【前編】ゼロ・ウォーター・ビル Kurita Innovation Hub
眼に視える水、眼に視えない水を創造する
水は、私たちの暮らしや産業を根幹から支える、なくてはならないものです。水がなければ人は生きることができないのと同様に、水が途絶えてしまうと経済活動そのものが絶たれることになります。いわば、水は、私たちにとってのすべての生命線でもある。一方で、暮らし、産業はどのようにして水に支えられているのか?水はどこから来て、どこへどのようにして流れていくのか?実際に、水というインフラにどのように私たちがどれだけ支えられているのか、眼にすることが難しいからこそ、日頃から意識することもとても少ないという方々がきっとほとんどだと思います。
一方で、気候変動によって、水枯れの問題などが世界中で今非常に危機的状況にある中で、このまま、果たして、私たちは「蛇口をひねれば、いつでも潤沢な水を得ることができる」という認識のままで良いのでしょうか。産業面では特に、水は製造工程における洗浄等使用するものを取水するだけではなく、使用した水を再生し、綺麗に戻していくという観点とプロセスそのものが非常に重要になってきます。
本インタビューでは、半導体など電子部品の製造工程に不可欠な超純水の製造・供給をはじめ、産業の発展を支える水処理事業を展開する栗田工業株式会社の研究開発拠点である「Kurita Innovation Hub(クリタ・イノベーション・ハブ)」のセンター長 中山哲さんに、産業における水処理とはなにか、お話を伺いました。また、栗田工業株式会社が株式会社日建設計とコラボレーションし、日本初「ゼロ・ウォーター・ビル」を達成した「Kurita Innovation Hub」の構想やその背景について、日建設計エンジニアリング部門機械設備エンジニアリンググループアソシエイト青井 健史さんにも同席いただき、お二人からじっくりとお話を伺いました。インタビューは前編・後編に分けてお届けいたします。
聞き手・執筆・編集:小川敦子
メインビジュアル撮影:関 拓弥
インタビュー撮影:鈴木 孝尚(16-design)
話を聞いた人
中山 哲
栗田工業株式会社 アドバンスドイノベーション本部 管理部門長 兼 KIHセンター長
1993年に栗田工業へ入社後、一貫して研究開発領域に携わる。開発企画、新事業企画を経て、新事業推進やオープンイノベーションの推進を担当。船舶分野での新事業創出、宇宙分野での新規技術開発、国内外スタートアップとの協業など、多様なプロジェクトをリードしてきた。 現職では、技術開発および新規事業開発に関する業務管理に加え、研究開発拠点「Kurita Innovation Hub(KIH)」の運営を統括している。
青井 健史
株式会社日建設計 エンジニアリング部門 機械設備エンジニアリンググループ アソシエイト
大学では建築物の衛生設備に関わる研究を専攻し、日建設計に入社後はさまざまな用途の設備設計に携わる。衛生設備の専門家として、水の有効活用をテーマとしたZero Water Buildingや、自然循環機能を深掘りした環境建築の模索・実現に取り組んでいる。設備設計一級建築士。空気調和・衛生工学会 第34回篠原記念賞を受賞し、各種学会の委員会活動にも参画している。
小川 敦子
株式会社ロフトワーク アートディレクター
2020年ロフトワーク入社。コンセプトメイキング、組織デザイン、コーポレート・ブランディング、SX、都市戦略デザイン設計を主な得意領域とし、経産省中部経済産業局、大垣共立銀行との共同プロジェクト「東海サーキュラープロジェクト」(2021-2022)、「椙山女学園大学リブランディング設計」(2022)、文化と経済の好循環を創出する京都市都市戦略2050年都市構想案提唱(2023-2024)等。共にある社会の在り方を描くロフトワーク自社プロジェクト「AruSociety」(2024)を立ち上げる。「水/流域」を起点に自然・社会・産業の基盤価値再構築に挑むコンソーシアム「Water Commons」を今夏発足予定。
前編目次
1. 栗田工業の事業内容、Kurita Innovation Hubの概要について
2. ゼロ・ウォーター・ビルについて、概要と実例
1. 栗田工業の事業内容、Kurita Innovation Hubの概要について
栗田工業は、なぜ、国内における水のリーディングカンパニーと言われるのか

