独立行政法人都市再生機構(UR都市機構) PROJECT

人と環境が共生するまちの活動方針を策定
大阪森之宮再開発プロジェクト

UR都市機構と大阪公立大学が連携し、大阪市城東区のUR森之宮ビル1階にオープンした「暮らしと学びの実験フィールド・ほとりで」。ロフトワークは、まちづくりに資するUR森之宮ビル活用事業においてプログラムの全体設計および実施を担当し、3年にわたる伴走支援を行う。2025年度は「都市の豊かさを『共生』でリデザインする」という活動方針を策定。多様なゲストを招いた計5回のインプットセッション・フィールドワークを重ね、2026年度の実践プログラムへとつなげている。

Outline

歴史の土地、森之宮の大規模再開発プロジェクト

大阪城東部地区は、2028年春の「まちびらき」に向けて大規模な再開発が進む地区です。大阪公立大学の新キャンパス開設(2025年9月)、大阪メトロの新駅整備など、都市が急激に変化しようとしています。かつてこの地が海だった時代から、縄文の森、砲兵工廠、戦後の工場地帯……幾重にも人と自然の相互作用が積み重なってきた土地に、「暮らしのイノベーション」を生み出す新しい拠点をどうつくるか。UR都市機構はその問いに答えるべく、大阪公立大学と連携し、2025年10月、UR森之宮ビル1階を活用した「ほとりで」をオープンしました。

生態系と「共生」できる場をデザインする——3年間の伴走パートナーとして

ロフトワークは、URリンケージ・勝亦丸山建築計画・オンデザインパートナーズ・大和工業の共同企業体(パートナー事業者)の一員として、UR都市機構と「まちづくりに資するUR森之宮ビル活用事業におけるパートナー協定」を締結。3年間にわたり、プログラムの全体設計および実施を担います。

出典:大阪府ウェブサイト

初年度は多様な専門家を招いてフィールドワークやインプットセッションを実施。それらを踏まえて次年度以降の活動指針を言語化し、ウェブサイトにて発信しました。これを元に、住民・研究者・学生・企業・クリエイターとの共創活動を通じて、テクノロジーとサイエンスの視点から土地の特性を探索し、経済的合理性だけでない「豊かさ」を中長期的な視点から支援していきます。

Output

「ほとりで」を自由に探索できるウェブサイト

ほとりでの活動拠点としてウェブサイトを公開しました。施設概要・活動の指針・森之宮の歴史・仮説と視点などを、インタラクティブなUIで探索できるコンテンツとして設計しています。

ほとりで 公式ウェブサイト

https://hotoride.com/

hotoride.com トップページ

「都市の豊かさを『共生』でリデザインする」——ほとりでの活動方針を言語化

2025年度の核心的なアウトプットとして、「都市の豊かさを『共生』でリデザインする」という活動方針を策定しました。人だけでなく、みどり・土・水といった環境要素も含めた「やわらかな共生」を実践する場としての「ほとりで」のコンセプトを言語化しています。

2025年度の活動方針(ほとりでウェブサイトより)

Approach

専門領域も国籍も超えた、5回のインプットセッション

「ほとりで」のプログラム設計にあたり、ロフトワークは開業前から多様なゲストを招いたインプットセッションとフィールドワークを重ねてきました。エスノグラフィー、ランドスケープエコロジー、都市デザイン、生態学、マテリアルリサーチ、医療、食、緑地計画——領域も国籍も異なる11名のゲストとの対話を通じて、「この土地に固有の豊かさ」を多角的に捉え直しながら、活動方針の骨格を形成しています。
ゲスト陣が体現するのは意図的な多様性です。医師、デザイナー、古植生物学者、文化人類学者、醸造家まで——専門領域も国籍も大きく異なる視点を重ねることで、「この土地に固有の豊かさ」を立体的に浮かび上がらせてきました。

# テーマ ゲスト・肩書き 視点  
Vol.1

生態系と共存する都市デザインとは
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森田 敦郎
大阪大学 人間科学研究科教授 / Ethnography Lab Osaka 代表

