組織は、1人の想いから変わり始める
ボトムアップで組織を突き動かすために必要なこと
みなさんこんにちは、PR尾方です。会社の状況に対して、もっとこうなったらいいのにと思っても、自分一人では変えられる気がしなくて諦めてしまったり、何ができるか分からずアクションを起こせない。こんな状況は組織の中で多く見受けられるのではないでしょうか。
ロフトワークでは、会社がより良くなるためのアクションをボトムアップで実施していこうという動きが生まれ、徐々に組織が変革し始めています。そのボトムアップの動きというのが、前回オンライン開催で大盛況だったと紹介したNANDA会(ロフトワークのクリエイティブってなんだっけ?について全社で考える企画)です。
今回、NANDA会を企画した高井、松永、長島の3人にどのようにボトムアップで組織の課題解決に取り組んだのか、成功の鍵は何だったのかインタビューしました。
(写真:村上 大輔)
ダサいって思うんだったら、自分たちで変えればいい。
── ロフトワークに対して、どんな課題感を持っていたのでしょうか。
高井 組織が成長していくにつれて、人数だけでなく様々なバックグランドを持ったメンバーが増えたり、取り組むプロジェクトの幅が広がっていく中で、メンバー間の仕事への価値観の差や、コミュニケーションの希薄化を感じることが増えていました。
松永 自分が入社した2014年頃に比べると、社員数が1.5倍くらいになっていて。事業の成長スピードに、組織体制のアップデートが追いついてない状況もあったと思います。メンバーから不満の声を耳にすることが増えたなと感じていました。
高井 もちろんたまには愚痴をこぼすことがあってもいいんだけど、不満を言っているだけなのも、不満を言うやつに対して不満を言ってるだけなのも、どっちも単純にカッコ悪いしダサいな、って思ったんですよね。そう思うことがあるなら、シンプルにやれることから変えていくためのアクションをしようと。そんな話を松永くんとしたのが2019年の初めくらいだったかな。
松永 そうですね。そこでまず、こうありたいよねって姿をまず明文化しようって話になって。高井さんと一緒に『ロフトワーカーの基本スキル』を洗い出してみて、基準を整理して、ルール化して共有したらいいんじゃないかってやってみたりしましたよね。
高井 そうそう。でもやっていくうちに、「ルールを作ればいいわけじゃない、いくらそれが正しくても、ルールが上から降ってきたように見えたらみんな納得なんかしないよな」って思って。本当に必要な仕組みを、ちゃんと現場からのボトムアップで作っていきたいよね、って話をしていました。
ルールじゃなくてソリューションを作る
── そんな中、どうやってNANDA会の形になっていったのでしょうか?
松永 高井さんと動いていることを、まず所属する部署のトップに共有して。全社的に自主的な活動をやっていこうって動きが生まれていったんですよね。
高井 その流れで、松永くんと2人で「制度改革委員会」という形で活動していくことになりました。改めて組織の課題解決に向き合って、議論を重ねてたどり着いたのがNANDA会の形です。
── 具体的にどんな議論をしていったのでしょうか。
高井 クライアントワークでやってることを本気でロフトワークに対してやってみよう、というのも実は今回ひとつのチャレンジで。プロジェクトでは、いつも解くべき課題を改めて見つめ直すことから始めるので、今回もまずはロフトワークが取り組むべき課題を整理するところから始めました。アンケートやインタビューを通して課題を抽出し、統合・整理していきながら、やるべきことに落とし込んでいって。ブレずに最後まで走りきれたのはこの過程があったからだと改めて思います。
松永 この委員会が動き出して、2ヶ月くらいでちゃんなが(長島のニックネーム)がチームに入ってくれたんだよね。
長島 制度改革委員会がやろうとしてることが、自分が抱えていた会社に対しての課題感とも合ったし、高井さん松永さんとならやり遂げられそうな気がして。入っていいですかって松永さんに声をかけに行きましたね。
松永 ちゃんながの普段の仕事を見てて、実行力があるのも分かっていたし。一緒に仕事をしたことはなかったけど、物事を見る視点、賢さとかも伝わってきてた。実際半年走り抜いて、ちゃんなががいてくれていいバランスのチームになって進められたと思う。
── 課題発見から解決策を考えていく時に、大切にしたことはありますか?
