株式会社海遊館 PROJECT

海洋生物から多様性理解を深める展示とは?
水族館とクリエイター、ガチンコ “ド共創” で問いを形に

ロフトワークは大阪市港区の水族館「海遊館」の特別展「視点転展(してんてんてん)~色んな見え方、感じ方~ 」の総合プロデュースを担当。展示期間は2022年7月14日(木)から、2024年1月初旬まで、約1年半に渡ります。特別展のテーマは「視点の多様性」。わたしたち人間を含めた生き物たちが認識している世界の違い、視点や感覚の多様性を実感できる展示を目指しました。

多ジャンルのクリエイターや、海遊館のスタッフと共に約2年半にもおよぶ対話と実験を繰り返し、オープン直前まで微調整と共創を重ねてできあがったこの展示。関わったクリエイターたちは、何を考え、どこで苦しみ、どんな面白さを発見したのか。海遊館チームのリーダーである村上寛之さんと、ロフトワークのメンバーとともに、座談会形式で振り返ります。

撮影:山元 裕人
執筆:新原 なりか
企画・編集:横山 暁子(loftwork.com 編集部)

登場人物

株式会社海遊館 飼育展示部 部長 兼 海遊館館長 村上 寛之
YCAM 今野 恵菜
ナリカタデザイン相談室 成田 可奈子
TEAM クラプトン 山口 晶
ロフトワーク シニアディレクター 上ノ薗 正人
ロフトワーク クリエイティブディレクター 服部 木綿子
ロフトワーク MTRL クリエイティブディレクター 柳原 一也

費用対効果を考えると、“共創”は取るべき手段ではない?

ロフトワーク 上ノ薗正人(以下、上ノ薗) 今回のプロジェクトでは、クリエイターのみなさんにとっても海遊館の村上さんにとっても、これまでやってきた制作や展示とは違うアプローチが随所にあったと思います。「何をつくろうか」「どう、つくろうか」というところから、クリエイターチームも発注者側である海遊館チームも一緒になって考えていく。まさに「共創」のプロジェクトでした。まずはこの共創の面白さと難しさについて、お一人ずつ伺っていきたいと思います。最初は、海遊館チームのリーダーである村上さんからお願いします。

海遊館 村上 寛之さん(以下、村上) 今回のプロジェクトは、私にとってはまさに未知の体験でしたね。その場その場の瞬発力や化学反応によって、思ってもみなかったものができあがっていく面白さは、なかなか言葉では説明し難いです。正解がなく、ゴールは見えないけれど、でもたしかにゴールに向かっている感覚はあるという、ドキドキと頼もしさが入り混じった気持ちでいました。

上ノ薗 通常のフローだと、今回のようにギリギリまで完成形が見えないという状態は、なかなか許されないと思うんです。今回、安易に妥協することなく実験を続けることができたのは、村上さんが私たちを信じてくださったからだと思います。

ロフトワーク 服部木綿子(以下、服部) 本当にそう思います。いつも村上さんが信じてついてきてくださっているのを感じて、とても心強かったです。

株式会社海遊館 飼育展示部 部長 兼 海遊館館長 村上 寛之さん/プロジェクトリーダー

上ノ薗 では次は、ロゴとビジュアルデザイン全般を担当してくださった成田さん、お願いします。

ナリカタデザイン相談室 成田可奈子さん(以下、成田) 普段はブランディングデザインを主に行なっていて、企業やブランドのお店や展示会の空間作りは経験がありますが、こういった展示をつくる仕事は今回が初めてでした。ロフトワークさんや、共創するクリエイターのみなさん全員とお仕事するのも初めてという中で、頼もしかったのは、「こんなのやったら面白いかも」という思いつきを口にしてみたら、誰かが拾ってくれて実現してくれるチームだったということ。「えっ、ほんとにできちゃうんだ!?」という驚きもたくさんありました。

難しかったのは、他のクリエイターさんたちのものづくりのスタンスだとか、何が得意か、どうやって組んだらそれぞれの良さが発揮できるのかなど、ほとんどわからない状態でプロジェクトに途中から合流したことです。最初は全部手探りでしたが、徐々にいろいろなことがわかってきて、その過程が難しくもあり面白いところでもあったと思います。

