Dcraft デザイン経営リーダーズゼミ PROJECT

ビジョンと経営と社会の接続をデザインする
- Dcraft デザイン経営リーダーズゼミ

こんにちは、Dcraft デザイン経営リーダーズゼミ 事務局の飯澤絹子です。

これからの時代を生き抜くために、経営にデザインの視点をー。
Dcraftは、30社の中小企業が、次世代のビジネスを牽引するリーダーとなることを目指し、経験豊富なクリエイティブディレクターや経営者を講師に招き、デザインを活用した経営手法=デザイン経営の実践を支援する7ヶ月間のプログラムです。
全4回行われる導入支援プログラムのうち、今回は山田遊氏を講師に招き開催した、導入支援プログラムの第4回「ビジョンと経営と社会の接続をデザインする」を紹介します。

第4回の講師

山田遊氏(株式会社メソッド 代表取締役)
南青山のIDÉE SHOPのバイヤーを経て、2007年、method(メソッド)を立ち上げ、フリーランスのバイヤーとして活動を始める。現在、株式会社メソッド代表取締役。2014年「デザインとセンスで売れる ショップ成功のメソッド」誠文堂新光社より発売。主な仕事に、国立新美術館ミュージアムショップ「スーベニアフロムトーキョー」、「21_21 DESIGN SIGHT SHOP」、「GOOD DESIGN STORE TOKYO by NOHARA」、「made in ピエール・エルメ」、「燕三条 工場の祭典」などがある。

講義編 【ビジョンと経営と社会の接続をデザインする】

企業と社会を接続するためにデザインの力を活用する

――クール3までの講義を通して、各企業が自社らしさや、自社の提供価値について考えてきました。クール4では、自社の提供価値を社会にどう届けるかを考えていくのですが、各企業のゴールイメージについてお伺いできますか。

山田遊氏(以下、山田) 目指すべきは、企業が製品やサービスを通じて提供する価値と顧客のニーズが合致している状態です。そもそも、経営とは、社会と繋がり続けている行為のはずなのですが、売上をはじめとする、多くの経営課題が目の前ある中で、多くは社会に発信する必要が生まれた時にはじめて「自分たちがやってきたことを世の中に広めるにはどうやってわかってもらおう」と考えだします。
ここでは、単純なPRとしての社会への情報発信にとどまらず、自社の提供価値そのものを、社会にどう届けていけるか、そのために、デザインをどのように活用できるかをお話できればと思います。

定量的な情報だけでは、顧客ニーズが読み解けない時代

――企業の提供価値と顧客のニーズが合致している状態を目指すために、どのようなアプローチが必要だと思いますか?

山田 企業の提供価値と顧客のニーズが合致している状態とはつまり、これからの時代に生き残るビジネスモデルがあり、売上にも繋がっている状態です。
現代では、売上額や顧客数など、定量的な情報だけでは顧客のニーズを測れなくなってきています。大衆受けではなく、ニーズがニッチ化する現代において、顧客がなにに、なぜ共感しているのか、といった定性的な情報を分析し、掛け合わせて考えなければ、突破口が非常に見えづらい世の中になってしまっています。
今後は顧客から企業のあり方までが問われる時代であり、お金を儲けたいという一企業の欲求だけで生き残れない。そういう企業は必要とされないだろうなと思います。

「もの」以外も複合的にとらえる必要がある

――企業が顧客ニーズを満たせている状態の一つのわかりやすい指標としては、やはり「売上」かと思いますが、そこにデザインが寄与できるポイントはありそうですか?

山田 一般的に、お店にある3割の商品が売り上げの9割を占めると言われます。要は7割は売れないということです。必要な売上を確保するためには、売り場がどこにあるか、お客さんが誰であるかとか、そもそも、商品を作る前に把握しておくべき情報が数多くあります。
残念ながら、その「もの」単体が良ければ売れるわけではありません。物が売れるというのは演劇や映画に近いと思っていて、見せ方から、パッケージ、ストーリー、PR、説明してくれる人の話し方まで、細かい要素が絡み合い、その小さなことの積み重ねで売れています。
「もの」が売れているということに対して、そこにあるたくさんの要素を如何に細かく見ていって、どう突き詰めていくか。そして、それをデザインの力で磨き上げるかが「売上」をあげること=顧客のニーズを満たすことだと思います。

ストーリーは誰もが持っている

――さきほどのお話の中で、デザインが寄与できる要素として「ストーリー」がありましたが、なぜそれが必要なのか、そして、どのようにつむいでいけば良いのか山田さんの視点からアドバイスをいただけますか。

