「技術系」+「人文系」の可能性に切り込む
京大 産学連携情報プラットフォーム「Philo-」(フィロ)構築
『技術、そして人間の視点から、100年先の未来を考えたい』——
壮大な課題を抱えた企業と、きわめて多様な分野で最先端の研究を行う大学とのコラボレーションを、クリエイティブの力で促進するには、どうすればよいのでしょうか?
ロフトワークは、京都大学の産学連携を担う京大オリジナル社の依頼を受け、産学連携プラットフォーム「Philo-」(フィロ)を立ち上げました。
Outline
産学連携の窓口をオープンにし、社会と「京大の知」のコラボレーションを加速する
京都大学には、産学連携に関わる3社の事業子会社があります。3社は、京都大学と企業をつなぐ産学連携プロジェクトの実行部隊として活動しています。しかし、各社それぞれが広報・マーケティング活動を実施しており、各社の役割や、存在価値がうまく伝わらず、相談されにくい状況にありました。
ロフトワークは、京都大学の事業子会社の一つである京大オリジナル社の依頼を受け、産学連携プラットフォーム「Philo-」(フィロ)を立ち上げました。約3000名の一流の研究者を抱え、生命科学や人文学などの領域で独特の強みをもつ京都大学ならではのアプローチを言語化し、Webサイトに表現しています。
また、3社の問い合わせ窓口を一本化、業務効率を高めるとともにユーザーが問い合わせしやすい動線を設計しました。記事コンテンツでは産学連携プロジェクトの具体的な進め方やモデルケースを紹介。産学連携を検討する企業が気軽に京大にアクセスし、連携を模索することを可能にしました。
プロジェクト概要
- 支援内容
ワークショップ・インタビューを通じたコミュニケーション戦略企画、Webサイト制作(情報設計、デザイン、WordPress開発)、インタビュー記事制作、写真撮影 - プロジェクト期間
2020年10月〜2021年3月 - 体制
クライアント:京大オリジナル株式会社
プロデュース:藤原 里美
プロジェクトマネジメント:入谷 聡
クリエイティブディレクション:䂖井 誠
テクニカルディレクション:村田 真純
クリエーター:
・ワークショップ協力:光川 貴浩(合同会社バンクトゥ)
・Webデザイン:阿久津 望
・コーディング・テンプレート開発:スタジオスプーン株式会社
・ライティング:杉本 恭子
・写真撮影:津久井 珠美
Outputs
京都大学 産学連携情報プラットフォーム「Philo-」(フィロ)
京大の強みを伝え、問い合わせにつなげる
ロフトワーク制作記事
Process
2日間のワークショップを通じたターゲットと顧客ニーズの棚卸し
プロジェクト最初期の11月、プロジェクトメンバーを中心に、京大オリジナルのコンサルタント、TLO京都の現場メンバー、そして外部クリエイター2名を加えての2日間のワークショップを実施。コミュニケーション戦略のキモとなる「ターゲット」と「顧客ニーズ」を徹底的に探り、ブレーンストーミングを行って整理しました。
この共同作業を通じて、「技術」と「人間」という2つの入り口を設け、それぞれの文脈に沿った情報提供を行う指針が確立。この考え方はデザインにも反映され、急速に情報の統合が進みました。
最前線メンバーへの徹底的なインタビューによる提供価値の言語化
産学連携の事例も多い「特許・発明」と「大学発ベンチャー企業」について扱う一方、難しかったのは『人文系』プロジェクトにおける連携の価値や進め方の言語化です。文化人類学、霊長類学、哲学……といった学問領域の先生方が関わる産学連携の先行事例は少なく、曖昧・漠然とした表現にならないよう工夫が必要でした。
本プロジェクトでは、『京大的文化事典』著者の杉本恭子さんが聞き手となり、企業と大学のコーディネーター役を最前線で担っている京大オリジナルの現場メンバーに複数回のインタビューを実施。取材記事としてまとめるだけでなく、サイト全体の言葉づかいをチューニングし、京都大学らしいメッセージに落とし込むことに挑みました。
Member
メンバーズボイス
“「京大のユニークな研究者と産業界でもっとオープンイノベーション的な連携ができないだろうか」と日々模索している中で、大学目線ではなく企業目線で、産学連携の取り組みを知ってもらうことが重要だと感じておりました。
産学連携に関わる事業子会社や関係者がいる中で、どのように発信していくのが良いのか?ターゲットや訴求内容も曖昧な中での開始でしたが、ヒアリングの段階から曖昧な状態やこちらの悩みを丁寧に理解し、あるべき方向性を示してくれたことに可能性を感じロフトワーク様とご一緒させていただきました。
Philo-の立ち上げはゴールではなくスタートです。これから多くの連携が生まれることを楽しみにしております。”
京大オリジナル株式会社 ナレッジプロモーション事業部 部長 川村 健太
“Philo-は、京大オリジナル株式会社、TLO京都株式会社、京都大学イノベーションキャピタル株式会社の京都大学事業子会社3社が中心となり京都大学の産学連携を促進するプロジェクトとして立ち上がりました。
どのように分かりやすく3社の産学連携の取り組みをまとめ発信していくのか、ロフトワーク様との対話、ワークショップを通じて改めて各社の役割、存在を今まで以上に明確にしサイトへ落とし込むことができました。
それぞれのサービスを点ではなく線で1つのサービスとしてまとめたのがPhilo-です。
各社の提供サービスを丁寧に記事で紹介し、企業が気軽にアクセスできるサイトができたと思っております。
これから、Philo-を通じて多種多様なプロジェクトが生まれることを目指しております。”
京大オリジナル株式会社 ナレッジプロモーション事業部 中澤 舟
“サイト名の「Philo-」は、哲学 “Philosophy” のフィロ。FabCafe Kyoto2階の和室を広々使って行った丸二日間のワークショップで、最後に行ったブレーンストーミングで出てきたアイデアの一つです。オープンイノベーションの文脈を十分踏まえた上で、京大だからこそ提示できる「人文科学」という切り口を、どのように企業の文脈とつなげ、紐解き、言語化するのか。いつも並走してくれているライターの杉本さんや、最前線を走る夏目さんと、何度も話し合いました。ずっしり手応えのある挑戦だったと感じます。”
ロフトワーク クリエイティブディレクター 入谷 聡
“他大学も含め、産学連携部門の方とお話しすると「一定数、既定のルールでは対応できない問い合わせがある」というお話を耳にします。問い合わせしている企業側も、誰にどう相談したら良いのかわからない状態を、既定ルールで対応するのはなかなか難しい問題のようです。そんな時に、大学内のことをよく知る事業子会社の存在はとても有効だと感じています。企業の課題感を分析し、適切なプロジェクトチームの編成とプロジェクト計画を立てられれば、今までになかった産学連携の形が見えてくるでしょう。
本プロジェクトをきっかけに、3社の連携がさらに強まり、京大らしい産学連携プロジェクトが生まれていくことを楽しみにしています。”
ロフトワーク プロデューサー 藤原 里美
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