FINDING 山田 麗音, 桑原 季, 金子 由 2019.12.20

“チャンス” をかたちに。
多様な出会いを演出したクリエイティブの裏側

ロフトワークは毎年、お世話になっているクライアント・パートナーのみなさんを招き、日頃の感謝を伝えるパーティ(YEAR END PARTY)を開催しています。

2019年のYEAR END PARTYのコンセプトは “CHANCE”。
「未来をつくる」ためには、つくる人の思いも重要ですが、もうひとつ、 “チャンス” も必要なのではないか?と考えました。
チャンスには「機会」「好機」という意味がありますが、何がチャンスなのか、どうやったらチャンスが得られるかは、人それぞれ。しかし、共通するのは、「チャンスは手に入れるべきモノ」だということ。
そして、チャンスを手に入れるためには、ひとや物事との関わりを通して、タイミングよく巡り合わせを引き寄せる、つまり「運を味方につける」必要があります。

YEAR END PARTYでは、ひとの目に見えない “チャンス” のビジュアライズに挑戦しました。
このお題をどう解釈し、表現に落とし込んだのかについて、担当したクリエイティブディレクターの山田麗音(レノン)・桑原季(みのり)・金子の3名が振り返りました。

Photo by Makoto Ebi, ロフトワーク 金子
聞き手:loftwork.com 編集部

Photo by Makoto Ebi
Photo by Makoto Ebi
Photo by Makoto Ebi
Photo by Makoto Ebi

「チャンスを掴む多様な人間のあり方を表現する」

── プロジェクト業務と並行してのディレクションや制作、おつかれさまでした。どの写真をみてもビジュアルが映り込んでいて、世界観がしっかりと会場にインストールされていました。

レノン: してやったり、といった気分ですw

桑原: 過去を振り返っても、一、二を争う世界観の作り込みがとてもうまくできたパーティだったと感じています。

── いろんな形の「手」とカラフルな色使いが、印象的です。私個人は、このコンセプトビジュアルから力強さや混沌も感じたのですが、コンセプトが「チャンス」と決まったときに、クリエイティブディレクターとしてどういったビジュアル表現をイメージしましたか?

レノン: 当初は、「チャンス」自体を抽象的に表現しようと考えていました。「ハッキリとは見えないけど、すぐそこにある不確定な予感」を表現しようと思って。たとえば、モチーフをぼかしたり、半透明な色面を重ね掛けしていくようなビジュアルです。

── 当初、は?

レノン: 今回、ビジュアライズはデザイナーの石黒さん(OUWN)にお願いしたのですが、オリエンでもそのように伝えたんです。
でも、石黒さんからは「チャンスを掴む多様な人間のあり方を表現する」といったプランを提示いただきました。なぜ「チャンス」か?というところに立ち戻ると、ロフトワークメンバー含め、来場されるみなさんにとって、未来へと踏み出すためのきっかけを与えられるものにしたかったんですよね。
だから、石黒さんのプランを受けて、改めて「人」をモチーフとして表現されていることが大事だと気付かされました。

桑原: メイン会場のホールは大きなプロジェクターが3面もあったので、強い色面があると、切り替わっていく色彩が空間を照らし、より世界観を出せるよねとチームで話していたんです。石黒さんからもそのような提案をいただいたので驚きました。

レノン: 人によって「チャンス」のかたちも、その掴み方も違います。
手の形や色だけでなく、ジグソーパズルのようなピースの形、写真の有無など、ビジュアルでもさまざまなバリエーションを用意することで、ひとつの形に限定しない多様なチャンスの掴み方もメッセージとして含められたと思います。

Photo by Makoto Ebi

デザイナーの力を最大限に引き出す“ポエティカル”な伝え方

── 石黒さんにはデザイナーとして存分に力を発揮していただけたんですね。二人はディレクターとしてどのようなオリエンをされたんでしょうか?

