FINDING
2023.02.16

特集「未来」
不確実な時代に、“それなり”から未来を始めてみよう

特集シリーズ「創造性のレンズ」について

コーポレートメディア Loftwork.comでは、ビジネスにクリエイティブの視点を掛け合わせ、常識やトレンドを捉え直す、特集シリーズをはじめます。
これまでロフトワークが取り組んできた、有識者との対話やプロジェクト実践から得た学びをもとに、誰もが持っている「創造性のレンズ」を呼び覚まし、共に磨いていくためのコンテンツをお届けします。

Introduction
「未来を考える」って、どうして大事なんだっけ?

みなさんは、「未来」という言葉を聞いて、何を想像しますか?

タイムマシンや空飛ぶ車、はたまたAIに支配される未来など、SF的な発想をする人もいれば、もっと身近に、ビジネスの未来、暮らしの未来、自分のキャリアの未来などからイメージする人もいるかもしれません。

未来は、さまざまな形で私たちの前に提示されます。日々を過ごすなかで、未来という言葉を目にしない日はないほどに。だから、「未来なんて、もう聞き飽きたよ」と感じる方もいるかもしれません。

ただ不思議なもので、未来という言葉に触れていると、どこか無限の可能性が広がっているような、そんな気持ちが湧いてきます。未来という言葉に対して私たちは大きなパワーをつい感じてしまうものですし、それゆえに、私たちは未来のことを考えずにはいられません。

一方で、現代はVUCAの時代と呼ばれ、不確実性が高い社会だと言われています。「現代(いま)」がこれだけ複雑で、たくさんの課題を抱えているなか、私たちは「未来」とどう向き合い、それをどう描き出すべきなのでしょうか。「ついつい未来を考えてしまう」という状態から少し離れて、「未来と向き合うことは、なぜ重要なのか」という問いを改めて考えてみる必要があるのかもしれません。

Creative lens
未来は、「それなりの正しさ」から始めてもいい?

私たちが未来について考えるとき、とりわけビジネスとなると、できるだけ合理的に判断して未来を正確に「予測」しようと試みます。しかし、不確実な時代においては、「現在」の分析や積み上げだけで未来を予測することは難しいと言われています。

とはいえ、目指す未来がなければ私たちは新しいアクションを起こしづらくなってしまう。つまり、私たちは不確実性を受け入れながらも、それでも未来の価値を生み出し、未来にかかわる課題を解決しなければなりません。なんともハードルの高い話です。

では、混迷の時代に未来を描く、その有効な糸口はどこにあるのか。さまざまな考えがあるにせよ、ここで問いかけたいのは、「それなりに正しいこと」から始めてみるのはどうだろうかということです。

「技術革新や成長の先に未来の幸福があるはずだ」といった、これまで信じられてきた「正しさ」が揺らぎつつあります。未来に対する唯一解を出せない今、私たちが未来を描き始めるよりどころは「それなりの正しさ」にあるのかもしれない。そんな問いから、これからの「未来の描き方」を考えてみます。

「プラグマティズム」の思想から学ぶ、「それなりの正しさ」

「それなりに正しい」とはどういう状態でしょうか。ヒントとなるのが、「プラグマティズム」という思想です。プラグマティズムは、アメリカで発展した哲学であり、ギリシア語で「行動」や「実践」を意味する「プラグマ」を語源としています。「唯一の正しさ」には決してたどり着けないという前提に立ち、「結果として何を生み出したか」という視点から、物事の「正しさ」を規定しようという考え方です。

思想史研究者の大賀祐樹さんは、著書『希望の思想 プラグマティズム入門』において、プラグマティズムが、「唯一の正しさ」が感じられない社会で「それなりの正しさ」を定めるものであり、課題解決に向けて行動を促すことができる「希望の思想」である、と紹介しています。

