FINDING
伊藤 澪奈子, 名川 実里, 小島 和人(ハモ), 服部 木綿子(もめ) 2021.10.21

「楽しい」をつくるセブンルール【前編】

突然ですが......みなさん、仕事楽しんでますか?

こんにちは。渋谷オフィスでクリエイティブディレクターをしている伊藤澪奈子です。

みなさん、仕事楽しんでますか?「良いプロジェクト(結果)にしたい」と思いながらも、私は「良いプロジェクト+楽しさ=最高」と考えています。むしろ「楽しく仕事をしたい」という気持ちの方が強いかもしれない……。

しかし約3年仕事をしてきて、自分自身がプロジェクトの舵を取ることが増えると同時に進捗管理や情報共有、発注依頼など人と関わることが増え、社内・社外問わず、コミュニケーションの取り方や関係性の築き方に悩むようになりました。仕事の「楽しい」ってなんだっけ?

楽しそうに仕事をしている人には、きっとルールがあるのかもしれない。
今回は、同じ悩みを抱えている同僚のクリエイティブディレクター名川さんと一緒に、特に案件を「楽しんでいる」という印象がある、京都オフィスの小島 和人(通称:ハモさん)・服部 木綿子(通称:もめさん)のお二人のお話を聞き、“「楽しい」をつくるセブンルール” を作りました。

ロフトワークでは「プロデューサー」、個人では美術作家“ハモニズム”として活動し、様々なジャンルに携わる小島。京都で数々の“ええ空気PJ”を作り出し、渋谷オフィスにもその名が轟くクリエイティブディレクター服部。二人の「楽しい」をつくる7つのルールに迫ります。

企画:伊藤 澪奈子、名川 実里
執筆:伊藤 澪奈子
編集:鈴木真理子

話した人たち

迷える子羊1

伊藤 澪奈子
楽しいとき:去年ばっさり切った髪を一旦伸ばしてまた切ろうと思っていて。その過程でどんな髪型・色にするかPinterestでひたすら探しています。
Profile

迷える子羊2

名川 実里
楽しいとき:赤松を育てはじめたので、はやく芽がでるといいな、と思いながら毎日愛でています。
Profile

くだらないこと愛好家

小島 和人(通称:ハモさん)
楽しいとき:アーバンフィッシング。
大阪の市内に住んでるんですが、自宅から徒歩5分の都市河川で50cm近い黒鯛が釣れるんですよ。
Profile

ええ空気醸造家

服部 木綿子(通称:もめさん)
楽しいとき:最近、以前暮らしていた岡山の友人たちに会いに車で巡ったことで、山道や海の前を車で駆け抜けたいモードです。
Profile

 

だんだんボケてきてる!って感じると楽しい

伊藤 ハモさん、もめさんよろしくお願いします!早速ですが、プロジェクトで「楽しい」と思うポイント(瞬間)はいつですか?

ハモ まず前提として、僕ともめさんは、関西っていうこともあり、社内でも社外でも結構笑いを取りにいきますよね。

もめ そうやね、隙あらば笑いを差込もうとしますね。

ハモ 僕は「言いたくなったら言わな気がすまない」という病気なんですよ。それでどういう時が「お、ええな」と思うかというと。「クライアントが笑いを取りにきたとき」が一番楽しいですね。

もめ わかる。ボケるまでにも段階があって、クライアントのファッションがスーツからカジュアルに変わってきてるとか、「ハモさん・もめさん」みたいにあだ名で呼ばれ出しているとか。だんだん硬さがなくなってきて、ボケてきてる!って感じると楽しいよね。

ハモ 確かにボケていく段階がありますね。初めは服装の変化やあだ名とか、その次に向こうがイジってきてくれる、その先にボケてくれるがあるかもしれないです。

もめ ボケさせるために私の場合は、わりと冒頭から「ツッコミどころのある自分の情報」を開示して突っ込んでも良い状況をつくってます。

伊藤 ツッコミたくなる工夫。

もめ そう。家族構成とか、どんな人生だったかみたいなのとか。私だと例えばバツイチだとか。突っ込んでい良いんかな、笑っていいんかな、みたいな感じで相手が悩むこともあるので、「全然言ってもらって大丈夫」と最初に伝えています。ある意味、ツッコんで良い弱みを見せている感じですね。「こういうの苦手で、こういうの得意」とか、自分の弱みが相手に伝わるようにしてると、自然と上手く弱みにツッコんでボケながら、うまくカバーしてくれたり。自分も無理しなくて良いし、相手も気を使わないで、助け合えるし楽しい。「クライアントがボケ出したとき」ってそういう状況になっているんじゃないかな。

 

伊藤 私は弱みを見せたりすると相手を不安にさせてしまいそうで、いつも真面目な感じで振る舞って、硬くなってしまうときがあったんですが、ツッコんで良い弱みならなんかできそうな気がします。

もめ 必ずしもリーダーって引っ張る人じゃないといけないわけではない。

それぞれのスタイルがあるじゃないですか。だから「みんながサポートしないといけない」みたいなリーダーがいてもいい。色んなやり方があっていいんじゃないかなって考えています。ロフトワークの仕事は「共創していく」っていうものだから、最終的にプロジェクトメンバー全員が、良いプロジェクトだと思えたら良いんじゃないかな。