服部 成田さんには途中からプロジェクトに参加していただいたのですが、成田さんがみんなの曖昧なアイデアを「絵」にして提示してくださることで、すごく推進力が生まれていました。

ナリカタデザイン相談室 成田可奈子さん/ロゴ・ビジュアルデザイン担当

上ノ薗 成田さんの存在によって、全体の雰囲気がさらにポジティブに変わりましたよね。次は設計施工担当の山口さん、お願いします。

TEAM クラプトン 山口晶さん(以下、山口) 「クリエイターが集まってフラットな立場でぶつかりあうと、こんなことが起こるんだ!」って感動する場面がたくさんありました。みなさんそれぞれ専門性も高いので、自分が思いついたアイデアを話すと、想像もできなかったような形で膨らんでいくのが面白かったです。あと、普段は自分が思いついたアイデアを自分で形にすることが多いので、他のメンバーのアイデアをどこまで実現させられるか、というのは新たなチャレンジでしたね。

みなさん面白い人たちばかりなので、集まるたびにどんどんアイデアが広がっていくし、上ノ薗さんもそれをけっこう野放しにしてくれるのですごく楽しかったんですが(笑)、そのぶん「何のためにやっているのか」という根本に立ち戻ることはいつも忘れないように気をつけていました。

TEAM クラプトン 山口晶さん/設計施工担当

上ノ薗 僕の「野放し」のせいで、難しさを増幅させた部分もありましたね。でも、今回はそうやってギリギリまで話し続けるということが必要だったとも思っています。ありがとうございました。では、次はコンテンツ企画・システム設計担当の今野さん、お願いします。

YCAM 今野恵菜さん(以下、今野) 共創という言葉は、最近はいろいろなところでキーワードとして出てくると思うんですが、こんなに嘘偽りなしのガチンコの「ド共創」は、なかなかないと思います。他のクリエイターや、海遊館のみなさん、ロフトワークのみなさんとの共創はもちろんですが、今回は生き物たちとの共創も重要なポイントでした。また、展示を見る方にも共創する仲間になってもらうということもコンセプトになっています。

そもそも共創って、従来のものさしで効率や費用対効果などを考えると、取るべき手段ではない時も多いとは思うんです。でも、前例がないことや、本当に心から面白いと思えるようなことをやろうとする時には、共創によって生まれるエラーや摩擦のようなものを作り手が楽しむ過程が必要なんじゃないかと、今回強く感じました。

YCAM 今野恵菜さん/コンテンツ企画・システム設計担当

上ノ薗 今回、振り返るとけっこう「よしなに」できたことっていっぱいあったと思うんです。でも誰もそうしなかった。言い換えると、妥協しなかったということですね。それはしんどいことではあるんだけれど、このやり方だったからこそ、この展示ができたんだなと感じています。では、次はロフトワークのメンバーにいきましょう。ディレクターの服部さんと柳原さん、お願いします。

服部 ロフトワークはいつも共創を基本的なスタンスとしてはいるのですが、特に今回はその代表格というか、こんな「ド共創」は初めてだったんじゃないかと思っています。関わる人数も多く、東京・大阪・山口・京都と拠点も離れていたので、すべてのメンバーの間のコミュニケーションに抜け漏れや齟齬がないように気を配り、各々の作業に集中してもらえるよう動いていました。他のプロジェクトでは経験がないくらい、今回はロフトワークも一緒に思いっきり手も動かしましたね。それがすごく面白かったです。

ロフトワーク 柳原 一也(以下、柳原) 僕はMTRLという部署に所属しています。過去に担当した生き物の環世界*とテクノロジーをテーマにしたプロジェクがきっかけとなり、本プロジェクトに参加することになりました。
参加者のバックグラウンドが様々だったので、それぞれ使っている言葉が違う場面がよくあって、ディレクターとしては、その翻訳をする役割を担えるように心がけていました。僕もものを作ることは大好きなので、自分で手を動かす場面が多くとても楽しかったです。

村上 私、なにもかも初めてだったので「共創ってこんな感じなんやな」「みなさんにとってはこれが普通なんや、すごいな」って思ってたんですけど、今回は特別「ド共創」だったんですね。今知りました(笑)。