ロフトワークアートディレクター 小川 敦子(以下、小川) 青井さん、中山さん、本日はよろしくお願いします。
日建設計エンジニアリング部門機械設備エンジニアリンググループアソシエイト 青井 健史さん(以下、青井) よろしくお願いします。
栗田工業 Kurita Innovation Hub センター長 中山 哲さん(以下、中山) 本日は弊社グループの研究開発拠点である「Kurita Innovation Hub(以下、KIH)」へお越しいただきありがとうございます。
栗田工業は1949年に創立した水処理の会社です。2025年度末時点では、グループ全体の売上高は約4,000億円強、グループ従業員数は8,000名を超える規模となっています。創立以来、技術にこだわって、お客様や社会の課題に向き合いながら水処理に関する技術と知見を蓄積してきました。その取り組みは、知的財産の積極的な創出・蓄積にもつながっています。
現在は、売上高の約半分を占める半導体など電子産業向けの事業を大きな柱としながら、幅広い産業のお客様に対し、水処理に関する多様なソリューションを提供しています。また、海外売上比率は全体の5割を超えています。

小川 日本以外ではどのようなエリアが多いのですか。
中山 アジア、北南米、EMEAに展開しており、グループ会社数は60社を超えています。クリタグループは、用水処理、排水処理、排水回収・再利用など、工場における水の利用から排出までを広く支える水処理ソリューションを提供しています。これらを通じて、お客様の安定操業や省エネルギー、資源循環、環境負荷低減などに貢献しています。私たちは、工場全体の流れを捉え、全体として最適な水の使い方や処理のありかたを提案しています。つまり、単に水処理薬品や装置といった商品を販売するというよりもお客様の課題解決につながるソリューションを提供するという考え方で事業を展開しています。その一例が電子産業向けの超純水供給サービスです。お客様の工場内で当社が水処理施設を建設・運営し、必要な水質・水量を安定的に供給しています。
オムロン株式会社ストラテジックR&D本部奥田武夫さん(以下、奥田) 本日は知財の観点から栗田工業さんがなぜ、どのようにして、日本における水のリーディングカンパニーになっていったのか、そういったことをぜひ把握させていただきたいと思い、インタビューに同席させていただきました。オムロンの奥田です。今日はとても楽しみにしていました。よろしくお願いします。水供給事業は基本的にはクライアントサイドが装置も水も購入する形になるのでしょうか。装置を買っていただいてもクライアントサイドで維持することは難しいということですか。また、メンテナンスまでを一貫して栗田工業さんが担うという、一連の流れによって技術の流出を防ぐための仕組みになっているのでしょうか。

中山 当社の超純水供給サービスは、クリタが施設を保有し、お客様が必要とする水質・水量の超純水を供給する形をとっています。半導体工場では、1日あたり数千~数万m3の水を処理する規模になり、限りなくH2Oに近い高純度の超純水を安定的に供給するには、高度な技術と運転管理・メンテナンスのノウハウが必要になります。お客様としては大規模な設備投資や施設運営に伴う負担を抑えられるメリットがあります。技術情報の管理にも当然配慮していますが、このような施設運営には運転管理、メンテナンスがとても重要になってきます。
小川 半導体洗浄における超純水という分野において、リーティングカンパニーとしては栗田工業さんがいらっしゃって、後続でも何社か出てきていると思いますが、基本的にはクリタさんのようにソリューションを提供する総合的な仕組みとして事業を行うということについて、業界内では当たり前と言いますか、みなさん共通してやってらっしゃるのでしょうか。それとも各社によって違いがあるのでしょうか。
中山 各社それぞれ違うのではないかと思います。超純水を作る、つまり水を高純度化する技術は、お客様のニーズに合わせて各社が対応している領域だと思いますが、使用後の水を再び使える水として循環させる「排水回収・再利用」は、クリタグループの強みだと思います。また、世界的に見ても、水処理企業で薬品、装置、メンテナンスを手掛けている会社は、ほとんどないのではないしょうか。このような強みを生かし、半導体に限らず、自動車業界、電力業界、製紙業界など多様な産業のお客様に対して、数多くのソリューションを提供しています。

