クラシエホームプロダクツ販売株式会社 PROJECT

顧客コミュニケーションを刷新
戦略・戦術を一気通貫で実装

Outline

理美容サロン、宿泊・温浴施設等に向けたプロフェッショナル向け商品の開発・製造・販売を手掛けるクラシエホームプロダクツ販売株式会社プロフェッショナル事業本部(以下、クラシエプロフェッショナル)。代理店を通じての販売が主軸である同社は、顧客であるサロンや施設に対し、商品や取り組み、事業の想いを伝えられない課題を感じていました。
他方、クラシエホームプロダクツを含むクラシエグループは、2020年にコーポレートスローガンを更新。「夢中になれる明日」というスローガンを各事業の活動に落とし込んでいく必要がありました。
これらの課題を解決するために、プロフェッショナル事業本部としての今後の活動の軸となるコミュニケーション方針を策定しました。

そして、この新たな方針に基づいた活動として、顧客と直接つながる広報チャネルであるWebサイトを刷新。2021年12月にWebサイトのリニューアルが完了し、翌年5月には情報誌『​​にぎわい探究マガジン「アルケバボウ」』を創刊。オンラインだけでなく紙媒体での情報発信もスタートさせました。

BtoBメーカーであるクラシエプロフェッショナルが立てた新たなコミュニケーション方針とは?「手の届く範囲にいて、ふと頼りたくなる存在」という方針の策定後、方針を体現していくためにどのような活動を積み重ねてきたのでしょうか。クラシエホームプロダクツ販売株式会社プロフェッショナルマーケティング部 部長 大谷暁彦さん、課長 細木原幸さん、プロジェクトに並走したロフトワーク プロデューサー藤原舞子、ディレクター 服部木綿子が振り返ります。

執筆:野本 纏花
写真:村上 大輔
企画・編集:横山 暁子(loftwork.com編集部)

Process

Story

話し手

左から

  • クラシエホームプロダクツ販売株式会社 プロフェッショナル事業本部 マーケティング部 部長 大谷暁彦さん
  • クラシエホームプロダクツ販売株式会社 プロフェッショナル事業本部 マーケティング部 課長 細木原幸さん
  • 株式会社ロフトワーク クリエイティブディレクター 服部木綿子
  • 株式会社ロフトワーク シニアプロデューサー 藤原舞子

念願のWebサイトリニューアルに向けて動き出す

―― まずはクラシエプロフェッショナル事業本部について、そして今回のプロジェクトがスタートした背景を教えていただけますか?

クラシエホームプロダクツ 大谷さん(以下、大谷)  クラシエプロフェッショナルは、理美容サロン、宿泊・温浴施設等に向けたプロフェッショナル向け商品の開発・製造・販売を手掛けているBtoBメーカーです。今回、「クラシエプロフェッショナルという事業ブランドを強化したい」「もっとお客様に情報を届けたい」という2つの想いがありプロジェクトをスタートしました。
前者の事業ブランドに関しては、2007年にカネボウから「クラシエ」に社名変更したことから、プロフェッショナル事業本部としても外部とコミュニケーションを図る上で、新たな旗印をつくる必要があると強く感じていました。そして後者に関しては、商品の流通経路が代理店を通じて顧客であるサロンや施設に商品を卸す経路が主軸のため、メーカーの発信する情報が、顧客に届くまでタイムラグがあるといったジレンマがありました。
これらの課題を解決するために、情報発信力の強化が必須と考えていました、とはいえ、Webサイトのリニューアルは簡単に着手できるようなものではないため、きっかけを探っていました。

―― このプロジェクトは2020年からスタートされたそうですが、何がきっかけとなったのでしょうか?

大谷 一番のきっかけは、やはりコロナ禍ですね。それまでは「我々の業界では、Webサイトが刷新されたとしても、見てくれる人は少ないだろう」というのが社内の共通認識だったのですが、コロナ禍に入ってリアルで商談に行けなくなったことから、オンラインで接点を持つのが当たり前の風潮になりましたよね。加えて、ちょうどその頃、「夢中になれる明日」というクラシエグループのスローガンができたこともあり、グループの方針に合わせて我々の事業ブランドを強化していこうという機運が高まったのです。

クラシエホームプロダクツ販売株式会社 プロフェッショナル事業本部 マーケティング部 部長 大谷暁彦さん

―― なるほど。Webサイトのリニューアルが現実味を帯びてきた中で、ロフトワークにお声がけいただいた理由は、何でしたか?

