学校法人 中央大学 PROJECT

「伝わる」デザインで、大学と企業の良好な関係づくりを促進
中央大学産学官連携プラットフォーム「+C」

Outline

中央大学では、中長期ビジョン「CHUO VISION 2025」における重要項目である「研究力の向上」を達成するため、外部との連携強化や研究資金の獲得に向けた戦略・戦術の強化を急務としていました。そして、その要となる「産学官連携」を促進するため、学内の研究者の研究情報を魅力的に発信する必要がありました。

ロフトワークは、中央大学がもつ研究情報やリソースを産業界や官公庁へ発信し、産学官連携を促すためのオンラインプラットフォーム「+C(プラスシー)」の立ち上げを支援。専門性の高い研究者の魅力を伝えることを意識したデザインとコンテンツ設計によって、お互いがビジョンを共有し、より質の高い連携につなげることを目指しました。

産業界と大学の「いい関係」を目指すというコンセプトを、どのようなユーザーインターフェースへと落とし込んでいったのか。本プロジェクトを担当した、クリエイティブディレクターの東郷がそのポイントを語ります。

企画:岩沢 エリ(株式会社ロフトワーク)
語り手:東郷 りん(株式会社ロフトワーク)
執筆:後閑 裕太朗(loftwork.com編集部)

東郷 りん

Author東郷 りん(クリエイティブディレクター)

金沢出身。金沢美術工芸大学デザイン科卒業後、三菱電機株式会社にデザイナーとして入社。持続可能性に対する会社のビジョン作成などに携わる。より一層クリエイティビティを大切に、不確実性を楽しみながら新たな価値の創出に寄与するため、2019年よりロフトワークへ。サービスデザインやデザインリサーチの案件を担当している。情報を可視化する特技を活かし、社内外でグラフィックレコーダーとしても活動。プライベートでは親子に向けてデザインの考え方やモノの見方を伝えるプロジェクト「デザインのとびら」を企画・運営。お酒(特に日本酒)と工場見学が好き。

Profile

Output & Concept

中央大学産学官連携プラットフォーム「+C」

https://plus-c.chuo-u.ac.jp/

コンセプト

プラットフォーム名は「□+C。ブランクの部分には、連携先のパートナーの方々が当てはまり、そこに「C」をプラスするという意味を込めました。「C」は「中央(Chuo)大学」の「C」であると同時に、Creative、Chance、Challengeなど、産学官連携によって拓かれる、新たな可能性を指します。

また、タグラインである「CO-RESEARCH:REALIZE THE VISION」では、「受発注を超えて、一緒に研究する姿勢(CO-RESEARCH)」「社会実装まで見据える(REALIZE)」「技術だけでなく、その先の未来のビジョンを共有する(THE VISION)」といった姿勢を表現。

プラットフォームでの活動を通じて企業・官公庁と中央大学の研究者が、新たな可能性に向かって「いい関係」を築いていくというメッセージを込めています。

Process

パートナー企業と研究者、2つの視点からユーザー像と「ありたい連携の姿」を定義

上記のコンセプトを「どのように導いたのか」、そして「どのようにデザインに落とし込んだのか」の2点を中心として、プロジェクトの道のりを紹介していきます。

コンセプトを導き出すために最初に取り組んだのが、リサーチと方針策定です。リサーチフェーズでは、産業界側の連携パートナーと学内の研究者、2つの視点から方針を探るべく、それぞれにインタビューを実施。ターゲットユーザー像と、プラットフォームを通じて生み出したい連携のあり方を探りました。

まず、連携パートナーへのインタビューでは、ターゲットとなるユーザー像を探っています。インタビューの内容を整理した結果、「アイデアを探すアントレプレナー」「データ/モノを求める担当者」という対極的なユーザー像が浮かび上がりました。彼らが何を求めているのか、議論を繰り返して見定めました。

次に、学内の研究者へのインタビューでは、生み出したい連携のイメージを言語化。研究者が産学連携の取り組みに期待することは、専門知の需要と供給のマッチングだけでなく、「その先に生み出したい世界観やビジョン」を共有し、新しい可能性を模索すること、という点が明らかになりました。

