちが感じているのは、ターゲットの存在を意識しながらも、企業のコミュニケーションそのものはもっと広い人々へひらかれたほうがいいのではないか、ということです。
私たちのWebサイトも然りですが、多くのコーポレートサイトのコンテンツは「ビジネスっぽい表現」や業界の専門的な言葉づかいで書かれており、一般的なわかりやすさや親しみやすさから、やや距離があるように見えます。
しかし今、企業が持続可能社会への責任を果たすことや、多様なバックグラウンドや課題を持つ人々と関係を結び、対話や共創することが求められている中で、企業活動のステークホルダーを「ここまで」と明快な線で区切れなくなりつつあります。企業のコミュニケーションのありかたも、同じ課題に直面しているのではないか、と私たちは考えます。
悩みや迷いも隠さずに、知恵と実践をオープンにシェアしたい
私たちがこのWebサイトで扱うトピックの多くは、複雑なビジネス課題や社会課題と、それらを解決するために高度化・専門知化していくデザイン手法です。それらを一部の層のための情報として発信するのではなく、できるだけ幅広いみなさんに面白い・わかりやすいと感じてもらえるようにひらいていきたい。
そこで、今回からはじめる「エディターズノート」では、Loftwork.comで公開する記事コンテンツやイベントの見どころ解説、本体の記事では紹介しきれなかったエピソードなどを、いわば副読本のようなかたちでご紹介していきます。また、コーポレートサイトの編集部としての悩みや迷いにも触れながら、それらをクリアするための知恵と実践なども共有していきます。
大きなイメージを語ってしまうと、この先、さまざまな企業のコーポレートサイトが各々の編集の実践を共有し、知の循環が広がっていくことで、より多くの企業のコミュニケーションが社会と調和していく流れが生まれたら面白いのではないか、と思うのです。
そんな理想に思いを馳せながらも、まずは小さなさざ波を立てるように、エディターズノートを通じた発信をはじめてみます。私たちのWebサイトにもまだまだ課題はありますが、それでこそ、ここに書けるネタも尽きないというものです。
そしてもし、記事を読んでくださったみなさんから「うちのコーポレートサイトでは、こんな工夫や実践をやっているよ」と教えてもらえたなら、これほど嬉しいことはありません。これから、どうぞよろしくお願いします。
<了>
VUCA時代に「視野」を広げる特集「創造のレンズ」
後閑 裕太朗/Loftwork.com編集部
VUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代と呼ばれて久しい昨今、ビジネスや行政など、あらゆる活動において、従来の常識・経験則だけでは解決できない「厄介な問題」が数多く存在しています。今、企業や行政関係者、ソーシャルセクターには、「新しい視点」を積極的に取り入れて、既存の枠組みを越えていくことが求められています。
そこで、Loftwork.com編集部では新たな試みとして、クリエイティブ起点の「新しい視点」の提供を試みる特集記事シリーズ「創造性のレンズ」をスタートしました。
これまでロフトワークが公開してきたプロジェクト実践の記事や、有識者へのインタビュー記事を再編集し、これまで一つひとつのコンテンツを通じて「点」として共有してきた価値を一貫する「新しい軸」を見出し、読者のみなさんにお届けすることを目指しています。今年2月には、その初回となる「特集:未来」を公開しました。
「未来をテーマにするなんて、漠然としすぎていないか」と感じている方もいるかもしれません。しかし、最近ではAIサービスの発展が目覚ましく、「果てしなく先のはずだった未来」が目の前に迫っています。また、VUCAの時代においては、「未来予測」を正確に行うことは不可能であるとも言われている。ビジネスや活動のなかで、私たちは「未来」という言葉を何度も用いていますが、一方でその言葉が持つ意味合いや信頼感はどこか変容しつつあるのかもしません。
では、こうした軋轢を乗り越えて、未来を自分達の手で「正しい」方向に導くには、何が必要なのでしょうか。そのためには、むしろ「正しい未来」の意味合いを変えてみるべきなのかもしれない。
つまり、「絶対に正しい未来」を描こうとするのではなく、「それなりに正しい未来」から始めてみるのはどうでしょうか? 本特集では、そんな着想をもとに、専門家のアプローチからプロジェクトによる実践までを紹介しています。
「特集:未来」の見どころを簡単にご紹介すると、
- 哲学思想「プラグマティズム」から、より良い未来を描くヒントを見出す
- 専門家・実践者の提言から、「未来の描き方」の最前線を紹介
- プロジェクトの実践事例を読み解き、アプローチを解説
プロジェクトを担当したディレクターやプロデューサーも参加しながら、編集部が総力を挙げてつくった記事です。ぜひ、読んでみてください。
また、こちらの特集に合わせて、未来ビジョン策定やSFプロトタイピングなど、未来をテーマにした個別相談会も実施中です。こちらも、ご興味がある方はぜひお問い合わせください。
状況がどうであれ、私たちは「未来」に向わなければなりません。ましてや、持続可能性が重要視されるなかで、私たちは一層長いスパンでビジネスや活動の未来を考える必要があります。こうした状況だからこそ、「それなりの未来」という視点が役に立つのかもしれない。この特集が、大きな変革を見据えながら、個人の創造性を発揮する「小さな一歩」を踏み出すためのきっかけとなれば幸いです。
<了>
Author
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