福岡市・株式会社Zero-Ten PROJECT

官民連携で“アートの街・福岡”をつくる
都市型アートイベント「FaN Week 2025」

Outline

市民とアートを繋ぎ、周遊を生み出すコミュニケーションをデザイン

福岡市は、アートによる豊かな都市づくりを推進しています。市民の日常にアートを取り入れウェルビーイングを向上させるとともに、アートスタートアップとして次世代を担う若手作家の支援や発表の場を創出。さらに、街中の商業施設などへ展示を広げ、官民が連携して「アートの街」としてのブランドの確立することを目指しています。

そのような背景の中、都市型アートイベント「FaN Week 2025」では、福岡市としてアートプロジェクトを実施していることを対外的に伝えていくこと、そしてアートにすでに関心のある層を超え、一般市民への認知度向上と積極的な参加を促進することが求められていました。

FaN Week 2025

2025年9月13日(土)〜9月28日(日)の16日間、福岡市の博多・天神エリアを舞台に、アートを身近に感じ、アーティストの作品発表の場を生み出すためのアートプロジェクト「FaN Week 2025」が開催されました。

福岡市が推進する「Fukuoka Art Next」の一環としてスタートし、4年目を迎えたFaN Week 2025は 「交流の地層、創造の庭」というコンセプトのもとで展開されました。これは、アジアとの交易で培われた歴史という「地層」の上に、各会場を個性豊かな「庭」に見立て、そこにアートの種をまいて福岡独自の花を咲かせるという願いが込められたものです。また、「街をスピンするウサギ」をテーマに、メイン会場の一つであるONE FUKUOKA BLDG.に設置された大型インスタレーションが、街中の様々な会場と共鳴し、新たな創造性を引き出す姿を象徴的に表現しました。期間中、多様な表現と熱気に満ちたアート体験が展開され、多くの市民や観光客を魅了。全体の合計来場者数は全体の合計来場者数は 41,516名にのぼるなど、多くの来場者を集めました。

ロフトワークは、株式会社Zero-Tenとともに企画・制作ディレクションを担当。これまで全国各地で実践してきた芸術祭の企画・運営ナレッジを活かし、単なるイベントの枠を超え、街全体を回遊させる仕組みづくりによるエリア価値の向上を目指しました。プロジェクトマネジメントの核として、Webサイト、デジタルマップ、ポスター、PR動画、映像といった多様なタッチポイントを統合。広報から事後の公式記録集までを一貫してディレクションし、視覚と情報の両面からプロジェクトを支える基盤を構築しました。この一連のデザインは、来街者の周遊を促し、街の賑わいを可視化するだけでなく、自治体やパートナー企業が「アートの街・福岡」の共感の輪を広げ続けるための、持続可能なコミュニケーション基盤となりました。

ONE FUKUOKA BLDG.に展示された、牛島智子氏による「くちなしパンを食み スピンするウサギ」。ウサギが街の様々な創造の“庭”を駆け回り、異なる作品や場所と共鳴して新たな色彩を放つことを表現。
福岡市美術館で行われた企画展「コレクターズⅣ ―トリガーと鏡―」。遠山正道氏と吉田浩一郎氏の現代美術コレクションを展示。ビジネスパーソンという共通点を持ちながらも性格の異なる2人のコレクションを同時に展示することで、来場者の心にも「トリガー」を引き、「鏡」のように心模様を映し出すような体験を提供
会場Artist Cafe Fukuokaにて展示された、ヤオ・ジョンハン氏による「特別展示 光電獣 エレクトロニック・モンスターズ」
メイン会場の一つとして位置付けられた、福岡アジア美術館では、アジア美術に焦点を当てた2つ展覧会を開催

Communication Design

コミュニケーションデザイン

赤のフラッグをFaN Weekのシンボルとして規定し、ポスター、リーフレット、会場のサイン看板、VIP向けインビテーションなどでデザインを統一。イベント全体の洗練されたブランドイメージを打ち出しました。また、イベントの認知向上や市民の回遊を促すために、デジタルとオフラインの両面で一貫したコミュニケーションを設計。デジタルでの情報へのアクセスのしやすさと、オフラインでの視覚的な統一感やナビゲーションを連動させることで、市民や観光客が街に広がるアートと出会いやすい設計を目指しました。

Movie

制作されたプロモーションムービーは、街中での放映と連動して、SNSへの投稿や動画広告としても配信。デジタルとオフラインの両面でプロモーションが行われました。

「FaN Week 2025」のテーマである「街をスピンするウサギ」の世界観を伝えるプロモーションムービー

集客力の高い天神エリアや博多エリアの商業施設などに設置されている大型モニターでプロモーションムービーを投影

リーフレット/パンフレット

制作した広報ツール(一部)

リーフレット

リーフレット

チラシ

Webサイト

サイトの顔となるファーストビューでは、象徴的な赤のフラッグで期待感を醸成。複雑かつ多岐にわたるイベント情報を、カテゴリ分類や絞り込み機能によって整理し、ユーザーが目的の情報へ直感的にたどり着ける情報設計を実現しました。さらに、マルチデバイス対応のレスポンシブ設計に加え、会期中の頻繁な情報更新にも柔軟かつ迅速に対応できる運用性の高いシステムを構築し、利便性と発信力を両立させています。

