FINDING
松永 篤 2020.07.10

大切なのはツールよりもUX
オンラインイベントで考えるべきこと

こんにちは、ロフトワーク マーケティング Div.の松永 篤です。コロナ感染拡大防止のために一気に加速したイベントのオンライン化。ロフトワークでも4月以降のイベントは、全てオンラインで実施しています。

私は前職で音響・映像のエンジニア業務に携わっており、ロフトワークでもオンライン/オフライン問わず多くのイベントを実施してきた経験があることから、社内外でオンラインイベントに関する相談を受けることが多くなってきました。

そのノウハウを共有して欲しいという声を多く頂いたので、これまで実践してきたことを整理してみました。この記事では、最近私が担当した2つのイベントタイプを事例に、UXを考えたツール選びと実施のポイントを紹介します。オンラインイベントをより良いものにしていくために少しでもお役に立てれば幸いです。

松永 篤

Author松永 篤(シニアディレクター)

大手レコード会社でのサウンド・エンジニアを経て、2014年ロフトワーク入社。クリエイティブディレクターとして、イベントの企画・運営を担当。2016年から1年間語学留学。2017年から復帰し、システムの設計を含めたWebサイト構築など幅広いプロジェクトを担当中。さらに社内の音響・映像・ネットワークの保守メンテナンスを行い、日々渋谷オフィスのインフラを支えている。

Profile

イベント企画者視点のツール早見表

この3ヶ月で一番多い質問は「オンラインイベントやるんだけど、何でやればいいかな?」でした。
実際にロフトワークがオンラインベントで使用しているツールを、わたしの主観ではありますがそれぞれどんな体験設計に向いているか、メリットデメリットをまとめました。使用頻度としては、一番多いのがZoom、クライアントの環境によりTeamsの使用、YouTube LiveやFacebook Liveの併用をしています。

  Zoom
(ウェビナー含む)
YouTube LIVE Facebook Live Teams
画質/品質
ビジネス向け
インタラクティブ機能
最大視聴人数
登壇者可能人数
人数により、費用が変動 無制限 無制限
(Facebookアカウントが必要)
無制限
メリット

・機能が豊富
投票/QA/Chat/参加者一括登録/参加者の視聴ログなどが利用可能
・ブレイクアウトルームによる分科会の実施

・無料で利用可能
・繰り返し実施するイベントにはチャンネル登録などのファン醸成の機能もあり
・iPhone等のデバイスでの閲覧までのストレスが小さい

・無料で利用可能
・Facebookページを利用した拡散が可能
・既にFacebookでのファン醸成がある、またはそれを目指す場合に最適

・組織の人数により有料
・優れたセキュリテイ管理機能
・表示コンテンツの細かなコントロール性
・外部ツールとの連携

デメリット ・イベント開催のスペックによって課金が必要
・一部企業で利用できないケースがある
・画質/音質が他プラットフォームに比べると中
・企業PCでの閲覧できないケースがある

・Facebookのタイムラインの1コンテンツとして認知されるケースの場合、離脱率が高い
・オープンスペースでのコメントのため、一定の心理的ハードルがある

・設定項目や詳細な権限設定があり、環境によりスタートまでにハードルが高いケースがある

オフライン以上にUX設計を考える必要がある

最初にツールのご紹介をしましたが、相談が来た時にまず思うのは「ちょっと待った!そもそもどんなUXを考えてる?」ということ。

オフラインイベントでもそうですが、大切なのは「参加者にどんな体験を提供したいのか?」。
それなくして、ツールを選ぶことはできません。

そして、オンラインイベントは、オフライン以上に体験の設計が要になります。

  • イベント中、参加者の表情や反応をみながらのコミュニケーションができない
  • 参加しやすさゆえ、参加するモチベーションに差が生まれやすい
  • 参加者の人数が多くなる傾向がある(ロフトワークでも2000人以上の参加者が集まるイベントも)

など、設計時から考慮すべき点が多く存在します。

オンラインイベントをやるとなると、ツール選びなどに思考が行きがちですが、成功の肝は「配信」ではなく「プログラム設計」。そのことをぜひ今一度意識して欲しいと思います。

リアルタイム配信が必要かも検討しよう

リアルタイム配信でイベントを開催する必要があるか?もオンラインイベントのときは検討する必要があります。

企画されているコンテンツは、現場リポートがあるでしょうか?
参加者のQAや投票(アンケート)チャットや反応を前提に作られているでしょうか?

  • リアルタイムでなくてもアーカイブで1.5倍速で見たい。
  • 全部参加ではなくて、必要な箇所のみつまみ食いをしたい。
  • まとめ記事を5分熟読したい。

こういった思いを持つ人、実際に工夫している人が増えてきていると思います。

リアルタイムで配信するか、伝えたいメッセージ/体験はどういったものかを考え、体験を元にツールを選ぶ事がニューノーマル時代のオンラインイベントでは大切です。

UXの試行錯誤、アイディアと実践のご紹介

オンラインイベントでは、どんな体験をしてもらいたいのか?を考えて設計し、それに合わせたツールを選んでいくことが大切だとお伝えしてきました。ロフトワークでもウィズコロナの状態からたくさんのアイディアを試行錯誤してきました。実践例として一部ご紹介していきます。

NANDA会|オンラインでも体験を損なわない、シームレスな設計

loftwork.comの記事でも何度かご紹介してきた「ロフトワークのクリエイティブってなんだっけ?」を考える全社イベントNANDA会。

NANDA会ってなんだろうという方はこちらも合わせてご覧ください。

このイベントで実現したかったことは、「ロフトワークにとってクリエイティブとはなにか」を議論すること。オンラインでもオフライン並みに議論できるには何が必要か?を考えプログラムを設計しました。