桑原: 石黒さんは、いつかお仕事したいと思っていたクリエイターさんの一人です。タイミングを狙っていました。今回自分も担当することになり、コンセプトの世界観とも合うのでは?と思いお声がけしました。展開を考慮した大胆なビジュアルを数多く制作されていたのも石黒さんにお願いした理由です。

レノン: 折角の機会(チャンス)なので、ロフトワークとしてこれまで組んだことのない方と作ろうと決めていました。
初めてご一緒するため、ロフトワークとはどういう会社なのかから説明しました。
どういう事業をしていて、どういう世界をつくりたいのか、そして社内にデザイナーがいないのでパートナーとなるクリエイターさんとは受発注の関係を超えて並走していきたい旨など。その上で、パーティの詳細やテーマ、デザインイメージなどを共有させていただきました。

桑原: 同じディレクターとして、その時の資料は簡潔で、とてもわかりやすいと思った。クリエイターに伝える時に意識しているポイントとかあるのかな?

レノン: 何をどこまでお願いするのか、スコープを明確にするのも大事。
それに、テーマを伝えるときに、ロジカルさよりも、ポエティカルに伝えることを意識しています。デザイナーさん自身に、世界観やイメージを膨らませてほしいから。いかに創造性を引き出せるかをいつも考え、磨きをかけています。

桑原: なるほど。具体と抽象のバランスはいつも難しいよね。

心ゆさぶるキービジュアルがプロジェクトをドライブさせる

── そんなオリエンができてたら、石黒さんからの提案は本当に楽しみだったのでは?

桑原: A3サイズの紙芝居形式でプレゼンしていただいたのですが、次のページが少し透けて見えていて、「どんなビジュアルがくるんだろう!!」ってすごいワクワクしながら聞きました。
メインビジュアルのページにきた際はとても興奮しました!

レノン: そうきたかー!というのが僕の最初の反応。人の手を使った構成やチャンスを形どったピースの展開、それを統合して作られたテキスタイル表現も、こちらが想定していた以上のものをご提案いただけました。それも1週間ほどで、です!

桑原: どのプロジェクトでも、クリエイターさんからの最初の提案をうけるときはとても楽しみな瞬間ですが、石黒さんのテーマの再解釈とアウトプットに落とし込みの品質の高さに驚きました。今回、ビジュアルが切り替わっていくイメージを提案されたんですが、展開例としてGIFアニメまでを提案される方は少ないので、もしかしたら石黒さんも楽しんでくれてるのかなと…笑
テーマの解釈でいうと、レノンくんのポエティカルに伝えるアプローチと石黒さんの表現者としての力がうまく噛み合ったのかなと思います!

レノン: こちらからフィードバックさせていただいたのは細かい点だけで、すぐにツールへの展開案が色々出てきました。今回に限らずですが、キービジュアルができることで、プロジェクトが一気にアウトプットへ向かって進み始めるドライブ感はいつも刺激的です。

10種類を超えるツール展開

── そうそう、ポスターや案内パネルだけでなく、ダンボールを使った会場装飾やノベルティなど、ツール展開が今回は特に充実していたと思います!

レノン:パーティ会場でのあらゆるモノ・コト・コミュニケーションが「多種多様なチャンス」と出会う体験になるように、ビジュアルを出来るだけ会場内で登場させ、手作りでも良いから沢山のツールを作ろうと考えました。
実際は、タペストリー、ポスター、ステッカー、缶バッチ、トートバック、登壇用スライド、会場サイン、サイネージ用動画、来場者へ渡す封筒、装飾用ダンボールとそれをパッキングするオリジナルテープなどなど… あと、ガチャガチャや占いなど「チャンス」を体験するコンテンツにも今回のビジュアルを用いました。

沢山あったけど、それを見事に金子ちゃん(ディレクター, 今年入社)がアウトプットに落とし込んでくれました。大変だったんじゃない?

