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原 亮介 2016.07.22

めんどくさいとUX

こんにちは。

クリエイティブ・ディレクターの原です。

少しコミュ障で、グロースハッカーという名刺の肩書きがあるため、“人のこころとからだを動かすメカニズムの研究”がライフワークなんですが、そんなボクが最近気になっていることについての小咄をひとつ。

めんどくさいというエネルギー

「ひとことでいえば、まあ、めんどくさいからです」。

毎回録画して愉しんでいたNHK Eテレの番組『ニッポン戦後サブカルチャー史』。90年代がテーマの第3シリーズの3回目放送(6/12)で、司会兼講師の宮沢章夫さんが放ったこのフレーズに一時停止。何度もリピートしてしまいました。

このフレーズがでた背景は、バーチャルの世界に没頭して恋愛を楽しんでいた90年代の若者に対して「現実よりも虚構を選んだのに、どうして虚構によりいっそうのリアリティを求めるんだろう。だったら現実に行けばいいのに」という番組ゲストの若者の発言に対してのコメントでした。

なぜ、このめんどくさいのフレーズに過剰に反応してしまったのか。

数ヶ月前に、音楽業界の友人と飲んでいる時に、CDからデータになった音楽を生活者がなぜすんなり受け入れたのか、みたいな議論になり、ボクの友人が放ったフレーズもまったく同じだったからです。

「まあ、めんどくさいからですよ」

ものぐさアニマルな人間にとって、めんどくさいは強烈なエネルギーです。

話は少しそれますが、2001年、とある凶悪な殺人鬼が殺しをやめたときにつぶやいたひとことは「あ~しんどい」でした。彼が殺人をやめた理由は、人を殺すという目的を果たしたという達成感ではなく、

「あ~しんどい」≒めんどくさい

という感情でした。

個人的に、共産主義は人間のめんどくさいで崩壊したと思っているし、資本主義はめんどくさいを賢く回避した人が勝利するシステムだと思っています。

周りを見渡せば、今ライフスタイルになりつつあるイノベーティブなサービスはほとんどすべてはめんどくさいの解消です。

LINEは、いちいち電話するのめんどくさいの解消だし、

SnapChatは、メッセージが残るとあとあとめんどくさいの解消だし、

Airbnbは、世界各地のホテル以外の宿泊地を探すめんどくさいの解消だし、

UBERは、タクシーつかまえるのめんどくさいの解消だし、

Spotifyは、音楽を集めたりセレクトしたりいちいち買うめんどくさいの解消だし……。

新しい働き方とかリモートワークってのも、会社にいくのめんどくさいが本質でしょう。

めんどくさいを知る・解釈する・扱う

ロフトワーカーは、サービス開発やWEB構築などあらゆるクリエイティブを創るにあたり、デザイン思考やUXを取り入れたアプローチを行っています。肝心要は、観察やインタビューを通じて、ユーザーのインサイトを抽出し、思考の軸に据えること。

試行錯誤を繰り返す中で、ボクがいま大事にしたいと思っているのは、人間のめんどくさいという思考・感情を、どう知るか、どう解釈するか、どう扱うかの3点です。

やっかいなのは、知ると解釈のところ。なぜなら人は、めんどくさいについて悪気なく平気で嘘をつくからです。

 

ケースで紹介します。

  • ボクはランチに500円のハンバーグ弁当を買いました。
  • 「なんでこのハンバーグ弁当にしたんですか?」と聞かれ、「前から食べたいと思っていたから」と答えました。
  • 本当は…財布に500円しか入っていなくて、それで空腹を満たせるボリューム重視の商品を探していた。
  • 和食は満腹感という面でパンチ不足だから、ハンバーグが入っているこのお弁当にした。
  • 別にハンバーグが大好きなわけではないのに。

 

いちいち説明するのがめんどくさいから、ボクは嘘をついたのです。

このめんどくさいからつく嘘の壁を打破するデプスインタビューのお作法については、ここで書ききるのは大変めんどくさいので誰かに譲るとしてw

人類誕生からおそらく未来永劫においても変わらない、ものぐさアニマルのめんどくさいというエネルギー。既存のめんどくさいをうまくスイッチできれば、かならず人はそちらになびく。じゃないかな。

原 亮介

Author原 亮介(MVMNTユニットリーダー)

関西のファッション/カルチャーマガジン編集長、ロボットテクノロジー関連ベンチャー、戦略PRコンサル会社を経て、2014年6月よりロフトワーク所属。マーケティング視点を軸に、クリエイティブな価値創出〜価値浸透まで幅広いプロジェクトを手がける。“ヒトを動かす”と“ユースカルチャー”が生涯の学習テーマ。

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対話を重ねる、外の世界に触れる。
空間に魂を吹き込む、オフィスリニューアルの軌跡