松永 ルールではなく、ソリューションをつくることを意識して進めましたね。委員会メンバーで話をしている中で、今までのロフトワークの動きを見ても、そもそもルールっていうのが僕たちは苦手(笑)。そういう面もあるけど、何かを変えていきたい時にルールで縛るのって最後の手段だよな、行動を促す仕組みをデザインするのが大事じゃんって活動を話し合う中で至って。
高井 ルールで縛るのって簡単だから、気を付けないとどんどん増えるんですよ。そして、増えれば増えるほど身動きが取れなくなるし、「ルールだから」って思考停止する。その結果、息苦しくて風通しの悪い組織になってしまうケースは多いと思っていて。中学生の頃から、理不尽な校則に対して「これどんな意味があるんすか」って噛み付いてきた身からすると、そういうことにだけはしたくなかったんです。
── ルールじゃなくてソリューションを作る。すごく大切な視点だけど、見失いがちな気がします。私自身、普段の活動でその視点を持てていなかったなとハッとしました。
高井 だからこそ、現場の声を反映させて、ボトムアップで解決策を見付けていくということを大切にしましたね。何かをやろうと呼びかけても、それに関わるメンバーが腑に落ちてないと誰も動かないし、形骸化していってしまうので。
── 確かにそうですね。具体的にはどうボトムアップでの解決策を作っていったのでしょうか。
長島 社内に匿名でアンケートを取って、現場で感じている課題を洗い出して解決すべき問題を決めようと進めていきました。なかなか自分が感じてる課題をさらけ出すタイミングがなかったし、改めて現場の声を聞く機会も作りたかったのもあります。
松永 アンケート結果には、さまざまな課題がありました。これをクライアントワーク同様に、グルーピング・それぞれの関係性を整理し一つの図にしました。この図はすぐに全社に共有を行い、社員ひとりひとりの課題に対してなにが必要かの一つの仮説を共有し進めていきました。
── 解決する課題はどのように絞っていったのでしょうか。
高井 いろいろ課題が見えてくる中で、解決することでその他の課題に対しても効果が波及するものを探って行きました。そこで解決すべきだと設定したのが「“クリエイティブ”の評価基準が明確でない」という課題。プロジェクトで生み出すものやその過程においてロフトワークが考える“クリエイティブ”とは何か?の基準が明確にないため、目指すべき品質や成果が個々人で違ったり、メンバー同士のアドバイスを含めたコミュニケーションが希薄になったりするという状況にも繋がっていくってのが見えてきて。それに対してソリューションを考えていきました。
── ソリューションとして、プロジェクトにおけるクリエイティブなポイントを全社で議論し、表彰するというアワード形式に至ったのはどういう考えがあったのでしょうか。
高井 ロフトワークのアイデンティティや品質基準をどうやったら探れるだろう、と考えた時、ロフトワークがプロジェクトドリブンで動いている組織である以上、それを探る先はプロジェクトの中にしかないなっていう思いがありました。
── なるほど。自分たちのエッセンスが詰まっている場所がプロジェクトですよね。自分たちの答えは、自分たちの現場にある。読者の方にとってもヒントになる視点だと思います。
ボトムアップで成し遂げるためには、相談しないこともひとつのやり方
── 今回のように、ボトムアップで組織を変革していこうとする時に大切だと思うことを教えてもらいたいです。
高井 意見は幅広く聞くけど、コアメンバーを増やしすぎないことは意識したかな。
長島 あまり多くの人を巻き込みすぎず、まずやってみる。できたものを判断してもらうっていうスタンスが大切な気がしますね。
高井 活動を進める中で、「一緒に考えたいです」って言ってくれたメンバーも何人もいて、それはとても嬉しいしありがたかったんだけど、「船頭多くして船山に登る」っていうか、人が増えることで角が取れてしまったり、鈍ることも多いと思っていて。特に今回は新しい取り組みだし、途中で止まってしまうことだけは避けたかったので、まずは1回実行することを最優先に、今回は3人でやり切ろうと考えました。
── 突破しようとする時だからこそ、少数精鋭、尖ってぶつかっていくということも一つのやり方ということですね。他にはいかがでしょう。
高井 全社を巻き込むイベントではあったけど、会社の代表である諏訪さん・千晶さんや、現場を統括している他のメンバーには、あえてほとんど相談しませんでした。相談していたら今回の形は実現できてなかったと思います。それは決して変なフィードバックをされてしまうからとかではなく、自発的なリーダーシップとボトムアップの納得感を大切にしたかったから。やっぱり相談されたら何かしらフィードバックしたくなるのが人間だし、それに応えていくとレポートラインができて、どうしても承認を取るっていう形になっていってしまう。そうなるとそこでの決定事項は現場からするとやっぱり「上から降ってきた」ように見えてしまうので、今回は上手くいっても失敗しても、あくまで僕ら現場の意思と責任でやることに意味があると思ったんです。
