「.KNOTs」産学共創プログラムの設計と自走できる運営スキームの構築
Outline
企業がAPUと「まず一歩」を踏み出せる——産学連携のエントリープログラム「.KNOTs」
「.KNOTs(ドットノッツ)」は、学生×企業×地域が協働して社会課題に挑む3ヶ月間の共創プログラムです。
立命館アジア太平洋大学(APU)は2025年度、文部科学省が推進する「大学の国際化によるソーシャルインパクト創出支援事業」の採択を受け、世界100ヵ国以上から集まる学生と九州の企業・地域をつなぐ産学連携プログラムの構築に着手しました。
しかし、同事業採択後、ではここから何をどう進めていくのかについては、まだスムーズには歩みを進められずにいました。また、ソーシャルインパクトといっても、いきなり大型の企業等との共同プロジェクトや寄付金獲得にはハードルが高く、いかにそのハードルを低くして企業との接点を築き、産学両者にとってお互いにwin-winな関係を築けるか、そして、その接点を限られた職員のリソースの中でいかに育んでいけるかといった、仕組みづくりも必要でした。
ロフトワークはこの課題に2つのフェーズで向き合いました。Ph1では6年間のロードマップを描き、学内外のステークホルダーが同じ未来を共有できる「共通言語」を言語化しました。Ph2では、企業が参加しやすい産学連携のエントリープログラム「.KNOTs」の具体設計と、教職員・学生スタッフが主役となって動かせる運営スキームの構築を担いました。
Output
6年間の活動指針となるロードマップ(Phase 1)
ロジックモデルの手法を用いたワークショップを設計・実施し、2024年から2029年の補助金期間を見据えたバックキャスティング型のロードマップを策定しました。単なるイベントの羅列ではなく、「APUを結節点とした課題解決コミュニティからLife Long Learnerを輩出し、その人のローカルをちょっと豊かにする」という社会インパクトへのマイルストーンを設定しています。
2025年3月には福岡天神エリアでお披露目イベントを開催し、九州の企業・団体に向けてAPUの描く未来を発信しました。

企業と学生がともに挑む3ヶ月の共創プログラム「.KNOTs」の設計(Phase 2)
企業が参加しやすい産学連携のエントリーとして「.KNOTs」を設計しました。3ヶ月間のプログラムは「Unpack(ほどく)」「Connect(むすぶ)」「Open(ひらく)」という<からまった課題をほどき、それをむすび直し、学内外にひらく>独自の共創プロセスで構成され、企業が持ち込む「正解のない問い」にAPUの多国籍学生チームがともに向き合います。
2026年のプログラムは、夏・冬の年2回実施。Pitch Day・キックオフ・中間報告会・最終発表会・振り返りという流れで進行します。
成果物として参加を検討する企業向けの説明資料「.KNOTs企画概要資料」(プログラム内容・参加資格・スケジュール・体制図)、参加学生・企業向けのプログラムのマインドセットを伝えるための資料「.KNOTs Note」(プロジェクトフロー・各フェーズのTips・ワークシート)を設計・制作しました。

教職員と学生スタッフが自走できる「運営スキーム」(Phase 2)
新しいプログラムを4月から実装していけるよう、企業選定の基準から学生募集、当日進行、振り返りまでを網羅した「運営スキーム」を作成しました。事務局・PM・学生スタッフの3層体制による組織設計を定義し、4月以降の新メンバーや学生が主体となってプログラムを運用できる仕組みを整えています。

Approach
属人的な運営を「型」に変える——プログラムが担当者に依存しないための標準化
産学連携の取組みを継続的に発展させていくためには、個人の経験やネットワークに依存するのではなく、組織として再現可能な仕組みとして定着させていくことが重要です。APUにおいても、学内の多様な教職員が参画しながら継続的に運営できるモデルの構築に取り組みました。
ロフトワークが着目したのは「意図を引き継ぐ型化」です。
APUにはすでに.KNOTs以外にも様々な社会連携プログラムが実施されており、全体の中で.KNOTsがどのような役割を持つプログラムとしてリリースするのかを整理することから始めました。
企業からの問い合わせ対応、.KNOTsへの申込、3ヶ月間のプログラムフローといった一連の流れのイメージを、APUの実情と照らし合わせながら、Miroを使った対話を重ねて設計を進めました。
また、.KNOTsの世界観を伝えるプログラムコピーも策定。重視したのは、手順を網羅した具体的なマニュアルではなく、新しいメンバーや学生スタッフが「考えながらアレンジして使える」資料にすることでした。
今回の目標は、運営の伴走支援ではなく、APU事務局が自走できる形をつくることでした。だからこそ具体的な操作手順よりも、.KNOTsの思想や設計意図を引き継ぐことが、持続可能な運営の鍵だと考えたのです。
「学ぶ側」と「与える側」を解体する設計
産学連携でよく起きる課題に「教育と実利のジレンマ」があります。学生の成長を優先すると企業の満足度が下がり、企業の利益を優先すると学生の成長の機会が限定される。この両者を納得させる共通言語を見つけることが難しいのです。
「.KNOTs」のプログラム設計において、ロフトワークがこだわったのは「問いをまんなかに置くこと」でした。業務上の課題ではなく、正解のない「問い」をテーマに設定することで、企業も学生も対等なパートナーとして向き合える関係性を生み出しています。「この指、とまれ。」という言葉が象徴するように、役割ではなく好奇心で人が集まる場の論理を設計に組み込みました。
2029年から逆算し、6年後も機能する必然を描く
Ph1のロードマップ策定でロフトワークが採用したのは、バックキャスティングの思考です。2029年に「APUを結節点とした課題解決コミュニティが地域インフラとして機能している状態」をゴールに設定し、そこから現在に向かって必要なマイルストーンを積み上げました。このロードマップは事務局・教員・学生・企業が同じ未来を見据えるための「共通言語」として機能し、「補助金が終わったら終了」という単発思考を打破する指針となっています。

Credit
Phase 1:ロードマップ策定プロジェクト
クライアント 立命館アジア太平洋大学
プロジェクト期間 2025年1月〜3月
- ロフトワーク
- プロジェクトマネジメント 笹島 啓久
- クリエイティブディレクション 村田 菜生
- プロデュース 藤原 里美、榊原 理彩子
- パートナー
- グラフィックデザイン ninnin(小池 裕子・永尾 仁)
- イベント撮影 石岡 大次郎
Phase2:プログラム設計・運営スキーム構築プロジェクト
クライアント 立命館アジア太平洋大学
プロジェクト期間 2026年1月〜3月
- ロフトワーク
- プロジェクトマネジメント 山﨑 萌果
- クリエイティブディレクション 越本 春香、池原 瑠花
- プロデュース 藤原 里美、仲村 友樹
- パートナー
- コピーライティング 福永 あずさ
- 資料デザイン 瀬古 奈美
Member
メンバーズボイス
“今回の支援を通じて、大学が目指す社会連携によるソーシャルインパクト創出に向けた一つのプロセスを整理し、「.KNOTs」という具体的なプログラムとして形にすることができました。特に、企画立案だけでなく、教職員や学生スタッフが主体となって運営できる仕組みを、多様な実践事例や知見をご共有いただきながら構築できたことは、今後の継続・発展に向けた大きな基盤となっています。また、仕組みの構築に加え、御社が多様なプロジェクトを通じて培ってきた実践知やファシリテーション手法に触れることは、本学職員にとっても大きな学びとなりました。今後は「.KNOTs」の実践を重ねながら、企業・地域・学生との共創の輪を広げていきたいと考えています。”
立命館アジア太平洋大学 岡田 航洋さま