プラグマティズムは、どんな問題でも解決できるような「唯一の正しさ」には到達しえないにせよ、その時々のトラブルを解決する上で有用な「それなりの正しさ」にはたどり着けるし、そのことが重要だと私たちに教えてくれるからだ。
「超人」にはなれない平凡な私たちは、何かを「正しい」と信じられなければ、一歩も先へ進めなくなってしまう。今日より明日は、少しはマシになるだろう。その全てではないにせよ、望みはいつか叶うだろう。そう信じられるからこそ、私たちは生きていける。プラグマティズムは、そんな私たちの生を肯定する、「希望の思想」なのである。(大賀祐樹, 「希望の思想プラグマティズム入門」, p11)

個人の価値観が多様化している中で、もはやビジネスにおいても「唯一の正しさ」を定めるのは困難であるように見えます。なお、ここでいう「正しさ」はビジネスや価値創出における「正解」も指しますし、同時に社会的・倫理的な「正義」も含まれるでしょう。

「それなりの正しさ」という言葉は、少し投げやりに聞こえるでしょうか。しかし、ここで注目したいのは、社内のメンバーであれ、社外の共創相手であれ、未来を一緒に作っていきたい他者と、お互いが持っている「正しさ」をすり合わせながら着地点を見出すために、どんな手立てが必要なのか、ということ。そして、さまざまな人々が納得できる「それなりの正しさ」を指針としながら、未来に向けたアクションを起こす方法を探ってみよう、ということです。

では、実際に「それなりに正しい未来」を定めるには、どのような方法があるのか。また、組織デザインやサービスデザインの中でそれを実践するには、どうすればいいのでしょうか。本記事では、ロフトワークがこれまで対話してきた有識者のみなさんとの議論をもとに、「それなりの正しさ」というレンズを通して、主体的に未来を切り開くための3つのアプローチについて紹介します。

それなりの正しさから、未来を描くアプローチ

  1. 「共有」を前提にした、社会変革のフレームワーク
  2. アジャイル的アプローチから、組織を未来志向にする
  3. 持続可能な未来に向けた、他者との共創・対話のデザイン

Approach1
「共有」を前提にした、社会変革のフレームワーク

課題を見つけるために、「ありたい未来」から考える

「それなりに正しい未来」を描くためには、まずは何から始めるべきなのでしょうか。東京大学・大学院の卒業生、現役生、研究者向けのスタートアップインセンションプログラム「東京大学FoundX」ディレクターであり、書籍『未来を実装する』の著者でもある馬田隆明さんは、企業が生活者や社会の課題を解決する事業を生み出すために、「インパクト=(ありたい未来)」の提示から始めることが重要性であると語っています。

変革のデザイン KEYNOTEセッションレポート

ロフトワークでは、2022年11月に「ありたい未来の景色」をさまざまなゲストと共に想像していくためのカンファレンス「変革のデザイン」を開催。
その中で、馬田さんより、技術を活かしたイノベーションは、社会変革を伴う「インパクト」の実現を目指すことによって実装できるのではないか、という問題提起がありました。

>>イベントレポートを見る

「インパクト」とは、個人への影響を超えた社会や制度などの変化や、長期的で広範に及ぶ変化のこと。これを企業の視点から解釈すると、事業の先にある理想の社会像や「ありたい未来」と言い換えられます。

なぜ、企業は「ありたい未来」を先に描く必要があるのでしょうか。馬田さんによれば、理想としてのありたい未来を先に提示することによって、「もっとこうしてほしい」「これを改善するべきだ」という現状の課題が可視化され、ビジネスチャンスや価値提供の機会が生まれると言います。つまり、「理想と現実のギャップから、課題が生まれる」のです。課題解決をより現実的にしていくためにも、「こうありたい」を最初に示す必要があります。

ありたい未来への「道筋」をいかに共有するか

しかし、「ありたい未来」はいわば理想論や妄想に近いもので、ともすればひとりよがりな主張にも受け取られかねません。実際にそれを実現するには、周りの人が、提示された「ありたい未来」に対して「それなりに正しいはずだ」と納得できるような構想へ落としこむ必要があります。そのためにも、ありたい未来に至るまでの道筋を具体的に示すべきでしょう。これを図示する手法として馬田さんが紹介した手法が、「ロジックモデル」です。