山田 ストーリーとは、自社・ブランドの根っことなる”筋のよい物語”のことです。
これに消費者が共感してくれることによって、お互いの手がつなげるようになります。経営の視点においては、企業らしさやビジョンもとても大切ですが、顧客に届ける最終的なアウトプットは、対外的に伝わる形に編集されたストーリーになります。筋のよい物語はみなさんの中にあります。歴史的背景や発祥・創業、伝統、風土、それらにまつわる関連情報などです。
独自性があって、共感が得られるストーリーであることが必要です。

ワーク編 【新しい事業を組み立てて、ストーリーのあるプレスリリースを書いてみる】

これまで行ってきたことのまとめとして、企業と社会の接続のデザインに挑戦します。
クール1〜3を通じて更新された自社のビジョンをもとに、新しい事業として取り組みたいこと、解決したい社会課題を考え合せ、「デザインチャレンジ」を設定しました。各事業者のデザインチャレンジは、新規「事業」に限らず、製品・サービス、場のデザイン、あるいは事業部の刷新と様々なものが出されました。
そして、これらのデザインチャレンジを世の中に伝えるために、「プレスリリース」の形にまとめました。

新しい価値を持った製品やサービスを顧客に届けるためには、どのように価値を届けていくか、コミュニケーションの設計が必要です。
自社のビジョンを伝え、共感を生むためには、デザイナーとともに作り、売り、価値をつくる一連の流れ全てをデザインする必要があります。新しい製品やサービスを世の中に出していくことで、企業のビジョンに対する共感の輪を広げていきます。
事業に携わるステークホルダーをどのように巻き込んで進めていけばいいのかを考えていきましょう。

プレスリリースを出す意味とは

プレスリリースは、多くの人に新しいアクションを知ってもらうために作成・発信するものです。今後、来るべき新しい事業の発表のために自分でプレスリリースを書けるようになることは、自分たちは何者であるか、何をやっているのかをA4数枚でコンパクトにまとめることでもあります。プレスリリースを書く際は見ている人にわかりやすい文章で伝えることも必要になってきます。そういった意味でも、良いトレーニングになるでしょう。

プレスリリースにまとめるポイント

クール3までで更新したビジョンをもとに「会社概要」から先に記入する
自分たちが社会からどう認識されたいのかを意識して一定期間は継続して同じ内容を使い続けられるようなものにしましょう。

イメージが瞬間的に伝わる画像を用意する
メインビジュアルとなる画像を用意します。これはSNSなどでプレスリリースの内容がシェアされた際に、タイトルとメインビジュアルのみが投稿に現れることが一般的だからです。明確さとアイキャッチになることを意識しましょう。

伝えることを項目で洗い出し、必要に応じて文章で補強していく
5W1Hが正確に、明確に伝わるように意識して書きましょう。

プレスリリースの基本フォーマット

5W1Hを正確かつ明快に記載しましょう

プレスリリースのNG項目

プレスリリースを配布するには

プレスリリス完成例

まとめ

今回は、山田氏の講義とワークを通じて、クール1〜3で更新してきたビジョンをプレスリリースにまとめ、顧客に対するニーズを企業がどのように満たしていくのかという観点から、企業のビジョンと提供したい価値、顧客とニーズをつなぐ部分のデザインを制作していきました。
山田氏からのフィードバックでは、文章の言い回しが細やかに変化していきました。伝わる伝え方をするためには、繊細かつ綿密な表出の積み重ねが必要であると体感しました。

導入支援プログラムのレポートは今回が最終回です。
続いて、参加企業は各社がそれぞれのゴールに向かって課題に取り組むハンズオン支援プログラムを行っていきます。
各企業はどのような変化を遂げていくのでしょうか。
ハンズオン支援プログラムのレポートでは、プログラムを終えた感想を取材予定です。
楽しみにお待ちください!

飯澤 絹子

Author飯澤 絹子(クリエイティブディレクター)

社会福祉士・精神保健福祉士を取得し、地域活動に関する研究にてシステムデザイン・マネジメント学科修士課程修了。LITALICOジュニアで発達や特性に合わせた学習やコミュニケーションの指導を行った後、仕組みを作ることによって人や組織の持つ魅力が世の中に花開くことに関わりたく、ロフトワークに入社。想像を超える未来をつくること、能力を最大限発揮して生きていくこと、を追求し続けた結果、説明しなければ伝わらない経歴を更新中。まずは自分が体現する存在になる、をモットーに、関わる方々や自分と向き合う日々を送っている。

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