小川 なるほど。水を循環で捉えるとすると、水を再生して戻していく過程こそが非常に重要な観点になるということですね。また、他社との関わりを持ち続けることや、その多様なニーズに応え続けることによって、徐々に栗田工業が出来上がっていったということ、どの企業も真似できない水のソリューションを提供できる企業へと成長していったということですね。ゼロ・ウォーター・ビル ができたことで、株主側の反応はかなり変わってきたのでしょうか。
中山 KIHをご見学頂くことで、よりクリタグループの事業内容や技術的な特徴をご理解いただけるようになったと感じています。最近では投資家の方から「KIHに行ったら面白かったよ」という情報交換もされはじめているようで、実際に他の投資家の方から評判を聞いて来訪された方もいらっしゃいました。KIHという名称には様々なステークホルダーの方々とつながるハブになりたいという思いを込めています。現在では、投資家の方々に加え、お客様、研究機関、地域の方々など様々な方々との繋がりが増えつつあると実感しています。
2. ゼロ・ウォーター・ビルについて、概要と実例
テクノロジーと建築エンジニアリングのコラボレーションだからこそ生まれた
国内初ゼロ・ウォーター・ビルの実装化という新たな創造とは

小川 ところで、ここ昭島には豊かな地下水があるのですね。地下水源により水道が100%賄われている、かつ東京でというのは非常に珍しい。
中山 そうですね、昭島はきれいな水に恵まれ、水に関する意識がとても高い場所だと思います。きれいな水が確保できるのは我々のような水の事業を営む企業にとって非常に重要です。

中山 KIHには、様々な現場からいろいろな水が日々届けられます。これらの水を分析し、どう処理するかを考えること、それが我々のスタートです。この積み重ねから新たな技術が生まれてきます。
またKIHでは、研究開発によっていろいろな種類の排水が出るのですが、それを一緒に混ぜて処理しようとすると、水処理の負荷が大きくなり大変ですので、手前でできるだけ切り分けて、さらにその切り分けたものを分析してから排水処理する仕組みにすることで、なるべくシンプルな設備で水を回収して再利用できるように水処理しています。これを「源流分離」と言いますが、これがKIHの水処理の仕方です。
そのくらいの水を再利用しているかですが、本来、クリタの技術であれば、水を100%回収・再生することができるのですが、80%回収を目標にしています。本当に100%再利用することが正しいのか、ということです。100%にしようとするとその分のエネルギー負荷が相応にかかります。薬品や資材も使います。そういったものをどれだけ最適化できるのか、チャレンジしてみようということで、あえて80%の回収率にしていますが、実はこれが結構大変なんです。
小川 電力は有限であり、これから電力の消費は、より重要な観点として総体的に捉え直していく必要がありますよね。
中山 そう思います。ここでは電力は再生可能エネルギーを使用しています。水処理装置を安定稼働させる点では100%回収を行うほうがコントロールしやすいのですが、80%という基準を設定してチャレンジしています。
小川 80%の基準を達成しようというのは、青井さんたちと協議して決めたのですか。
青井 そうですね。処理側はクリタさんの領域になりますので、我々はそこに至る前の経路を構築する必要があります。通常、排水は1種類か2種類ですが、こちらは6種類とか7種類とかありますので、実験流しや衛生器具など、建物内で生じる排水負荷別の排水経路を全て整理して、処理側にお渡しするというところまでを我々は整理しました。

