展示を超えて協働を届ける。
KYODO PROJECT in 台北レポート
国境を超えて協働のプロセスを伝える
山梨県富士吉田市を拠点に、地域の機屋(はたや)と国内外のクリエイターをつなぐKYODO PROJECT。富士吉田の織物産業を背景に生まれたこの取り組みが、2026年春、台湾・台北へ渡りました。会場となったのは、台北のアートスペース・朋丁(ポンディン)。ブックカフェ、ショップ、ギャラリーが一体となったカルチャー発信拠点です。今回の展示では、FUJI TEXTILE WEEK 2025で発表された協働作品を中心に、富士吉田の機屋とクリエイターがどのように出会い、制作を進めてきたのかが紹介されました。
KYODO PROJECTにとって、台北での展示は初めての海外発表です。日本との距離の近さや台湾のクリエイターとの関係、そしてFabCafe FujiとFabCafe Taipeiのつながりが、この都市間の交流を後押ししました。展示されたのは、KYODO PROJECTで生まれた作品だけではなく、写真家・吉田周平さんによる記録写真やプロジェクトに参加した機屋のテキスタイルサンプルなどが並びました。どのような人が、どのような技術で、どのような対話を経て制作したのか。作品の背景にある関係性や時間が、会場から伝わってきます。
展示空間の外へ広がる対話
展示にあわせて、FabCafe Taipeiではトークイベントも開催されました。FabCafe Fujiを運営する八木毅と、FabCafe Taipei共同創業者のTim Wongが登壇し、SARUYA HOSTEL、FabCafe Fuji、FUJI TEXTILE WEEKへと広がってきた八木の活動について語りました。話題に上がったのは、八木が富士吉田という土地に長く関わりながら、どのように街と人、産業やクリエイターの接点をつくってきたのかということです。八木が運営するSARUYA HOSTELは富士吉田に滞在するための宿として、FabCafe Fujiは地域の人や訪問者が出会うカフェとして機能してきました。
SARUYA AIRは、アーティストやクリエイターが一定期間滞在し、制作やリサーチに取り組むレジデンスとして機能してきました。1泊して街を歩くこと、1時間カフェで過ごすこと、数週間から数カ月滞在して制作すること。関わる時間が変わることで、見えてくる街の姿も変わっていきます。観光は、その土地を知るための大切な入口です。そこから滞在へ、さらに人との関係や制作へ。八木の活動は、訪れる人が富士吉田の暮らしや産業に少しずつ近づいていくための複数の入口をつくってきました。
こうした異なる時間軸の入口を地域の中につくってきたことが、機屋と国内外のクリエイターが出会い、関係を育てるKYODO PROJECTの基盤にもなっていたのかもしれません。
台湾のデザインコミュニティとの接点
会期中には、台湾工業デザイン協会(TIDA)のメンバーも展示を訪れました。会場では、八木や富士吉田の機屋である舟久保織物、TENJIN-factory、Watanabe Textileの関係者と意見を交わし、台湾のデザインコミュニティとの対話が生まれました。デザイナーと産業の担い手が信頼関係を築き、ともにものをつくっていく、そのプロセス自体が展示の核になっていたことで、TIDA会長のAlan Huangは「ここで見えてきたことは、まさに協働そのものだ」と述べています。
台湾のファッションデザイナーであり、KYODO PROJECTの参加クリエイターでもあるシーチュー・チーも会期中に来場し、自身の制作や富士吉田での経験を直接話す場面もありました。
ひとつの展示から、次の関係へ
富士吉田で生まれたKYODO PROJECTは、地域の伝統産業に根ざした協働のひとつの形を示しています。台北での発表は、その実践が別の都市でどのように受け止められるのかを確かめる機会となりました。会場で紹介されたのは、遠く離れた日本の織物産地の物語だけではなく、歴史ある技術や地域の文化を受け継ぎながら、現代のクリエイターとどのように新しい関係を築いていくのか。そうした問いは、台北で活動するデザイナーやクリエイターにとっても、自分たちの身近な地域や産業に重ねて考えられるものだったようです。
この台北での出会いをきっかけに、KYODO PROJECTはその後、台湾で開催されたChiayi Design Weekへ招待されました。会場では、KYODO PROJECTの取り組みとともに、FUJI TEXTILE WEEKで発表された作品を紹介。台北で始まった対話は、台湾の別の都市へと広がっていきました。さらに、展示後には台湾のデザイナーやアーティスト数名が実際に富士吉田を訪れ、地域の機屋や活動の現場に触れています。ひとつの展示を完成形として終わらせるのではなく、そこで生まれた出会いや対話を、次の展示や訪問、さらに新たな協働へとつないでいく。今回の台湾での展開は、KYODO PROJECTが目指す、地域や国境を越えて続いていく関係の可能性を示すものとなりました。
※本記事は、FabCafe Globalで2026年4月30日に公開された英語記事をもとに、日本語版として再編集・翻訳したものです。原文はFabCafe GlobalのWebサイトに掲載されています。
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