大学広報の「届けたいこと」を共に探し、形にする
広報戦略の起点としての大妻女子大学 受験生サイト
Outline
18歳人口の減少が続くなか、大学の入試環境は大きく変わりつつあります。年内入試で入学する学生が半数を超え、受験生が進学先を決める時期も早まっています。さらに一人あたりの出願校数も減っており、早い段階で「この大学で何を学べるか」が伝わらなければ、受験生の候補に残ることすら難しくなっています。(※1)
1908年創立の大妻女子大学は、6学部18学科・専攻と短期大学部2コースを擁する女子総合大学です。2025年にデータサイエンス学部、2026年に人間共生学部を開設し、いまも学びの領域を広げています。
一方で大学の広報・入試センター(以下、広報チーム)は、2つの課題を抱えていました。入試やオープンキャンパス(以下、OC)の情報が大学本体サイトや学部サイトに分かれ、受験生が必要な情報にたどり着きにくいこと。そして、広がり続ける学びの魅力を、受験生に届く言葉で伝えきれていないことでした。
ロフトワークは、方針策定からコピー、情報設計、デザイン、新規コンテンツの制作、STUDIOでの実装まで一気通貫で担当しました。受験生サイトを、在学生や教員と一緒に「大妻らしさ」を見つけて育てていく広報の起点と位置づけ、2026年4月から7月30日の公開まで約4ヶ月、広報チームとともに取り組みました。
※1 出典: リクルート進学総研「進学センサス2025」
このプロジェクトでやったこと
- 大学本体サイトや学部サイトに分かれていた、入試・学部学科・OCなどの受験生向け情報を一つに。トップページは「OC訴求」と「入試案内」の2モードを時期に応じて切り替え運用を可能とした。
- デザインに入る前に、広報チームとキャッチコピー「“みかた”を増やそう。」を決め、サイト全体を通してこの言葉を制作の判断基準に設計した
- 教員と在学生がまちを歩く新規コンテンツをつくり、大学の公式TikTokアカウント開設につなげた
- ノーコードツールのSTUDIOで構築し、公開後も広報チームが自分たちで更新・発信できる状態で引き渡した
プロジェクト概要
- クライアント:大妻女子大学
- 期間:2026年4月〜7月(7月30日公開)
- 公開URL:https://www.owu-style.otsuma.ac.jp/
Output
トップページ
旧受験生サイトの8割以上がスマートフォンから閲覧されていたことを受け、スマートフォンでの閲覧を前提にデザインしたトップページ。OC訴求(春夏)と入試案内(秋冬)の2つのモードを用意し、広報チームが時期に合わせて切り替えられる
PCではキービジュアル、スマートフォン版の画面、メニューを横に並べた3カラムで表示する
入試・学部学科・OCの情報を一つに

学部・学科ページ(20ページ)

新規コンテンツ「見方が変わるまちあるき」

記事と連動したショート動画を、新たに開設された大学公式TikTokアカウントで公開
Approach
1. 現場を歩き、受験生に届く言葉の手がかりを集める
「大妻といえば○○」と言える言葉がほしい。それが広報チームからの最初の相談でした。ロフトワークは、その言葉を考える前に、大学の現場で手がかりを集めることから始めました。
- 千代田・多摩の両キャンパスのOCに参加。大学や受験生・保護者の様子を観察しながら、在学生スタッフや教員と対話し、リアルな情報を収集しました。
- 首都圏の女子大学5校のサイトを調査。高校生が志望校選びで最も重視する「学べる内容」(44.9%、5年連続1位)を伝えてくれるはずの教員の姿が、どの大学でもあまり前面に出ていないことが確認されました。
- 受験生の1年を「なんとなく探す」「行ってみようかな」「何度も確かめたい」「ここにする」の4段階で整理。トップページのモード切替の実装に繋がりました。
牛山先生の文化人類学は、全然視野になかった分野だったんですが面白くて、卒論のテーマにしようと思っています。ジェンダーばかり見ていたけど、いろんな分野があると気づけたのは良かったです。(社会学科3年生)
入学前には知らなかった学びに出会い、進路を広げていく。OCで聞いたこうした声が、のちのコンセプトにつながりました。
2. 方向性を大学と選び、デザインより先にコピーを書く
集めた手がかりをもとに、受験生サイトの方向性を3案示しました。完成像をより鮮明にするため、方向性検討の段階からコピーライターをアサイン。各案に添えるコピー案を制作しました。
- 「実学」「学びの拡張性」「女子大らしさ」の3案から、広報チームは「学びの拡張性(知らなかった私と出会う)」を選びました。
- ブランドを短期間で言い切ることへの慎重な声もあったため、今回のリニューアルをフェーズ1とし、最初の答えを出したうえで、サイトでの反応を見ながら更新していく進め方としました。
- コピーライターの小林拓水さん(株式会社toishi)と、デザインに入る前にコピー「“みかた”を増やそう。」を制作。ものの見方が増える「見方」と、教員・職員・卒業生・仲間という「味方」の2つの意味を重ねています。
- 以降の情報設計、デザイン、キービジュアル、新規コンテンツなどを制作する上で、立ち返る基準となり、クリエイティブにおける方針を形作りました。

