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浦野 奈美 2026.07.27

「from Foe to Friend」プログラムガイド

from Foe to Friend(厄介者と人の関係を探る共同リサーチ)に関心を持っていただきありがとうございます。このページは、申し込む前に「プログラムでどんな学びが得られそうか」、「自身の業務や活動にどう関連を持たせられるか」と迷われている方に向けて作成しています。

オンライン事前説明会

とにかく「直接話を聞いてみたい」「あの疑問を解消したい」——そんな方に向けて、少人数制のオンライン事前説明会を複数回開催しています。このページに書いている内容について、今回のプログラムを企画しているSPCSの浦野から直接お話しします。質問タイムも設けていますので、どんな細かいことでも気軽にお尋ねください。

開催日時(約30分間)

  • 7月29日(水)18:30〜19:00

プログラムのポイント

この記事では、以下の流れで、プログラムのポイントをご紹介します。気になる項目をご確認いただけたら幸いです。

1. なぜ今、「厄介者」なの?

今回の企画に至った背景や問いをご説明します

2. なぜゲストがこんなに多いの?どんな内容なの?

今回9セッション&12組のゲストという、SPCS史上最長かつゲスト最多の企画になりました。センシティブなテーマを扱うため、できる限り多方面の現場感や生の情報を得ながら議論を進められるよう工夫しています。各ゲストのトーク内容と全体の流れをご紹介します。

3. どんな宿題があるの?

レクチャーとあわせて参加者それぞれが進める個人リサーチについて補足します。

4. どんな人たちが参加するの?

途中段階での参加者の顔ぶれや属性などについて補足します。

1. なぜ今、「厄介者」なの?(企画背景)

毎日のようにニュースで報じられるように、年々人間の生活圏で人と野生生物が対峙したり、トラブルが起きることが増えています。それは、クマやイノシシのような大きな生物もありますが、植物や昆虫など、さまざまな生物に関して起きています。

世界規模で外来種対策コストは増加基調

IPBES(生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム)の報告書によると、侵略的外来種による世界の年間経済コストは2019年時点で約62兆円。1970年以降、10年ごとに少なくとも4倍のペースで拡大しています。

IPBES事務局 メディアリリース

野生鳥獣の被害額・対策コストは、過去最大水準で推移

農林水産省の報告によると、令和6年度 全国の野生鳥獣による農作物被害額は188億円(前年度比+15%)であり、都市部でも、ハト・ムクドリ・ネズミなどへの対策コストは、施設管理の現場で慢性的な課題になっています。東京都環境局はムクドリは23区・多摩地域全域で通年、生活環境被害(騒音・糞害等)が発生していると公式に認定。柏市では音や鷹による追い払いが定着せず、街路樹の剪定という物理的対策に落ち着いた事例も。

東京都環境局「ムクドリの被害状況及び対策について」弁護士ドットコムニュース農林水産省「農作物被害状況」

「厄介者」という認識の強まり

国内の虫ケア用品・殺虫剤市場は2年連続で過去最高を更新(約1,370億円、前年比6%増)。消費者相談も前年度比約1.5倍に増加。管理者のいない空き家は全国900万戸(過去最多)で、都市の生き物にとっての新しい”すき間”に。人々が生活圏にいる生物に対して厄介だと思うシーンが増えているようです。

独立行政法人 国民生活センター 報道発表資料(2024年4月24日)「日用品化粧品新聞」2月3日号

対策の担い手は、 人口減少・人手不足で減っている

  • 生産年齢人口は2020年の7,406万人から2040年には5,978万人に減少見込み。技術職・専門職を中心に公務員の人手不足が深刻化し、全国8割の自治体で公務員数が減少しているうえ、2023年に公益社団法人日本ペストコントロール協会が実施した実態調査で、経営上の問題点として「現場従業者の不足」が最多という結果に。少子高齢化による労働力不足が業界全体で深刻化しているとされています。

総務省情報通信白書(令和3年)nippon.com公益社団法人日本ペストコントロール協会機関誌「ペストコントロール」

また、商業施設や公共施設の現場では対処してもイタチごっこになってしまうなどの課題もしばしば起きています。つまり、排除・駆除にかけるコストと労力は増え続ける一方で、人口減少や人材不足によって、現場リソースに無理がかかっていたり、生物側の薬物耐性などにより根本解決が難しい現実がありそうです。

