「誰とつくるか?」を選ぶことで、新しい未来がひらけていく
──FabCafe Chiba オープンに寄せて
なぜ作るのか、どうやって作るのか、どうやって届けるのか……クリエイティブな物事が生まれる前には、あらゆる問いが存在します。
様々な問いのなかでも、「誰とつくるのか?」に真摯に向き合うことで、ロフトワークはたくさんの可能性に出会ってきました。そんな原点を、FabCafe Chiba立ち上げプロジェクトを通して再認識したという岩沢エリ(Culture Executive/マーケティング リーダー)。その思いを語ります。
こんにちは、ロフトワークの岩沢です。今日は、皆さんにワクワクするような新しい物語の始まりをお伝えしたくて、筆をとりました。
実は私たち、2026年6月1日に「FabCafe Chiba(ファブカフェ千葉)」をオープンすることになりました。場所は千葉県千葉市。この街にとって、2026年は特別な意味を持つ年です。実は、今から900年前の6月1日に、千葉氏がこの地を開いたとされています。その記念すべき日に合わせて、FabCafe Chibaをオープンすることにしました。
この歴史ある場所で、私たちが感じた“新しい未来がはじまっていく”ことへの期待感についてお話しします。
900年の歴史が息づく場所で、新たな物語を
この特別な日に合わせてオープンするFabCafe Chibaは、千葉氏が拠点を構えていたと言われる「亥鼻(いのはな)公園」の中にあります。小さな山の頂には、お城の天守閣を模した千葉市郷土博物館がそびえ立ち、歴史の息吹を感じられるロケーションです。

私たちがカフェを開くのは、その麓にたたずむ、築40年の数寄屋仕立ての木造建築。
「いのはな亭」と呼ばれたその建物は、かつては茶店として、そして奥の和室は茶室を兼ねた集会所として、地域の人々に親しまれてきました。この歴史ある建物の目の前には、900周年に合わせて美しくリニューアルされた日本庭園が広がります。

私たちはこの場所で、ただカフェを運営するだけではありません。「いのはな亭」としての文脈を受け継ぎながら、クリエイティブなものづくりができるFabCafeの機能を通して、この場所に新しい風を吹き込みたい。そう強く願っています。お近くの方はもちろん、少し遠くにお住まいの方にも、ぜひ一度、この特別な空間を体験しに来てほしいです。
FabCafeについて
FabCafe(ファブカフェ)は、「つくる」をキーワードに、モノ・コト・ヒトが集うカフェ。ワクワクする未来を生み出す、多彩なコミュニティが交差する場です。国内外10以上の拠点をもち、地域素材やテクノロジーを活かしたさまざまなプロジェクトを、クリエイターや企業とともに手がけています。
https://fabcafe.com/jp/
「FabCafe Chiba」開業のニュースリリース
「自分の足元から世界を変えたい」という想い
なぜ、私がこのプロジェクトを始めることになったのか。少し、個人的な話をさせてください。
私はロフトワークで働き始めて、もう11年になります。クリエイティブやデザインの力で、地域や企業のまだ誰も見たことのない挑戦を応援する。そんな仕事に誇りを感じる一方で、ずっと心の中に一つの想いを抱えていました。
「自分が暮らすこの街、この足元でこそ、デザインやクリエイティブの力を活かせないだろうか?」
いまのロフトワークが向き合おうとしているものの多くは、社会のシステムを変革していくことに繋がる、ソーシャルイノベーションと呼ばれる領域にあると考えています。その一方で、大きなスケールの変化は、小さなスケールの変化の積み重ねの先にしか存在しない。
子どもが生まれてからより一層、「日常のなかにある身近な物事に向き合いたい」と考えるようになりました。千葉と東京を行き来する暮らしをしているいま、生活の当事者としてデザインを実践し、日常を更新することの可能性に惹かれていたんです。
そんな時、偶然にも自分の暮らすまち、生活圏の目の前にある「亥鼻公園」の指定管理者を公募していることを知りました。千葉開府900年という、またとないタイミング。これは運命かもしれない。でも、一人で飛び込むにはあまりにも大きな挑戦で、私は迷っていました。
仲間がくれた、未来を描く勇気
その迷いの渦中にいた私の背中を押してくれたのは、信頼する同僚の松井創でした。ロフトワークで10年以上、都市と空間をテーマにあらゆるプロジェクトを推進してきた彼を千葉に招き、一緒に街を歩きました。
今回の公募対象の亥鼻エリア。歴史的な公園、隣接するモダンな建築の図書館、その周辺にあるシャッター通り間近の商店街…。その後、歩いて千葉駅付近の賑やかな通りも歩きました。彼は、こうした街が持つ光と影の両方に「面白い」と可能性を見出してくれました。「千葉駅周辺がA面なら、亥鼻エリアはB面エリアだね」。なるほど、B面か。彼のその言葉は、近いがゆえに見過ごしていた街の可能性に気づかせてくれました。
A面のテコ入れが起こるときにはいつも、行政や大手デベロッパーなど、多くのプレーヤーが集まります。一方のB面エリアは後回しにされがちです。私は、自分が暮らす街のことを「B面」どころか、手がかりすらない町だと思っていた。「B面のある街」という視点が生まれたとき、A面にはできないことのすべてが、全てB面の持つ可能性に見えてきました。いろいろな街を見てきた松井の一言が、この場所の可能性を信じる後押しになった。外からやってきた彼の言葉が、大きな夢を描くための勇気をくれました。