一部引用:社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ

ロジックモデルとは、事業の思い描く未来と、道中の仮説を組み上げた設計図のようなもの。ざっくり説明すると、どのような活動が、どのようなサービス・プロダクトを生み出し(アウトプット)、それが誰に対してどのような変化へと導くのか(アウトカム)、そして、最終的にどんなインパクトを生み出すのかを示すモデル図になっています。

また、注目すべきはその使い方。ロジックモデルは、プロジェクトにおいて他者に共有しづらい「長期的な価値」を論理的に示すことができるため、立場を越えたステークホルダーとの合意形成に役立ちます。また、一度作った計画は遵守するものではなく、プロジェクトを進める途中や、振り返りのなかで何度も調整・再検討されるものです。さらには、一度図示してみれば、新たな社会課題へのつながりや、今の事業に足りていない部分も見えてくるでしょう。つまり、ロジックモデルは「事業を予定通り進めるための“正しい”計画」ではなく、「合意形成と評価を行いながら、柔軟に計画を調整していくためのツール」なのです。

「それなりに正しい」を確認するためのロジックモデル

人は誰しも、それぞれの「正しさ」を抱いています。当たり前の話に思えますが、大きなプロジェクトを推進する際には見落とされがちな視点です。ロジックモデルというフレームワークを用いることで、プロジェクトが目指す、ありたい未来へのロジックを可視化し、ステークホルダーや共創相手が抱いている「正しさ」とのすり合わせができるのです。

Approach2
アジャイル的アプローチから、組織を未来志向にする

「それなりの正しさ」を起点にしながら、未来に向けたアクションを自分ひとりの思いにとどめることなく、組織として実践していくには、どのようなアプローチが必要なのでしょうか。

そのヒントとなるのが、「デザイン・フューチャリスト」という仕事です。アメリカのメガバンクであるJPモルガン・チェース銀行では、2021年からデザイン・フューチャリストというポジションが設けられました。日本人として初めてその役職に就いたのが、岩渕正樹さんです。

デザイン・フューチャリスト 岩渕正樹さんに訊く(前・後編)

コロナ禍を経て、米国の先進企業の中では、未来を洞察するために経営直下でデザインリサーチチームを組成する動きが広まっています。本インタビューでは、JPモルガン・チェース銀行で「デザイン・フューチャリスト」を務める岩渕正樹さんに、その役割や、企業がビジョン・パーパスを軸に経営を行う意義について伺いました。

>>インタビュー記事を見る

デザイン・フューチャリストは、いわば組織において未来を洞察する専門人材。その主な仕事は、数年後から十数年後まで多様なタイムスパンで未来を探り、ありえるかもしれない社会像やサービスコンセプトをプロトタイプし、ビジネスチームと議論したり、未来を探るワークショップを行ったりすること。活動を通して、社内のメンバーに向けて未来について考えるきっかけを継続的に与え、未来志向の組織文化づくりを目指しています。

未来を考える仲間を増やす活動と、それを支える組織体制

岩渕さんの役割において注目するべきは、彼自身がデザイナーとして一人で手を動かすのではなく、組織の中で「どんどん周りの人を巻き込んでいく」アプローチをとっていることです。

例えば、岩渕さんは銀行の会議室をハックして「未来のリビングルーム(Living room of the future)」という展示を行い、今とは異なる社会・環境のニーズや、未来においてチェース銀行が手がけるかもしれないサービスの姿などを提示しています。また、こうした活動を通して岩渕さんが目指しているのは、「一般社員も未来世界の議論の渦に巻き込み、社会全体を変えていくこと」だと言います。

