公益社団法人日本皮膚科学会 PROJECT

ビジネス展示会を1.5ヶ月でオンライン化
商談機会うみだすWebサイト構築

Outline

日本皮膚科学会は毎年6月、全国から皮膚科医療の研究者と医療従事者、医学生が集まり、最新の研究成果を発表する「日本皮膚科学会総会(以下、総会)」を開催しています。総会の人気プログラムのひとつである展示会では、製薬会社や医療機器メーカーが出展し、新薬や新技術を紹介。学者・企業研究者を含む学会員に直接アピールできる展示会は、出展各社にとって重要なビジネス機会となっています。

2020年4月、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、東京をはじめとした都市圏を中心にイベントの開催自粛を要請されました。これにより、6月4日から7日までの4日間、国立京都国際会館で行われる予定だった第119回総会の現地開催は実施不可能となりました。

そこで、日本皮膚科学会は第119回総会を当初の日程でオンライン開催することを決定。目指したのは、総会史上初の「完全Web開催」。学会発表だけでなく、展示会まで完全にオンライン化することに挑戦しました。

準備期間はわずか1.5ヶ月。ロフトワークは、前年度に慶應大学理工学部 オンラインキャンパスツアープロジェクトを支援したことからパートナーとして選定され、本プロジェクトがスタートしました。

プロジェクト概要

  •  プロジェクト期間:
    2020年4月21日〜2020年6月16日
  •  体制:
    <クライアント>
     公益社団法人日本皮膚科学会
    <ロフトワーク>
     プロジェクトマネジメント/クリエイティブディレクション:村岡 麻子、多田 麻央
     クリエイティブディレクション:伊藤 健人
     テクニカルディレクション:伊藤 友美
     プロデュース:柏木 鉄也
    <クリエイター>
     Webページデザイン/WordPress構築:株式会社ニコットラボ 作本 慎介

    *肩書はすべてプロジェクト当時

Challenge

商談機会を生み出すWebサイトを短期間で構築する

今回のプロジェクトでは、本来の展示会が持っていた機能を1.5ヶ月で確実にオンラインで実現することを目指しました。

最も重要なのが、オンライン展示会で出展者と来場者との商談機会を生み出す機能。そして、短期間であっても、会員たちが訪れたくなるようなWebならではの会場演出や、企業ページを回遊するためのわかりやすい導線を実装する必要がありました。

さらに、限られたリソースしかない事務局の負荷を抑えながら、滞りなく展示会の準備・運営ができる環境づくりが課題でした。

Outputs

背景にアニメーションを取り入れることで、イベントの特別感を演出。

A会場、B会場のトップページ。ナビゲーションボタンを色分けし、大小差をつけることで、来場者が今どこにいるのか迷わない工夫をしています。

出展企業ページ(イメージ)

Story

CMSを導入・カスタマイズすることで、展示会の機能をWebへスピーディーに転換

プロジェクトチームは、数多くの出展企業から提供される原稿や画像を効率的に管理し、かつ適切にWebサイトに反映するために、CMS導入を選択しました。CMSには、オープンソースのWordPressを採用。豊富なプラグインの中から適切なものを組み合わせたことで、展示会Webサイトに必要な機能をスピーディーに実装しました。

オンライン展示会はリアルの展示会場と異なり、出展者と来場者が1対1でやりとりをすることができません。そこで、来場者が製品パンフレット等のより詳しい製品情報へアクセスできるように、企業ブースページにPDF資料のダウンロード機能や企業Webサイトへのリンクボタンを実装しました。

さらに、来場者からのフィードバックや個別連絡先を得るための来場者アンケートは安定性と効率性を重視し、クラウド上で複数社分のフォーム入力データを一括管理できるGoogle フォームを使用しました。

総会らしい「華やかさ」をオンラインで演出

これまでの総会は、会場に色鮮やかでにぎやかな会場装飾でした。今回、はじめてのオンライン展示会への来訪を促すために、総会らしさを感じさせるビジュアルによってWebサイトの魅力を高めました。

