Culture Design Lab 03
ラジオ体操で開幕! 身近な“からだ”について学び・対話することで
「自己と他者」への想像力を巡らせる
ロフトワークが何か新しいことを始めるとき、その出発点は極めて個人的な関心だったり、偏愛だったり、好奇心だったり、問題意識だったりします。始まりの主語は、「ロフトワーク」より「私」。
こうしたなかで、新しく始まったのが「Culture Design Lab」です。ロフトワークのカルチャー実験室として位置付け、個人の好奇心から始まる勉強会や活動の立ち上げを支援しています。
今回は、「からだカンファランス」と題して、生物学的な観点から女性の身体・男性の身体にそれぞれ起こっている変化に目を向け、専門家による知識をインプットしながら楽しくチームディスカッションしました。
企画立案者であるクリエイティブディレクターの名川実里は、「自分の体とは一生関わっていくのに、学ぶ機会が少ないことに疑問を持っていた」と言います。名川は大学で西洋史学を専攻し、現代に生きる私たちが当たり前だと信じていることも、過去を遡れば必ずしもそうではないという歴史の見方・視点・学びから、他者との「違い」に関心が向くようになったそうです。
「自分の常識は他人の非常識なのかもしれない」という視点から、「その違いをどのように伝えるのか?」という問いを立てたときにヒントになったのが「体の違い」だったのだそう。誰にとっても身近な話題である体のことを学ぶことで、他者への想像力を巡らせたいという想いから、今回の勉強会を開催することになりました。
執筆:宮崎 真衣(株式会社ロフトワーク)
写真:松永 篤(株式会社ロフトワーク)
「自分の体のことを意外に知らないのかもしれない」という仮説
突然ですが、これを読んでいる皆さん、「元気」ですか? 勉強会を企画した名川が社内で企画を発表したときも、こんな呼び掛けで始まりました。
「睡眠不足で目がしょぼしょぼする」「長時間のデスクワークによる腰痛に悩まされている」「肩が上がらない」など自覚症状があるという人は少なくありませんが、でも、その原因は一体なんなのでしょう?
実は、私たちは自分の体のことを、ほんとうはよく知らないのかもしれません。それ以上に、他の人の体のことはもっと知らないのかも……。それでも私たちは他人と関わりながら、生きていくことが、仕事をすることが、対話することが必要になっています。だからこそ、自分自身の「からだ」にそれぞれが向き合って学ぶことで、一人ひとりの「知らないからだ」に対する多様な発見をしたいというのが、この勉強会の出発点でした。
今回は、こんなメンバーが勉強会に参加しました。
- からだのことを知りたい人
- ホルモンの仕組みを知って対策を打ちたい人
- からだの変化に気付けるようになりたい人
- 想像力を鍛えたい人
- 視野を広げて柔軟な思考を養いたい人
講師紹介
多様な「からだ」への理解を深めて想像力を鍛えよう
現在の学校教育では、小学生の保健体育の教科書に初経や精通について書かれていたり、男子校で生理の授業が行われるなど、自分以外の性についても学ぶ機会が増えていきているようです。この十数年で日本における性教育のあり方は随分と変化してきましたが、思春期を過ぎて成長していく過程で、体について学ぶ機会はまだまだ多くはないのではないでしょうか。
そこで、講師の医師によるインプットトークでは、生物学的な観点から女性と男性の身体にまつわる主な症状を、科学的に裏付けられたデータを見ながら学びました。ファクトを参照しつつ、個人の体験に重ねることで“からだ”について学び・対話するきっかけにしました。
女性と男性の身体に起こるそれぞれの変化を知るなかで、例えば、女性特有の月経困難症や男性にも起きうる更年期といった具体的な症状に対して、健康経営の視点でどんなアプローチが考えられるのか、また他者の変化に気がついたときにどのように声をかけると良いのかなど、具体的なアクションについて学びました。
医師のお二人からのインプットトークの後は、チーム内でディスカッションを行いました。あるチームで盛り上がった話題の一つが「他者への声がけ」について。
考えるべきは異性への配慮だけではなく、実は同性同士においても想像力が必要だということ。同性だからこそ俯瞰的に捉えづらく、自身の経験をベースに「私はもっと辛かったのに」「男だったらもっと頑張れるだろう」といったように、他者をラベリングしたりジャッジしてしまうことが起きてしまうかもしれないということ。
またこうした問題から、「そもそも自分の状態をオープンにできるような関係づくりが必要なのでは?」といった、普段のコミュニケーションが大切だという気づきもありました。
チームディスカッションの時間では、チーム内で盛り上がった話題を一つに絞り、その課題に対して私たちが今日から行動すること・しないこと(Do / Donʼt)を楽しくアイディエーションしました。挙げられた項目は、目新しいものではないかもしれませんが、だからこそ当たり前のことが日々疎かになっているということが浮き彫りになりました。
参加メンバーの感想は?