「Living room of the future」の取り組みの一例。「ドローン配送が実現した未来」をラフなプロトタイプによって可視化し、展示しました。

なぜ、岩渕さんは大きな組織の中で、このような自由な活動ができるのでしょうか。チェース銀行では、デザイン・フューチャリストは全社を横断してビジネス戦略を構想する「デザインストラテジー」という組織に所属しています。そのため、岩渕さんは経営層であるCDOの後ろ盾のもと、一つの製品群に囚われたビジョンではなく、全ての部署に働きかけたり、既存の組織構造にこだわらない、真にあるべきビジョンを提案できるのです。

もう一つ重要なのは、未来への探索を、必ずしも短期的な収益だけに収束させていない点です。プロトタイプされたサービスコンセプトは、必ずしも事業につながるとは限りません。しかし、新たな視点やアイデアを起点とし、マネジメントから一般社員まで、それぞれとの議論や対話を生み出し、未来に向けて自社の事業やサービスの可能性を広げています。また、未来を可視化することで、「何をやるか」ではなく、「何をやらないか」が見えてくることも一つの価値と捉えられています。これもまた、ビジネスの中で「それなりの正しい未来」を模索するやり方のひとつといえそうです。

ビジョンにも、「唯一絶対の正解」は存在しない

岩渕さんは、未来志向の組織文化をつくり、「100人が100通りの未来を描けるようになる」状態を生み出し、社員一人ひとりのビジョンを束ねていくことが、デザイン・フューチャリストとしての重要な役割だと言います。

組織のビジョンというと、揺るぎないものとしてトップダウンで定められるイメージがあります。しかし、「ひとつの正しいビジョン」を守り続けるのではなく、組織のビジョンに多様な価値観を反映したり、ビジョン自体をアジャイル的に作りかえたりすることが、未来の変化に耐えうる、レジリエンスの高い組織づくりにつながるのかもしれません。

Approach3
持続可能な未来に向けた、他者との共創・対話のデザイン

ここまでの議論の中で共通しているのは、未来は一人で描くものではなく、「他者」の存在が欠かせない、ということです。しかし、実際のところ、企業が「ありたい未来」に向けて持続可能な事業やサービスを計画するうえで、「他者と未来を探る」ことを、いかにして実現できるのでしょうか。そのために有効な手立てとは、どのようなものなのでしょうか。

「持続可能性」と「事業戦略」を掛け合わせるヒントは、
ユーザーとの共創にある

「トランジションデザイン」というデザインアプローチの提唱者の一人であるキャメロン・トンキンワイズ氏は、持続可能な社会の実現と、現実的な事業戦略とをかけあわせるようなアイデアを生み出すうえで、「ユーザー(他者)と一緒に未来を探る」ことが重要であると語っています。

キャメロン・トンキンワイズ氏による、トランジションデザインの解説

2022年12月に開催したオンラインイベント「社会変革を促す“トランジション・デザイン”とは? 海外の先進企業が注目する、次世代デザインアプローチの最前線に迫る」。
持続可能な社会への「移行」をデザインするアプローチである「トランジションデザイン」について、提唱者の一人であるキャメロン・トンキンワイズ氏が解説を行いました。

>>イベントレポートを見る

トンキンワイズ氏は、ユーザーのニーズを追いかけるのではなく、先行してユーザーをリードして、彼らと「パートナー」のような共創関係を築くように提言しています。その結果として、社会課題の解決と事業戦略とが噛み合ったサービスがデザインしやすくなると言うのです。

エネルギーの配給事業を例に考えてみます。環境問題への関心が高まる今、ユーザーが求めているのは「安価で環境負荷の少ないエネルギー」ですが、これを事業レベルで実現するには、まったく新しいグリーンエネルギー技術が開発されるのを待つ以外に方法がありません。つまり、事業開発が技術先行型にならざるを得ず、市場の激しい変化にも対応できなくなってしまいます。