大谷 実は2014年にロフトワークさんのセミナーに足を運んだことがありました。当時、「EC業務に携わっていたため、Web関連の情報を得たい」と思いセミナーを探している時に偶然見つけて。実際に参加してみると、自分たちの会社にはないクリエイティブな発想と積極的なディスカッションがとても刺激的で、感動しました。そのときからずっと「いつかロフトワークさんと仕事をしたい」と思い続けていたので、今回Webサイトのリニューアルが決まったことで、「ようやくご一緒できる機会ができたぞ!」と喜び勇んでご連絡した次第です。

―― そうだったんですね!ありがとうございます。お問い合わせいただいて、ロフトワークからはどんな提案を差し上げたんですか?

ロフトワーク 藤原(以下、藤原) 具体的な目標のひとつとしてWebサイトのリニューアルはあったものの、「新たなコミュニケーション戦略を立てていく上で、何から手をつけていいのかわからない」というお悩みを抱えていらっしゃったんですよね。そこで、「それなら、まずはコミュニケーション方針の策定に向けて、“誰とどうなりたいのか”を考えるリサーチするところから始めませんか?」とご提案させていただきました。

大谷 今回メンバー全員Webサイト構築の経験が無く、コミュニケーション方針がなぜ必要なのか、最初から腑に落ちていたわけではありませんでした。
しかし、事業ブランド強化の旗印としては必須のものと確信し、メンバーと社内幹部に説明を重ね、「Webサイト刷新のために、コミュニケーション方針の策定が必要」という流れをつくることができたのは、すごくよかったと思います。

クラシエプロフェッショナル Webサイト

クラシエクラシプロフェッショナル Webサイト(2021年12月にリニューアル)

冊子「アルケバボウ」が生まれた理由

――リサーチの結果をもとにコミュニケーション方針が決まり、念願のWebサイトリニューアルを成し遂げ、次に、にぎわい探究マガジン「アルケバボウ」の制作に着手されました。この冊子はどのような狙いでつくったのですか?

ロフトワーク 服部(以下、服部) Webサイトは情報発信の場ではありますが、拡散をしなければ見に来る人は限定されます。そこで、新しい層の方々との出会いを広げるために冊子を作ろうと提案しました。つくるプロセスはもちろんのこと、配布するという行為を通じてクラシエプロフェッショナルのみなさんが行動し、策定したコミュニケーション方針を体現しながら、フィジカルなコミュニケーションを積み重ねることが何よりも大事だと考えました。実際に冊子を見せながら、「私たちはこんな想いを持っていて、こんなふうにお付き合いを重ねていきたいと考えているので、ぜひ一度遊びに来てください」と伝えたほうが、コミュニケーションの説得力が増しますよね。

クリエイティブディレクター 服部木綿子

クラシエプロフェッショナル 細木原さん(以下、細木原) たしかに、新しいWebサイトがオープンしたことを、これから私たちがつながりたい人たちにどうやってお知らせすればいいのかわからなかったのは、事実です。とはいえ、その媒介手段として冊子が正しい選択なのか確信が持てず、すぐに「やります」とはお答えできませんでした。実際に完成して初めて、この冊子の必要性を強く感じることができました。具体的な「モノ」になると、行動に移すことができると実感しました。

服部 それはよかったです!新しいターゲットのペルソナに合う方が読んでおもしろいと感じてもらえるものをつくったので、「クラシエプロフェッショナルの考え方って、いいな」と共感してもらえるきっかけになってほしいですね。

にぎわい探究マガジン「アルケバボウ」

コミュニティ、つながりなどの隙間に生まれる「にぎわい」を探究するマガジン。マガジン名の由来は「犬も歩けば棒に当たる」。まちのあちらこちらを歩き回っているうちに、思いがけない幸運に出会うはず…とクラシエプロフェッショナルの制作チーム自らも足を運び、話を聞くことを大切にし、制作のプロセス自体がリサーチ活動でもあります。創刊号の取材先は、小杉湯(東京・高円寺)、LOG(広島・尾道)、YAK KYOTO(京都・西院)など。

「アルケバボウ」を読んでみたい方はこちら。お申し込みの方にお届けいたします。

―― この「アルケバボウ」のタイトルの由縁を教えていただけますか?