実際、本プログラムの特別講師であるロブ・ダン氏(ノースカロライナ州立大学教授)は、「我々が厄介だと思っている生物は我々の生活環境に順応し、我々と生きることを決めた生物。都市化を進めるほど、我々は彼らの繁栄をむしろ助けていることになっている」と指摘します。一方で、都市生活者は自然と触れ合おうとするほど、ゴキブリやネズミなど身近で”厄介”な生物としか接点を持てなくなるという逆説(彼はこれを”Pigeon Paradox”と呼びます)も指摘しています。

今我々が「厄介な生物」との間にある、根本的な難しさを踏まえたうえで、排除でも愛護でもない、第三の関係のデザインを探る余地はまだ多くあるのではないかと思い、今回、ダン氏を招いて、このプログラムを企画しました。

2. なぜゲストがこんなに多いの?どんな内容なの?

今回は、「厄介者」と向き合うために、4つの異なる視点をリレーする構成にしています。

まず、1つ目は厄介者になってしまう背景や課題を知り、厄介者の生態を知るというプロセス。2つ目は「厄介者」というラベルがどこから来たのか多角的にリサーチする視点を学ぶプロセス(このプロセスを踏まえて、参加者のみなさんには各人でリサーチする生物をひとつ決めていただきます)3つ目は、厄介者を厄介者にしない取り組みを学ぶプロセス。最後に、厄介者との関係性を変換するヒントとして、人側の知覚をハックして、体験デザインから見直せないか考えるプロセス。4つ目のプロセスを踏まえることで、多様な領域の講師と参加者が創造的な可能性を探索することを狙っています。それぞれの普段の業務の中だけでは考えられないアプローチや切り口が議論を通して探れたらと思います。

① 課題を知る(現場の実態とマクロな構造を押さえる)

ロブ・ダン 氏(ノースカロライナ州立大学)

今回のプログラムの特別ゲストであり、キーノートスピーカー。「我々はつい美しい蝶を追いかけたくなるものだけれど、本当のフロンティアはアマゾンではなく、シャワーヘッドの中のバイオフィルムや、道路の中央分離帯で残飯を頼りに生きるアリのような、誰も見ようとしない地味な生態系にある」と説く生態学者。人間と共に生きることを選んだ生物たちを”隣人”として研究し、既存の人と生物との関係性が抱えている矛盾や課題を指摘しています。キーノートに加え、参加者のリサーチへの(非同期の)フィードバックも予定。邦訳書に『家は生態系』『ヒトという種の未来について生物界の法則が教えてくれること』(ともに白揚社)。

小田切 裕倫氏(東北大学 ネイチャーポジティブ発展社会実現拠点)

社会実装部門のリーダーとして、ネイチャーポジティブに向かう社会全体の中で、厄介者との関係をどう構造的に捉え直す必要があるかを、マクロな視点から提示いただきます。

千々岩 哲氏(株式会社地域環境計画)

全国7拠点で自然環境調査・生物多様性保全を手がける環境コンサルタントの立場から、外来種と向き合う現場の実態と、日々の対応で直面している課題を共有いただきます。

福井亘氏(京都府立大学大学院)

都市鳥(ハト、ムクドリ、カラスなど)とランドスケープの関係を研究。10/10のフィールドワークではレクチャーだけでなく、参加者とともに京都市内の都市鳥スポットを巡り、なぜそこに集まるのかを景観との関係から分析します。

② 視点を問い直す(「害」というラベルがどこから来たのかを多角的に見る)

大小島 真木氏(アーティスト)

自然と人の関係をリサーチし、作品作りを行っており、昨年の愛知トリエンナーレでは「ニセアカシア」を題材にリサーチ・作品化。植民地主義的な背景、土着の風土、産業、国際比較まで含む多角的なリサーチの事例やプロセスを共有いただき、参加者が厄介者と向き合う際の視点を学びます。

③ 実践を知る(排除に頼らない付き合い方の現場知を学ぶ)

岡部 美楠子氏(8thCAL)

害虫駆除会社シェル商事の代表を務める一方、建築・都市の”見えないリスク”を設計段階から扱う8thCALを設立し、駆除に頼らない環境管理の実装に取り組まれています。主催する「害虫展」は、”害虫”という人間が貼ったラベルを起点に、その美しさや生態系での役割にあらためて光を当てるアート公募展。駆除する側にいながら、その関係を問い直す活動も続けている方です。プログラムには参加者としても参加予定です。

