株式会社ソーキ PROJECT

社員ひとりひとりを組織変革の当事者に。
ソーキ「CI刷新プロジェクト」にみる全社共創の仕掛け

安定した企業「ならでは」の課題をクリアする、組織変革のはじめかた

企業の未来を描く経営者にとって、変革のビジョンを社員の意識や行動にどうインストールするかは重要な課題。しかし、BtoB企業、特に安定成長を遂げながらも一般の認知度が低い業界は、組織変革に対して社内の共感を得にくかったり、社外に向けてブランドをアピールすることが苦手だったりします。

計測機器のレンタルサービスを展開し、創業32年を迎える株式会社ソーキ(以下、ソーキ)もまた、同様の悩みを抱えていました。

2020年、同社はロフトワークと共に「全社員を巻き込んだCI刷新プロジェクト」を実施。「社員一人ひとりが変革の当事者となる」ことを目指し制作した新CIは、約9割の社員に受け入れられ、以前の受け身な社風からは考えられなかった「新たな動き」を社内にもたらしています。役職や部署の壁を超え、全社員を巻き込み「ソーキらしさとは何か」を考えることから始まった、熱量あふれる半年間のプロジェクトに迫ります。

執筆:石部 香織
編集:loftwork.com 編集部

*本対談は、FabCafe Nagoyaが開催したオンラインイベント「名古屋共創会議 Vol.2」の内容をまとめたものです。

登場する人

双木 万梨子/(写真右)株式会社ソーキ 営業本部 マーケティング部 部長 クリエイティブプロデューサー 。マーケティング部のリーダーとして、今回のCI刷新プロジェクトを推進した。

井田 幸希/(写真左)株式会社ロフトワーク FabCafe Nagoya CMO 。東海エリアに軸足をおきながら、ものづくり企業や技術特化型企業とともに「デザイン経営」を実践している。本プロジェクトでは、プロデューサーとして初期ヒアリングからプロジェクトの終了まで伴走した。>>Profile

「保守的な社風」から、創起する組織へ

株式会社ロフトワーク 井田(以下、井田):本プロジェクトの立ち上げ当時に抱いていた課題感についてお聞かせいただけますか?

株式会社ソーキ 双木様(以下、社名・敬称略) 今までソーキは、土木建設業界のお客様、建機レンタル会社様に育てられ、順調に成長してきました。しかしこの先、土木建設における需要の頭打ちが予想されます。新規顧客や新規ビジネス領域の開拓が求められる一方、「安定しているが故の保守的な社風」の改革が大きな課題となっていました。

井田: 当初、ロフトワークにお声がけいただいた際のご依頼内容は、「会社案内パンフレット制作」でしたね。

双木: はい。顧客開拓のツールとして会社案内が必要となりましたが、いざ作ろうとした時に、自社の存在意義や強みが全く明文化されておらず、経営陣や社員の認識も全く揃っていませんでした。ロゴのレギュレーションも整備されておらず、色味やフォントなどバラバラに使われている状態でした。

井田: そういった状況を伺い、私たちもまずはソーキという会社自体のあり方の定義が必要だと判断しました。方針策定に重点を置いたプロジェクト設計をご提案し、最終的には、VI(ビジュアルアイデンティティ)、コーポレートヴィジョン、6つの行動指針、名刺、ブランドWEBサイト、紙の会社案内という、当初のオーダーにはなかったものも含め複数のアウトプットが出来上がりましたね。

左上から、VI(ロゴタイプ、カラーコード)、コーポレートヴィジョン、6つの行動指針、名刺、ブランドウェブサイト、会社案内
ブランディングサイトでは、ソーキのミッションステートメントやロゴの成り立ちも記載

要件定義のプロセス設計で、全社員に当事者意識を持たせる

井田: プロジェクトのタイムラインは、2ヶ月間かけてしっかりと方針策定を行い、それからCI策定、展開ツール制作に進むという、およそ6ヶ月間のプロジェクトでした。今回のプロジェクトで最も重点を置いた方針策定〜CI策定フェーズは、経営層と現場社員へのインタビュー、全社アンケートの実施から始まりました。

