3日間でアイデアを形に。素材開発プロジェクト
Outline
常識を覆す「素材のイノベーション」に挑む
3日間集中キャンプ。
汚れにくい、色褪せない、壊れにくい。
日本の建材は、そのままの質感が長持ちする、という世界でもトップクラスの品質の高さを誇ります。しかし、テクノロジーの進化や海外諸国の台頭によって技術や開発される素材のコモディティ化が進み、「素材のイノベーション」が起こりにくいのが実情です。
住関連サービスを提供する株式会社LIXILのマテリアルサイエンス研究所では、新素材開発に向けた開発コンセプトの策定プロジェクトが進行しています。
よりよい暮らしを彩るための「未来の素材」となる、新しいアイデアを生み出すための集中キャンプを、「素材」がテーマのクリエイティブラウンジMTRL KYOTOで実施しました。
プロジェクト概要
- 内容
ワークショップ
プログラム企画設計 - 体制
クリエイティブディレクター: 金指了、永井結子
プロデューサー:白江崇
MTRL ディレクター:小原和也
ゲスト:堀木俊(建築家)、山川陸(グリ設計)、一野 篤 (MOVEBELL SITUATION代表、デザイナー)、川勝 真一(京都造形芸術大学・京都精華大学非常勤講師) - 期間
2017年11月〜2018年3月
Process
「Research Through Design」で新素材のコンセプトを探求する
ラピッドプロトタイピング×リサーチ:開発要件の精度を上げる
独自性をもちながら、シンプルで人の感性に響く開発コンセプトをどうつくるか。アイデア発想の手段に選んだのは、制作を通じて課題を明らかにし、解決案を模索していく「Research Through Design」です。
Research Through Designでは、①課題の設定/観察、②仮説の設定/言語化、③制作、④検証/評価、⑤解決策の提案/観察……、という流れで、観察やアイデア発想、プロトタイピングのサイクルを小さく何度も回します。ブラッシュアップを繰り返すなかで、素材の開発要件を具体的にする狙いです。
※「Research Through Design」とは、アメリカの著述家Christopher Fraylingによって提唱された、実践的な手法としてデザインを捉える態度のこと。論文「“Research in Art and Design,”Design:Royal College of Art Research Paper, Vol.1, No.1, UK, Royal College of Art, 1993.」で提唱され、様々なアプローチが実践されています。
リサーチをより効果的に行うために、全プロジェクトメンバーが集い短期間で集中できる環境を設計。「素材」をテーマとするクリエイティブラウンジMTRLを拠点に、合宿形式で行いました。
また、4名のクリエイターをゲストに迎え、実際に素材の利用者となるユーザー視点も交えたディスカッションを行いました。
観察・発見・発想・評価:リサーチの4つのアプローチ
ワークは大きく分けて4つのアプローチで実施されました。
「暮らしの中の素材」を観察する
街に出て、様々な建材や素材を観察し、直感的に「面白い」と感じたものを撮影。その建材は、周りの環境とどう調和しているか、どんな条件下でどんな表情を見せているのか。自分が受けた印象、抱いた感情はどんなものか。実際に触ったり質感をみて、素材が持つストーリーを想像しながら記録に残します。
観察結果を言語化し、キーワードを発見する
フィールドで記録してきた素材をメンバーで共有し、それらがもつ価値を言語化します。メンバー同士で質問し合い、なぜ自分がその素材に関心をもったのかを明らかにしたり、様々な角度から議論することで言葉を精査し、強度を高めます。
キーワードからアイデアを発想する
具体的に出てきたキーワードを、空間やシーンにあわせて具体的に捉えていきます。この観点を床材に活用したらどうか、そもそもテラスの機能とは何か、その機能によって外壁はどんな変化をするといいのか。キーワードを実際の素材や建材に当てはめて、アイデアを具現化しスケッチに起こしていきます。
試作+評価のサイクルを回す
今回出てきたアイデアは70超。整理の指標として「世の中にまだない新素材↔既存技術等の組み合わせ」「マーケット(需要)大↔マーケット(需要)小」という4象限を設け、アイデアをカテゴライズしていきました。
今回のプログラムはここまででしたが、この後アイデアを実際に試作し、検証・評価を行い、それをさらに観察するというワークが続きます。
Member
金指 了
株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター
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