今野 正直、「共創っぽい」で止まっちゃうこともあるんですよね。今回は「なんちゃって」じゃない、本当の共創だったと思います。

*環世界について・・・ドイツの生物学者・哲学者ユクスキュル(1864~1944)は、自らが提唱した環世界(=Umwelt:ウンベルト)とは、「すべての生物はそれぞれ異なる知覚世界をもって生きており、その主体として世界を捉えているという考え。」と自著「生物から見た世界」の中で論じています。視点転展の構想段階では、環世界の研究者とのワークショップなども実施することで構想を固めていきました。

自分と生き物が感じている世界の差分を、テクノロジーで表現する

上ノ薗 続いて、「生き物の存在とテクノロジー」というテーマで話していこうと思います。テクノロジーをうまく同居させながら、生き物という存在を意識し、取り扱うには、これまでとはまったく異なる思考プロセスが必要だったと思うのですが、どうでしょうか。

今野 本当にそうですね。最初に「生き物がそこにいるんだぞ」ということをはっきり意識したのは、昨年11月のプロトタイピングデーの時でした。いくつかのコンテンツを提案して好感触を得ていた中、「メダカの家を粘土で作る」という案を出した時に、海遊館のみなさんの反応がガラッと変わったんです。「海遊館は生き物が本来住んでいる場所をいかに忠実に再現するかを大事にしているから、メダカの家を勝手に想像して作るなんてことはありえない」ということを言われました。

上ノ薗 あれはたしかに衝撃的でしたね。正直なところ、それまでは僕も生き物に対する見方がまだまだ軽かったなと反省しています。生き物と共に展示を作ることに対しての海遊館のみなさんの強い思いに真剣に対峙するとはどういうことか、確認できた大切な出来事だったと思います。

今野 でも、その時に100%覚悟ができたかというとそうではなくて、その後もプロジェクトを進めながら徐々に解像度を高めていきました。生き物には絶対に勝てない、勝つ必要がないということを、きちんと自分の中で咀嚼できたのは、だいぶ後になってからだったと思います。

今野 「視点転展」の会場である特別展示室は順路の最後にあたるので、来場者はその前に常設展示でたくさんの生き物を見てきています。展示のオープンが近づくにつれて強く意識するようになったのは、来場者が常設展示を見た記憶に対する視点を増やしたり、生き物や自然をより自分ごととして臨場感を持って見られるようになったりする、そのための補助でありたいということでした。

柳原 様々な生き物を間近で見られるという常設展示での体験が、そもそもすごく貴重なものなんですよね。だから「視点転展」では、常設展示で語りきれない部分だったり、常設展示に対する新たな発見につながるようなことを見せたい。今野さんとはこのあたりの話をたくさんしましたね。

上ノ薗 展示の一番最後、「リズム」のエリアで使うデータを取るために、チーム全員でそれぞれ海遊館を回って動画を撮りましたよね。ひとつの生き物の挙動を1分間じっと動画に撮り続け、見続けることで、生き物がすべてを教えてくれるというか、生き物どうしの違いや世界の広さみたいなものをまざまざと感じることができる、とてもいい機会でした。あれは今野さんの発案でしたよね?

光の明滅と音によって、様々な生き物の「リズム」を体感できる

実際にリズムエリアで使用するのデータをとるために撮影した映像:カニがにおいをかんじるリズム

今野 はい。でも、上ノ薗さんが感じられたようなことは幸福な副産物みたいなもので、そこまではっきりと意図していたわけではありませんでした。ただ、以前から「疑問を持つための技術」についてはよく考えていて、「わからない」とか「気になる」ことを発見するためにどんなことができるんだろう、ということが自分の中のテーマとしてずっとありました。だから、「わからない」に身を置くようなことをみんなでやってみたいなとは考えていましたね。

村上 「わからない」の面白さを伝えるというのは、私もずっとやりたかったことでした。でも、やっぱり「わからないのは嫌だ、全部解説してほしい」と思う人もいるし、伝え方が非常に難しいことでもありました。今回、テクノロジーをうまく使って私たちだけでは絶対思いつかないような方法で、その難しい部分をクリアしてくださったので、本当にうれしかったです。特に、今話されていた「リズム」のエリアは、案を頂いた時に「やった!すごいのが来たぞ!」と思いましたね。