松永 そこはすごく意識しましたね。
高井 後で怒られてもいいから、やりきろうと思ってやりましたね。
── それができるのってなかなか難しいことだと思ういます…。それだけの自信があったからできたのでしょうか。
高井 いや、正直半々くらいでしたよ。この企画に対してどう反応されるか怖かった。でも、僕らなりに考え抜いたものだとは思っていたし、みんなにとってもやる意味があると信じてやってきてたので、どんな結果でも、やりきることは心に決めてました。でもNANDA会開催ギリギリまでは、半々どころか7:3くらいで、「忙しい期初に丸一日のイベントなんて鬱陶しがられるかな…でもロフトワークのみんなならきっと分かってくれるはず…!」っていう気持ちでしたね。
松永 エントリーされるかどうかも不安でしたよね。プログラムの叩き台を持って、こういうの考えてるけどどう思う?って自分たちの想いや考えを話して、エントリーしてもらえるように動いたり。地道に活動していきましたよね。
ーそんな思いの中、作り上げたNANDA会だったんですね。先日記事にも書きましたが、みんなの熱量をすごく感じたイベントでしたし、社内が変わり始めるきっかけになったと感じてます。
松永 NANDA会を通して伝えたかったことの1つである、ボトムアップでも組織を動かしていけるってことを伝えられた気がするし、ロフトワークらしさを一人一人が考えて、全体で議論し、それぞれが行動に移していける動きが作り始められた気がしますね。
イベント終了後は、参加したメンバーからたくさんの熱い感想が集まりました。
プロジェクトの凄みが見えるし、それを他の目線で検証するのも面白いし、される側もドキドキするし、フィードバックが嬉しいし。誰も損しないし、嫌な思いもしないし、設計がとにかくよかった。3人のようなメンバーがいてくれて、ロフトワークはこれからますます面白くなっていくんだろうなと思いました。自分もロフトワークに対して何か伝えていけるようにこれからも動いていきます。
ロフトワークの層の厚さ、プロジェクトの力強さを体感する時間でした。仕事のモチベーションもすごいあがりました!人数が増えてしまって、意見をまとめることが難しいかと思いますが、良い環境を作って行こうとする努力は大事だなとあらためて思いました。
今回の機会を通じて、ロフトワーカー個々人が考える”クリエイティブとは”や”ロフトワークが生み出せる価値とは”をより鮮明にできたのではないかと思います。多種多様あるロフトワークの仕事を、担当ディレクターがどういう思いで取り組んだのか、どういう部分が挑戦だったのか知ることができてとても学びになったと同時に、この会社で自分がどういう在り方で何をしていくのか姿勢を考え直すきっかけになりました。
高井 今回勇気を出してやってみて、利己的にならずに本気で意味があると信じて動けば、その熱はちゃんと伝わるし、変えていけるってことを証明できたのかなと思います。それは今回みたいなインナーコミュニケーションに限らず、クライアントワークのプロジェクトでもきっと一緒で。
そういう一歩一歩こそが、組織やプロジェクトを良い方向に導く力になると思うので、立場や年次にとらわれずに、それぞれがやるべきだと思うことをどんどんやっていってほしいなと思います。
── そういった動きがたくさん生まれていくロフトワークのこれからが楽しみです。最後にNANDA会の今後の展開についてもぜひ聞かせてください。
高井 NANDA会をロフトワークの毎年の恒例行事として開催していきたいと考えています。次は、来年の4月に開催予定。実施回ごとに、ロフトワークのクリエイティブとはを言語化し、キーワードとして出てきたものを整理統合して「ロフトワークの“クリエイティブ”ってなんだっけ」の仮説を作り出せたらと思ってます。3〜5回くらいやったら、見えてくるんじゃないかと今回実施してみて手応えを感じてます。
長島 さっそく、今回実施したNANDA会で受賞した6つのプロジェクトについて、プロジェクトメンバーにインタビューを進めています。そこでの内容も踏まえて、今回実施したNANDA会における「ロフトワークのクリエイティブとは何か」の仮説を出したいと思ってます。インタビュー内容は、記事としても公開予定です。
いかがでしたでしょうか。今の現状を少しでもよくするために自分ができることはなにかを考える、その取り組みが1人ではなかなか難しいと感じたとしても、同じ課題を持つ仲間を見つけて、行動していくことで組織を揺さぶることはできる。そんなことを改めて感じさせられるインタビューでした。今回の記事が、ボトムアップで自分たちの組織をよりよくしようとする動きのヒントになれれば幸いです。
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