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基 真理子 2021.12.24

復活の呪文を唱えよ!
エモーショナルを積極的に許容する「沼からの復活会」

何をしても空回り、行き詰まってしまった経験は誰しもがあるのではないでしょうか? 負のループにとらわれてしまい、もがけばもがくほど深く沈み込んでいく様子は「底なし沼」にはまるかのよう。年齢や経験が這い上がる方法をそれなりに教えてくれるものの、人生はいつまでたっても沼だらけ。そう簡単にはいきません。
私自身も京都オフィスに勤務し4年弱、ディレクターとして数々のプロジェクトに向き合い、現在は採用・マーケティングを担当するなかで、数々の沼から這い上がってきました。その経験を活かし、同じように苦しむ仲間を少しでも癒す「沼からの復活会」を実施。赤裸々な対話を通じ、私が感じたことをレポートします。

基 真理子

Author基 真理子(HRディレクター)

兵庫出身、京都在住。フリーター時代にWebの世界に魅了され独学を始める。その後、百貨店系クレジットカード会社のWeb担当者として、サイトのフルリニューアルなどを推進。書籍『Webプロジェクトマネジメント標準』との出会いをきっかけに、2018年ロフトワークへディレクターとして入社。教育機関や企業の大規模Webリニューアルから、イベントの企画運営など幅広い領域に携わる。また大学でのPM特別授業講師、KJ法勉強会など、多様な「学び」のデザインにも従事する。2021年に罹患した病をきっかけに「健やかに働くこと」をより深く考え、HRディレクターに就任。採用業務全般から、育成プログラム開発まで「人」に関わる業務を担っている。2024年米国PMI®認定PMP®,PMI-ACP®取得。合言葉はENJOY NOISE。アカハライモリと暮らす。

Profile

沼はまり率100%、わかっちゃいるけど避けられない

バタバタという音が聞こえてきそうな師走間近の12月某日。「沼からの復活会」という怪しげな会に、世代や部署、入社歴もバラバラなメンバーが集合。短時間でも癒しタイムを持ちたい!という想いで用意したハーブティーを皆ですすりながら、ゆるやかに会は始まりました。

熱いハーブティーでリラックスしながら開会。オンラインホワイトボードMiroにさまざまな沼情報を集めた。

前半は、事前に社内で実施した「沼アンケート」結果をシェア。「沼にはまったことがありますか?」という質問に対し、「はい」と答えた人が100%!ベテランや、遠い存在に見える先輩も、誰しもが沼にはまったことがあるという事実自体に救われたメンバーもいたようです。

そして「どんな時に沼にはまりますか?」という質問では、誰かに相談できない時や、相談の仕方が分からない時、そしてキャパオーバーや、未知の領域にチャレンジする時などの回答も。その結果、睡眠不足やリフレッシュする時間がとれないという意見もあり、小さなネガティブの連鎖が沼を発生させているパターンが見えてきました。

一見バラバラに見える回答も、整理することによって「はまってしまう」パターンが見えてきた。

ただわかっていても、避けられないのが沼のしんどいところ。同じくアンケートで聞いてみた「沼からの復活方法」では、寝る、美味しいご飯を食べるなど衣食住の根本的改善から、踊る、アートをみるなど好きなことに向き合う時間をもつなどの回答もありました。また信頼できるメンバーと仕事の棚卸しをする時間を持つ、もやもやを全て書き出すなど具体的な改善案もあり、バラエティ豊かな復活方法を知ることができました。

寝る、サ活から、1ヶ月山小屋に籠るまでさまざまな解決方法が集まった。

立ち上がる力もない時は復活の呪文を唱えよ

後半では少人数のチームに分かれ、それぞれの沼体験や復活方法をシェア。問題解決やコーチングを目的とせず、フラットな関係で、お互いに弱音を吐きあう時間は予想以上に心を軽くするものでした。ただそれだけで終わらないのが私の復活会。チームごとに「復活の呪文」を考え、それぞれ発表してもらいました。ふざけているように見えるかもしれませんが、ここには沼経験者である私の強い想いがあったのです。というのも、本当に沼にはまったときは、目の前のこと以外に興味をもつことや、果てはリンクをクリックする力すら湧きません。そんなときに、いつでも唱えられる呪文という言霊を頭の片隅においておき、少しでも心を楽にしてほしいと考えたのです。

それぞれの想いが込められた呪文。意味がないものや、唱え方にコツが必要なものも。

感情を積極的に露出させることで生まれる安心感

1時間という短い時間でしたが、私自身も弱音や辛い経験を感情的に話したことで、閉会後には笑顔で前向きな気持ちになっていました。参加したメンバーの感想なども踏まえ、今回の復活会で良かった点は大きく3つあると感じています。

1. “エモーショナル”を積極的に許容する時間をつくる

社会人になると、できるだけ冷静で客観的な視点や対応が求められます。もちろんビジネスにおいて、フラットであることは重要です。ただ仲間同士で感情の大波小波を爆発させ、エモーショナルを許容する時間は、職場でも求められるのではないでしょうか。交流会だけでは吐ききれない弱音も、あえて許容することによって露出されるのです。

2.解決やリードを目的とせず、ただ弱音をはく

ロフトワークでは2週間に一度の1on1(面談)もあり、定期的に相談をして具体的アドバイスを受けたり、必要であれば産業医とのカウンセリングで専門家から意見を受けることもできます。ただ今回は何も解決せず、ゴールへと導くこともない時間でした。相談する人、受ける人という役割を担わず、ただ弱音を吐きあえることが、お互いに安心感を生んだのです。

3. 先輩の失敗談が後輩の心を開く

参加したメンバーは20代から40代まで。入社して数ヶ月の人もいれば、10年選手もいました。立場に関係なく、一見スペシャリストに見える先輩の失敗談を聞くことは、若手にとって希望となった気がします。最近では「心理的安全性」という言葉もよく見かけます。ただ私自身はこの言葉は温度感がなく、マネジメント目線のような気がして、なんだか肌に馴染んできません。それよりも先輩の苦悩や、それを乗り越えた赤裸々な経験談は、弱っているメンバーの背中を押すのではないでしょうか。

解決やコーチングを目的とするのではなく、積極的に弱音や苦しかった経験を露出しあった。
それぞれの経験を踏まえながら考えた呪文。チームごとの個性あふれる言葉が行き交った。

私、沼りながら生きていく!

さて、ここまで偉そうに書いてきた私ですが、今だにしょっちゅう沼にはまっています。どれだけ防護策を張っていても、沼は色変え形変え近づいてくるもの。だからこそ、自分なりの復活方法を開拓し続け、沼っている仲間がいれば背後に近づき「復活の呪文」をそっと唱えてあげたいと思います。

つい最近も沼にはまった私は思い切ってピンクの坊主頭にイメチェンした。だいぶ伸びてきている。

みなさんは、どんな復活方法をもっていますか?もし自身が沼っていたり、沼っているメンバーが多いと感じてるのであれば、ぜひエモーショナルな癒しタイムを作ってみてください。問題が解決しなくても、チームの空気が少し軽くなるはずです。

最後に。今回の企画は個人的な衝動から生まれました。参加したメンバーの笑顔を見ながら、瞬発的にこういう時間が持てることはロフトワークで働く醍醐味だなぁと実感。今後も定期的にMPを回復させる「復活会」は実施し、沼だらけの人生を謳歌してやろうと思います。

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