大谷 “にぎわい探究マガジン”というテーマが決まった上で、タイトルを何にしようかといろいろ模索している中で、服部さんとの話のときに、「“にぎわい”って、すごく身近にあるものでありながら、探さないとなかなか見つからないものでもありますよね」とヒントをもらって、「犬も歩けば棒に当たる」という言葉が浮かびました。歩き回っていると、ふいにラッキーなことに巡り逢えるかもしれない。だけど、歩かなければ何の経験もできません。そんなふうに積極的に行動していく中で、成功も失敗も取り入れながらアップデートしていこうという想いを込めて、いくつか出した案のひとつとして「アルケバボウ」を入れました。でもまさかこれが選ばれるとは、思っていませんでした。

藤原 もちろんロフトワークからもタイトル案は出していたのですが、決めきれなかったところに、クラシエプロフェッショナルさんの方からいくつものタイトル案を出していただいたんですよね。

細木原 自分たちが腹落ちしていないタイトルを付けても、社内に説明できないと思いました。だからロフトワークさんに「別案を出してください」と言うのではなく、自分たちでも考えた案を出すことで私たちの想いを伝えようと。担当者4人でそれぞれの案を出し合いました。

大谷 出してもらったものをジャッジするのは簡単だけど、一緒に自分たちも考えたり、手を動かすことが重要だと思います。

服部 タイトル案に限らず、常にそういうスタンスで一緒にプロジェクトに取り組んでくださるから、私たちも楽しいんですよ。

クラシエホームプロダクツ販売株式会社 プロフェッショナル事業本部 マーケティング部 課長 細木原幸さん

―― インタビューや取材にも、クラシエプロフェッショナルの皆さんに同席いただいているそうですね?

細木原 コミュニケーション方針策定のプロジェクトから様々な現場に参加しています。当時は、その行為がどうつながっていくのかはっきり分からなかったのですが、今になって振り返るとその重要性が理解できます。外にでて新たな発見や気付きを得ることで、自分たちの強みも見えてくることが分かってきました

服部 それは大事なことですね。常に答えはクラシエさんの中にあるはずで、他者と比較することで強みが理解できて、結果、自信にもつながりますよね。
そして、大谷さんは取材同行だけでなく個人的にサロンを予約して、取材の前日にお店をお客さんとして訪ねていらっしゃいますよね!

大谷 どのような方が取材に応えて下さるのか知りたかったし、そのほうが取材もスムーズに行くかなと思って。
実を言えば、新しいサロンに行くのはハードルが高かったのですが、「これも仕事のため」と意を決して体験を重ねることで、それぞれのサロンの良さが分かってきました。

細木原 こんなふうにたくさんアルケバボウしているから、大谷の髪がどんどん短くなっていくんです(笑)

服部 なかなかそこまでできる方はいないですよ。それにしても、私たちプロジェクトメンバーの中で “アルケバボウする(=にぎわいを探究する)”が動詞としてすっかり定着しましたね(笑)。
実は冊子をつくるプロセスは、クラシエさんにとっては顧客を知る大事なリサーチの機会だと考えていて。顧客の理解を深めることはもちろん、取材を通じて出会ったサロンや施設のみなさんとのネットワークが広がっているのも嬉しいです。

大谷 日頃、我々が対面しているのは主に代理店の方々ですが、この「アルケバボウ」をつくったことで、顧客であるサロンや施設の方々はもちろん、さらには利用客である一般のお客様のことをしっかりと意識できるようになって、本当によかったと思っています。

ロフトワーク シニアプロデューサー 藤原舞子

自発的に動くからこそ得られるものがある

―― 今回のプロセスを通じて、他に何か変化は生まれましたか?