プロジェクトチームは、予め制作されていた第119回総会の告知ロゴ・ポスターとトーンを合わせた紫・赤を基調とした配色で、Webサイトをデザイン。描き下ろしのイラストレーションを使いながら、Webならではの楽しく華やかな雰囲気を演出しました。

さらに、はじめてのオンライン会場に会員がハードルを感じないよう、サイトの中で迷わずに企業ページを回遊できるように、情報構造とナビゲーションをシンプルに設計しました。

速やかなローンチと運用ができる環境づくり

ローンチ時の課題のひとつが、出展企業が提供するデータの整理とWebサイトへの反映でした。事務局は限られたリソースのなかで、50社を超える出展企業とのページ確認やコンテンツの調整・修正に対応しなければなりませんでした。

事務局によるWeb更新業務を効率的に進めるために、プロジェクトチームは以下の施策を実施しました。

  • 出展企業向けのコンテンツマニュアル作成
  • 出展企業から提供されたテキスト・画像データの一括登録
  • プロジェクト管理ツール・Backlogを導入、公開直前の出展企業からの要望や修正タスクを管理
  • 初めてCMSを使用する事務局職員に向けたCMS講習会の開催

限られたスケジュールだからこそ、運営業務で躓かないためのサポートを手厚く行いました。

プロジェクトの成果

急遽オンラインに切り替えとなった展示会への出展企業数は、例年の3割程度の56社にとどまりましたが、Web展示会サイトには4日間で5,124人が訪れ、72,000ページビューを獲得するなど盛り上がりを見せました。

さらに、オンライン化したことで、企業ブースによっては例年の現地開催よりも回収率が良いという声も多数ありました。やむを得ずオンラインで実施することになった展示会でしたが、確かな手応えを得る結果となりました。

Voice

すべてのステークホルダーから手応えを得た、史上初のWeb開催

公益社団法人日本皮膚科学会 運営事務局

今回のプロジェクトで最大の課題は、総会のWeb開催決定から本番までの1.5ヶ月という非常にタイトなスケジュールの中で、主催校、出展企業、参加者の皆様が納得するコンテンツをはたして実現できるのか、ということでした。

はじめてのWeb開催では、サーバーの選定や解析ツールの整備など、これまで触れることが無かった初めての業務が多くありました。慣れない中でしたが、ロフトワークの方々から手厚いサポートを受けたおかげで、スムーズに手配できました。

当初、企業様からは、現地開催時のように参加者の皆様に直接、商品の説明ができないことを心配される声もありました。しかし、オンラインアンケート機能により、結果として多くの商談機会が創出されたこと、さらに、参加者の皆様にもコンテンツを楽んでいただけたことは、今回のプロジェクトの成果です。怒涛の日々でしたが、多くの企業様より好評の声が届き安堵しております。

ロフトワークの方々には、初回打ち合わせからクローズ作業まで迅速かつ丁寧にご対応いただきました。タイトなスケジュールの中でも、終始ポジティブに向き合っていただいたことで、プロジェクトを完遂させることができました。

多大なるお力添えをいただきまして、ありがとうございました。

Member

村岡 麻子

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

多田 麻央

株式会社ロフトワーク
シニアディレクター

Profile

伊藤 建人

伊藤 建人

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

伊藤 友美

株式会社ロフトワーク
テクニカルグループ テクニカルディレクター

Profile

柏木 鉄也

株式会社ロフトワーク
チーフプロデューサー

Profile

メンバーズボイス

“タイトなスケジュールではありましたが、関わった全員が「コロナによってネガティブな気持ちにならないぞ」と意気投合し、リアルに劣らない華やかなオンラインイベントにする事ができたのではと思っております。

ポジティブな気持ちでい続けられる事が、チームのモチベーションを保ちPJを完遂・成功させる一番の要因と考えているので、そういった意味でとても恵まれた案件でした。

また、事務局様、参加企業様、クリエイターの皆様、ロフトワークのメンバーといった、プロジェクトに関わった全員がイベント実現に向けてプロとしての知恵を出し合えたのも良かったです。
今後も、どんな局面でも思考停止せずベストを出して行けるチーム作りを目指して行きたいと思います。

村岡 麻子(ロフトワーク クリエイティブディレクター)

Keywords

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