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竹中 遼成, 平栗 圭 2026.06.29

なくなりつつある空間を、次の社会のインフラへ
「RED SPACE MUTATIONS #01」応募アイデアを考える4つの視点

「RED SPACE MUTATIONS #01」応募のヒント

現在、建築コレクティブ「RED SPACE」とロフトワークは、絶滅の危機に瀕する空間を次の時代へ適応させる「変異計画」を募集する公募「RED SPACE MUTATIONS #01」を実施しています。

募集するのは、建物の改修や用途変更にとどまらず、空間を成り立たせている機能や事業、制度、技術、生活様式までを捉え直す提案です。建築デザインをはじめ、ビジネスモデル、テクノロジー、制度設計、都市計画、アート、リサーチなど、さまざまな領域から応募できます。募集締切は2026年7月26日です。

RED SPACEとは?

RED SPACEは、ロフトワークの竹中遼成と平栗圭を中心とする建築コレクティブです。電話ボックス、ガソリンスタンド、地方鉄道、寺社仏閣、商店街。かつては暮らしや社会を支える身近なインフラだったものの、技術や産業、人口構造、生活様式の変化によって、役割を失い、姿を消しつつある空間があります。

こうした場所を、単に役目を終えた建物として捉えるのではなく、絶滅の危機に瀕する生物になぞらえた「空間種」として記録・分類し、次の時代へ引き継ぐための可能性を探っています。では、「絶滅危惧空間」を変異させるには、何を手がかりに提案を考えればよいのでしょうか? この記事では、応募アイデアを広げるための4つの視点を紹介します。

1. 別の用途だけでなく、空間を成り立たせる仕組みを考える

使われなくなった建物を、カフェやギャラリー、コワーキングスペースに変える。こうした用途変更も、空間を残すための有効な方法です。

今回、RED SPACEが考える「変異」は、単なる用途変更とは少し異なります。たとえば、ガソリンスタンドを題材にするとき、残された屋根や給油スペースの使い方だけを考えるのではありません。

  • なぜその場所は、全国各地の道路沿いに存在しているのか
  • どのような物流やエネルギー供給の仕組みによって成立していたのか
  • 誰が所有し、誰が運営し、どのように収益を生んでいたのか
  • そこに立ち寄ることが、人々の生活や移動にどのような意味を持っていたのか

空間の背後には、建築だけでは見えない制度、事業、技術、習慣、人の関係があります。RED SPACE MUTATIONSで求めているのは、その構造を読み取り、現在の社会に合うように組み替える提案です。募集ページでも、空間の形だけでなく、仕様、制度、運営、所有、収益、体験、テクノロジーまでを含む再設計を対象としています。

「この建物に何を入れるか」ではなく、まずは「この空間は、どのような社会の仕組みによって生まれたのか」と考えてみてください。

2. 一つの場所ではなく、全国に分布する「空間種」として捉える

一般的なリノベーションでは、特定の建物や敷地を対象に、その場所に合った計画を考えます。一方、RED SPACEでは、同じ形や機能を持ちながら各地に分布する空間を、一つの「空間種」として捉えます。

電話ボックスは、単体で見れば数平方メートルの小さな箱ですが、一定の規格を持った空間が、駅前や街角、公共施設の周辺など、全国各地に配置されています。一つひとつの箱を改装するのではなく、この「分布している」という特徴そのものを使えないでしょうか。

  • 地域の情報を集める場所にする
  • 災害時の通信や電源を支える場所にする
  • 行政や地域について意見を交わす、小さな対話の窓口にする

一つの電話ボックスに起きた変化が、同じ空間種へ展開されれば、点在する小さな場所が、新しいネットワーク型のインフラに変わるかもしれません。

募集ページで紹介している「LANdLine」は、一定の密度で配置された電話ボックスを、地域に対する人々の声を集め、AIとともに公共的な議論へ参加するインターフェースへ転換する提案です。通信設備だった場所を、地域の知性をつなぐ仕組みとして読み替えています。身近に気になる場所を見つけたら、「これと同じものは、ほかにどこにあるだろう」と視点を広げてみてください。

LANdLine

LANdLineを紹介する写真

一定の密度で点在する電話ボックスを、地域の心理的情報を集約し、AIとともに来場者が街に対する議論へ参加し投票できる「Neighborhood Intelligence Infrastructure(近隣知性インフラ)」へ転換する提案。

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3. 形、機能、事業、生活様式——どこを変異させてもいい

応募に建築の専門知識は必要ありません。説明会では、「変異」の入口として、主に次のような観点が紹介されました。

形態の変異
空間の大きさ、形、構造、移動の仕方を変える。

機能の変異
輸送、販売、通信など、従来担っていた役割を別の公共的な機能へ変える。

事業の変異
利用料金、所有、運営、収益の生み方を組み替える。

生活様式の変異
人が住む、働く、移動する、集まる方法そのものを変える。

RED SPACEが示す四章限

たとえば、募集ページに掲載されている「MOBITOWN」は、利用者が減少する地方鉄道に、医療、福祉、教育などの公共サービスを載せて移動させる提案です。

ここで変わっているのは、列車のデザインだけではなく、人がサービスのある場所へ出向く仕組みから、サービス自体が地域を移動する仕組みへ、生活と公共サービスの関係を組み替えています。

