大分県庁 PROJECT

地域産業活性に向けた、「デザイン経営」の育成プログラム
おおいたクリエイティブ実践カレッジ2021

Outline

大分県では、優れた技術を持つ地元企業と、豊かな発想や感性を持つクリエイティブ人材とのコラボレーションを活性化させることで、競争力の高い商品・サービスの創出や新規マーケットの開拓に繋げるため、「クリエイティブ活用推進事業」に取り組んでいます。企業・クリエイター間の交流や協働を活性化するために、これまでにも地元企業とクリエイターの双方に向け、デザインのリテラシー向上をねらいとした学習プログラムを数多く行ってきました。そのうちの一つが、実践型学習プログラム「おおいたクリエイティブ実践カレッジ」です。本プログラムでは、地元クリエイターを、商品企画・コンセプト・デザイン・販路開拓などの企画提案を行えるような人材や、経営視点からトータルでプロデュースできる人材へと成長させることを目的としています。

ロフトワークは、2021年度の同プログラム「おおいたクリエイティブ実践カレッジ2021」(以下、クリカレ2021)の企画と運営を支援。企業との共創を目指す大分県内のクリエイターを対象に、「デザイン経営」を切り口に、彼らが次世代のビジネスをデザインし県内産業を牽引するリーダーへと成長していけるための高度人材育成プログラムを実施しました。

執筆:奥田 蓉子(株式会社ロフトワーク)
編集:後閑 裕太朗(loftwork.com編集部)

プロジェクト概要

  • プロジェクト期間:2021年5月〜2022年3月
  • 体制
    • クライアント:大分県庁 経営創造・金融課
    • プロジェクトマネージャー:戴 薪辰(株式会社ロフトワーク)
    • クリエイティブディレクター:加藤 修平、川原田 昌徳、奥田 蓉子(株式会社ロフトワーク)
    • プロデューサー:二本栁 友彦、柳川 雄飛(株式会社ロフトワーク)
    • プログラムパートナー:越田 剛史(株式会社Design totte)、江副 直樹(ブンボ株式会社)

    *肩書きはプロジェクト実施当時

Process

デザイン経営に参画可能なクリエイターが育つ「土壌」を大分に実装

クリカレ2021では、大分県内のクリエイターやデザイン担当者をはじめとするクリエイティブ人材がビジネスやサービスモデルをデザインできるよう、彼らを育成していくことに加え、より多くの人材が大分を舞台に継続的に活躍していくための「土壌づくり」を目的としています。

目的を達成するためにポイントとなったのが「より実践的な学びの機会を提供すること」「成果物の価値の検証を組み込むこと」「継続的な関係基盤を生み出すこと」の3点でした。

「より実践的な学びの機会を提供する」ため、本プログラムでは大分県内の協力企業が実際に抱えているビジネス課題を題材として扱いながら、「Basicプログラム(基礎)」と「Advancedプログラム(応用)」の2段階の学習・実践機会を提供。特に「Advancedプログラム」では、経営者に伴走しながらデザイン経営の導入に取り組む、OJT形式の講座を実施しました。

「価値の検証」については、Adavancedプログラムでの事業計画提案後、プロトタイピングやワークショップなどのプレ実装を行うことで、プログラムの実施成果を評価できる設計にしています。

また、プログラムを通じて「継続的な関係基盤を生み出す」ために、卒業生を含む受講クリエイターと連携企業が参加するコミュニティ活動を設計。プログラム終了後も、受講クリエイター同士が交流とスキルアップを続け、クリエイティブ人材としての活躍の幅を広げられることを目的としています。こうして、大分県にクリエイティブ活用の成功事例を生み出し、「学びと実践」の好循環を生み出すことを目指しました。

基礎から応用へ、2段階のプログラムでクリエイティブ人材の素養を体得

Basicプログラム

「Basicプログラム」では、デザイン経営の豊富な実践経験を持つデザイナーによる全4回の講義を実施しました。また、大分県内の中小企業3社と連携し、企業が実際に抱える課題を再発見しながら、デザイン視点での解決のアプローチを提案。その実践と講評を通じて、デザイン経営を実行するうえでのクリエイティブ人材の役割を学びました。

受講生はいくつかのチームに分かれ、フィールドワークで現場を視察しながら、課題発見から提案までのデザイン経営のプロセスを2回にわたり実践しました。初めは小さな課題解決から、事業全体やビジョンに関わるものへと、課題のレベルを段階的に向上させています。

プログラム全体をクール1(プレ提案)とクール2・3(本格的な提案)に分け、デザイン経営のプロセスを2周実施。クール2・3ではより広義な課題を設定することで、クリエイティブ人材としてのスキルアップを図っています。

プログラム内では、参画企業の社長自らがアイディエーションに参加し、アイデアを共に考案・フィードバックを行うなど、経営者と受講生の間で積極的な意見交換も行われました。

講師

デザイン経営の第一線で活躍する経営者・デザイナーを講師としてアサイン。テーマに応じた講師陣からの実践的な知見を共有したほか、受講生の提案へのフィードバックも行っています。

越田 剛史

越田 剛史

株式会社Design totte
代表

田子 學

田子 學

MTDO代表取締役
デザイナー / アートディレクター

堀内 康広

堀内 康広

トランクデザイン株式会社
代表取締役

加藤 修平

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

Outputs(Basicプログラム)

アウトプットとして、提案内容のプレゼンに加えて、提案の核となる価値を定義するためのプレスリリースを作成。

Advancedプログラム

「Advancedプログラム」では、Basicプログラムから選抜された5名の受講生が、1人につき3社の企業に伴走。企業が実際に抱える難易度の高いビジネス上の課題に対して、ブランディング・イノベーションの観点をベースに、具体的な製品・サービス化を見据えた提案を目指しました。