さらに、同じ千葉市で活動するクリエイターユニット「岩沢兄弟」の存在もありました。彼らはすでにこの街でアートやものづくりを起点に面白い人たちの輪を広げていて、やはりこの公園の可能性に注目していました。「一緒にやらないか?」という彼らの誘いが、すべての点と点を繋ぐ線となったのです。
こうして、最高のチームで挑んだコンペを勝ち抜き、FabCafe Chibaのオープンが決まりました。
「外の視点」が教えてくれた、本当の価値
このプロセスを通して、私はロフトワークという会社の本当の価値を体験することになりました。社内の人間としてではなく、まるで自分自身がクライアントのような立場として。
一人で計画を立てていた時、私は無意識に「自分ができる範囲」で物事を考えてしまっていたんです。失敗したくない、大きなことを言ってできなかったらどうしよう…。そんな不安が、描く未来を小さく、こぢんまりとさせていました。きっとこの感情は、プロジェクトを立ち上げようとするすべての人々が心の奥に抱いてきた感情なんだろうと、自分の立場になって改めて感じます。

そこへ、松井が描いてくれた提案を見た時、私は正直「できるかどうか不安だ」と思いました。でも、そこで感じた限界は「自分だけでやる場合の限界」でした。提案だけ渡されたのではなく、一緒にやってくれるという信頼を持てた時、限界は限界ではなくなりました。心から自分が「見たい景色」を見るにはどうしたらいいか?目指す場所から逆算して考えた時、その未来にたどり着くには、それくらいの大きなジャンプが必要だとも気づかされたんです。
私たちの「見たい景色」は、少しずつ、カフェの姿に反映していけたらと思っています。
一人では決して描けなかった大きな未来の絵。その絵と現実との大きな差分を「僕たちも一緒に伴走するから」と埋めてくれる仲間がいる。
どこに行きたいのか、その景色を共有し、ビジュアライズしてくれる。自分だけでは緩やかな線しか描けない道のりに、未来へ向かうエッジの効いた道筋を示してくれる。そして、その実現のために共に汗を流してくれる。
「一緒にやろう」と言ってくれて、本当に手を動かしてくれる力。これが、ロフトワークが提供するクリエイティブの力なんだと、身をもって知りました。
もしあなたが今、何かを大きく変えたいと願いながらも、一歩を踏み出せずにいるのなら。大丈夫。私たちロフトワークが、あなたと一緒に未来の絵を描きます。そして、その景色を一緒に見に行きましょう。
執筆:岩沢エリ
写真:村上大輔
編集:乾隼人
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