両者へのインタビューを統合した結果、プラットフォームのターゲットを「アイデアを探すアントレプレナー」に設定。また、サイトの方針として、産業パートナーと大学研究者が委託関係を超え、お互いがビジョンを共有した上で、共通の未来に向かってワクワクできる「いいマッチング」を創出することをゴールに設定しています。こうして定められた方針をもとに、サイト全体のコンセプトが導かれました。

興味を惹き、歩み寄る仕掛けに富んだコンテンツ設計

次に着手したのは、ターゲットとのタッチポイントを生み出し、「いいマッチング」へと誘導するためのコンテンツ設計です。

なかでも、メインのコンテンツである「研究者紹介」では、ユーザーが「この研究者とビジョンを共有したい」と共感できる内容を目指し、研究者自身の原動力やビジョンを提示しています。また、研究内容についてはあえて情報量を絞ることで、社会との接点が際立つように編集しました。

また、記事内には「□+C=? この研究が世の中にもたらす可能性」というコーナーを挿入。研究と関連する業界にどのような価値を生み出しうるのか、研究者自らが提案しています。

これらの工夫によって、初めてサイトを訪れた人にも研究者の研究内容とその特色、インパクトをわかりやすく伝えると同時に、その人的魅力を表現するコンテンツができあがりました。

さらに、Topページには「キーワードで研究者に出会う」というコンテンツを配置。ページをリロードする度に、研究者に関連するランダムな11個のキーワードが提示されます。自社の事業にマッチする研究・技術を探しているが、まだ明確なテーマを決めきれていないユーザーにインスピレーションを与えるトリガーとして、視覚的・直感的にわかりやすいUI/UXデザインに落とし込んでいます。

コンセプトを落とし込んだビジュアルのこだわり

コンテンツ設計・情報設計の次のフェーズとして、新しく誕生するプラットフォームの顔となるビジュアルイメージを設計しました。

ディレクションのテーマは、「産学連携の未来感や伴走者としての温かさ」に設定。カラーバランスは、中大のシンボルカラーである赤と鮮やかなブルーを組み合わせることで未来的でアクティブなイメージを想起させつつ、背景にベースカラーとしてウォームグレーを採用することで、安心感・温もり感をも感じさせる工夫をしています。このテーマのもと制作されたアウトプットをご紹介します。

ファーストビジュアル

Webサイトのファーストビジュアルでは、円と正方形の幾何学モチーフが動きながら重なり合うモーショングラフィックスを採用しました。オブジェクト同士がカチッとハマる動きは、より良い連携のためのマッチングを生み出す、というイメージを体現しています。

イントロダクションブック

出会いの間口を広げるために、Webサイトの掲載記事と同じ内容が掲載された冊子も制作。Webサイトは主に検索から流入する場所であるのに対して、大学側からプッシュ型のコミュニケーションを図る手段として、展示会や打ち合わせなどで活用することを想定しています。

運用マニュアル

プロジェクト終了後、中央大学さん自身でサイトを運営し、コンテンツの品質を担保するために、「記事の作り方」「写真コンテンツの作り方」などのマニュアルも作成しています。

「いい関係」につながる出会いをデザインするには?

本プロジェクトのポイントは、「出会いの数」よりも「出会いの質」を高めることを重要視した点にあります。出会いの「質」向上のために大切にしていたのは、「対象ユーザーを定めてコンテンツを設計すること」「大学側・研究者側からも産学官連携を提案すること」「専門や実績に加え、ビジョンという判断軸を増やすこと」の3点です。

これまで、企業・官公庁と大学という異なる立場の主体が良好な関係を築くために、学会や仲介者などの、リアルで属人的なつながりが活用されてきました。しかし、コミュニケーションの中心がデジタルへと移行した今、その役割をWebサイトが担う必要があります。Webサイトを起点に両者を「いい関係」へ導くためにも、ターゲットと共に目指したいゴールを明確に提示し、コミュニケーションデザインの細部にまで落とし込む必要があるのではないでしょうか。

Voice

中央大学のご担当者さま3名に、プロジェクトを通してのご感想をいただきました。

横澤 亮平

横澤 亮平

学校法人中央大学
研究支援室多摩研究支援課 産学官連携担当、研究広報担当

矢ケ崎 大地

矢ケ崎 大地

学校法人中央大学
研究支援室 経理担当、研究広報担当

馬場 良子

馬場 良子

学校法人中央大学
中央大学研究推進支援本部 URA 研究広報担当(当時)