ハモ 確かに。共創を引き起こしていくってスタイルもありますよね。

僕は、名刺の肩書はプロデューサーなんですが、プロジェクトによっては役割をプロデューサーじゃなくて「トリックスター」とか「コンセプトキーパー」とか、変わった肩書を付けてくれるクリエイティブディレクターもいて、「うまく僕の得意なところで活躍させてくれようとしている」ってのを感じます。

トリックスター ハモさん

そういう人は引っ張ってくれる強いリーダーって感じはしないですが、僕はここだけやったらいいんだなって、好き勝手にできるので、楽しく仕事ができますね。リーダーが完璧すぎると、逆に楽しくないかもしれないですね、僕の役割がなくなってしまうので(笑)

伊藤 なるほど。プロジェクトメンバーの強みをうまく組み合わせるってことですね。

もめ そう。完璧なリーダーじゃなくても、プロジェクトメンバーの強み弱みがわかって、それが上手くハマれば、強く引っ張っていかなくても、自然といい方向にプロジェクトは進んでいくんじゃないかなって思っています。

何かめっちゃちゃんとした意見言わんなあかんとなると、フリーズして動けへんくなる

ハモ 実際にもめさんは、ワークショップのときとか、役割として「空気づくり」を頼まれることが多いですもんね。役割が設定されているから、全力でそこに投球できるわけですもんね。

もめ そうですね

名川 もめさんはNANDA会で「ええ空気で賞」を受賞されていましたが、ええ空気を作るうえで気をつけていることはありますか?

もめ 私の場合は「バランス」をみています。全体の発言を見て、発言をしにくそうな人がいたらその人を和らげるにはどうしたら良いか。ゲストハウスで働いていた時の経験からきているんだけど、「このお客さんとこのお客さんを繋げてあげたらいいこと生まれそうだな」みたいなことがワークショップの中でもある。そこに関わった人がどう幸せになれるかってことだけを考えてますね。

もめさんのワークショップ風景

ハモ 僕から見ると、もめさんの「空気づくり」はすごい緩急がデザインされているなって感じますね。特にゆるい部分を作るのが他の人より圧倒的にうまい。ワークショップって賢いことを言いがちじゃないですか。それだけだとだんだん発言しづらくなるし、面白くなくなっていく。ゆるい状況を作っておくといいアイデアのもととなる発言がコロっと出てくるんですよ。もめさんはすごい緊張しているところで、めっちゃゆるい発言をいれてきますよね。でも締めなきゃいけないところでは、パリッとした言い方もしているので、緩急がすごく気持ちいですね。

もめ 私は何かぴりっとしたり、ちゃんとした意見言わんなあかんとなると、フリーズして動けへんくなる。それは私じゃなくても、できる人がたくさんいるので、私の役割は「今だったらこの人はアイデア飛ばしてくれそう」とか全体を見ながら、「ハモさんどう?」とか言ったり。とにかくバランスだけ見てますね。

ただの「〇〇さん」にまで一回戻してから、みたいな

ワークショップ後、クライアントメンバーとツーショットを撮るハモさん(と写り込むロフトワークメンバー)

名川 ゆるさのバランスってすごく難しそう。ゆるすぎても真剣さが伝わりづらい。ゆるさって具体的にどんな風にしていますか。

ハモ 「ゆるさ」の空気づくりのときは、もめさんはヘラヘラしてる(笑)。なんか会議を始める前とか、結構そんな感じありますよね。

もめ ワークショップに、アイスブレイクってあるじゃないですか。わざわざ設計してアイスブレイクをやるのは得意じゃないんですが、普通の会議のときや、初対面の人がいるときは勝手に「ひとりアイスブレイク」をしたりしてますね。私自身が安心して喋れるようにしている感じです(笑)

名川 ひとりアイスブレイクとは?

もめ 「さぁ、じゃあ始めます」みたいな感じで急に始まったら、社内のミーティングでもちょっとドキドキするじゃないですか。本題に入る前に、仕事とは関係ない会話したら、私も相手も堅かったのがちょっと解ける。だから毎回私自身のためのアイスブレイクをいれながら、相手も話しやすい空気になればなって思ってます。

ハモ まず「1人の人間」に戻していく感じですよね。「どこどこ会社の誰々さん」じゃなくて、ただの「〇〇さん」にまで一回戻してから、みたいな

もめ そうですね。結構そういうふうに見てます。最初どうしても、どこどこ会社の誰々さんじゃないですか。

でも次の打ち合わせのときには「ただの〇〇さん」って感じで見てます。この人が社長、とかあんま思ってない。もちろんリスペクトは大事で、軽く見ているわけではないです。でも肩書みたいなのは全部置いておいて、その人が「1人の人間」として、どのようなスタンスを持っているんだろうっていうのを見るようにしています。

前編のまとめ

  • ルール1:ツッコんで良い弱みを見せる
  • ルール2:完璧なリーダーを目指さない
  • ルール3:「1人の人間」まで戻してみる

自分・相手の表面ではなく、芯の部分(パーソナルな部分)をさらけ出し、受け入れる。価値観を認め合う意識が大切なんだと感じました。ハモさんともめさんの楽しいをつくるためのコミュニケーションの秘訣が見えてきたような気がします。

残りのルールは何が出るのでしょうか。後半に続きます!

Keywords

Next Contents

多元な世界を実現したいなら、僕らはみんな自律的になる必要がある