受講生は、リサーチ・コンセプト策定・クリエイティブ方針策定・プロトタイプを通じた検証など、詳細なプロセスを踏みながら、企業と一対一のコミュニケーションを実施。さらには、本格的な「事業計画」の提案を行い、デザイン経営における価値創出のプロセスを実践しました。

Outputs(Advancedプログラム:事業計画書)

Advancedプログラムでは、受講生と参画企業が共に制作する「事業計画書」を最終的な成果物として提出。プログラム終了後、実際の事業化相談への足がかりとしても機能しました。

Outcome

クリエイティブ人材の交流を生み、大分に共創の場を育む

本プログラムでは、受講生のスキルアップだけでなく、企業とクリエイティブ人材の関係を継続させること、さらには事業化へとつなげることを大きな目的としています。

その実績として、プログラム内で生まれたアイデアをもとに、共創・事業化へと発展したチームが3組生まれているほか、まだ正式にプロジェクトは開始していないものの、事業化に向けて前向きなコミュニケーションを継続しているチームも複数存在します。

さらに、プログラム内で生まれた知見やつながりを拡大し、大分県に新たな「共創の場」を生み出すために、本年度の受講生に加え、過去の開催年度の受講生も集うコミュニティ活動、「クリカレサンドボックス」も実施しています。クリカレの「縁」で繋がった受講生同士が、継続的に相談・助言・指導を受けられる関係性を築くことで、クリエイティブ人材としての更なるスキルアップを図るとともに、新しい共創を生みだすことを目指しました。

ロフトワークは、コミュニティ内の活動を盛んにするべく、学習イベント・ワークショップの実施やコミュニケーションなどを支援。結果として受講生による主体的な自主企画も生まれました。2022年度以降は「クリカレサンドボックス」という形式ではなくなるものの、ここで生まれたつながりをもとに、「クリエイティブ実践カレッジ」でのさらなる交流と共創の土壌が醸成されていくことが期待されます。

プログラムを起点としたコミュニティには、2021年度の受講生や過去の受講生だけでなく、地域企業のプレイヤー、そして「仕掛ける側」である自治体やデザイン協会とも連携。「デザイン人材の発掘・育成・活躍可能な場」が、自発的に生まれてくる状況を生み出すことを目指しました。

Voice

2021年度プログラム受講生の声

受講生の皆さんの詳細なインタビューはこちら

おおいたクリカレ2021 リポート8「Advanced受講生インタビュー」

越田 剛史さん(プログラム統括メンター)からのメッセージ

「Basicプログラム」では普段個人や会社内でプロジェクトに取り組まれている受講生にとって、様々な背景を持つクリエイターとのグループワークは、考え方や視点、進め方やコミュニケーションの取り方など、実践だからこその学びや気づきがあったのではないかと思います。コロナ禍にあって、懇親会で親睦を深めるような機会がなかったため難しい面もあったかと思いますが、企業さまの現地にて2日間グループワークを行う機会やzoomを活かし、それぞれのチームが独自性の高い提案をされていたように思います。実践プログラムや講師の講演、他チームのプレゼンテーションを通して、デザイン経営がどのようなスキームなのか、その難しさも含め実感できたことと思いますので、今回の学びを礎に継続的にスキルを磨いて欲しいと思います。
また、「Advancedプログラム」は、3ヶ月もない短期間に1人が3社へ事業計画を提案するというハードなプログラムでしたが、提案後の企業さまの反応を見ても分かるように、この3ヶ月の間に本当に現実的なところで悩み、気づき、解決への緒を開いたように思います。実践の中で1歩ずつフェーズを進め、要所要所でフィードバックを繰り返し、着実に提案の質を積み上げ続けられていたことが受講生みなさんに共通して感じた印象です。また同時に企業さまの姿勢の重要性も改めて感じました。ぜひこの繋がりをきっかけに今回の提案事業を進めたり、継続的にデザイン経営に携わって欲しいと思います。
受講生の皆さんは自分のスキルの再認識や今後のキャリアの方向性をみつける機会にもなったようで、クリエイティブ高度人材として益々のご活躍を期待します。運営の皆様も、1年目かつコロナ禍という条件で難しい場面も多かったこととお察ししますが、半年間熱量を落とすことなく事業を完遂していただき、また受講生に親身になってサポートをされていたのが印象的でした。このような事業が継続的に行われ、大分県のクリエイティブの土壌が醸成していくことを願います。

Member

二本栁 友彦

株式会社ロフトワーク
無所属

Profile

戴 薪辰

戴 薪辰

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

加藤 修平

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

川原田 昌徳

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

奥田 蓉子

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

メンバーズボイス

“大分県では、アートやクリエイティブに関連するさまざまな挑戦が行われてきました。土壌はしっかり耕され、挑戦したいと思っている人にとって、とても有益な環境が整ってきています。クリエイティブ実践カレッジもその一つで、受講生の頑張り、関連するパートナーの理解と挑戦によってたくさんの希望を生み出してきました。

そんな豊かな土壌と、頑張れる大分の気質だからこそ、デザイン経営が向いているのではないかと考えました。結果を実感できるのは少し先の未来かもしれません。それでも、先んじて行ってきた挑戦は、その未来に光をさし、豊かさにつながると信じています。”

株式会社ロフトワーク 二本栁 友彦

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めぐるめぐる、東海。
第一話:タブロイドに込めた未来への物語