オフラインでは、参加者自身に意見を付箋に書いてもらったり、その付箋を動かしてまとめていくことも簡単にできます。しかし、オンラインではMiroなどホワイトボードのオンラインサービスもありますが、同時アクセスが多いと操作が重くなったり、慣れていないメンバーがいると操作に手間取ったり様々なハードルが生じます。

オフライン並みに議論をするためには、いかに参加者へ「シームレスな体験」を提供し、議論に集中できる環境を作ることができるかが重要だと考え、設計した当日のタイムラインがこちら。

ポイントをいくつか抜き出すと

  • 投票とコメントをGoogleフォームのアンケートを活用し同時に集める。
  • 運営側で集めたコメントをMiroで付箋化し整理。その時間、参加者を待たせないよう休憩時間として設定。
  • 参加者は、休憩時間が終わって戻ってきたら、議論に参加するだけの状態に。
  • ディスカッションにおいては、Miroにアクセスするのはファシリテーターのみ。参加者はファシリテーターの画面共有をみる形式に。(操作が重たくなるのを避ける。)

このように参加者がストレスなく、その時間にやるべきことにだけ集中できる環境を作るべく設計していきました。小ネタですが、Miroは、Googleスプレッドシートのセルをコピー&ペーストすると、記入されている文字を付箋化してくれるという機能があります。休憩時間の間に100名近くのコメントを付箋化、整理するできたのはこの機能のおかげです。

またディスカッションの時間をスムーズに進行させるためファシリテーターを2名体制で行なったのも工夫の一つです。1名が参加者が発言した内容を付箋に追加で書き足したり、付箋を動かすといったMiroの操作をメインに、もう1名が議論を促すことをメインにという役割分担で実施しています。

Googleスプレッドシートに投票コメント集約のテスト
実際にMiroに貼り付けてみたりと、ファシリテーターメンバーとの事前打ち合わせも実施

カセツラジオ|“ながら聞き”をUXの中心に。

もう一つUX設計のチャレンジ事例として、6/5(金)に開催した4時間の生配信ラジオ「カセツラジオ」をご紹介します。
当日のイベントの内容もアーカイブとして配信中。気になる方はぜひご覧ください。

6月上旬実施を目指し、このイベントの企画設計を進めていたのは、緊急事態宣言延長が噂される4月末。既にオンラインイベントが飽和気味な状況の中で、どんな体験を提供できるといいだろうかと開催されているオンラインイベントの分析も実施しつつ、金曜夜、お酒を飲みながらでも、ソファに寝転がってでも、ゆるりと耳で楽しめるラジオ形式でのイベントを実行しようと至ったのがこの「カセツラジオ」です。

リスナーがちゃんと楽しめる形として、徹底的にラジオフォーマットに則った体験を設計。例えば以下のような要素を組み合わせて、時間軸に配置することもやっています。

  • アバン (オープニング前のちょっとしたコーナー)

  • BGM (オープニング/エンディングなどで背景に使用するもの)

  • ジングル (番組タイトルなどを短いBGMに乗せたもの)

  • 音楽 (曲をかけるところ)

  • ドラマ (ドラマを流すところ)

  • CM (スポンサーのメッセージ)

  • 提クレ (提供クレジット。~~の提供でお送りしますってアレ)

  • 入中 (いりちゅう。生での交通情報や外部取材など)

  • エピローグ (エンディング後のトークなど)

イベントに登壇する各ゲストとZoomで繋ぎながら、参加者にはYouTube Liveで静止画+声のみを生配信。ラジオといえば、ラジオDJ!FM大阪でも活躍されているラジオDJ赤松悠実さんをお迎えして本番を迎えました。

企画・配信の裏側を企画者のクリエイティブディレクター国広が記事にまとめています!こちらもオンラインイベントの体験設計や企画を考える上で参考になると思います。ぜひご覧ください。

“ながら聞き”をUXの中心に。 生配信「カセツラジオ」の舞台裏

オンラインでのイベントが劇的に増えた今、設計次第でそこで得られる体験は色々とデザインできる。企画者のクリエイティブディレクター国広がデザインしたラジオ形式のオンラインイベント「カセツラジオ」。”ながら聞き”をUXの中心において実施した、生配信ラジオのねらいとTipsをご紹介しています。
▶︎ https://bit.ly/2XnVuQl

いかがでしたでしょうか。コロナが落ち着いたとしても、オンラインでのイベント実施は定着していくような気もしています。よいイベント体験が作れるようにロフトワークでもこれからも色々と試行錯誤していきます。

オンラインイベントの企画実施、イベント施策を通じた体験設計やユーザーとの関係づくりなどでサポートしてほしいことがありましたら、お気軽にご相談ください!

オンラインミーティングで気軽にご相談しませんか?

ロフトワークでは、オンラインミーティングでプロジェクトに関する気軽なご質問や意見交換ができる、個別相談会を実施しています。

  • オンラインの広報施策を抜本的に見直したいが、具体的な打ち手に悩んでいる
  • これまでリアルで行ってきた、展示会やトレードショーといったイベントの機能をオンラインで実現したい
  • 自社の周年記念を機になにかしたいが、やることがきまっていない

など、お悩みや課題をお伝え下さい。ロフトワークの豊富なプロジェクト事例をご紹介しながら、ざっくばらんに意見交換をさせていただきます。複数名でのご参加も対応いたします。

Keywords

Next Contents

The KYOTO Shinbun’s Reportage
京都新聞論説委員が見る京都ルポ「課題の価値」