小川 大暉氏(土とデジタル/罠ブラザーズ)

猟師と都市生活者をつなぐ「罠のオーナーになる」体験のプロジェクトデザインを担当するなど、野生(土)と都市(デジタル)の接点をデザインしている背景や取り組みについてお聞きします。彼自身がハンターであり、エンジニアであるというなかで、どのように都市と野生に向き合っているのかお聞きします。

太田陽介氏・鷲田悟志氏(植彌加藤造園)

京都・東本願寺の名勝庭園「渉成園」で、殺虫剤や除草剤に頼らない庭園管理を実践されています。かつて茶室周辺の椿にチャドクガ(毒毛虫)が大量発生した際、薬剤散布では2週間で元に戻ってしまう悪循環に直面したそうです。原因を探ると、人間の都合で本来より日当たりの良い場所に椿を植えすぎていたことが判明し、剪定と適正な植栽に戻すことで、5年かけて大量発生を収束させました。今回は、「駆除する」のではなく、なぜそこに厄介者が集まるのかという構造を読み解き、庭師の”手入れ”という行為そのものを更新し続けてきた実践についてお聞きします。

杉本 一詩氏(米農家)

静岡県焼津市で家業の米農家を継いで約30年、農薬も化学肥料も、外部の有機肥料も使わない栽培を貫き、雑草をあえて一部残して虫の棲み家にすることで、益虫や生き物たちの力を借りながら田んぼを育ててきました。近年大発生しているジャンボタニシに対しても、薬剤に頼らない方法を試行錯誤する中で、水位を苗の先端が浸からないギリギリまで下げ、苗を諦めさせて雑草を食べてもらうという工夫にたどり着き、”害”を”益”に変えてきました。今回は、そうした厄介者を含む生き物たちとの、駆除に頼らない付き合い方についてお聞きします。

④ 関わり方をデザインする(学びを「創造的な介入」につなげる)

藤井 直敬氏(デジタルハリウッド大学学長/脳科学・知覚工学)

元は眼科医で、その後理化学研究所で社会的脳機能の研究に取り組んでこられました。ヘッドマウントディスプレイを通じて、過去に撮影した映像をリアルタイム映像とひそかに入れ替え、被験者に「今、目の前で起きていること」だと体感させる”代替現実(SR)”というシステムを開発し、この技術を誰でも体験できる形にしたのが、2014年に創業したダンボール製のVRビューア「ハコスコ」です。人間の知覚そのものをどう書き換えれば、現実の捉え方や関係性が変わるのかを、一貫して探究してこられました。今回は、厄介者を変えるのではなく人間側の知覚をハックするという発想の転換に繋げるべく、藤井さんの研究や事例を共有いただきます。

Playfool(ダニエル・コッペン氏・マルヤマサキ氏によるアート・デザインユニット)

「遊び」を媒介に、人とテクノロジーの関係に介入する作品を手がけています。代表作のひとつ「a (re)imitation of life」は、AI(LLM)を人工の”亀”の身体に搭載し、人間中心ではない知性のあり方を探る展示です。かつて機械知能が自然界からインスピレーションを得ていた時代を振り返りながら、AIの設計そのものを人間中心から脱却させようとする試みです。過去には、コウモリの反響定位(エコーロケーション)の感覚を体感できる運動会の装置も制作しています。今回は、人間や動物だけでなく機械の”知覚”までも遊びに変えてしまうという、体験デザインの視点についてお聞きします。

3. どんな宿題があるの?

DAY1,2,4,6,7,8は基本的にレクチャーで宿題はありません。

最初の課題は、DAY5(Day3のフィールドワークの後)に「自分がどの厄介者を追いかけるか」とその理由を発表すること。ディスカッションには福井氏にも参加いただきます。

それ以降は各自のペースで進行していただきます。最終日にプレゼンいただきますが、内容については指定や強制はありません。デスクトップリサーチと考察だけで終える方もいるかもしれませんし、プロトタイピングをする方もいるかもしれません(その場合はFabCafe Kyotoの設備もお使いいただけます)

4. どんな人たちが参加するの?