プロジェクトのタイムライン
経営視点、現場視点、基礎情報や風土を統合していくステップ

井田: 経営層へのインタビューではソーキの思想や戦略を言語化し、社員インタビューとアンケートでは現場の強みと企業文化の理解を進めました。ヒアリングやアンケートで得た内容を付箋に書き出し、デザイン思考の手法を使って文脈化し、気づきを抽出することで「ソーキの在りたい姿」を導き出しました。

その中から「克服すべき課題」として見えてきたのは、「ソーキ社員は真面目である一方、自分たちの価値を信じきれていない」という点でした。そこで、新CIはありのままのソーキを体現するというよりも、新しい一歩を踏み出すために、社員の気持ちを少し上げて背中を押すものを作ることになりました。さらには、「新CIに自分自身が貢献した」と思ってもらうため、多くの社員の方々を巻き込むプロジェクト設計に変えていきました。

双木: 経営層も一緒にデータを確認したのですが、普段は積極的に発言しないバックオフィスのメンバーからも前向きで建設的な意見が多数挙がっていることに驚いていました。

井田: きれいに整理された結果だけでなく、実際に社員から寄せられた言葉を含む生々しい過程の部分を共有することで、キーマンの納得感も高まりますよね

付箋に書き出したファクトデータをプロジェクトメンバーに共有する様子
収集した情報から「ソーキらしさ」を抽出するまでのステップ

外の目線から、自社の価値を引き出す

井田: CI・VI策定フェーズのハイライトに、社長承認に向けたプレゼンテーションがありましたね。これがプロジェクト前半部分の大一番でしたが、目的達成にむけて行ったことを教えてください。

双木: 通常であれば、複数案の中から1案を決めるところですが、今回、プロジェクトメンバーの中で「これしかない!」という自信のあるロゴとタグラインが出来上がったので、思い切って1案のみを社長にプレゼンしたんです。社長にその魅力を理解してもらうために、サンプルとして新CIを使った社長の名刺や各種封筒、機材梱包用の段ボールなどを作ってしまいました。結果として、社長からは「まさにジャストフィットなロゴとタグラインだ!」と一発承認をいただきました。

井田: 社長の言葉には、一切迷いがありませんでしたね。

双木: オンラインでつないだ大阪と渋谷のプロジェクトメンバー全員から拍手と歓声が挙がったあの瞬間は、今思い出してもこみ上げてくるものがあります。

振り返ると、ソーキに内在する固有の価値、ソーキ自身は当たり前と思って気付かなかったことを、ロフトワークが外からの視点で発見し、見える化したことが「ジャストフィット」なアウトプットにつながったのだと思います。

(左上)社長プレゼン前日、「明日絶対、社長のOKもらいましょう!」と気合を入れる双木さんと本プロジェクトのPM・CD上村(ロフトワーク)
(右上)大阪と渋谷をオンラインでつないで実施した社長プレゼンの様子

社員の声を拾いあげ、伝えることで「自分ごと」になる

井田: 新しいCI・VIに対する他の社員の方たちからの評判はいかがでしたか?

双木: 全社員に向けた新CI説明会後のアンケートでは、90%以上の社員から「ソーキにマッチしている」など好意的な意見が得られました。

井田: 社長だけでなく、社員のみなさんにも「ジャストフィット」したのですね。

双木: はい。新CI説明会後、行動指針を策定するために社員参加型のワークショップを企画しましたが、ここで社員たちの意識の高まりが顕著に現れました。全社に向けて参加希望者を募った際に、予想していた20~30人をはるかに超える、80名以上の立候補があがったんです。

井田: それは、大きな反響ですね。

行動指針策定ワークショップの様子

双木: ロフトワークが作成したレポートも、社内説明会で一役買ってくれました。ビジュアル的にわかりやすいことに加え、実際にヒアリングで出た社員のコメントが載っていたので、社員にとってプロジェクト自体が身近に感じられたと思います。

外部の会社やプロジェクトメンバーが提示した言葉ではなく、社員ひとりひとりから出た言葉を紐づけることで「全社員がこのCIプロジェクトの一員である」という共通認識が生まれ、一体感が出ました。

新CIの発表後、在籍年数が長い社員たちから「カッコイイ」「(新CIにふさわしい組織に)変わる努力をしていきたい」などの意見を得ました。キーマンからのポジティブな意見を他の参加者に聞いてもらえたことも、社内への浸透力を高め、ムーブメントにつながったと思います。

ロフトワークが作成したレポートでは、得られた気付きに添えて、ヒアリングで出た社員のコメントを掲載した

プロジェクトがもたらした変化の気風

井田: プロジェクト後、社内に何か変化の兆しはありましたか?