金子:正直、大変でした!笑

ただその分、全て出来上がった時の達成感は大きく、諦めずに作り切ってよかったなと思いました。10種類を超える制作物を揃えるのに気をつけたことは、大きく分けて2点あります。

1点目は、細かい面で、全ての制作物にビジュアル面での一貫性を持たせること。石黒さんが作ってくださったキービジュアルと相違無いかを、常にレノンさんに確認しながら進めました。
2点目は、納期です。納期に間に合わせるのは、普段の仕事でも、言うまでもなく当たり前のことですが、いかに大変か、いかに大事なことかを身にしみて実感することができました。
外注するものと社内で制作するものを分けたり、優先順位づけたり。同時に今後使いそうなFabcafeのマシンの予約も済ませました。

レノン:ダンボールは、石黒さんの提案の中に含まれていたもので、絶対作ろう!と思いました。(石黒さんからの提案の中には泣く泣く断念したものもあります…)

桑原:ステージ装飾を担当した野村くんが考えた、ステージの後ろに積み上げた演出は僕もとても気に入っています。あと細かいところですが、レノンくんの発案で、ダンボールを止めるテープも今回のパーティ仕様になっています。石黒さんのアイデアを生かしているなと感じました。

CHANCE トートバッグ
CHANCE テープ
CHANCE 缶バッジ
CHANCE ステッカー

アイデアの制約を外すものは?

── FabCafeのマシンは、ロフトワークのディレクターもよく利用してますよね。

レノン:いろんなツールを作りたい反面、予算と期間の制約がついて回る。自社にFabCafeがあることはひとつの救いでした。レーザーカッターを使えばアクリル板のカットができるし、UVプリントでトートバッグも自作できる。「とりあえず何でも作れる!」という気持ちが制約を外し、生産的なアイデア出しを可能にしてくれました。

金子:FabCafeでは、トートバックだけでなく、オリジナルテープをテープクリエイターで制作しました。Fabスタッフのみんなが当事者以上にクオリティーに気を使ってくれて、効率よく、かつきれいに仕上がる方法を一緒に考え、サポートしてくれたのが本当にありがたかったです。

FabCafe Tokyo

── 最後に、今回のチャレンジと成果を改めて教えてください。

桑原:マインド的には、普段やることが難しい表現を試みた、実験的な要素を強くだせたパーティだったかなと思っています。コンテンツでも、今回は実際の占い師呼ぶとか、いきなりクライアントワークでやることが難しそうなことをあえてやってみるという実験が、いくつも行われてたと思う。

レノン:確かに。
僕は、普段一緒にプロジェクトをやることが無かった仲間とチームを組めたのがよかった。
ディレクターのなかでも得手不得手があるなかで、例えばクリエイティブディレクションを得意とするディレクター同士は同じプロジェクトに入りにくかったりします。今回、「出島」的な形で自由にメンバーを組めたことで、「みんなはこういうやり方をするんだ!」といった学びがありました。

桑原:またこのメンバーで仕事をしたいね!

金子:仕事、したいですね。来場者の方々が楽しんでくださったことも、我々の達成感を大きくした理由の一つになったと思います。
やり残したことはないですが、制作メンバーでプチ打ち上げしたい!笑 それほどの達成感と一体感があったと思います。

レノン:打ち上げ、しよう!笑

(終)

チャンスというテーマを頂いた時に「チャンスって実はよく解らないよね」という疑問が挙がりました。
チャンスの形も見つけ方も何を以てチャンスと捉えるか、確かに人それぞれなんです。
今回そのテーマから目を背けずに、集まる大勢の方と同じ分のチャンスを表現しPARTYを盛り上げたいと考え、
ビジュアルを増やし、ポスターやアニメーション等ツールも広げました。
チャンスという得体の知れない形は得体知れずままに表現し、人それぞれのチャンスの見つけ方もビジュアルの手の動きや性別を変えることで解決しました。
そして、提案時にも言いませんでしたが、「来場してくださる方がチャンスを再認識し、チャンスを掴めますように」
そう思いデザインさせて頂きました。私自身、大勢の方にビジュアルを拝見して頂き、1つのチャンスが掴むことができたのだと思っています。

OUWN Founder / Art director / Designer
石黒 篤史

山田 麗音

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

桑原 季

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

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金子 由

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

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