今野 あのエリアでは、人気があって目立つ生き物も、そうではない生き物も、全部同じサイズのデバイスでフラットに並べました。その中で、私たち人間についてもリズムという同じ尺度で切り取ることで、他の生き物たちと同じ場所に立って考えることができる空間になっていると思います。

柳原 視点転展の根底にあるのが「環世界」という考え方なのですが、その面白さを伝えるには生き物を単にエンタメ的に消費するような扱い方ではだめなんですよね。人とその他の生き物が見たり感じたりしている世界の「差分」に面白みを見出して、そこを楽しむためのコンテンツをつくらないといけない。それがすごく難しくて村上さんや飼育担当の方々から普段生き物と触れ合う中で体感されている生き物の生態のユニークさなどを教えてもらい、展示内容をどうやってつくっていくのかを一緒に考えさせてもらいました。人がどうすれば面白がってくれるかだけではなく、生き物の多様性をいかに面白く伝えるかを考えないといけない場面は今後増えていくと思っています。今回の展示でチャレンジできたことがすごく貴重な経験になっています。

海遊館の想い、飼育員の熱量、つくり手の温度感を伝える

上ノ薗 では次は、「アナログ / デジタル」というトピックで話していきたいと思います。今回の展示では、手書きとデータ出力を混在させた見せ方をしています。そういったわかりやすい二元論的なアナログ / デジタルの話や、その間のグラデーションについても話せたらと思います。

成田 アナログかデジタルかという二択でデザインを考えたわけではありません。各所に最適な表現を選んでいったら、結果的にアナログとデジタルが混在することになりました。例えば、エントランスのオブジェの「視」の文字ところをまばたきさせたいというアイデアが先にあって、だったら映像を使う=デジタルの表現になるな、というような。ひとつ最初から思っていたのは、スンとすました感じの展示ではなく、みんなの思いが詰まった温かみみたいなものを表現したいということです。その結果として手書き=アナログを取り入れたのですが、全部手書きでなんでもありにしちゃうと、デザインのエッジがなくなってしまう。そうではなくて、プロの仕事として、お客様に見せるものとしてのクオリティを保ち、デザインのオリジナリティを出したいけれど、かちっと作り込みすぎると冷たくなってしまう。そのあたりのバランスがとても難しかったですね。いったんできたものを山口さんに見てもらったら、「作り込みすぎじゃないか」と言われたりしたこともありました。作り込む部分と、ラフさや粗、テクスチャー感みたいなものを残す部分との線引きをずっと探し続けていましたね。

山口 僕も当初から、海遊館の方々も含めたみんなに参加してもらいたいという思いは持っていたのですが、実際どんなふうに参加してもらえるのかについては、ずっと手探りでした。結果的には、「B面」という形でもがっつり参加していただけて。

上ノ薗 展示を区切る壁の裏の部分を、B面と呼んでいるんですよね。海遊館のスタッフの方々に、手書きで自分の愛する生き物について書いてもらいました。

山口 A面だけでは表せない、海遊館の方々と話している時のあの面白さをどうやって出そうかと考えて、B面ができたんですよね。

成田 溢れたんですよね、A面から。海遊館の方々のフジツボやペンギンやクラゲへの愛はA面の展示だけでは語りきれなくて、溢れてこぼれた結果B面ができた。みなさん予想を上回る素晴らしい熱のこもったアウトプットを持ってきてくださって、それを受け取った以上はちゃんと熱量が伝わる形で展示しないといけないと、私もさらに気合が入りました。その結果、デザインして作り込んだメインの展示 A 面に対して、愛の溢れた B 面をアナログの良さを生かして展示する、という表現にたどり着いたんです。

展示の文字をよく見ると実は手書き。海遊館のスタッフの方々も巻き込み、チームメンバー総出で作業した。
海遊館のメンバーが想いを綴った「B面」

服部 施工の時には、東京にいる成田さんとB面の前で何度もビデオ通話をして、細かい調整をしていきましたよね。成田さんと村上さんと3人で、それぞれの仕事場からオンラインで共同編集できるドキュメントに張り付いて、一日中リアルタイムでやりとりを重ねながらグラフィックの制作を進めた日もありました。あの日は共創を象徴する一日だったかもしれない。