ーープロジェクト開始当時の課題感と、プロジェクト実施後の変化を教えてください

横澤 当初は、大学内における「研究広報」が、「場当たり的に発信する」という発想に留まっていたことが一番の課題でした。よって、新しい出会いを促進するための魅力的な研究広報を実現するために戦略的な情報発信の仕組みづくりに注力する必要がありました。

馬場 プロジェクト後の大きな変化として、これまで曖昧だった「研究広報」の学内認知度が向上したことが印象的でした。大学関係者を巻き込み、コミュニケーションを取りながら進めていったからこそ、研究広報の立ち位置がはっきりしたのかと思います。

ーー本サイトが立ち上がってからの、学内外からの反応はいかがでしょうか?

横澤 学内からはとても好感触を得ています。学内の研究情報をまとめる機能的な側面もありますが、ビジュアルの印象が最も大きいかなと思っています。中央大学が発信してきたWebサイトのなかでも類を見ないデザインやコンテンツで、多くの方から「素敵なサイトだね」と評価をいただいています。

矢ヶ崎 コンテンツに関して言えば、研究という専門性の高い情報を一つの読み物として伝えられる媒体があることは、大学にとって大きな武器になると思っています。前提知識がない方にも、研究者の魅力が伝わるので。

馬場 コンテンツの言葉選びやビジュアルを通して、読んでいる方へ「歩み寄る」スタンスを示すサイトになりました。従来の大学サイトのイメージとは異なるデザインが、企業や官公庁の方々が興味を持ってくれるきっかけになることを期待しています。

横澤 デザイン面では、公開直後から学外からも反応をいただいています。特にWebデザインを専門に紹介する外部サイトや広告系の雑誌などで取り上げていただいたこともあり、アクセス数も好調な滑り出しです。

 ーーこれからの「+C」と、中央大学における産学官連携促進の展開について教えて下さい。

横澤 「+C」を研究広報における情報発信のスタンダードにしていくために、「+C自体の認知度を向上させること」と「よりコンテンツを充実させていくこと」が当面の運営指針であると考えています。ただ、本来の目的である「産学連携の促進」のためには、「+C」というWebサイトを制作して終わりではなく、これをどう活用してターゲットに情報を届けるかが重要です。今回、「出会いのきっかけ」を制作いただいたので、そこで生まれたコミュニケーションを「いい関係」に発展できるよう、試行錯誤しながら挑んでいきたいと思っています。

プロジェクト概要

  • 支援内容
    Webサイト制作(リサーチ、統合ワークショップ、サイト方針策定、画面設計、Webデザイン制作、コーディング、CMS開発、講習会)・プロジェクトマネジメント計画書・コンテンツ制作・冊子制作
  • プロジェクト期間:2021年6月〜2021年12月
  • クライアント:学校法人 中央大学
  • プロジェクト体制
    • プロジェクトマネージメント ・クリエイティブディレクション:東郷 りん
    • プロデュース:柏木 鉄也 吉田 真貴
    • テクニカルディレクション:伊藤 友美
    • クリエイティブディレクション:多田 麻央 近藤 理恵 皆川 凌大  (以上、株式会社ロフトワーク)
    • Webデザイン:姚 孟筑 (baqemono.inc.)
    • コーディング:小森 脩平 (baqemono.inc.)
    • CMS開発:中島 真洋 (FlipClap)
    • モーショングラフィック:UDON (VIXI INC.)
    • ライティング:島田 祥輔 堀川 晃菜
    • 撮影:加藤 甫
    • 冊子デザイン:柴田ユウスケ 吉本穂花(soda design)
    • 印刷・製本:山田写真製版所

Member

東郷 りん

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

柏木 鉄也

株式会社ロフトワーク
チーフプロデューサー

Profile

吉田 真貴

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

伊藤 友美

株式会社ロフトワーク
テクニカルディレクター

Profile

多田 麻央

株式会社ロフトワーク
クリエイティブDiv. シニアディレクター

Profile

近藤 理恵

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

皆川 凌大

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

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AR技術で木材製造の遠隔プロトタイピング
バッファロー大学建築学科 × 飛騨の木材加工プログラム