もちろん、一つの提案で四つすべてを変える必要はありません。法律や行政に関わる人であれば、規制や所有制度から考える。事業開発に関わる人であれば、運営や収益モデルから考える。エンジニアであれば、センサーやAI、エネルギーなどの技術から考える。アーティストや研究者であれば、空間に残された記憶や文化、人々の行動から考える。

自分の専門や経験から手を伸ばせる部分が、変異の入口になります。

【参考】MOBITOWN(移動型都市基盤)

MOBITOWNを紹介する図

過疎集落を結ぶ赤字路線に、「医療」「福祉」「教育」などの公共サービスを乗せることで、生活機能を維持可能にし、沿線全域を「交流圏」に変える、移動式公共インフラの提案。

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4. 完成された答えより、異なる人が参加できる「変異の種」を

社会に存在する空間は、建築だけで成り立っているわけではありません。土地や建物を持つ人、運営する事業者、利用する地域住民、制度をつくる行政、技術を提供する企業など、多くの人が関わっています。

そのため、絶滅危惧空間を社会実装へつなげるには、一人の専門家による完成された解決策よりも、異なる立場の人が参加し、発展させられる提案が重要になることがあります。

現時点で、事業者や土地所有者が決まっていなくても構いません。細部まで設計された実施計画でなくても、応募は可能です。

重要なのは、

  • どのような空間に着目したのか
  • その空間がなぜ失われつつあるのか
  • 何を残し、何を変えたいのか
  • 変異によって、誰の生活や社会がどう変わるのか
  • 実現に向けて、どのような人や技術が必要になるのか

を、他者が参加できるかたちで示すことです。

生成AIや画像生成AI、3Dツールなどを使い、アイデアを視覚化した応募も歓迎されています。建築図面や精密なパースだけでなく、サービスモデル、事業構想、制度提案、体験のシナリオ、リサーチやアートプロジェクトなど、提案形式は多様に設定されています。

まだ一人では実現できない構想だからこそ、公募を通じて仲間を見つける意味があります。

mutationを示す図

公募は、作品を選ぶ場ではなく、仲間を見つける入口

RED SPACE MUTATIONS #01は、優れた作品を表彰するだけのアワードではありません。応募者は、公募後にスタートするコミュニティ「RED SPACE COLLECTIVE」へ招待される予定です。そこで提案者、事業者、自治体、研究者、有識者、地域住民などがつながり、研究や議論、プロトタイプ制作、実証実験へ発展させることを目指しています。

上位作品については、展示会での発表、提案を具体化するエスキースワークショップ、空間を所有する事業者や自治体への提案機会、有識者との少人数レビューなど、実装へ向けた次のプログラムも検討されています。

公募は、RED SPACEの活動におけるゴールではなく、次のフェーズへ進むための入口です。ロフトワークが本公募で期待しているのも、完成度の高い案だけではありません。建築や都市の内部に閉じず、異なる専門性や経験を持つ人が、この問いに参加すること。集まった提案を集合知として捉え、新しいプロジェクトや協働へつなげていくこと。そのプロセス自体が、これからの空間をつくる方法になると考えています。

RED SPACE構造の図

まずは、あなたの身近にある「なくなりそうな場所」から

応募の対象は、RED SPACEのWebサイトに掲載されている空間に限りません。自分で見つけた空間を題材にすることもできます。

最近、使う人が減った場所。
気づけば街から消えつつある場所。
役割を終えたように見えるけれど、なぜか気になる場所。
必要とされていないのに、今も各地に残っている場所。

その違和感や偏愛が、変異計画の始まりになるかもしれません。

空間そのものを残すことだけが目的ではなく、そこに蓄積されてきた形、仕組み、記憶、分布、人との関係を、次の時代にどう引き渡すか。あなたの視点から、絶滅危惧空間の次の姿を提案してください。

RED SPACE MUTATIONS #01 募集概要

募集テーマ
絶滅の危機に瀕する空間に、変異をうながせ。
募集期間
2026年5月11日(月)〜7月26日(日)
応募対象
建築、都市計画、事業開発、テクノロジー、法律、行政、アート、リサーチ、地域活動など、領域を問わず応募可能
応募資格
年齢、国籍、専門分野、所属不問。個人・グループのいずれも応募可能
審査の観点
・視点の新しさ
・未来洞察の視点
・社会実装の実現性
・波及可能性

募集条件や提出方法の詳細は、AWRDの募集ページをご確認ください

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「この世に何か残したい」
個人の渇望を、ロフトワークでの実践で社会にひらく