ブライアン・マクグラス
パーソンズ美術大学 都市デザイン学部 教授

ダナイ・タイタクー
モンクット王工科大学トンブリ校 ランドスケープアーキテクト / ランドスケープエコロジスト

杉田 真理子
For Cities共同設立者

エスノグラフィー / 都市設計 / ランドスケープエコロジー

Vol.2

サステナブルなまちづくりに向けた動機のデザイン
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カラヤ・コヴィドビシット
FabCafe Bangkok 共同創業者

タイの市民参加型まちづくりの実践
Vol.3

まちと向き合う4つの視点をインプット
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陸奥 賢
大阪まち歩き大学 学長 / まち歩きプロデューサー

杉本 容子
株式会社ワイキューブ・ラボ 代表取締役 / 都市デザイン実践者

伊勢 武史
京都大学 フィールド科学教育研究センター 准教授

狩野 佑真
Creative Director / Designer(スタジオ「NOU」主宰)

文化 / 水辺・都市 / 生態科学 / マテリアルデザイン

Vol.4

森之宮アースダイブ——植生環境の過去・現在・未来
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辻本 裕也
株式会社パレオ・ラボ / 古植生物学・古生態学研究者

松尾 薫
大阪公立大学 大学院農学研究科 緑地環境科学専攻 准教授

古植生物学 / 緑地計画・都市環境

Vol.5 食・医療・自然——持続的な地域共生の「触媒」を学ぶ
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鈴木 悟
東邦レオ株式会社 / 中津ブルワリー運営者

孫 大輔
家庭医療専門医 / 総合診療専門医 / 文化的処方提唱者

渡辺 英暁
NEWPARK / Comoris DAO 共同設立者

 

食とコミュニティ / 地域医療・文化的処方 / 都市の森と自然共生

5回のセッションをまとめた冊子も作成。興味のある方はロフトワークまでお問い合わせください。

活動方針「都市の豊かさを『共生』でリデザインする」の策定

複数回のセッションとフィールドワークを経て策定した2025年度の活動方針が「都市の豊かさを『共生』でリデザインする」です。人と人だけでなく、みどり・土・水など、このまちを形作る多様な環境との「やわらかな共生」を実践するというビジョンを明確にしました。

この活動方針は、ウェブサイト「ほとりで」上で5つの仮説と視点として公開されています。それぞれのセッションやフィールドワークで出会った実践・知見を起点に、ロフトワークが森之宮でこれから問い続ける問いを言語化したものです。

#1 まちの豊かさを感性的に捉え直す指標を考える

https://hotoride.com/story-01/

経済性や利便性とは異なる軸で都市を評価する試みです。「なんかいい」という身体的な感覚を言語化・指標化し、まちの豊かさを感性から問い直します。関わり方のチャンネルが多様なまちほど、多様な人の生きがいを受け止められるのではないか、という問いを立てています。

  • 「身体で感じる『なんかいいまち』を指標化する」
  • まちを見るビジネスの視点は、もっと感性的に更新できる
  • つながりや関わり方の密度ではなく、関わるチャンネルの多様さを測る
左:『Sensuous City[官能都市]2025』、中央:「感性」をまちづくりに取り込むための指標づくりとその社会実装が「まち感性ラボ」の目標。(出所|読売広告社プレスリリース)、右:2026年1月に行われた座談会。 「地域の健康やくらしの豊かさをどのように捉え直すべきだろう?」という問いを起点に対話を行った。

#2 地域の環境を自然科学の視点で編み直す

https://hotoride.com/story-02/

人と自然の相互作用によって長い時間をかけて形成されてきた森之宮の環境を、古植生物学や緑地工学の知見から読み解きます。過去の地形・植生を知ることが未来の景観設計の指標になるという視点と、「風の回廊」など科学データを暮らしの実感につなぐ試みを紹介しています。

  • 未来の環境のために、過去の地形や植生を知る
  • 科学のデータを暮らしの実感につなぐ
  • 柔軟な都市デザインのためには自然を近づけよ
右上から順に、2023年に行われたフィールドワーク、森之宮北部の第二寝屋川と大阪城、2025年11月に行われた古植物学勉強会、大阪公立大学松尾氏が学生と共に制作した「都市形態改善シナリオ」という土地利用プランの一部