そこで、「ユーザーとエネルギーとの新しい関係を築く」という視点へと発想を切り替えてみる。つまり、ユーザーの役割を単なる消費者ではなく、エネルギーを貯蔵・配給する人としてとらえ、そのような社会システムを実現するためのサービスを考えてみるのです。ユーザーと共創関係を築くことをアイデアの起点とし、環境負荷の軽減と新たなニーズ創出を両立する事を試みています。こうしたアプローチを通じて、事業やサービスの大きな変革を起こし、持続可能な事業モデルへと移行していくことができるのです。

まずは、対話のデザインから始める

事業やサービスを通じて大きな変革を目指すとき、そこには数多くのハードルが待ち構えているでしょう。それらをクリアするための第一歩として、まずは「他者との対話の機会」をデザインすることからスタートできるのではないでしょうか。

ここでいう「対話」とは、ニーズを探るためのリサーチやインタビューだけではなく、もっと実験的で、アクティブなものかもしれません。ロフトワークが支援したプロジェクトでも、対話の可能性を広げるためにさまざまなアプローチを検討しています。

例えば、積水ハウスと実践した環境コミュニケーションプロジェクト「エシカル暮らすメイト」プロジェクトでは、若手クリエイターたちによる実験的な「エシカルなライフスタイル」を発信するにあたり、あえて「これは、上手くいかなかった」などの未完成や失敗も交えて発信を行いました。

積水ハウス 環境コミュニケーションプロジェクト「エシカル暮らすメイト」

住まいを通じて豊かなライフスタイルを提供する積水ハウス株式会社は、ロフトワークをパートナーとして、「エシカル」をテーマに、従来とは異なるスタイルの環境コミュニケーションプロジェクト「エシカル暮らすメイト」を実施。
ターゲット層であるミレニアル世代・Z世代と同世代のクリエイターが、生活の中でエコ・サステナブルにつながるライフハックやアイデアをプロトタイプし、さまざまな有識者との対話を通して「エシカルな暮らし」の可能性を探る機会を創出しました。

>>プロジェクト事例記事を見る

「エシカル(ethical)」の本来の意味は「倫理的」です。ただ、そのような暮らしを人々がどう実践するべきなのか、誰かが正解を知っているわけではありません。むしろ、企業自身も探索の途中であるという姿勢を示すことによって、未来を担う若者世代と目線を揃えながら、対話と相互理解のきっかけを掴めるのかもしれません。

 

Conclusion
より良い未来を、自分たちの手で描くために

本特集では、「それなりの正しさ」を切り口に、未来を描くためのアプローチを紹介してきました。3名の有識者のアプローチはそれぞれですが、「未来に対して主体的であろう」というスタンスは共通しているように見えます。

データや技術を参考にしながら、「来るべき未来」を受動的に予測するだけでなく、「私たち自身で描き、形作っていく未来」として捉え直す。不確実な社会となり、未来が簡単に見通せなくなった今こそ、このようなマインドチェンジが求められているのではないでしょうか。そして、「それなりの正しさ」は、その足がかりとなるのかもしれません。

「より良い未来」を自分たちの手で掴むべく、小さく実験を繰り返し、議論と想像の輪を広げていくこと。これが、次の時代における「未来との新しい向き合い方」となるのではないでしょうか。

Project Case
プロジェクト事例から探る、「それなりの正しさ」の探索と実践

「それなりの正しさ」というレンズで未来を描くには、どのような手立てがあるのでしょうか。これまでロフトワークがプロジェクトにおいて実践してきた中から、いくつかの具体的なアプローチをご紹介します。

Project Case.1 海遊館 対話と共創で“次の30年” ビジョンを具現化

2020年に開館30周年を迎えた大阪市港区の水族館「海遊館」。既存の枠を超えて新たな可能性を示すため、これからの30年で海遊館が目指す姿を構想する、部署横断のプロジェクト「Next30」を立ち上げています。

「Next30」は、いわば海遊館が目指す「ありたい未来」。これを、クリエイティブな共創を通じて可視化・体験化し、来場者に問いかけるために、特別展「視点転展~色んな見え方、感じ方~ 」を開催しました。