双木: 驚いたのは、名刺の刷新を機に「事業所名や役割名も素敵なものにしていこう」という動きが出てきたことです。

たとえば、「関東機材技術センター」という事業所が「東日本テクニカルセンター」という名称に変わり、さらに、従来の役職名の他に「クリエイティブプロデューサー」「シニアアナリスト」といった役割名が生まれ、名刺に記載することになりました。他部署との交流も深まるなど、デザインプロジェクトをきっかけに、これまでの受け身の社内文化からは想像できなかった変化が起きたんです。

井田: 以前ロフトワークが「デザイン経営」を実践する中小企業を調査しまとめた『中小企業のデザイン経営』の報告書にある「ビジョンを更新する」というアクションを、本プロジェクトは体現していたように思います。

双木: そうですね。「ソーキに内在している価値を、誰にでも分かるように表現していく」という今回のプロジェクトは、振り返ってみればデザイン経営の本質だったかもしれません。

株式会社ロフトワーク著『中小企業のデザイン経営 経営者のビジョンが文化をつくる』P.7 より抜粋

組織の意思を変える、プロセス設計の重要性

井田: あらためて、双木さんはこのプロジェクトが成功した要因はどこにあったと思いますか?

双木: 2点あります。1つは、経営トップの強い意志です。トップが危機感を持ち、「変わらなければ」と本気で思ったからこそ、6ヶ月間集中してこのプロジェクトを進めることができました。

もう1つは、全社員参加型プロジェクトになったということです。ロフトワークのメンバーもまるでソーキ社員のように主体的に関わってくれたので、社内・社外の垣根を超えたパートナーシップがムーブメントを生み、強力な推進力になったと考えます。

井田: 双木さんが私たちプロジェクトチームと対等に議論をし、一緒に考え、実現したい方向に向けて動いてくださるのが心強かったです。

双木: 「プロジェクトのプロセスすら楽しくて、意味がある」ということが、社員の参加率を上げていき、結果として都志前社長が望んだ「社内活性化」につながった。つまり「プロセスが成果」なんですよね。

井田: 私たちも常日頃からプロジェクトの「プロセス」自体が重要なアウトプットであると考えていますが、本プロジェクトはそのことを再度実感させてくれる好例でした。短期的な数字だけを追いかけるのではなく、定性的な変化の価値を認めることから「デザイン経営」は始められるのだと思います。

双木: それと、個人的な感想として「まずは担当者である自分が、一番プロジェクトを楽しむ」ことも大事ですよね。私はロフトワークとのミーティングや全社プレゼンテーションは、いつもワクワクしていました。そのワクワクが、プロジェクトメンバーに伝わり、上司や部下、他部署にも伝わり、推進力となりました。

井田: まさにその通りだと思います。これからのソーキがどのように変わっていくのか、楽しみにしています。今日はお話いただき、ありがとうございました。

対談を振り返って—共創プロジェクトを加速させるリーダーの存在

井田 幸希(ロフトワーク プロデューサー)

今回のプロジェクトでは、私自身も双木さんのリーダーシップから学ぶところが多くありました。

まず、自らが1番にプロジェクトへ前のめりにコミットし、ワクワクし、それをメンバーに伝える。仕事の中で、メンバーに「あなたがチームに必要なんだ」ということを伝え続ける。時にはランチやネイル、アイドルの話題などで和ませることも。こうして、常にメンバーの気持ちや状況に寄り添うことで、双木さんを中心に「チーム」がまとまっていきました。

また、マネジメント層や各部署のリーダーといったステークホルダーに対しても、「相手が何を考え、望んでいるか」「どのような言葉やタイミングで伝えるべきか」を常に見極め、的確にコミュニケーションを牽引していました。

従来型のリーダーはトップダウン型で、ある意味「力技」でチームを引っ張るのが主流でした。一方で、双木さんのリーダーシップは丁寧なコーチングと対話によって、ボトムアップで成果を出していました。これが、プロジェクト成功の一つの大切な要因だったと思います。

社会で多様性を受け入れていく流れが加速していく中で、双木さんのようなリーダーの存在はより多くの場面で求められていくと感じました。

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