#3 都市の風景の中に地域のアイデンティティを探す

https://hotoride.com/story-03/

川底の沈殿物、ビルに残る染みや汚れ——一見厄介に見える都市の素材にこそ、その土地固有のストーリーが宿っています。清濁を併せ持つ都市の痕跡を素材レベルで捉え直し、地域のアイデンティティとシビックプライドへとつなぎ直す視点です。

  • 「濁」をどう化けさせるか
  • 森之宮の景色を要素分解する
  • 森之宮の環境と暮らしをつなぎ、健康的な文化を育む
右上から順に、狩野佑真氏とLIXILやきもの工房との共同プロジェクトで下水処理後の汚泥灰を100%原料にタイル化した「Poop to Tile」、森之宮東部を流れる平野川の護岸にできた染み、2023年12月に行われたフィールドワークの様子、薬草研究家の新田理恵さんと薬草散策、ほとりで実施されているクラフトコーラ研究所

#4 柔らかな自治の仕組みをデザインする

https://hotoride.com/story-04/

60年以上の歴史を持つUR森之宮団地では、住民が共用部の植え込みをめいめいのセンスで手入れし、暗黙の了解のもとで独特の景観を育ててきました。生活者が一方的にサービスを受けるのではなく、自らの手で暮らしに関わり変えていける余白を設けることが、豊かさの実感につながるという考えを示しています。

  • 森之宮の柔らかな自治の文化をつなぐ
  • 地域の景色は自分たちの手で育てる
  • 相互扶助のデザインをつくる
UR森之宮団地で除草されている日常の様子、地域の方々が自主的に始めて大きなムーブメントとなった「泉北レモンの街ストーリー」、「相互扶助の経済【新装版】無尽講・報徳の民衆思想史」(テツオ・ナジタ(著)五十嵐暁郎(監訳)福井昌子(訳) 発行:みすず書房)

#5 多世代のコミュニティを生み、持続させるための触媒をつくる

https://hotoride.com/story-05/

コミュニティは場所の提供だけでは持続しません。食・健康・自然など、共通の関心ごとを入り口にしながらも、目的で縛りすぎない「おおらかな触媒」のデザインが必要です。クラフトビール醸造や地域の医療実践など、多世代が緩やかにつながる仕掛けの事例から、その設計原理を探っています。

  • 育てて、味わう。身体的な体験で関わりしろをつくる
  • 地域の健康を病院からまちに、ゆるやかに開く
  • 都市の中で小さな自然を共同管理する
ホップの苗を栽培し、収穫、そして醸造するまでをまちに開いて行う中津ブルワリー、空き地を活用して小さな森を地域住民で共同管理するComoris、「屋台」という装置を使って住民と医療専門家との対話の場をまちに開く取り組み

2026年度は、森之宮を実験フィールドとして、まち全体へ

2025年度を「思想と実践の中間年」と位置づけたロフトワークは、インプットセッションで得た知見と関係性を土台に、2026年度の実践フェーズへと移行します。

2026年度は、森之宮という土地を舞台にしたプログラムを複数実施する予定です。植生や水、地形といった土地固有の素材を生かした市民参加型の活動や、テクノロジーと自然科学を活用した試み、そしてプロジェクト全体の成果を外部に発信していくための展示や記録を計画しています。

5つの視点を旗印としながら、これらの活動が、研究者・クリエイター・企業との協働をとおして、「ほとりで」を起点に森之宮のまち全体へ滲み出していくことを目指しています。

Credit

■プロジェクト概要

クライアント:独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)
プロジェクト期間:2025年4月〜(3年間)

■体制

パートナー事業者(JV)

URリンケージ / 勝亦丸山建築計画 / オンデザインパートナーズ / 大和工業 / ロフトワーク

ロフトワーク体制

プロジェクトマネジメント:太田 佳孝
プランニング:浦野 奈美
プロデュース:小島 和人

 制作パートナー

ウェブサイトデザイン・コーディング:stans
イラスト:久保沙絵子
写真撮影:松本 陵(Session1,2,3)、小黒 恵太朗(Session4,5)
動画制作:TRANSIT FIELD(坊内文彦)
活動紹介冊子デザイン:大田高充

Keywords