アジャイル型のプロジェクトや対話・共創など、「それなりの正しさ」を起点に組織にとってのありたい未来を考え、形にするための具体的なアプローチを実践しています。

未来を描くための、探索・実践のポイント

  • 設計・実装フェーズであえてゴールを定めない、アジャイル型のプロジェクトマネジメントを実施。海遊館スタッフとクリエイター、ロフトワーク、さまざまな立場の意見を交えながら、ありたい未来を体現する展示体験を共創した。
  • 共感を呼ぶストーリー型展示ではなく、ユーザーに問いかけてフィードバックを得る対話型展示を制作。海遊館が提示するありたい未来に対して、鑑賞者にも思考を促した。
  • 展示構成において、水族館の現場で働くスタッフの個人的な“意見”や“想い”を重要視。組織が考えるありたい未来のビジョンと、現場レベルのボトムアップの視点を混ぜ合わせた。

Project Case.2 南海電鉄 ロジックモデルを用いて新事業ロードマップを作成

ロジックモデルを、プロジェクトのどのタイミングで活用するのか。ケースによって異なりますが、「プロジェクトの主語となるステークホルダーが増えるタイミング」は、そのひとつと言えそうです。

南海電気鉄道株式会社は、デジタルきっぷを用いた新サービスの事業化を目指した実証実験を行うために、新たな協業先を探るフェーズを迎えていました。新サービスをより社会に受け入れられるものにするため、同社は社内外の多くのステークホルダーを巻き込むことを目指し、ロジックモデルを用いた新事業のロードマップを作成しました。

ありたい未来に向けた道筋を考えるとき、「誰のどのような変化を、どの程度生み出すのか」「そのために、どんなリソースが必要なのか」といった視点を再点検できます。ときには、改めてプロジェクトの目的に立ち返ったり、自分たちに不足しているものが何なのか明らかにできたりする。それもまた、ロジックモデルが果たす役割と言えるでしょう。

未来を描くための、探索・実践のポイント

  • 新サービスの実装の過程で、社内外の人々との「共通認識」を生むための叩き台としてロジックモデルを活用した事業ロードマップを作成。
  • 新サービスが目指す社会的インパクトを定めると同時に、その実現に向けた道筋を描くワークショップを実施。新サービスが実装される将来、業界や社会、人々はどのように変化していくのか、社内メンバー自身がプロットし仮説を立てた。
  • 結果として、参加メンバーは「新サービスの社会的な価値を再認識できた」「不足している要素やパートナーが見えてきた」など、サービスの実装に向けて、新たな視点を獲得することができた。

Message
「それなり」からのスタートでもいい。まずは未来へのモヤモヤを共有してみよう。

あなたの考える「ありたい未来」は、どのようなものでしょうか。
その実現に向けて、どんな実験から着手できるのでしょうか。
まずは、ありたい未来やその道筋を、誰かに共有してみることから始まるのかもしれません。

ロフトワークでは、「ミライの談話室」と題して、
みなさんの描きたい未来を一緒に整理・拡張していく対話や、ロジックモデルを使ったワークを実施しています。もちろん「課題感だけあって、何から始めればいいかわからない」という状態でも構いません。

テーマ・領域に合わせたロフトワークメンバーがお相手します。
まずは、小さく共有することから始めてみませんか。

「ミライの談話室 」

お申し込みはこちら

参考文献
[1]「希望の思想 プラグマティズム入門」(大賀祐樹, 2015, 筑摩書房)
[2]「未来を実装する テクノロジーで社会を変革する4つの原則」(馬田隆明, 2021, 英治出版)

Credit
企画・執筆:後閑 裕太朗
編集:岩崎 諒子、岩沢 エリ
協力:小島 和人, 伊藤 望, 谷 嘉偉(上記いずれも、株式会社ロフトワーク)
イラストレーション:野中 聡紀

Keywords

Next Contents

いち個人のまなざしで社会を見る。
ヨコク研究所の発信からコンテンツメーカーが学ぶべきこと