からだカンファランスに参加したメンバーの感想を一部ご紹介します。
- 「男性の更年期問題と、体を休ませるという論点だけでなく心に活力をもたらす環境づくりが大事なんだと気づけたこと。休むだけが答えではない」
- 「女性の体・男性の体が入口でしたが、結局は性別というよりは個人のアイデンティティの尊重というところや、コミュニケーションの部分、お互いの信頼関係に着地していく流れになったところがロフトワークらしくてよかったな、と思いました」
- 「『わかる』と簡単に共感したり、わかった気になるのが一番危険ということ。」
- 「力を維持しながら自分が一番ヘルシーに働くことができるリズムをデザインすること。他者のヘルシーのために”自分”(≠会社)は何が取り組めるのかを考えること」
「からだカンファランス」を終えて
今回の勉強会は、講師である医師のお二人から体も心もヘルシーに生かすためのヒントをたくさんもらいました。勉強会を企画した名川自身も発見があったようで、その気づきをこのレポートで共有することで締めたいと思います。
からだを知ることは、他者だけではなく自己に対しても「想像力」が鍛えられる。
- 企画当初は、自分のからだを知ることで他者への想像力を鍛えることを期待していましたが、実際は、からだの知識を身に付け未来の自分を想像し行動することが、「予防」に繋がることを勉強会で発見できました。それを受けて、明日から行動を起こすときに、他者だけではなく、未来の自分に対して想像力を働かせることで、他者も自分も健康的な毎日を過ごせることに気がつきました。
知識をインプットし、自分の考えを共有する「場」を設計する。
- 二人の医師から、からだの知識をインプットした後に、「自分はどう行動するのか」「他人とどう関わるのか」を考えるだけではなく、他者との対話を通じて意見を共有する「場」を設けたことがキーポイントでした。例えば、勉強会に参加した20代の男性メンバーは、「男性は更年期障害によって認識機能の低下が起こる」というファクトに対して「男性は年齢を重ねるごとに、どんどんクリエイティブではなくなっていくの?」という危機感をチームに共有してくれました。今まで、更年期障害は女性特有の健康課題だと思っていたのが、自分ごと化された瞬間でした。それぞれが気になったことや考えを共有することで、新たな思考へと導くきっかけになりました。
健康は、信頼関係が成立した上で初めて保たれる。
- WHOは、「健康な状態とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされていることである。」と定義しています。健康を保つためには日々のコミュニケーションが大切で、人と人との信頼関係が必要不可欠です。一人ひとり違うからこそ、自分の経験値から状況を単純推測せずに、「違い」を尊重すること。そして、毎日のコミュニケーションを通して共に働く仲間の言葉を信じることが、個人としての健康につながるという発見がありました。
実は、今回の「からだカンファランス」は第一回という題目が添えられていました。今後は、季節のお悩みやヘルスケア関連の実践者たちのお話を聞く回など、定期的に開催されるかもしれません。
誰にとっても、体のことについて学ぶ・対話する機会を継続的に持つことの大切さを教えてもらいました。
企画メンバー
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カジュアルな説明会も開催しているので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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