現時点で申し込まれている方は、アーティスト、大学教員、学生、UXデザイナー、環境をテーマに研究する社会人研究者、庭師など、業種・専門性はかなり幅があります。この分野の専門家である必要はありません。むしろ専門家だけになってしまうと、発想が広がりにくくなるので、異なる領域の人が入ることで別の視点やコラボレーションが生まれることを期待しています。

こんな方におすすめ

  • 外来種・害獣対策の”次の一手”を探している、開発・インフラ・行政の現場の方
  • 「害についての苦情」と「駆除によるイメージダウン」の板挟みで悩む、商業施設・住宅・鉄道事業の方
  • デザインの力で社会課題に介入したい、あるいは探究的なリサーチの場をつくりたい方
  • ネイチャーポジティブ/サーキュラーエコノミー領域で、ボトムアップの実験を探している方

これまでにいただいた質問

  1. 都市に住んでいない、自然側に近い立場なのですが、内容は都市生活者の課題解決が中心になりますか?
    いいえ、むしろ逆です。プログラムの狙いは「都市生活者にとって都合の良い解決策」を探すことではなく、そもそも「害」というラベル付け自体を、人間側の都合として問い直すことに主眼があります。
  2. 参加者同士で議論する機会はありますか?
    Day3(京都でのリアル開催・フィールドワーク)と、Day5の厄介者発表の回が主な議論の場になります。加えてDiscordでも随時やり取りができます。
  3. 同じ会社から複数人で参加したり、同じ厄介者を選んだりしても良いですか?
    どちらも問題ありません。同じ対象がかぶること自体、むしろ「簡単な正解」に寄らないという意味で歓迎されています。同じ会社から複数名やチームでの参加を検討したい場合は、事前に運営に相談を。
  4. リサーチの成果に特許や権利は関係しますか?
    参加者本人に帰属します。ワークショップの同意書で確認します。
  5. 成果物はどう使われますか?論文に使っても良いですか?
    レクチャー内容、ディスカッション、各自が選んだ厄介者とその理由、最終プレゼンとフィードバックをまとめた簡易レポートを作成し、参加者は共同研究者として名前が掲載されます(希望しない場合は除外可)。論文等での引用・使用も問題ありません。
  6. 英語に自信がないのですが大丈夫ですか?
    ロブ・ダン氏のセッションは、当日ネイティブスタッフによる逐次通訳が入ります。加えてアーカイブ動画と日本語のレポート共有、Discordでの質問フォローもあります。

最後に

参加者一人ひとりが選んだ厄介者と、そのリサーチプロセスは、最後に簡易的なレポートとしてまとめる予定です(2027年前半刊行予定)。参加者は共同研究者として名前が掲載されます(希望しない場合は除外可)。今回だけでなく、いろんなつながりがこの先も続いていくと良いなと考えています。

  • 一次募集締切:2026年7月31日(金)

改めて、プログラム概要・チケット概要などを確認されたい方はイベントページをご覧ください。

お申し込みはこちらから

プログラム概要・お申し込み

開催日
DAY1:2026年9月10日(木)17:00-18:30
DAY2:2026年9月29日(火)20:00-21:30
DAY3:2026年10月10日(土)15:00-20:30
DAY4:2026年10月24日(土)10:00-11:30
DAY5:2026年11月5日(木)20:00-22:00
DAY6:2026年11月12日(木)20:00-21:30
DAY7:2026年11月24日(火)20:00-21:30
DAY8:2026年12月9日(水)20:00-21:30
DAY9:2026年1月30日(土)14:00-18:00

会場
Zoom(Day3, 9はFabCafe Kyotoで開催)
※ 参加者には動画アーカイブの配布あり(一般配信は当日の内容によって判断)

参加費
一般:¥48,000(税込)
Under 30:¥20,000(税込)

主催
SPCS(株式会社ロフトワーク)

協力
東北大学 ネイチャーポジティブ発展社会実現拠点

浦野 奈美

Author浦野 奈美(SPCSオーガナイザー)

大学卒業後ロフトワークに入社。渋谷オフィスにてビジネスイベントの企画運営や日本企業と海外大学の産学連携のコミュニティ運営を担当。2020年にはFabCafe Kyotoのレジデンスプログラム「COUNTERPOINT」の立ち上げと運営に従事。また、FabCafeのグローバルネットワークの活動の言語化や他拠点連携の土壌醸成にも奔走中。2022年からは、自然のアンコントローラビリティを探究するコミュニティ「SPCS」の立ち上げと企画運営を担当。大学で学んだ社会保障やデンマークのフォルケホイスコーレ、イスラエルのキブツでの生活、そして、かつて料理家の森本桃世さんと共催していた発酵部活などが原体験となって、場の中にカオスをつくることに興味がある。

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