「FaN Week 2025」Webサイト

https://fukuoka-art-next.jp/fanweek2025/

デジタルマップ

オンラインとオフラインの境界をなくし、街全体を一つの会場として機能させるためデジタルマップを制作。各会場に設置した共通のデザインサインをデジタルマップ上にも同一のシンボルとして可視化し、メイン会場から周辺のギャラリーやパートナーイベントへのスムーズな誘導を実現しました。

デジタルマッププラットフォーム「Stroly」を用いたマップ

有識者との連携による「アートの街・福岡」の深化

福岡市は、アートによる街づくりを加速させるため、国内外で活躍するアーティストやギャラリー、そして戦略を練るキュレーターや FaNパートナー企業との連携を強化しています。

「FaN Week 2025」では、市内に点在する各会場に入場可能なインビテーションを展開し、市内に点在する各会場への周遊を促しました。また、会期終了後には、展示風景や作品解説を一冊に凝縮した公式記録集(OFFICIAL BOOK)を制作。これは単なる記録に留まらず、福岡市が推進するプロジェクトへの共感の輪を広げ、次なる共創を生むためのツールとして活用されています。

インビテーション
「FaN Week 2025」公式記録集

記録集・インビテーション 撮影:大槻 智央

Approach

アートを身近に。親子でめぐるアートプログラム

こどもたちは、ワークシートとチェキを持ってアートを鑑賞した

市民の皆さんに単なる作品の鑑賞にとどまらず、アートをより身近なものに感じてもらう機会として、FaN Weekとして初の試みとなる市民(親子)向けのツアープログラムを企画しました。ナビゲーターと一緒にワンビルと福岡市美術館の2会場を巡り、展示作品の魅力や制作の背景について学ぶアートツアーを実施。プログラム後半では、アート鑑賞を通じて、子どもたちが気に入った作品とその理由をまとめ「自分だけの展覧会(コレクション)」を考えるワークショップを行いました。

子どもたちは自由な発想で作品の魅力を語り、一緒に参加した大人たちにとっても新たな視点でアートを考えるきっかけとなりました。単なる作品鑑賞にとどまらず、自分なりの解釈を加えることでアートをより身近に感じられるプログラムとして実施されました。

Credit

基本情報

  • クライアント:株式会社Zero-Ten、福岡市
  • プロジェクト期間:2025年5月〜2026年1月(FaN Week 2025会期:2025年9月13日〜9月28日)

体制

  • 株式会社ロフトワーク
    • プロジェクトマネジメント:笹島 啓久
    • クリエイティブディレクション:許 孟慈
    • プロデュース:吉江 美月
  • 制作パートナー
    • アートディレクション・グラフィックデザイン:大槻 智央(合同会社 ミャク)
    • 動画制作:武居 泰平
    • 写真:中村 勇介
    • 記録集編集:肥髙 茉実
    • イラストレーション:icco
    • Webデザイン・開発:株式会社 スタンス
    • インビテーション印刷:有限会社 修美社
    • 印刷:ダイヤモンド秀巧社印刷株式会社

執筆・編集: 横山 暁子(loftwork.com編集部)

Member

笹島 啓久

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

許 孟慈

ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

加藤 あん

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター / なはれ

Profile

吉江 美月

株式会社ロフトワーク
プロデューサー

Profile

上ノ薗 正人

株式会社ロフトワーク
京都ブランチ共同事業責任者

Profile

メンバーズボイス

“福岡市のアートイベント「FaN Week」にて、プロジェクトマネージャーとして多岐にわたる制作物の進行・品質管理を担いました。「なぜこの事業があるのか」という根本的な問いから「どう届けるか」という表現レベルまで、福岡市・Zero-Tenの皆さまと議論を重ねながら一貫した設計を目指しました。マップやパンフレットへの「見やすい」という参加者の声は、情報設計の質がユーザー体験に直結した手応えでした。アートツアーに参加したご家族の対話を通じ、日常とアートをつなぐきっかけを少しでも届けられたと感じています。 ”

ロフトワーク クリエイティブディレクター 笹島 啓久

“本プロジェクトでは、イラスト制作を含む紙媒体のディレクションを担当しました。台湾で街全体を美術館にするプロジェクト『Very Fun Park』に携わった経験から、アートを日常の「隙間」に滑り込ませる感覚と「生活者と作品の距離感」を、博多・天神で活かしたいと思っていました。台湾で学んだ都市の瞬発力とは異なり、福岡では歴史の厚みと行政・民間の近さが制作プロセスそのものを街の出来事に変えていました。行政・美術館・ギャラリー・アーティスト・キュレーターまで多様なステークホルダーの視点を束ねながら、市民の日常とアートが自然につながる都市を信じて、コミュニケーションデザインを組み立てました。”

ロフトワーク クリエイティブディレクター 許 孟慈