3. 教室を出て、先生と学生が横に並んで学ぶ
受験生が知りたいのは「この大学で何を学べるか」です。そこで、教壇と机という教室の構図を離れ、先生と学生が横に並んでまちを歩きながら一緒に問いを探すコンテンツ「見方が変わるまちあるき」を企画しました。
- 第1回は、徒歩10分以内・2,000円未満の店を約100軒、自ら記録してきたデータサイエンス学部の本田新九郎教授と、データサイエンス学部1期生の2名で市ケ谷を散策しました。
- 同じ目線で街を歩くことで、研究テーマとの接続が生まれる新しい学びのコンテンツとなりました。
- 高校生が「大妻」とTikTokで検索しても公式の発信がない状態だったため、大学は公式アカウントを開設。学生自身が撮影した動画を、記事と連動させて公開しました。

Outcome
公開後は、サイトの外にも変化が表れはじめています。
- コピーの広がり:受験生サイトのコピーとして生まれた「“みかた”を増やそう。」のメッセージは、大学の広報物でも活用する方向に。大学全体のコミュニケーションにも生かされていきます。
- 発信の自走:公開後、TikTokアカウントは学生が運用する形へ。OCの学生スタッフの裏側をおったVlogも投稿され、普段TikTokで情報収集する受験生たちからも多くの反応が寄せられています。
- 数字の変化:公開後2ヶ月(7月30日〜9月30日)を前年同期と比べると、1セッションあたりの閲覧ページ数は1.05から1.80に、自然検索からの流入は約1.7倍に増加しました。
受験生サイトの見直しから始まったこの取り組みは、大妻学院の後期中期計画に掲げられた「教職協働の広報活動」や「中長期的な広報戦略」に着手するきっかけにもなりました。今後は今回出した最初の答えを、大学自身がサイトでの反応を見ながら更新していくことになります。
Comment
小林 拓水(株式会社toishi コピーライター)
印象的だったのは、ある教授の「いまの学生が何に興味を持つのか、知りたいなあ」という一言でした。大妻女子大学は、教授と学生の垣根を越えて問いを探求するコミュニティなのかもしれないと思えたんです。受験生を迎えるための言葉として「みかた(見方/味方)」のダブルミーニングはすぐに浮かびましたが、こだわったのは「みかたを“増やそう”」という部分です。十数年かけて培ってきた受験生の「みかた」を肯定しながら、背中を押す言葉にしたいと考えました。
大妻女子大学 広報・入試センター
「なぜ受験生サイトをリニューアルするのか」という根本から丁寧にヒアリングしていただき、私たちの「なんとなくこうしたい」という感覚が言語化されたことで、課題の本質が見えてきました。軸が定まったことで、タイトなスケジュールでも迷わず進められたと思います。今回のリニューアルは、単に受験生サイトを新しくするだけでなく、本学の情報発信全体を見直すきっかけになりました。大学ホームページ、大学案内、SNSなど、それぞれの媒体にどのような役割を持たせ、どのように情報を届けていくのかを整理して考えることができたので、この考え方を大学ホームページや大学案内にも広げ、「何を、どこで、どのように伝えるのか」を整理しながら、大学全体で一貫した発信を目指していきたいと考えています。
Credit
- クライアント:大妻女子大学 広報・入試センター 広報・募集グループ
- プロジェクトマネジメント/クリエイティブディレクション:齋藤 杏菜(ロフトワーク)
- クリエイティブディレクション:高橋 ナオヤ、渡邊 美友(ロフトワーク)
- プロデュース:松永 篤(ロフトワーク)
- ブランドコピー/新規コンテンツ取材・執筆:小林 拓水(株式会社toishi)
- WEBデザイン・STUDIO実装: 早水 湧亮、吉村 遼、小畑 舞乃(株式会社スタンス)
- キービジュアル撮影:永田 崚、鎌田茉利子
- 新規コンテンツ取材撮影:井上 亮
- イラストレーション:icco
- 取材協力:本田 新九郎 教授(データサイエンス学部)、同学部2年生2名