山口 今回、クリエイターチームの住んでいるところがみんなバラバラだったのも特徴的でしたね。全員現場に集まったら素早くできるようなことも、タイミングを合わせて電話をかけてとか、いろんなプロセスが必要になりましたけど、でもやりたいことはちゃんと全部できたなという感覚があります。

あと、設計施工の面で言うと、普段僕らが作っている小さなお店とは比べ物にならないくらいすごい数の来場者数に対応しないといけないということでかなり悩みましたね。印象的だったのが、村上さんがおっしゃっていた「どれだけ考えても、展示物は絶対に壊れる。その時にいかに修繕できるようにしておくかが大事」ということ。建築をやっていると、「壊れる=悪」というのが思考のベースになってしまうんですが、そこを転換してくださったので目から鱗でした。

成田 私も、コンテンツから展示を作っていく仕事は初めてでしたが、普段から美術館や博物館で展示をたくさんの展示を観てきた経験を活かしながら、鑑賞者としての視点から離れすぎずにデザインすることは意識していました。結果として、いろんなところにしかけや気づきがあるというか、観る人の視点で探しながら楽しめる展示にできたんじゃないかと思います。

手でダイヤルを回し、一文字ずつテープに印字していく「ダイモテープライター」が、展示のあちこちに使われている

山口 アナログ / デジタルという話でいくと、ダイモテープライターもけっこう象徴的でした。ダイモテープライターってアナログとデジタルのあいのこみたいな感じで、できるものはデジタルなパキッとした見た目なんだけど、作る時の動作としてはすごいアナログ。その作る時の苦労や手間が見る人にも想像できるというか、手間の共感みたいなものが生まれますよね。例えば、カッティングシートをみんなでDIYでやったとしても、その共感って生まれづらいと思うんですよ。出来上がったものを見れば作る時の大変さが想像できて、でも難しい道具ではなくて誰でも手間さえかければできるっていう、その感じが僕はすごく好きでしたね。

服部 最終的に、クリエイターのみなさんがいい意味でお互いのクリエイティブに寄せていったことで、それぞれが普段作られているものとは違う、このメンバーでの共創だからこそのアウトプットになりましたよね。デジタルとアナログの塩梅も、このメンバーだからこそちょうどいいところに落ち着いたなと思います。

今野 少し概念的な話にはなってしまうんですが、お話を聞いていて思ったことがあって。今後は、アナログ / デジタルの垣根を超えて何ができるかということが重要になっていくと思うんですよね。今はテクノロジーというとハイエンドな方ばかりが注目されますが、テクノロジーの範疇はきっとどんどん広がっていく。例えば、今回村上さんがずっと私たちのことを信じてくれているというのをすごく感じていて、それを感じられたのは、会話だけではなくて村上さんの態度や発しているエネルギーみたいなもののおかげでした。そういう雰囲気を作ってくれることも技術だし、ある種のテクノロジーと呼べるんじゃないかと思います。そんなふうに有機的につながり合って展示を作り上げられたのは、いち早くこれからのテクノロジーのあり方をみんなで共有できたということなのかなと思いました。

上ノ薗 今の今野さんのお話は、とても大事な示唆ですね。そういったことを感じられたのも、共創のおかげかもしれません。では最後に、村上さんから一言いただけますか。

村上 本当に、関わった方全員の顔がこんなに鮮明に思い浮かぶ展示は、今までなかったと思います。出来上がりに近づいてきた頃には、「これはもう二度と壊せへん」と思ってしまいました。それほど愛着が湧く、心のこもったものづくりができたなと思っています。お客様のアンケートを見ていても、これまであまり見たことがないくらいの長文の感想を寄せてくださる方もいたりして、ちゃんと伝わっているんだなと実感しています。

上ノ薗 いや、もう泣けますね。ちょっと言葉が出ないです。展示が良いものかどうかは、最終的には見ていただいた方々一人一人の判断に委ねるしかないと僕は思っていますが、少なくとも関わった我々にとっては唯一無二の経験になったなと、改めて思えた座談会でした。ありがとうございました。

展示室を出てすぐの壁面を使った通称「エンドロール」の部分には、海遊館スタッフによる手書きの絵しりとりが。

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