中山 最大で1日一千トン程度使用する水と同量程度に水を戻しバランスさせる、それを実現するのが80%という回収率です。こんな姿を目指して日々やっています。ゼロ・ウォーター・ビルの詳しいことは青井さんからお願いします。
青井 ありがとうございます。では、Kurita Innovation Hubで取り組んだ、ゼロ・ウォーター・ビル(ZWB)、ABW(Activity Based Working)、省エネルギー対策の3つの柱について簡単に私からご説明します。ZWBという概念は、米国エネルギー省が作成した環境ハンドブックがもとになっていますが、「トリプル・ネットゼロ」という、エネルギー、水、廃棄物をネットゼロ(差し引きゼロの状態にすること)にする思想のもとに出来上がった背景があります。また、LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)という省エネ、水使用の削減、健康的な室内環境など、持続可能な建築と都市づくりを推進・評価する国際的な環境認証制度があり、今回は、その中の「LEED Zero Program Guide」を参考に検証しています。日本国内では、まだこのレベルでの評価法や認証制度が整備されておらず評価方法の検討が進んでいる状況にあります。
KIHは、建物の構成として、北側にある研究施設“TIC”と呼ばれている建物を主に、水の循環率を高めるような設計をしています。概念的には、建物全体でどのように水の循環率を高めるのかがポイントです。「代替水」という建物の中で再生水を循環させる仕組み。もう一つは「還元水」と呼ばれているもので、雨水の浸透を促進して百年ぐらいの単位で土中に還元し、それをまた水として利用する概念で、水循環を1つの敷地・建物単位で考えてみようというのが、ZWBの設計背景にあります。ZWBとは、使った水をどれだけ再生して利用できるか、敷地内に土中浸透させた水の量で評価し、これがうまくバランスしたときに達成できるという考え方です。KIHは、計算上は国際的な認証制度となる「LEED Zero Water」の評価方法で、国内初ゼロ・ウォーターを達成しています。
土壌浸透では、外構に雨水貯留浸透槽を約1600トン分設けて浸透を促進させています。代替水については、先ほど中山さんが仰っていたように排水を細分化し、純水化する際に処理過程で発生する一次処理水(RO膜処理水)をトイレ洗浄水や設備機器の補給水等に有効利用し、建物全体で水循環の効率化を図っています。一般的な一括排出型ではなく、分割経路毎に排水処理プラントへ戻す仕組みにしたことで、エネルギーや薬品使用率を総体的に減らすシステムを構築しています。
雨水貯留浸透槽はTICでは北と西と南に大きい貯留浸透槽を設けています。その貯留槽に入れる経路の一部として使っているのが、外装に全面的に配置している配管になりますが、雨樋として利用している配管は、最後は水槽につながるように設計されています。建築としてのデザイン性を高めるだけでなく、換気や日射遮蔽といったその他の設備的な機能を持たせています。最近の建築業界では、雨水浸透させるための貯留浸透槽を設置し、プラスチック製の板状のものを積層して空隙率を高めて貯留容量をアップさせ、浸透させやすくする機能を持たせた製品が利用される傾向があり、こういった水槽を大規模に建物の周囲に配置しています。

青井 感知器にビーコンを内蔵させた感知測量システムを導入し、ビーコンから得られる位置情報を基に、社員の方々がいらっしゃる場所の確認や、端末の連絡先情報などと連携できるようにしています。生産性の向上によるイノベーションを起こす行動変容の可否に対して、ABWによる場の提供がどれだけ寄与しているか大学の研究機関と共同研究しています。ビーコンは動作解析ができますので、データ解析をもとに1年間で誰がどこにどれだけ移動したかが分かるのも利点です。1箇所に行動範囲が籠りがちだと、どうしてもイノベーションにつながる行動変容のレベルが低くなると仮説を立てていますが、同時にアンケートを取ったり、実際の行動も見ながら分析しています。逆に、いろいろな場所に行っている人が本当に貢献しているかというとそうではなさそうで、現時点では適度にいろいろな人と話すバランス型のタイプがイノベーション行動へつながるのではないかという結果が出ています。ただし、生産性については評価基準そのものがないので、評価法を探しながら効果を検証しているという段階です。
「ゼロ・ウォーター」を掲げて取り組んでいますが、省エネルギー面での取組みとして、熱源など空調側にエネルギーを送るものはすべて100%グリーン電力で賄っています。基本的に電気主体で熱源を作り、なるべくグリーン電力でCO2を減らした状態を作るという考え方です。研究用に大量の外気を空調処理して供給しなければならないので、かなりのエネルギーを使います。一度冷やした空気を温めて、除湿した空気を送風するため、加温の際に温水を使います。また、夜間に電力需要が継続する傾向にあるので、その辺を改善するシステムを導入しています。これは複雑で分かりづらいのですが、研究所の夜間のエネルギー使用は結構大きいので、夜間時にスイッチを押して室換気量を落とすスイッチを付けたり、装置側で外気を無駄に使わないように稼働状況を把握できる仕組みを入れたり、施設全体でエネルギーをどれだけ使っているかを可視化して把握できるようにして、全体的なエネルギー調整をしています。KIHの場合、基準では、1年間で、だいたい5,250MJ/㎡ぐらいのエネルギーを必要としますが、標準モデルよりも約20%削減できています。これは普通のオフィスビルでZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)として評価されたビルの削減率よりもはるかに大きく、研究所としてはかなりエネルギー消費を削減できている証です。したがって、KIHは、エネルギー、水、そして健康性や働き方の三つの視点で総合的に考え設計した建物ということになります。