藤原 プロジェクトが進むにつれ、クラシエプロフェッショナルの皆さんから、たくさんの意見が出てくるようになりましたよね。旗印としてのコミュニケーション方針が策定されたことで、プロジェクトメンバーの中で共通の判断基準を持てるようになり、それが土台となってしっかりとアウトプットにつながるようになったというか。これもひとつのプロジェクトの成果ではないかと思っているのですが、いかがですか?

大谷 そうですね。我々にとってロフトワークさんは新しい解決手法を教えてくれる家庭教師。セミナーを受けるだけでは身につかない、実務の中で多くの示唆をいただけるので、うちのメンバーは本当にいい経験をさせてもらっていると思います。

細木原 最初は全部お任せしようという安易な考えもありましたが、プロジェクトを進めていくうちに、こちらが自ら動くことで得られるものがたくさんあると気づかせてもらいました

大谷 たとえば冊子ができたことで、配るという具体的な行動が発生します。この冊子アルケバボウについては、チラシを配るように多くの人に配ってくれとは言っていません。「この人に渡したいな」と思った人にだけ渡してくれればいい。誰に渡すかをちゃんと自分で考えること自体が、何よりも大切だと考えています。

細木原 そうですね。冊子をお渡しするのは基本的に新規のお客様ですが、社内のメンバーには、「既存のお客様でもこれをお渡しすることで関係性が良くなりそうな方には積極的に配ってください」とお伝えしています。最近では、「この冊子を好きそうな人がいるから渡したいので、もらえますか?」と声をかけてくれるメンバーが出てきています。社内でも共感してもらえているようで、うれしいです。他のメンバーに伝えていくのも私たちの大事な役割だと思っています。

大谷 そういえば、リニューアルしたWebサイトを見て、「朝、クラシエプロフェッショナルのWebサイトを見ると、仕事のやる気が出るんです」と言ってくださったお客様がいました。Webサイトにしろ、冊子にしろ、そんなふうにお客様とのコミュニケーションが生まれるきっかけになっていくといいですね。

――では最後に、今後の展開について教えてください。

大谷 これまでやってきたことは、すべて事業ブランド強化のためなので、クラシエプロフェッショナルの“ファンづくり”を目指し、一貫性のあるコミュニケーションを続けていかなければならないと考えています。我々は直接商品を販売するビジネスモデルではないとはいえ、Webサイトのコンテンツを更新したり、冊子の発刊を重ねながら、継続的に顧客との絆作りを続けていきます。すべてが我々にとって新しいチャレンジです。正解が見えているわけではありませんが、トライ&エラーを重ねながらアップデートしていきます。
具体的な次の一手としては、イベントの開催ですね。

服部 来る7月12日(火)、「アルケバボウ」の創刊号をお披露目するクラシエプロフェッショナルさん主催のオンラインイベントを行います。実際に「アルケバボウ」で取材させていただいた方や、街のにぎわいについて研究されている先生などをお招きして、みんなで一緒ににぎわいを探究しながら“アルケバボウする”イベントになっていますので、ぜひみなさん遊びに来てください!

リサーチ〜CMSの選定までロフトワークのWebプロジェクトの特徴・進め方

プロジェクトの全体感をつかみ、戦略と戦術に落とし込むことで、Webプロジェクトの「成功のすがた」を描きます。

ロフトワークのWebプロジェクトの特徴・進め方

Member

大谷 暁彦

大谷 暁彦

クラシエホームプロダクツ販売株式会社
プロフェショナル事業本部マーケティング部 部長

細木原 幸

細木原 幸

クラシエホームプロダクツ販売株式会社
プロフェッショナル事業本部 マーケティング部 課長

藤原 舞子

株式会社ロフトワーク
シニアプロデューサー

Profile

服部 木綿子(もめ)

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

堤 大樹

堤 大樹

株式会社ロフトワーク
シニアディレクター

小野村 香里

株式会社ロフトワーク
テクニカルグループ シニアディレクター

Profile

䂖井 誠

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

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大石 果林

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

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柏木 鉄也

株式会社ロフトワーク
チーフプロデューサー

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