感知器にビーコンを内蔵させた感知測量システムを導入し、ビーコンから得られる位置情報を基に、社員の方々がいらっしゃる場所の確認や、端末の連絡先情報などと連携できるようにしています。生産性の向上によるイノベーションを起こす行動変容の可否に対して、ABWによる場の提供がどれだけ寄与しているか大学の研究機関と共同研究しています。ビーコンは動作解析ができますので、データ解析をもとに1年間で誰がどこにどれだけ移動したかが分かるのも利点です。1箇所に行動範囲が籠りがちだと、どうしてもイノベーションにつながる行動変容のレベルが低くなると仮説を立てていますが、同時にアンケートを取ったり、実際の行動も見ながら分析しています。逆に、いろいろな場所に行っている人が本当に貢献しているかというとそうではなさそうで、現時点では適度にいろいろな人と話すバランス型のタイプがイノベーション行動へつながるのではないかという結果が出ています。ただし、生産性については評価基準そのものがないので、評価法を探しながら効果を検証しているという段階です。
「ゼロ・ウォーター」を掲げて取り組んでいますが、省エネルギー面での取組みとして、熱源など空調側にエネルギーを送るものはすべて100%グリーン電力で賄っています。基本的に電気主体で熱源を作り、なるべくグリーン電力でCO2を減らした状態を作るという考え方です。研究用に大量の外気を空調処理して供給しなければならないので、かなりのエネルギーを使います。一度冷やした空気を温めて、除湿した空気を送風するため、加温の際に温水を使います。また、夜間に電力需要が継続する傾向にあるので、その辺を改善するシステムを導入しています。これは複雑で分かりづらいのですが、研究所の夜間のエネルギー使用は結構大きいので、夜間時にスイッチを押して室換気量を落とすスイッチを付けたり、装置側で外気を無駄に使わないように稼働状況を把握できる仕組みを入れたり、施設全体でエネルギーをどれだけ使っているかを可視化して把握できるようにして、全体的なエネルギー調整をしています。KIHの場合、基準では、1年間で、だいたい5,250MJ/㎡ぐらいのエネルギーを必要としますが、標準モデルよりも約20%削減できています。これは普通のオフィスビルでZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)として評価されたビルの削減率よりもはるかに大きく、研究所としてはかなりエネルギー消費を削減できている証です。したがって、KIHは、エネルギー、水、そして健康性や働き方の三つの視点で総合的に考え設計した建物ということになります。

青井 また、外部機関による認証として「CASBEE-スマートウェルネスオフィス」認証を取得しており、健康性も含めた建物の機能を評価していただいたものです。WAF(World Architecture Festival)という建築の世界大会で、水とナチュラルライトの項目でノミネートされたり、海外からは水に関する取組についてかなり評価をいただいています。ナチュラルライトの面では、オフィスの吹き抜け部分に大型のトップライトが4つあり、採光しやすい工夫を施し、大規模に光を取り入れています。外装側は基本的にオープンなガラスで構成されているので、そこから直達する日射をルーバーで削減しながら取り込むなど、総合的な観点でノミネートされました。
中山 栗田を知らなかった人が「こんなすごい賞を取ったんだね」と言ってくれます。ありがたいことです。
小川 ウォーター・ゼロ・ビルの実装化とは、栗田工業さんと日建設計さんという、テクノロジーと建築エンジニアリングという全く異分野のコラボレーションによって生まれた、まさに、創造性と創造性がぶつかり合い、融合し、革新へと繋がった、イノベーションだったというわけですね。
後編へ続く。
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